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蒼空の連合艦隊  作者: 909
第二次世界大戦~第一幕 対ソ戦~
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第五五話「日本海軍の砲術の権威、ソ連戦艦の模型相手に熟考ス」

-日本帝国の旧史における敗北の一因に、電探などの電子装備の研究の遅れがあった。世界に誇るべき技術である、八木アンテナの開発国でありながらそれを軽視し、戦前の時に小規模な研究に留めたのが致命的となった。だが、新史では大英帝国の後盾を得た事により関連技術水準が飛躍的に向上。欧米に比しても遜色ない性能の電探を手にするに至った。1944年時には機上レーダーの開発に成功しており、閃電や陣風などの新鋭機は標準装備となっており、その優位が日本の空戦での1944年以後の勝利を支えていた。それは艦船にしても同様であり、主力戦艦たる大和型戦艦、雲龍型や翔鶴型空母などに最優先で配備されており、対ソ艦隊決戦に備えていた。


―連合艦隊旗艦「甲斐」(大和型戦艦三番艦) 艦橋


「いよいよソ連との艦隊決戦が近いな、山口君」

「ハッ。対米戦の予行演習にはなりましょうな」

「ソビエツキー・ソユーズか。ソ連に空母がなくってよかったよ。これで大砲屋の連中を満足させられる」


山本五十六は航空畑で活躍しているため、大艦巨砲主義に対しては懐疑的である。そのため、砲術畑の人間を「大砲屋」といって揶揄し、また大和型戦艦や超大和型戦艦の価値は彼自身としては、この通りであった。


-「戦争抑止力兼、地上目標への砲台、対米新鋭戦艦へのカウンターパート」-


少なくとも山本五十六は戦艦の価値をそう考えている。だが、自身も海軍軍人である故に`ユトランド沖海戦のよう、大戦艦同士が正面から激突しあう大砲撃戦を戦ってみたい`という、軍人以前に、海の男としての願望がある。彼が新兵であった日露戦争当時に垣間見た「`先輩達`のように、大海戦を戦ってみたい」という夢が。しかし、軍政畑を歩んだ山本五十六は自身に戦略家としての才覚は全く無いと痛覚しており、旧史で戦後に祀り上げられた`名将`という評判に自嘲混じりに落胆。そこで遥に頼んで参謀長を日本軍の次代を担うエースである「山口多聞」を推薦してもらった。山本はソ連との艦隊決戦が起こった暁には戦術的判断は山口多聞に一任し、自身は戦略的判断に専念するという腹積もりであり、山口もそれは了承済みであった。


「ですな。猪口君がソビエツキー級に対する攻略法を練っておりますが、もうじき判断が出るでしょう」


ここで山口多聞が言う「猪口」とは史実で戦艦武蔵最後の艦長であった「猪口敏平」中将。砲術の権威であり、海外にも名が知れ渡っている「砲術の玄人」。彼はこの歴史においては戦艦甲斐の艤装委員長であり、そのまま初代艦長に着任している。彼は旧史の自らの無念を晴らし、砲術の底力を見せるべくソ連戦艦の攻略法を艦長としての職務の合間に練るという生活を送っていた。

この時間は彼は休憩時間であり、仮眠を取った後に遥がフィンランド派遣前に手渡しておいた旧史2013年で市販されたソビエツキー・ソユーズのスケールモデル(なんでも仮想艦シリーズというお題で市販されたものらしい。彼女曰くいくつかの教科書をわざと忘れ、その開いたスペースに入れていたとのこと)を組み立て、その攻略法を探っていた。


「ううむ……バイタルパート部は以前の大和型戦艦に迫る装甲厚か。砲術長、一式徹甲弾で貫徹する自信はあるかね」

「バイタルパートの装甲がこれ程となると51cm砲でも10発以上当てないと戦闘力を半減させられませんね」

「従来の常識では40cm砲で7発、46cmで5発当てれば戦闘力半減可とされたが……改めんといかんぞこれは」


敵国の新鋭戦艦は米国のモンタナ級などでも明らかだが、重装甲となっている。ソ連の場合でも、カタログスペックをフルに発揮すれば大和型戦艦の46cm砲搭載時に迫る防御力を持つ。これは日本砲術界では重大な問題として見られていた。50口径砲を搭載して貫通力を強化してもいいのだが、日本の工業技術水準の問題に起因する、砲塔が故障するリスクの確率を天秤にかけ、結局、51cm砲への強化の際も安全牌の45口径砲で妥協したという経緯がある。その妥協は思わぬ悩みとなって現れた。日本海軍は貫徹力強化に血眼となっているが、未だそれは形となっていない。成形炸薬弾はまだ試作前であるし、装弾筒付徹甲弾に至ってはまだまだ基礎研究の域を出ないので、砲術関係者はこうした創意工夫で技術的劣位を補おうとしているのである。


日本が使用してきた従来型の徹甲弾で敵艦の司令塔の425mmに及ぶ装甲をぶち抜けるのか?彼等は模型相手に悪戦苦闘していた。欧米列強と対等の性能を持つレーダーという武器を得たもの、砲関係のハード面が艦のソフト面の進化に追いつかないという思わぬ事態が日本海軍を悩ませていた。その解決は第2次日本海海戦に間に合うのか。それは国内の官民問わずのあらゆる軍需産業の双肩にかかっていた。



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