【GAME20-5】成敗か、制裁か……!?
――スマッシュ・ブレイカーズの白熱バトルを遮って、剣や銃司達の命を狙おうと不意打ち狙った愚か者。それは正体不明の組織『サザンクロス』から雇われたシザース兄妹でありました。
ご覧下さいこのご立派なハサミ! 兄も妹も危ない眼して殺意は満々、最初はチョキの構え。ジャンケンでグーを出そうが手ごとチョン切られそうだから恐ろしい。
「史也様、それとみのりさん達も! 後は二人に任せて一旦避難しましょう!!」
「う、うん!!」
◎――――――――――――――――――◎
・プレイヤースキル【テレポーテーション】発動!
控室まで瞬間移動!!
◎――――――――――――――――――◎
立海もシャッフルも揃って呼びかけるはメイドの桜、試合に登録していたプレイヤースキルを避難対策に使い、直ぐ様剣と銃司を除いて全員が控室へとエスケープしていった。
さぁここまで来れば他に心配することなし、桐山剣に立海銃司と好敵手が手を組み、ドリームタッグが誕生した!!
「――シャッフルオールスターズ、『切り札騎士』やってる剣やけどぉ……テメェら纏めてぶった斬ってやんで、宜しくぅッッ!!!」
先手必勝、剣が《ファイティングブレード》片手にシザース兄妹に突っ込んだ!!
――ジャキィィイイイン!!!
鋭利な刃と堅固な鋏。それらがぶつかり合って響きの良い音と衝撃が両者に痛撃するや否や、再び間合いを取っては急接近してハサミを刻んでやろうと特攻する剣。
ジャンケンの原理で言うならチョキとチョキであいこでしょ、どっち付かずの攻防にシザース兄妹も痺れを切らした。
「あーー鬱陶しい!!!」
兄のキャンサーがカードを引き出し、ブレスに装填・スキャンした!
『カスタムツールカード、【クラブシールダー】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<カスタムツール・カード>
【クラブシールダー】EG:③
GP(防御力):300
属性:青 装備:プレイヤー
◎――――――――――――――――――◎
カニの兜のような形をした盾を手に、ただでさえ防御力が高い兄妹の防御がますます上がって剣のブレードじゃ歯が立たない。
その隙を突いて妹・シェルディがおっきいハサミで剣の首元を腕で締めてネックホールド。それが余りにも物凄い力で悶絶する剣。
「ぐっ……、くぅぅぅ!!!」
「キャハハハハ、バーカ捕まってやんのー♪」
「『切り札騎士』が聞いて呆れますね、単細胞で……オルァ!!!」
「ッッ!!!」
〔エース HP1000→800〕
兄のハサミを挟むのではなく、突く形で剣の腹部に強打させる! 妹の首締めに成す術無しの剣は反撃もカードでの応戦も出来ず悪戦苦闘。と、そこに窮地の救い手が!
――――バスッ!!
