【GAME16-1】断ち切れない悪夢!!
――皆様お待たせしました!!
ゲームワールドに眠る8つのオーブを探すプレイヤー達に吉報来たる!!
オーブを司り、真のプレイヤーに強者の証を魅せるべく戦うスピリットプレイヤーが、再びゲームワールドに現れようとしております!!
さぁさぁオーブの欲しい方は寄ってらっしゃい戦ってらっしゃい!!!
……しかしこのゲームは、プレイヤーの過去という名の鎖を破る新たな伝説の始まりでもあった……!!
その真実はこの先のゲートが知っています、早速開いて確かめに行きましょう!!!
それではご唱和下さい、『オープン・ザ・ゲート』!!!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
『お前……そんな奴だったとは思わなかったよ』
『そんななぁ、人の顔見てコロッコロ態度を変える奴なんか大嫌いやわ!!』
『絶交だ。二度とお前の顔なんか見たくねぇ』
『せいぜい高校はボッチで野垂れ死にでもしてろ!!』
『死ねよ』『消えろや』『ボケ』『クズ』『詐欺師』『灰になれ』『バカ』『恥晒し』『廃人の息子』『死ねや』『裏切り者』『鬼畜』『能無し』――――
『龍牙……テメェェェエエエエエエエエッッッッ!!!!!!!!!』
「――――――ハッ!!!?」
――――深淵の闇から引きずり込まれたような悪夢から、辛うじて這い上がり現世即ち平坦な寝床へと精神を呼び戻された。
彼の額から流れる滝のような汗。現実と幻想の区別が付いていない虚ろな眼。そして悪夢によって再び脳内にフラッシュバックする忌まわしき過去………
「…………まだ俺は、こんな過去も抜け出せねぇのかよぉ……!!」
――――その男、桐山剣。信頼も絆も崩れ落ちた過去に振り切れぬゲーム戦士――!!
▶▶▶ NEXT▽
――さて読者の皆様が生きる現代よりも遠からず、もしかしたら近い未来かもしれない『超次元ゲーム時代』。
ゲーム好きの為の時代にもなりますと、プレイヤーとしてそれぞれの強さを求める弱肉強食の世界であるから荒れ放題。
学力やキャリアも皆ゲームの良し悪しに統一させちゃって、今までまかり通った常識も崩れ去るばかり。
ましてや『ゲームワールド・オンライン』というVRMMO、即ち仮想の電脳空間を作っちゃって夢も希望も全てゲームに注ぎ込んだのですから。
全国津々浦々に群雄割拠なる【ゲーム戦士】と名付けられた英雄と名高きプレイヤー達との激しい戦いに突入する訳であります。
――言ってみれば桐山剣率いる【シャッフルオールスターズ】。立海銃司率いる【立海遊戯戦団】。そしてまだ知られざるゲームチームを率いし猛者たちが、それぞれの夢を乗せて志す新境地へと誘う、8つのオーブを探し競うサバイバルと化しております。
……えーところで、常に移りゆく時代の中でも秩序を乱さぬように統制させる為には、どうしても政治という概念が付き纏うもの。
いつ如何なる場合にも迅速に対応し、プレイヤー達を待ち受けるゲームの調整やイベントの管理をしていく運営が必要なのであります。
早い話がゲームワールドオンラインを提供し、この超次元ゲーム時代を統制させている管理組織団体【WGC (ワールド・ゲーム・コーポレーション)】の本格ではどうなっているか?
「マスター、『アドベンチャー・フォレスト』エリア付近にてスピリットプレイヤーの動きが確認されました。コードナンバーは【義】」
「……やはりスピリットプレイヤー自らが動いたか。『サザンクロス』が意味不明な行動を黙って見られないという訳か。宜しい早速オーブ獲得のビッグゲームの設定を急げ。リミットは一週間後、良いな」
「はっ……!」
――とまぁこのように、ゲームワールドに生きるNPCやスピリットプレイヤーの動きを観察したり、それに応じたイベントゲームやらGWクエストを発動させる管理者もWGCには存在する。人は彼らを【ゲームマスター】と呼びます。
このマスターの司令がスピリットプレイヤーの服従回路に反応し、それによってスピリットプレイヤーの動きが周囲のNPCに伝わっていく訳です。
スピリットプレイヤーによるオーブ獲得の為のビッグイベントの噂は、転送してきたプレイヤー達の耳にまで入り、それが掲示板やらSNSを通じてマスメディアに知られる前に全国に情報が入っていきます。
『スピリットプレイヤーがまた出たって!?』
『2個目のオーブが手に入るチャンスだって!!?』
『『『絶対ゲットしてやる!!!!』』』
……なんとまぁ、重要な情報は火事よりも伝わるのが早くて恐ろしいものですな。
そして勿論、例のギルドにもその情報が伝わっていたのでした――!
