【GAME15-7】大森穂香・PAS7変化!!
――穂香の心の殻を破り、導き出した勇気がレミに伝わり会心の調合カード生み出した。
その効果はなんと、発動したプレイヤー即ち穂香のアバターを分け身とし、穂香が七人に分裂するというとんでもないカードであった!!
「いや〜、一発本番の思い付きで調合したけどこんな事になるとは……」
嘘ぉ!!? という事はこのカードは全てレミの勘で作ったってことでしょうか!? 改めてブラックボックス思考が恐ろしく感じる所ですが、そのカードの詳細を見てみましょう。
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<アクション・カード>
【レインボーディビジョン】EG:⑦
属性:レインボー(7属性)
・効果:このカードを発動したプレイヤーの
トークン(身代わり)を6体フィールドに出す。
そのトークンは現時点のHP数値をコピーされ、
AI機能によってオート操作で行動できる。
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「……フン! 何かと思えば出来損ないの残影を増やしただけ? 分身の術なんかでこの《テトライドキャノン》を突破出来ると思ってるのかしら〜!?」
「いいえ、これは私の魂の実体化した私自身! 影でも幻でもない、7つの魂で彩られた大森穂香なのです!!」
このカードで生み出した穂香の分身はトークンのようでトークンでない。穂香自身の意思によって遠隔に操作し、カード・プレイヤースキル・ましてやPASまでも発動する事が出来る分裂されたプレイヤーなのだ!
〔リーフ×7 HP1500〕
この通りプレイヤーが七人居る事を記すウィンドウが。これによって分裂体がユニットやツールカード扱いではなく、プレイヤーとして扱われているという証明になる。……しかし、我々や敵さんには少しだけ引っ掛かる事が。
「――ちょっと待ちなさいよ、じゃあ何なの? 7つの魂って、アンタはPASを7つ持ってるって事?? 冗談は巨乳だけにしときなさいよ!!」
「冗談ではありませんし巨乳は余計です!! 私のPASは皆さんのものとは一味違います。それを証明するためにレミちゃんの調合カードが最重要だったのです!!!」
(え、そうだったの!?)
すみません、作った本人は全く自覚が無いようです。
それはともかく、穂香の闘志はみるみるとみなぎっていく!
「私のPASの真髄を、貴方の眼でしかとお魅せしましょう!!」
「「「「「「「PAS発動!! 『マジックワンド』!!!」」」」」」」
――いざとなったら魂を込めろ! 穂香のデカイ胸の奥に秘めたる魂の形、『魔法杖』のPASに緑の波動がほとばし……いや、ちょっと待った!!
緑だけではなく、赤・青・黄・桃・橙・紫と、虹色の如し七色のPASの波動が七人の穂香各々に煌めいた!!!
「なんですって!!? PASの色が7つ……ありえない、プレイヤーは皆一つの魂に一つの色でしか持てないはずなのに何故七色も……!? アンタ化け物なの!!?」
「化け物……第三者が言うならきっとそうなのでしょう。元は私はPASの研究に使われた実験体、即ち“操り人形”。しかし私のこのPASは亡き父と母、そしてゲームによって消息を絶った6人の兄弟の遺伝子によって作られた、【家族の証】なのです!!!」
――そう、今の時点で大森家として生き残っているのは大森穂香ただ一人。
彼女が産まれる18年前、大森家の父・大森賢士朗はプレイヤーの魂PASと、ゲームワールドのエリア外に存在する『超次元空間』の研究に没頭していた。
強豪プレイヤー家族として名高い大森家は6人もの兄弟と母も超次元空間に赴き調査に協力するなど家族の絆も堅く幸せな家庭を築いてきた。
……だが、超次元空間の調査の最中に、何らかの事故によって兄弟6人全員が消息不明になってしまう。その心労から母も次第に衰弱し、父はPASの暴走がエスカレートし精神崩壊寸前まで陥った。
そしてこの時既に母の腹の中には7人目の子供、穂香の命を宿していた。
最期に事切れる前にどうしてもこの子だけは生かしたいと考えた父と母は、研究の全てを大森家の未来である穂香に託すために、亡き兄弟と父・母の遺伝子をPASの器である心臓部付近に移植させたという。
つまり穂香のPASは大森家最後の誇り。家族の生き様を残す証を7色の魔力で実現した、ゲーム戦士の力を宿した遺伝子能力【GNA】が可能にした力なのだ!!
