【GAME23-5】反撃はお姉ちゃんに任せて!!
――穂香姉ちゃんの代わりに、勇んで裏プレイヤー討伐に打って出た倭刀。
流石オールスターズの最年少ともあって、活気盛んな性格。更にド派手に切り札の《ダークフォース・ドラゴン》を招来して浪速の空を舞い上がり、終いには上空から怒りのエネルギー弾を、キャノンボールの鉄目掛けてぶっ放す。
これぞパワーを極振りした倭刀のゴリ押し戦法、堪らず裏プレイヤーもガクッと膝を落として朽ち果てる。
「っしゃ! 武器も消えたし敵さんは動かねぇし、あとはコイツのHP尽きるまでバッタバタ叩き斬るだけや! 討伐なんざチョロいチョロい!!」
過激な一撃を決めて浮かれまくる倭刀。しかし皆さん、安心するにはまだ早いですよ。
“家に着くまで”が遠足ならば、“HPが0になるまで”がアメイジングゲーム。要するに最後まで気を抜くなと意味を持ってすれば、倭刀の考えはあまりにも軽率。
それを証拠に果てた筈のキャノンボールの鉄の懐に、1枚のカードが……!
『ユニットカード……』
相手に悟られぬようにそっとブレスにカードを装填する鉄。しかし倭刀はハイになって気が付いていない。その隙にスキャン!
『――――【キャノンヘッジ・フォートレス】!!』
――ドオォォォオオオッッ
「うおッ!!?」
キャノンボールの鉄に接近した倭刀の眼前に、地響きと共に襲いかかったのは地より出でし巨大鉄球!
これぞ奴の奥の手にして切り札ユニット、トゲに限らずキャノン砲やらミサイルやらと物騒な装甲を張り巡らす鉄球体から、メキメキと殻を破るような金属音を発して手足を出して二本足で立つハリネズミユニット。これぞ《キャノンヘッジ・フォートレス》だ!!
◎――――――――――――――――――◎
〈ユニットカード〉
【キャノンヘッジ・フォートレス】EG:⑤
AP:200 DP:800 AS:10
属性 無 ユニット/ヘッジホッグ
・能力:[メタルボディ]
このユニットのダメージは1/2半減する。
《必殺技》:フルバーストランチャー
EG:⑦ AP:400
超広範囲・長距離掃射攻撃を行う。
◎――――――――――――――――――◎
「アホかお前〜? 俺が銃火器ばっかでユニットカードを持ってないと思ったか!?」
「な、何やねんその武装力バリバリのソ◯ックもどきは!?」
ソ◯ックの方がまだ可愛げがあるが、このユニットはハリネズミを通り越した武装機龍に差も似たり。《キャノンヘッジ・フォートレス》に倭刀は不本意にも怖気づく。
「俺のとっておきの鋼鉄ハリネズミやでぇ、試しに空の黒トカゲで攻撃してみぃや!!」
「はぁ!? 黒トカゲちゃうわ、ドラゴンじゃアホ! だったらもう一発喰らえ、『闇絆破砕砲』ッ!!」
倭刀は鉄の挑発にまんまとハマり、《ダークフォース・ドラゴン》の特大エネルギー弾をもう一度放射する! しかし……
『カウンター・レスポンス発動』
攻撃へのステップに突入した最中、鉄によって発動した横割り込みの応答カウンターでもう1枚、カードをスキャンし反撃する!
『アクションカード、【アタック・キャンセル】!』
◎――――――――――――――――――◎
〈アクションカード〉
【アタック・キャンセル】EG:③
属性:無 使用可能ジョブ:全て
効果:ユニットまたはプレイヤー
の攻撃を1回だけ無効にする。
◎――――――――――――――――――◎
アメイジングカードによる攻撃はデータの実体化を基づいたもの。
《アタック・キャンセル》の打ち消しカードは、その攻撃をデータ分子を拡散させて消滅させる効果を持つ。これによって《ダークフォース・ドラゴン》のエネルギー弾は消滅した。
「ちくしょう!!」
ドラゴンの攻撃を阻止されてヤケになった倭刀、喧嘩仕込に叩き斬り《轟竜刀》で鉄のユニットを攻撃するが、[メタルボディ]によるダメージ半減と強固な防御力で全く歯が立たない。
「何やガキの威勢も長くは持たねぇみたいだな〜? ほなそろそろ締めに入るか!」
キャノンボールの鉄、《キャノンヘッジ・フォートレス》を盾にしながら、蓄積したEGを消費して必殺技コマンドを解き放つ。
すると《キャノンヘッジ・フォートレス》は急に背中の甲羅を倭刀に魅せると同時に、ミサイルや放題が前方広範囲に向けて構えられた!
「何もかもブッ飛ばしちまいなぁ!! 『フルバーストランチャー』!!!」
――――ドガガガガガガガガガガガ!!!!
機関銃にハープーンミサイル、レーザービームにロケット弾。射撃のオンパレードがハリネズミの甲羅によって放出される無茶苦茶な展開。
だがその威力は冗談抜きの本気。しかも広範囲で回避もままならない修羅の中で、倭刀と《ダークフォース・ドラゴン》はその餌食となった!!
