【GAME14-3】決戦は十六夜の月明りで!!
――TIPS――
【GWクエスト】は意思を持ったAI機能を用いたゲームワールドの住民、或いはプレイヤー自身がクエストを要請する事によって依頼されるもの。
つまり一度プレイヤーの誰かがそのクエストを受注し、クリアしたら二度と現れないものや、何度も募集するクエストもあるため、積極的に受注して経験値やアイテム稼ぎに役立ってほしい。
※ただし報酬内容はランダムに変容する場合もあります。
――アドベンチャー・フォレストの大樹海、その大自然の聖域を抜き抜けて我が物顔で聳え立つ『雷鳴ツヨシ城』。その城の上をちらほらと蝿のように飛び回るは小型の監視ドローン。
何処ぞの曲者かと城の反対側の山に我々は目を凝らして見れば……あ、居た! 桐山剣率いるシャッフルオールスターズ!!
今回は剣・槍一郎・倭刀にみのりの四人が出陣した。そしてその横にいる緑装束に緑マフラーの男!
――彼こそは、このツヨシ城の家宝を頂こうとする大泥棒『怪盗ハリアー』だ!!
「どうでぇ? 俺っちの仲間が開発した透視サーモグラフィ搭載の小型ドローン。内部の隅々まで良く見えてるだろう?」
「あぁすげぇぜ、流石は怪盗ハリアー。古風な盗人みたいな格好してるが妙にハイテクで驚いたよ」
「てやんでぃ! 俺っちは変な身なりしようとも、心は綺麗でいるのが信条で通ってるハリアー様だ。道具も洒落てなきゃこんな稼業をやってられるか」
なんとも江戸っ子堅気な怪盗も居たんですね〜。しかしどうしてツヨシ城のお宝カードを狙ってるんで?
「俺っちァな、この森の風紀も乱して城の中で上から見下げてるあのツヨシとかいうバカ殿に、一泡吹かしてやりてぇんだ! 盗みはすれども非道はせず、位の高さ引っ掲げて奪い取る輩から盗みとって、依頼を受け負ってくれたアンタらにあの城のカードを分け与えてやりてぇのよ!!」
「へぇ〜、アンタもそれなしの正義ってのがあるんやな」
「よせやい! 怪盗が正義名乗るのもおこがましいってもんだろう。それにそんな怪盗の依頼引き受けたアンタらも同類だがな。ハハハハハ!!」
盗んで忍ぶ怪盗が豪放磊落にカンラカンラと笑う。人は見かけで善と悪は決められない。城の宝は他者から強奪したものを私物化する殿様、それを取り戻そうとする怪盗。何処かあべこべで筋縄いかずなのが人間の性なのかも。
「それでどうよ? 城の中調べてみて突破口は掴めたかい?」
剣が操作したドローンのマップデータを各々のプレイギアに読み込んで熟読しては見たものの、今ひとつ剣たち四人に手応えは無し。
「……これは厳しいな。庭園がプレイヤーだらけじゃないか。それに割り増した程度に伊火様のグループも加わってる」と槍一郎。
「外からは石垣で思うように入れねぇで、建物の中入ればアスレチックの二の腕地獄っか!? ふざけてらァ」と倭刀。
「おまけにカードの効果も受け付けない特殊鉄板で中も外も囲まれてるし……」とみのり。
「そして不用心に入れば電流・剣山トラップ尽くし! 良く出来てるよツヨシ城め!!」と最後に剣、各々の感想込みで心境を語った。
「こんな高難度の城を対策無しでやるのもどうかと思いますぜ剣さん? クリア出来る保証はあるんで?」
「『クリアすればレアカード10枚貰えるなんてツイてるぜ!!』な〜んて躍起になってたのはどいつだったっけ? 今更諦めるって事はねぇよな、倭刀くんよ?」
と剣への不安を吐こうとしたが、逆に言い返された倭刀。益々不機嫌になっちゃった。
「クソッ!! あの服部のあんちゃんみたいなお邪魔虫さえ居なければ、こんなゲームちょいちょいっと勝てんのによぉ!!!」
倭刀のマップ画像には、服部のあんちゃんが舌出して挑発している写真が偶然映っていた。
そんなこんなで良い提案が浮かばず皆ウンウン唸って刻だけ過ぎて、どうしたもんかと思った矢先に何か名案が閃いたようだ。みのりが発端であった。
「私、ちょっと酷だろうけどクリア出来る良い方法思いついちゃった!」
「酷って何がいな」
「―――剣くんが服部さんに倒されれば良いのよ!」
「え、俺が!??」
このみのりの妙案に目の玉丸くして驚いたのは剣本人でした。
「そう! だって服部さんも剣くんを倒す為にこのクエストを受けたんだと思うの。だから剣くんが囮になってくれればいけると思って!」
「あ、そうか、なる程! あんちゃんは剣にしか興味無いからね。事が終わればクエスト終了で退散するだろうし」
槍一郎とこの提案にニヤニヤしながら同調した。
「その隙を狙ってもう一回城に攻める。ってのが方法だけど、どうかな剣くん……?」
みのりさん、貴方も親友とはいえお人が悪い! 敵の興味を惹かせて仲間を売るなんて! これは剣とて許さないでしょう、が?
