【GAME23-4】ドラゴン侍・伊達姿!!
――TIPS――
【現実世界内でのアメイジングフィールドにおけるルール】
アメイジングの発足によって、ゲームワールドのみならず現実世界でも仮想空間を張る事が可能になった。
カードスキャンブレスの起動と同時に、半径200メートルまでひろがるドーム状のVRフィールド。
通常このフィールド内に干渉した建物がアメイジングのカードにおける被害はゲーム終了には修復されるが、裏プレイヤーの仕掛けた“裏ゲーム”ではそうはいかない。
もし負けた場合は破壊された建物・施設はそのまま残骸として残り修復出来なくなってしまう。
何でもかんでも魔法少女処理で事を済まされると思わないように。
――巨大砲弾のみならず、大筒担いで長距離かつ広い爆風を生じる爆裂弾で、大森穂香を苦しめる裏プレイヤー・キャノンボールの鉄。
常に酒気を帯びながらも銃火器をぶっ放す危険野郎。そんな彼の頭に何処からか、酔いをぶっ飛ぶ石頭アタックを受けて悶絶させたのを筆頭に穂香の危機を救ったのが、弟分のドラゴン侍・池谷倭刀! いよッ待ってました!!
「……ぐくッ、誰や〜!? 俺のオツムに頭突きしてきたボケは〜!!?」
「――――シャッフルオールスターズのぉ、“ドラゴン侍”の倭刀だけどぉ! 好きな言葉は『一狩りいこうぜ!』宜しくッッ!!」
ツーブロック頭にヤンキー口調、自慢の《轟竜刀》を肩から下げて堂々と名乗りを上げる倭刀。みのり印のシャッフルジャケット身に着けて、オレンジカラーに刺繍は龍と刀のエンブレム、背中に引っ提げて粋に戦う!
「……ケッ、おっぱいデケェ説教姉ちゃんの次はヤンちゃんかぁ? 刀引っ提げる前に、大人に対するマナー提げた方がエエんとちゃうか!?」
「おっちゃんにだけは言われたかねぇよ! 遠くからでも酒臭ぇし、飲んだくれは酒断って真っ当に仕事しとけやこのスカンピン!!」
何ともまぁ乱暴な口を叩くんでしょうね、倭刀さんってば! 言いたい事を腹の底から全て言い切るのが倭刀の性分でもありますが、言い切ったお陰でキャノンボールの鉄は案の定御冠だ。
「てめ喧嘩売ってんのかアアアアア!! もう頭来たお前から先にぶっ放したる!!」
「俺ァ元から喧嘩売りに来とんのじゃボケェェェ!!!」
売り文句に買い文句。《ブラストランチャー》の標的を穂香からクルッと逆方向に、倭刀を標的に変えて一発お見舞いにぶっ放す。
――――ドォォォオオオン!!!
「おぉっと、危ねッ!?」
何しろ長距離発射に加えて広範囲の爆風もおまけに付いての高威力武器、これには流石の倭刀もたじろいだ。
「倭刀、無理しないで! ここは私も一緒に……」
「おおっと待った姉ちゃん! 毎回その優しさには俺は心の髄まで痛み入るけどな、俺かて毎度姉ちゃんに叱られ守られてばっかじゃ性に合わへん! ここはいっちょ裏プレイヤーブッ飛ばして、討伐報酬も手柄もチョイチョイっと頂いてやっからよ!!」
「倭刀……ッ」
長い付き合いもあって、いつも美味しい所を穂香に取られてばかりの倭刀であったが、何分経験の蓄積は前の自分より大きく魅せたがる。怯んでいる穂香より先走って、裏プレイヤー討伐に急ぐ倭刀は止まることを知らなかった。
「余所見してっと発破掛けんぞクソガキ〜〜!!」
――――ドオッ、ドォォォオオオ!!!
「ヤベッ、一旦逃げるが勝ちじゃ!!」
粋な姿にも癪が触ったかキャノンボールの鉄、《ブラストランチャー》を連発し更に倭刀を追い詰めるも、軽業逃足でスタコラと新世界の古い街路地へ逃げ込んだ。
「……倭刀ったら、ホントに意地っ張りなんだからっ!!」
ターゲットから外された穂香は立ち上がって鉄の視界から外れるべく、一旦は恵美須東の道路から離れた。姉ちゃんが弟を想う心情が、どのように彼女の行動を物語るか――?
▶▶▶ NEXT▽
――――変わって場面は絶賛交戦中の倭刀。《ブラストランチャー》の長距離・爆風の弾に決死の勢いで回避する彼。
更には新世界の街並みに転がる《キャノンボール・バズーカ》の巨大スマートボールの奇襲で、安息する暇も無い。
一方その煽りを受けた新世界の風景も、二つの攻撃にやられて瓦礫の山と化していた。
「……ぁん野郎〜、俺や剣さん達の遊び場を滅茶苦茶にしやがって! 早くアイツを倒して修復させなアカンわ」
昔ながらの遊び場として、慣れ親しんでいた新世界の惨状に憤る倭刀。
TIPSにも書かれましたが、“裏ゲーム”による破壊活動はそれを引き起こした裏プレイヤーに勝つ事によって、何も無かったかのように修復・復元システムが存在する。
ここは何としてでも勝利して、愛する新世界の聖地を元に戻したい所だ。
「あのへべれけは動きは鈍いだろうから、何とか俺の《轟竜刀》で接近戦に持ち込みたいが……あのランチャー構えてての近距離は自殺行為だし、俺がやられちまったらまた穂香姉ちゃんが標的にされちまう。何とか武器を使い切らせないと……」
咄嗟に動いてはみたものの、見切り発車で何も用意して来なかった倭刀は早くも焦りを見えた。しかしブレス内にて溜まった手札の使用カード6枚の中に、切り札はちゃんとあった!