「……下らない、家族の絆もだとか仲良しこよしの友情だとか……!! 勝つ事が全てのゲームで女々しい世迷言が通じるのでも――――」
「大好きな友達と、家族の繋がりを、バカにしないでッッッ!!!!!」
穂香に代わって私がここに宣言しよう!
――強大なる【絆】という力を前に、最終兵器など恐れるに足らず!!!!
逆鱗に触れた怒りの『赤』は灼熱となりて敵の冷え切った心身を熱し、その隙を見切った冷静なる『青』は最終兵器を凍てつかせ発射を封じる。
「「クソォォオオ!!!」」
兵器を封じられヤケになった側近のしたっぱ二人は特攻しようとしたところに稲妻の槍貫く、はじける『黄』の光速攻撃、相手が怯んだ所で傷ついたレミを回復技で癒やす『桃』の施し。
「ひ、う……うぁぁああああああ!!!!」
〔ジーナの側近 HP0 KNOCKOUT!〕
武器も同胞も消えた大将・イプシロンのジーナ、丸腰状態で悪あがきに捨て身攻撃を仕掛けるも、金縛りで全身を硬直させた禍々しき『紫』。
まさしくこの上なき好機、それを見計らって『橙』が本物の穂香の《マジェスティック》に太陽の力を与えていく……
もうお分かりでしょうか。最後の止めは本家本元ナチュラルグリーン、母なる大地の【緑】!!
これぞ7つの色で奏でられし七人の穂香の虹色七重奏。もはやこの大連撃に我々がゲームとして状況を語る必要は要らない。
我々はただ、【絆】の力を肌身に持って感じるのみ……!!
「レミちゃんの調合と、私の家族が残した7色のPASの力、受けてみなさいッッ!!!!」
《マジェスティック》の杖から放つ壮大なる大地の力、超特大の新緑弾となりて今解き放つ!!
「はぁァァァァああああああああああ!!!!!!!!!」
打ち放たれしグリーン・オブ・ワールド、全体が緑に包まれる幻想にも似た光景は陳腐な闇をも包み込んだ。
その刹那、《テトライドキャノン》は粉々に粉砕されたのを見届けた後、ジーナは衝撃の成すがままに吹き飛ばされるだけ。
「いやああああああああああああ〜〜〜!!!!!」
これで敵も全滅かと思いきや、吹き飛ぶ際に何やらプレイギアを操作し転送準備に入ったジーナ。
「く……覚えてらっしゃい憎ったらしい小娘ども、我々の準備が出来次第……真っ先に殺してやる!!!!」
と捨て台詞を置土産にジーナは転送移動で攻撃を逃れ、戦線から離脱した。
〔ジーナ ESCAPE!〕
逃走とみなしたウィンドウが流れ、穂香の6人の分裂体は音もなく消滅した。ようやくパズルファクトリーにて平穏が取り戻された――!
「やった〜!!! 穂香ちゃん大逆転だーーーー!!!!」
レミの歓喜に振り向き、清らかな笑顔をニコリと魅せる穂香。すると大技で体力を使い果たした穂香は事切れたかのようにその場でガクッと膝を落とし、今にも気絶直前と言わんばかりに上体を地面に倒す。
「あっ! 危ない!!」
叩きつけられる寸前、レミは朽ち果てた穂香を間一髪すくい上げてそのままムギューっと二人は抱擁し合う。
「……レミ……ちゃん……」
「あんな凄い技出したから疲れちゃったんだね穂香ちゃん。……ねぇ、休む前に聞かせて。何であたしをちゃん呼びしようって思ったの?」
「……私、決めたんです。レミちゃんもみのりちゃんも、剣さんや皆も、大好きな人の前で遠慮はしない。素直な穂香でいたいって、心の底から思うようになったんです……!」
「…………あたし、もっと穂香ちゃんの事が好きになっちゃったかも。だって今の穂香ちゃんの身体、とっても温かいんだもん♡」
「レミちゃんの身体も暖かくて、とても気持ちいいですよ♡ ――――皆、大好きです……!!」
強風吹き荒れるパズル工場の修羅の跡先、二人の少女の友情は抱擁交わして夢見心地、心と心を触れ合い確かめあった……!
▶▶▶ HONOKA OHMORI WIN!▽




