【GAME22-3】新たなるミッション! そして旅立ち……!!
――TIPS――
【WGCとは……?②】
WGCは組織的運営を執り行っているため、社長や管理者といった様々な役職を持った数千名の役員を持って成り立っている。
特に『GWマスター』と呼ばれる管理者は、豊富なゲーム知識と経験を持ってゲームワールドの各エリアに設置されたゲームのイベントを運営する役割を持つ。実はWGCの中で最も憧れる役職らしい。
――WGCの代表取締役社長やら、ゲーム戦士の鳳凰堂孔雀が自ら剣たちシャッフルオールスターズの前に現れた理由は、単なるオフィシャルプレイヤーのお出迎えでは無かった。
“シャッフルオールスターズに、【裏プレイヤー】の討伐を依頼したい!”だなんて言われたって、何のこっちゃの困惑顔の剣たち。
(それよりも僕の試練の出発はどうなるんだ……)
もっと困惑しているのは、試練と立場をそっちのけにされた槍一郎であった。
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「どうぞ、粗茶ですが……」
「いや急ぎだから茶は要らん。だがせっかくのもてなしだ、少し頂こう」
豪快が取り柄のゲームジム経営者の豪樹さんでさえも、恐縮で筋肉も縮こまってかしこまる。
それもそうだ、ゲームワールドはおろか時代の勢力さえも握っているWGCの社長さんが、わざわざ事務室までお越しいらっしゃった。それだけでも名誉ある事なのです。
「みのり、夜遅くまで友達と遊んでないでしょうね? 宿題もちゃんとやってる? 睡眠は8時間取ってる? 家には――」
「お母さん、ちゃんとやってるってば! 恥ずかしいから止めてよ……」
まさかWGCに働くみのりの母・麗子が来てるとは知らず、久方の家族会話も飛び交う。まぁ長いこと家を留守にしてる分心配するのは分かりますが、半ば真面目かつ若干自己中心な母に、みのりもタジタジ。
そこで早く話の筋を聞きたいと、剣が半ば急かして本宮社長に話し掛けた。
「……それで、俺達しがない下町のゲームチームが、WGCから依頼ってどういう事ですか? それに“裏プレイヤー”ってのも俺ら知らないですし……」
「その説明は鳳凰堂にさせて貰う」
本宮社長はくいっと湯呑茶碗で茶を飲み干した後に、ひと呼吸おいて鳳凰堂孔雀に合図を送った。
「かしこまりました。――単刀直入に申しますと、ゲームと託つけて犯罪を行ったり、残虐非道を行う者として人道をはみ出したプレイヤーの事を『裏プレイヤー』と称しているのです」
「……まさか非合法なギャンブルとか、デスゲームを行ったりする奴らがそれか?」
「まさにその通りです。例えるなら、貴方達が壊滅に追い込んだ『ブラックヘロン』のテロリストや『サザンクロス』、試合に乱入してきたシザース兄妹もその一部に入っています」
――――因みに鳳凰堂孔雀は、その裏プレイヤーの成敗・討伐を指揮するリーダーであり、このような討伐案件を提案したのも彼女であります。
何故このような事を任すようになったというと、WGCと所属している鳳凰堂のチームとは、長い歴史を持つほどの友好関係がありました。
一年前のWGC大改変を機に本宮社長はどうしても強大な権力を持つ鳳凰堂の力を貸してほしいという事で、孔雀が自らWGCの幹部として名乗りを上げた。
――彼女の想い描く思想として、【ゲーム文化の繁栄】と【境界無きプレイヤーの共存交流】に注力している事。
そもそも『鳳凰堂』という組織が出来たのは、平安時代の頃。元々この時代から出来た囲碁の強豪組織として、発足したのが始まりだとか。
更にその組織の所属地である京都府は某ゲーム会社の本拠地であり、超次元ゲーム時代黎明期から特にゲーム技術にも長けていた場として有名であった。
今日に至るまでゲームに長く深い縁を持つ鳳凰堂は、日本有数の強大遊戯組織として押し上げたのだ。
その勢力によってゲームや遊びの文化が過疎化している地域に留まらず、全国津々浦々と広めた功績が認められて、孔雀はとうとうWGCの副管理者まで登り詰めた。
ゲームに対する俗物のレッテルを取り払い、誰もが執り行う文明として広めていったのも、鳳凰堂孔雀率いる『鳳凰堂』の功績なのです。
つまり、そのプレイヤー達の治安を仇なす『裏プレイヤー』の討伐を指揮するという彼女の真意は……
「二度も窮地を潜り抜けたチームとして私からのお願いです。――――裏プレイヤーの討伐を御協力頂けないでしょうか? 最悪シザース兄妹のように殺しても構いませんので」
「――!」
温和な表情から急に垣間見えた孔雀の殺意に、剣は驚愕しながらも反論した。
「……ちょっと待て孔雀さんよ。俺達はゲームを楽しむ者であって殺し屋じゃねぇ。あんたが裏プレイヤーをどう憎もうと勝手だが、殺す業だけは俺等は背負う気は無い」
殺意を一瞬見せようとも平然とした態度は変わらずの孔雀は、その反論に一部訂正した。