「……そっか、お前も穂香姉ちゃんを助けたいんやな! そんじゃ張り切って行って来い!!」
直ぐ様倭刀はブレスの中のデッキからカードを1枚居合抜きの如く引き抜いて、そのまま装填口にカードをスキャン、召喚の体勢に入った!
『ユニットカード、【ダークフォース・ドラゴン】!!』
召喚コールと同時に天の静寂を打ち破って、突如現れた漆黒のブラックホールの渦。
これぞ倭刀の切り札、闇の彼方を巣とするブラッククリスタルの装甲を纏いし邪悪の龍! 《ダークフォース・ドラゴン》だ!!
◎――――――――――――――――――◎
〈ユニットカード〉
【ダークフォース・ドラゴン】EG:⑥
AP:500 DP:250 AS:10
属性 黒 ユニット/ドラゴン
・能力:[フライヤー]
①プレイヤーのHPを最大500まで消費
コストに捧げる事でこのユニットの
APをコスト分アップする。
◎――――――――――――――――――◎
――――ゴァァァァアアアアアアア!!!!
地獄の悪魔をも恐れ慄くハウリング、低く響き渡るドラゴンの咆哮。これを否が応でも酒乱であろうとも、倭刀を追跡するキャノンボールの鉄はそれに反応した。
「な〜んだ〜? 真っ黒トカゲが空からふんぞり返りやがって! 撃ち落としたるわ!!」
鉄は《ブラストランチャー》の大筒を上に傾けて、《ダークフォース・ドラゴン》目掛けて空中に撃つつもりだ。こうして上に向けると花火でも打ち上げるような見栄えですね〜。
それを建物の隙間から傍観する倭刀は、この状況にブレスの通信無線でドラゴンに指令を下す。
「……よし《ダークフォース・ドラゴン》! 今から下から撃ってくる弾を全力で避けるんだ。弾が切れたらこっちの番だぜ!!」
地上と空中、離れていても命令に応じて長い首を縦に降るドラゴン。倭刀に合図する配下と主の絆。
――――ド、ド、ド、ドンッッ!!
「来たで〜、交わせッッ!!!」
その命令に従うや否や、黒龍の大きな両翼をバサーっと広げて急旋回。打ち上がった複数の爆裂弾が空中爆発を起こして次々に爆風の嵐が襲いかかる!
だが彼の酒呑みが仇となり、視覚がぼやけながらも発射される銃火器は、照準が定まらずドラゴンの飛躍した跡先に爆風飛び散り、スレスレと黒龍は衝撃を潜り抜けていく。
それをギリギリ避け切った黒龍の活躍もあって、倭刀に好機の時が来た。
――カチッ、カチッ!!
「あら〜弾切れやがな!!」
武器の使用回数を表す『PP』が0になった所で《ブラストランチャー》は打ち止め。そのまま砲諸共消滅していった。
「しめた、今や黒龍ッッ!!!」
倭刀は薄透明なモニターをタッチ操作でコマンド入力し、手動で《ダークフォース・ドラゴン》の能力を発動させた。その効果は……
〔倭刀 HP1000→500〕
〔ダークフォース・ドラゴン AP500→1000〕
プレイヤーのHPをコストとして最大500まで消費させて、その数値分を《ダークフォース・ドラゴン》に加算させる。荒削りだがパワーに特化した能力だ!
その能力の処理を終えて直ぐに、倭刀のブレスからドラゴンへの“攻撃”のコマンドが下された!!
「《ダークフォース・ドラゴン》の攻撃! 『闇絆破砕砲』ッッ!!!!」
ドラゴンの口から膨張する禍々しい黒のエネルギー玉が、天空彼方からキャノンボールの鉄に目掛けて標的を絞る。そしてそのまま……発射!!
「…………わ、ヤバい」
――――ドオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!
〔キャノンボールの鉄 HP1850→850〕
パワーアップした黒龍の特大1000ダメージが鉄に直撃!! しかしタンクさながらの膨大なHPによって一撃必殺にはならなかったが、倭刀はその手応えに恍惚の地に至った。
「――――フゥゥゥウウウ!! やったぜ黒龍! あとはチャンバラ捌いてオシマイだな!!」
ハイになった倭刀は止めを刺そうと、隠れるのを止めて再び刀を構えて攻撃に出ようとするが……そこが迂闊の元だった。
(…………ニヤッ!)
朽ち果て俯く鉄から浮かぶ不気味な笑みと共に、ブレスから1枚のカードを取り出した。
《ユニットカード キャノンヘッジ・フォートレス》
――――果たしてこの1枚のカードによって、もたらされるものは一体何なのか!? 丁度読み終わりの時間となりました。本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