▶▶▶ NEXT▽
――こちらは大阪・梅田。プレイヤー達のアミューズメントという名のゲーム要塞『ギャラクシー』。
そうです、剣率いるシャッフルオールスターズが2個目のオーブを獲得せんと今日も今日とで特訓中。
剣の赤いPAS【ロングソード】の剣武術をマスターせんと猪突猛進にPASの剣を振るうが……今日は何やら絶不調のようで。
「……どうした剣? 今日はちょっとPASの雲行きが怪しい感じだな。何かあったのかい?」
「……んぁ!? あ、ゴメン槍ちゃん何つった? ボーッとしていて聞いてへんかった」
「いやだから、今日はいつもの剣じゃないって話! 何かあったのかい!?」
「ぁ……あぁ、別にどうって事ないよ。……で何が??」
(駄目だこりゃ……)
殺陣に付き合う槍一郎が呼びかけてもこの反応。何でも無いと言いながらも明らかに放心状態でいつもの覇気が見当たらない剣。
今朝の悪夢が相当響いたのか、PASも共鳴せず今の剣は鈍ら刀片手にボロの装備を纏った三流騎士と変わりなし。
そんな時、同じく付き合わしていたみのりが心配になって、代わりに剣に呼びかけた。
「ねぇ剣くん。もしかしてまた龍牙くんの事を思い出してたんでしょう?」
(ギクッ!?)
一瞬に見せた剣の図星をみのりは見逃さなかった。
「ほらやっぱし! 剣くんってば先週からずっとそうじゃない。龍牙くんに裏切られて他の友達に絶交された事が未練で悪夢として残っちゃってるのよ!」
「……んな事言ったってよぉ!! 今更アイツらは帰って来ねぇし、取り返しのつかねぇ事ってのが――」
「でも、龍牙くんとはまだ会えるんでしょ?」
例え剣が苛立とうとも焦ろうとも、言いたい事はズバッと言うのがみのりの強い所。それを突かれて剣はたじろぐ。
「……今更、あんな戦闘狂なんか何言っても救いようがねぇだろうが……」
「そうかしら? 私は違うと思うよ。説得じゃ駄目だって自分から決めつけるから出来ないんだよ。それとも、龍牙くんに会うのが怖いの?」
「んだと、みの……!」
図星を突かれまくる剣は頭に熱が入り、思わずみのりの胸ぐらを掴みかかる。しかし直ぐに良心の呵責を感じたのか、直ぐ様その掴みを解いた。
「……悪ぃみのり。カーっとなっちゃって……」
「私は平気。でもこれでカチンとなったって事は、剣くんは龍牙くんに会うのを恐れてるんだと私は思うの。過去に起きた事の後悔が募って、彼から逃げたがってる。……違う?」
「……あぁ、その通りだ。正直俺はアイツに会うのが怖い。あの殺意に満ちた顔を見てると、アイツのせいで誤解されて絶交した俺のダチの事が頭に浮かんで……あんときに違うって言えたら苦しまずに済んだのに……!!」
募る後悔に、反芻する苦い味。過去に苦しむ心にPASの波動は届かない。そんな剣にみのりはこう受け止めた。
「……剣くんはこの前、槍くんにPASで本音をぶつけたんでしょう? 今度は龍牙くんにもその事を思いっきりぶつけてみない? 『何で俺のダチを裏切ったんだー!』って!」
「だから、あの決闘バカが説得に通じる筈が――」
「それを決闘でやるのっ!! もうウジウジしてないで、今度は私と喧嘩しましょ!!!」
「…………はぁ!???」
みのりが思い付いた夫婦喧嘩……じゃなかった、親友同士の喧嘩の提案!
自分の怪我も顧みず剣に持ちかけたその真意は一体何でありましょうか?
(今日のみのりちゃん、やけに強いなぁ……)
全くその通り、私も槍一郎も話す隙なし。
そして剣とみのりの喧嘩カウンセリングは次回までのお預け。本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