「キャッ!!」
〔シェルディ HP800→500〕
「……ふぅ、幾らハサミでも銃には勝てんだろう」
マグナムリボルバー顔負けの威力を持つ銃司の《ゼータマグナム》がシェルディのハサミの付け根に着弾し、緩んだ隙に剣はそれを潜り抜けて脱出。咳き込みむせながらも九死に一生を得た。
「馬鹿、近距離相手に刃で立ち向かう奴があるか」
「ヘッ、悪い悪い! あのハサミブラザーズの憎たらし面見てたら細切れにしたくなってさ!」
「それも構わんが……俺は一刻も早くあの下郎に風穴を開けてやりたい気分だ」
「…………?」
さり気ない会話の中で、何やら銃司からとてつもない殺気を感知した剣は、訳有と見込んでもう一度銃司に話し掛けた。
「待てや銃司。アイツらに何か因縁でもあんのか?」
「――――ブラックリストプレイヤー・ナンバー833」
「あ??」
「あのシザース兄妹、サザンクロスに雇われる前から曰く付きのプレイヤーキラーだ。アメイジングのユニットを使って無抵抗のプレイヤーを捕食させ、20人以上もユニットのエサにされた。その中には……俺の同胞も含んでいた」
「!!?」
何とこのシザース兄妹、かつてアメイジングの大会にて自分達が敗北したプレイヤーへの嫌がらせにゲームデータを盗もうとした所、発覚して揉めあった所で丸腰の相手にアメイジングのカードの武器で殺害した罪があった。
それを隠蔽する為に関わった人を次々と殺害、或いはユニットによって捕食していくうちに自制が効かなくなり、シザース兄妹は感情とモラルが欠如したサイコパス。
またはカニ型のユニットで人々を捕食していく事から、【カニバリズム】とWGCに侮蔑に皮肉られていたのであります。
「……仕方ないじゃ〜ん、あの有名な遊戯貴族の立海の極秘資料が欲しくてさ〜」
「それを立海のメイド達に見つかったから口封じにチョン切って喰っただけの話ですよ。だってそうでしょう? 強い者を喰らって強くなるのが、ゲーム戦士の性なんですから……!!!」
殺した時点で、人としてのボーダーラインを超えた者は絶対悪の烙印を押される世の常。ゲーム戦士の風上にも置けぬ狂乱者に剣も憤りの意が籠もる。
「……妙な気分やな。俺、久々にブッ殺してやりたい気分になった」
震える手で剣はカードを抜き取り、ブレスにスキャンしようとしたが……
「待て」
その手を阻んで止めたのは銃司。
「貴様の剣は殺める為に握るものではない。誰かを守る為に刃を振るうものだと、手に入れたオーブが導いたんじゃないのか」
「――!」
剣はハッとなって我に帰った。剣と龍牙との激突で手に入れた真っ赤な『ジャスティスオーブ』はゲーム戦士として、切り札騎士としての道を思い出させる『正義』の道標となった。
「……お前も同じオーブ持ってんだろ、銃司の握る銃は何の為にあるんだよ――?」
「俺か? 俺の銃は――――心の弱者を徹底的に撃ち殺す信念にある……!!」
その時、剣に振り向いた銃司の表情は眉間から額まで青筋で浮き上がり、血眼のガンを飛ばしていた。
彼は《ゼータマグナム》の撃鉄を落とし、6インチの銃口をシザース兄妹に向ける。
「――さぁ殺れ。この立海銃司を、喰えるものなら喰ってみろ――!!!!」
「……じゃ、お言葉に甘えて――!!」
シザース兄妹も戦々恐々の構えで今一度カードを引き、ブレスにスキャンした!
『ユニットカード、【クラストキャンサー】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<ユニットカード>
【クラストキャンサー】EG:⑤
AP:400 DP:800 AS:15
属性 青 ユニット/カニ
・能力:《必殺技》
『キャンサーアタック』AP:500
プレイヤーまたはユニット1体を合身させて、
それらを放出してダメージを与える。
◎――――――――――――――――――◎
オレンジの甲羅に身を纏ったカニ型ユニット、八本足の下半身に巨大ハサミを携えた人型の胴体を身に着けたカニ、《クラストキャンサー》。
すると、シザース兄妹の身体をその巨大ハサミでガッチリ掴んだかと思いきや、その腕でぐるぐると兄妹を振り回し始めた!!
「受けてみろ立海!! これがシザース兄妹最大の必殺技【キャンサーアタック】、放射ッッ!!!」
振り回すハサミが勢い良くシザース兄妹を放り投げ、銃司目掛けて突っ込む!!!
(この展開、どこぞの特撮とデジャヴってるが……、下郎共にはお似合いの始末。二の舞にさせてやるか――!)
何を思ったか銃司、避けも隠れもせずただカードを引き2枚同時にスキャンさせた!!
『ツールカード、【シェルショット】二重発動!!』
◎――――――――――――――――――◎
〈ツールカード〉
【シェルショット】EG:②
属性:赤/バスター
・効果:『銃』のカスタムツールカード
を装備している時、そのPPを+1にして、
500の射撃ダメージを与える。
◎――――――――――――――――――◎
《シェルショット》とは通常の弾よりも貫通に長けた徹甲弾の事。銃司は2枚同時召喚で2発、《ゼータマグナム》に装填して吹っ飛ぶシザース兄妹に銃を構えて発射した!!