「ぐあああああああああッッ!!!!」
〔倭刀 HP500→100〕
〔ダークフォース・ドラゴン HP250→0〕
天と地で織りなす銃撃総進撃。倭刀は瀕死の状態まで追い込み、《ダークフォース・ドラゴン》は爆破の果てに破壊された。
「……ぐ、く……ば、バカな――――!!」
HPは尽きては居ないが、必殺技コマンドによる途轍もない衝撃に翻弄された倭刀は、立つことすらままならない満身創痍であった。
そこに立ち塞がるは、酒に酔っても不気味に笑みを浮かべるキャノンボールの鉄。
「おぃぃクソガキ〜、無鉄砲にはしゃぎ過ぎたな。裏プレイヤーを舐めた報いはちゃんと死を持って償わなアカンな〜?」
抗おうにも動けぬ倭刀の身体。更に鉄を背に先程まで新世界の破壊に活用した《キャノンボール・バズーカ》が、今度は倭刀にその砲台を向けた。
「特別サービスだ。新世界の代わりにお前を押しつぶしてやる。肴代わりにゃもってこいの惨劇だ、有り難く受け取れや!!」
(やべぇマジで身体がッ、動かねえ……ッッ!!!)
照準を調整し、倭刀への処刑が始まる……!
「……あばよ、アホンダラ!!!!」
万事休すとギュッと力一杯歯を食いしばる倭刀、砲台が撃ち出されようとしたその時!!
――――キィイインッッ
発射された巨大ボールが響き良く弾かれ、倭刀の直撃を免れた。
痛みも衝撃も感じない倭刀は、何事かと瞑った目を開いて辺りを見渡せば、その詳細は時を待たずして理解した。
「これは……魔法陣!?」
いつから発したのか、誰が仕掛けたのか分からぬ倭刀の足場に五芒星の魔法陣。
聖なる光の柱を創り、カードの攻撃をも遮断させた護符を唱えたのは他ならない、あのお姉ちゃんだ!!
「倭刀ッッ!!」
「穂香……姉ちゃん――!」
無茶する弟の不始末は姉が落とし前をつけるのか。倭刀の窮地を救ったのは、穂香姉ちゃんのカードの御加護のお陰だ!
◎――――――――――――――――――◎
<アクションカード>
【無敵の魔法陣】EG:④
属性:黄 使用可能ジョブ:魔法使い
・効果:【トラップ】致死ダメージ計算前
対象となるプレイヤーの受けるAP700以下の
ダメージを全て無効にする。
◎――――――――――――――――――◎
「また説教とおっぱいのデカイ姉ちゃんか……!」
またしても穂香にしてやられた鉄の苦虫を噛み潰す。対して穂香は不機嫌そうな顔で、魔法陣に護られた倭刀の元に向かい……
「…………めっ!!」
「痛ッ!」
《マジェスティック》の杖先の硬い所にコツンと倭刀の頭を殴った穂香。ゲームではダメージにならないが、当の倭刀は色んな意味で痛みが身に染みていた。
「……これで分かったでしょう? 裏プレイヤーはゲームの名を語って殺す事も厭わない者。槍一郎さんや剣さんと違って、倭刀にはまだプレイヤーとしての自覚が足りてない。私が保険掛けてなかったらホントに死んでたのよ?」
激しく怒ることをしない穂香は、冷静ながらも倭刀の欠点を言い切った。それに対して倭刀は何も返す言葉は見つからなかった。
「………………姉ちゃんの言う通りや。知らねぇ内に俺の中で驕りと自惚れで周りが見えなくなってたんや。――ゴメン姉ちゃん、俺身体が動けへんからこれ以上は……」
「倭刀は良くやったわ。私の事は大丈夫だから、その魔法陣でゆっくり休んでなさい」
「そう、させて貰うぜ……やっぱり、穂香姉ちゃんにゃ敵わねぇや……」
集中が途切れて息切れ切れの倭刀、直ぐ様憑き物が抜けたかのように、ガクッと魔法陣の中でその身体を休ませた。
(実力はまだまだだけど……私を守ってくれてありがとうね、倭刀――――!!)
倭刀の未熟さに心を鬼にして叱咤した穂香。しかしその心の奥底には、弟分である彼が姉と慕う穂香を必死で守ろうとした心意気に、優しい笑みが浮かんでいた……!
そして振り向けば敵の姿、それに対してキッと鋭い目線をキャノンボールの鉄に向ける穂香。
「テメェ〜、せっかくの酒の楽しみを潰しやがってこのクソア―――」
「口を慎みなさい、裏プレイヤー」
穂香の温和な口調から一転、低く高圧的なトーンが響いた次の瞬間、盤面は一転した。
――――バグォォォオオオオオオオオン!!!!!
なんとカード発動の合図も無しに、突然鉄の《キャノンボール・バズーカ》、《キャノンヘッジ・フォートレス》が爆散・破壊された!!
(な、何や……!? あの姉ちゃんから物凄いPASの波動が……!!!)
「―――私の可愛い弟を、完膚無きまでに痛ぶった礼はこの程度では収まりが付きません。
私直々に、貴方を成敗致します!! 覚悟しなさいキャノンボールの鉄ッッッ!!!」
遂に穂香姉ちゃんの怒りが爆発! 緑色のシャッフルジャケット、背の大樹と魔導杖のエンブレムを加護に挑む新緑の魔導師の反撃が始まる!!
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