「……失礼致しました。ただ貴方に殺意は無くとも、一部の裏プレイヤーには情け容赦無くその命をゲームで奪う者もいます。そんな時に貴方は他の仲間を守れる覚悟がありますか――?」
「…………」
「そうだわ剣くん、貴方私の大事なみのりを裏プレイヤーなんかに傷付けたら二度と彼女と近づけさせないから!」
「お母さんッ!!」
そこへ急に横槍、しゃしゃり出たのは母・麗子。モンスターペアレントみたいな言動にみのりも流石に怒った。だが剣や他の仲間はそれにも屈せず、己の意思を貫いた。
「お母さん、私は剣くんや皆にいっぱい勇気を貰ったんだから! 守られるだけじゃなくて、私も出来る事をやり通して戦うもん!!」
と、みのりが勇気ある発言を母にぶつけたのを皮切りに、続々と仲間も名乗りあげた。
「……あ、あたしも! みのりちゃんが頑張ってんだもの。やるからには精一杯やるわ!!」とレミ。
「俺もそうや、裏でも表でも束なって掛かってこいちゅーねんー」と倭刀。
「私も、力の限り戦います」と穂香。
「ワイにもこんな勇気あって可愛らしい教え子を守る義務があります。せやからワイが先頭立って戦い通しますわ!」と豪樹と、
それぞれが意思を表明した所でラストは剣。
「俺達は裏プレイヤーの悪事は止めるつもりだが、それ以上に、みのりや大事な仲間を守るために戦うだけだ。裏プレイヤーがその魂狙うなら、殺さずにその考え改まるまで成敗するまでだ!!」
誰かを守るために戦う切り札騎士の胸奥に、赤い剣と白い盾。双魂のPASが光り輝いた――!
「……その意思に揺らぎは無し、ですか。良いでしょう。ならば貴方達6人にこのカードを差し上げます」
そう言って孔雀は、剣や他の仲間に1枚のアメイジングカードを授けられた。
そのカードには、《裏プレイヤー・データ》と鳳凰堂のトレードマークである鳳凰のイラストが書かれていた。
「これは裏プレイヤーのデータファイルや、居所を探るためのレーダーの役割を果たすデータカードです。それにカードスキャンブレスをスキャンして、そのデータをプレイギアとブレスにインプットさせて下さい。討伐に役立てる筈です」
「……あぁ、遠慮なく活用させて貰うぜ」
剣は孔雀の不可解な真意に疑惑を持ちながらも、仲間共々カードを受け取った。そして話の締めは代表取締役社長の本宮社長が仕切る。
「――ではシャッフルオールスターズ6名、討伐依頼は承諾で異存は無いな?」
「……はい! それでお願いします社長さん!!」
「宜しい。ならば各々の達成次第、報酬も用意する事を約束しよう。先に願うでも構わんが、どうするかね桐山君」
「良いんすか……? じゃ預かっているGパーツのカード、≪大いなる伝説の聖剣 GXキャリバー≫の所有権開放クエストを承認させて下さい!」
「…………うむ、ならば達成しだい直ぐに承諾させるとしよう」
「ありがとうございます」
最後に剣と本宮社長とで意味深な交渉を得て、シャッフルオールスターズの裏プレイヤー討伐依頼は、承認の形で終わった。あとは例の送り迎えを済ますだけ。
「では天野槍一郎、そろそろ出発の時だ。最後の挨拶は済ませておけ」
「分かりました」
最後って言い方はちょっと引っかかりますが……ようやく槍一郎のターンが来た所で、改まって彼は剣たちに挨拶を交わす。
「それじゃ……僕は行くから。また皆と会えるのは当分先になるかもしれないけど……、僕の分までしっかり頑張ってくれ」
挨拶の割には素っ気無い感じがした事に違和感を覚えた剣は、ガバッと槍一郎の懐に抱きついた。
「……うおッ!?」
「何死にに行くような面してんだよ槍ちゃん! そんな顔俺らは見たかねーぞー!!」
「そうだよ! 永遠の別れじゃないし、離れる時ぐらい笑顔見せてよー!」
「あたしもー!」
「先輩の誇り、ちゃんと取り戻して帰ってくだせぇよ!!」
「私達、何時でも見守ってますよー!」
「試練なんざ、なんぼのもんじゃーい!!」
たとえ離れていようとも、笑顔を絶やさなかったのは剣たち、仲間の存在であった。
帰るべき場所はやはりここだと、出発を前に槍一郎は確信し、眼を潤ませながらも彼は笑顔を取り戻して、再び皆に告げた。
「……皆、済まない。僕も自分を取り戻す為にオフィシャルプレイヤーになって戻ってくるから! またここで、7人全員でゲームしよう!!」
「「「「「「勿論! 約束ッ!!」」」」」」
――『さよなら』は言わない。『またね』を繰り返して、大事な人と巡り会う為にゲーム戦士は生きていく。
天野槍一郎、再びシャッフルオールスターズの元へ帰ることを心から誓い、WGCのリムジンの元へ乗り込み、旅立っていった…………
「――――よし、俺達も! 槍ちゃんに負けずに戦うぞッッ!!!!!」
だが、剣たち6人にもう立ち止まる時間は無い! 強さと平穏を求める為に、それぞれの突き進む道へと進もうとしていた!!
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