――――BANG!! DOOOOOON!!!
凄まじい発射音に火柱を上げる《ゼータマグナム》。だがそれでもシザース兄妹の勢いは収まらず、そのまま2人の攻撃を銃司は諸に激突していった。
「クッ……うぅ……!!」
〔バスター HP1500→500〕
AP500を2人分のダメージで倍食らった銃司、昏倒する中で今度は間近にシザース兄妹のハサミが襲う!!
「これで貴方も、我々の御馳走になりますね……!!!」
不気味な笑みと共に迫る魔のハサミ。だがしかし、それよりも不敵に笑うのは銃司の方だった。
「クックククク……!! 馬鹿め、御馳走になるのは果たしてどっちかな?」
と意味深な言葉を残したその刹那!
バキィィイイイイン……!!!
シザース兄妹両者のカードスキャンブレスに亀裂が走り、それが全体に染まったが最期粉々に砕けてしまった!!!
〔キャンサー・シェルディ OVERKILL!!〕
「「なっ……??!」」
これにはシザース兄妹とて予想だにしなかった! 銃司の撃ち放った《シェルショット》に狙ったのはカードスキャンブレスのコア。
これを破壊するという事は、HPやデッキの有無に限らず強制敗北になる事と、一番危険な敗北を意味する。と言うのも……
『ブクブクブク……』
「デッキで使用した武器を含むカードの効果は消滅し、召喚したユニットは契約破棄と見なされる。そのユニットが凶暴極まりない雑食を敵にされたら、どうなるかな……?」
「「ッッッ!!!!??」」
銃司の仰る通り。アメイジングカードにおける『契約』を意味し、カードスキャンブレスの管理によってプレイヤーの配下として役割を果たす。
と言った側から《クラストキャンサー》がシザース兄妹を纏めてハサミで羽交い締めにし、そのまま捕食の体勢に入った。
「ひ……い、嫌だ、嫌だああああああああ!! 私達はまだ食われたくないいいいぃいぃぃいいぃぃいいいい!!!!!!」
アバターの装備も武器も無くしたシザース兄妹にもう同情の余地は無し。因果応報、捕食で隠した罪は骨や肉を噛み砕く音を立てて捕食で制裁した。
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ―――――!!!!!!!!!」」
「あのカニ、たい焼きは頭から喰らうタイプだな」
何を変な例えしてんですか銃司さん!!!!?
しかし一難去ってまた一難。二人を捕食しただけでは物足りないのか、《クラストキャンサー》はおかわり程度に今度は銃司目掛けて突っ込んでいく!
……だが、それもまた杞憂のものに終わった!!
「切札騎士剣武術、【一騎の陣】ッッ!!!!」
――――SLAAAAAAAAASH!!!!!
《クラストキャンサー》の背後を一刀両断。切れ目には美味しそうな蟹肉が垣間見える鮮やかな切れ味は、切札騎士剣武術の凄まじさ!!
「いつまでも銃司ばっかに良い所見せてられるかってんや!!!」
「……お見事」
▶▶▶ NEXT▽
――修羅なる戦い終えて、血痕とアリーナの砕けた残骸だけが残る戦場に虚しさ噛み締める剣と銃司の戦跡。
「……なぁ銃司。俺も殺意に駆られてたとはいえ、ホントに殺めて制裁すること無かったんちゃうか? 成敗くらいにしたるとか」
「言っただろ。あの下郎は修正不能なくらいに外道を尽くした。それに殺ったのはカニの方だ、あれくらいの制裁で丁度良い」
「せやけどさ……」
このとき剣は、この戦いの結末から葛藤のようなものが生まれた。
電脳異世界の中で生命の駆け引きは無いと思っていたゲームで、まさか本当にデスゲームのような死闘がまた繰り広げる事になるとは。
また近いうちに、シザース兄妹のようなサイコパスや狂気に駆られた者が現れ、仲間の前に阻んでいくのだろうと剣は不安を抱いたのでした。
(楽しむ為のゲームで命を奪い、それを楽しむ野郎がまた現れた時には……俺も銃司みたいに…………)
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