「……へへへッ! なる程、俺一人を除け者扱いってか? 悪くねぇアイデアじゃんかみのり!! ……でもその心配は無さそうだぜ」
「ん?」
意外とみのりの案には寛容な様子の剣でありましたが、代わりに剣は先程ドローンで撮影した俯瞰の城の画像を皆に見せた。
「……あれ、何か庭園の地面に大きな穴が空いてるね」
庭園の大きな穴、これは今さっき服部が落ちた穴ボコで本当は……あ、いやいやそこからは伏せておきましょう。
「その画像の穴と、プレイギアにインプットしたマップと照らし合わせてみな」
他の三人はプレイギアで画像と同じく俯瞰状態の位置でマップとリンクさせたみた所、倭刀はある事に気づいたのでした。
「……あれ、この穴を始点に城の天守閣の中まで続いてる管がマップに書かれてんな――?」
「そう、透視させるドローンが記した目に見えないルート!」
「――――隠し通路か!!」
「槍ちゃん御名答! よく見てみなよ、この穴は地下から潜り込んどいて城の柱を上昇して殿の部屋まで直接辿り着く仕組みになってる。ひょっとするとこれなら、城の罠も完全スルーして……」
「そっか!! それを利用すれば簡単にクリアでき」
「…………ると、考えるだろ?」
「「「え???」」」
倭刀の歓喜をも遮ってまたまた議論を醸し出す剣。終始攻略の髄まで警戒するのがクレバーなやり方なのでしょうか。
「彼処は止めた方が良いな。この穴は俺ら侵入者への甘い話に漬け込む罠にも成りかねない。それに服部のあんちゃんも、これに気づかない筈が無いだろ?」
「どうかなぁ? あのあんちゃん、見たまんまの単細胞に見えますけどね」
剣と倭刀、服部との付き合い次第で見方も軽視か重視か、貫禄というものが分かりやすく分かれた。
「――オイオイ、仲間同士で話してるとこ悪いが、俺っちにも混ぜてくれよ。結局ツヨシ城に攻め込むのは何時にするんだい?」
怪盗ハリアーが痺れを切らして輪に入り込む。依頼人そっちのけは流石に勘弁したいらしい。
「すんませんねハリアーさん! せやな……じゃ、今から一時間後、午後6時キッカリに乗り込む予定でいくぜ!」
「……6時って事は、十六夜の月が出る頃だな。よし分かった! それまで俺っちも準備するから、妙案とやらをじっくり考えとけよ!!」
とハリアーは早速高い山々を軽々と越えて、彼なりの用事を済ませにこの場から去った。そしてシャッフルの四人も。
「……それで、僕らはどうするんだい剣?」
「俺たちは侵入するためのデッキ編成をする。槍ちゃんは家来プレイヤーを攻めて、倭刀は天守閣の障害物を突破する目的で構築を急いで。時間が無いから急いでな!」
「急がせてるのは剣さんでしょ? やれやれ……」
槍一郎と倭刀は若干不満を垂らしながらも各々のカードデッキの構築に急いだ。そして残った剣とみのりはと言うと……?
「ねぇねぇ、私はどうしたら良いのかな剣くん?」
「みのりは槍ちゃんと倭刀のサポートを頼む。それと……ちょっと1枚だけカードを貸して欲しいんよ。ほらレミがカードを混ぜ込んだ作った特殊なヤツ」
「レミちゃんの『調合術』で作ったカード? 良いけど何に使うの?」
とみのりはプレイギアに保管したカードホルダーからレミの【アメイジング調合術】によってカードを壷でシェイクして作られたカードを数枚剣に渡した。
「……あったあった! これが必要だったんだよ!! 今回の俺の切り札!!!」
「ん〜……??」
高揚する剣と、首を傾げるみのり。このカード1枚で勝利をもたらすカードとは果たして何か?
――今宵は十六夜、妖しい満月から一日経った既望の光。
そんな月光に照らされて向かうは難攻不落ツヨシ城! さぁさシャッフルと伊火様の宝取り合戦、どうなります事やら!! 本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




