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蒼空の連合艦隊  作者: 909
第二次世界大戦~第一幕 対ソ戦~
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第五二話「豹戦車、日本軍に制式採用される」

-フィンランドに新たな高射砲が配備された。それは史実においては日本本土防空に使用されたB-29 スーパーフォートレス迎撃用の「五式十五糎高射砲」である。これは旧史では二門しか作れず、本土防空網の強化に影響を与える事はなかったはずの砲である。だが、この新史では高性能レーダーの自国生産が可能となり、設計図も予め`用意`されていた為、旧史とそんなに変わらぬ開発開始日時であったのにも関わらず、短期間での制作に成功。1944年の2月下旬頃にはそれなりの数を本土に配備することに成功。10門余りがヘルシンキに部品で運ばれてきて、現地で組み立てられていた。全てはボーイングスキーに対抗するため。高高度性能が高い雷電や陣風、閃電を順次配備しつつも防空網の整備も進めていった。重要拠点を中心に対空用途での高射砲を旧式の八八式7.5cm野戦高射砲や九九式八糎高射砲の更新のために三式12cm高射砲や五式十五糎高射砲を量産する一方で、余剰の旧式砲は対戦車砲に転用されていった。駐退機の改良が施され、新鋭の四式中戦車の配備までの繋ぎとして、前面で戦う豹戦車(ドイツ製のパンター戦車の事。陸軍現地部隊は三式中戦車の損耗に耐え切れず、とうとう四式までの繋ぎに、現地部隊にドイツのⅤ号戦車を貸与してもらうように中央に要請。陸軍中央はさらに外務省を通してナチス・ドイツへ要請。ヒトラーも日本には何かと恩があるので有償で提供。陸軍は便宜上、`豹戦車`の名で制式採用。ダイムラー・ベンツとMAN社は予め戦前に日本に設けていた工場をパンサーの保守部品製造に回し、そこで製造された部品を船で前線に運ぶ方法で稼働率を保っていた)の支援に旧式の高射砲を転用するというのは日本軍の対戦車砲開発の遅れをも示していた。当のドイツ本国では既にⅣ号戦車長砲身型からパンターへの更新が逐次開始されており、他国への貸与で実戦テストをやってしまおうというヒトラーと独陸軍の思惑が見え隠れする)の支援用として転用が開始されていた。


「まさか日の丸を掲げたパンターを見ることになるとは……世の中わからんな」


遥は参謀職についているので、陸軍前線の視察にも駆り出されていた。そこで目にしたのはドイツ軍所属のものと見分けをつけるために小さく日の丸が書かれたⅤ号戦車の姿があった。ドイツ本国では既にF型の更なる進化系たる`Ⅱ型`が開発中であるためか、現有最新であるもの、相対的に古くなったタイプを寄越したそうである。最もパンターF型の実戦運用自体はこの日本軍が初めてのケースなので、運用上の問題点をドイツに通達しなければならないという難点がある。遥もこのケースまでは考えつかなかったようで、苦笑いを浮かべている。


「参謀、この豹戦車の生存率は三式より格段に優れています。さすがはドイツ製ですよ」

「ドイツの戦車技術は世界に冠たるものがある。帝国も見習う所があるが、時にはとんでもないこと考えるからなドイツ野郎共は」

「どういうことです?」

「例のラーテだよ。あれを本気で作ろうとしてんだぜ総統閣下。70年後の最新鋭MBTの10式戦車だって精々120ミリ砲が限界だっての」


遥はドイツに提供されたF情報の中に旧史で第三帝国が夢見た、超が三個ついてもまだ余るほどの超巨大戦車の情報が混じっていて、それを本気で開発計画を実行してしまった総統閣下に突っ込みたい気持ちだった。まあもしできればギネスブックに載るだろうが。ギネスブックの創刊は旧史では戦後のことだが、大和型戦艦が一般公開されたこの次元では早まる可能性は高い。(連合国の間では戦艦や空母の大きさを張り合う子供じみた事が政治家達の間で行われており、一般人もそのような事を調べる可能性は大いにある)パンターを手に入れた事で戦車部隊の士気は立て直ったもの、総統閣下の夢を加速させてしまうという副次効果を上げてしまった。ヒトラーの野望はどういう形で叶うのか。それはそれで気になるが。


「戦況はどうか」

「はっ。現在はT-34-85を豹戦車で迎え撃つ一方、ホリで重戦車を撃滅するのがもっぱらの日課です。三式は改でなければもはや一線任務には耐えられません」

「そうか。その結果があの山だな」

「ええ。三式の初期型の残骸は全てあそこに集められています」


損失した三式中戦車「チヌ」の残骸が乱雑に積み重ねられている場所に遥は目をやる。酷いもので、砲塔がぶっ飛んだ上に車体がへしゃげているもの、砲塔の基部しか再利用できない損傷を負ったもの……市街戦で放棄されたのを後で回収したものだ。それらは使える部品を残存車両の保守用に取られた後は廃棄される。前史と異なり大国のバックアップがついているので兵器には不自由しないからで、他国製戦車なども躊躇なく使う姿勢が出ていた。2月現在では三式に代わり豹戦車パンターが一線の主力として運用され、三式は改型が運用されているにすぎない。航空兵器がスムーズに最新機種を受領できているのとは対照的である。ホリもさらなる改良型が模索されており、120ミリ砲の搭載が検討されているとの事だが、それにはソ連との開発競争が背景にある。


「例のIS-3の登場が早まることを危惧してる陸軍上層部はホリの量産車が戦果を挙げたその日にホリⅡ計画を立ち上げたっていうが……アメちゃんはどう出るかな」

「どうでしょうね。M4もあまり生産されていないと言うんでしょう?」

「ああ。だが、計画を変更していくことも考えられるからな……」


連合国とソ連との装甲戦闘車両の開発競争は加速している。米軍もその徴候は掴んでいるだろう。だが、米陸軍首脳はM4を逐次配備開始しているだけであるとの事だが、遥の兵器開発に関する危惧は的中していた。三式中戦車を装備、運用できている事だけは史実より遙かにマシなのだが、それでも高性能化するソ連製戦車には性能不足であり、飛躍的に性能が上がった四式中戦車の登場とⅤ号戦車の大規模導入が望まれた。


















-米国 


「T25E1、あるいはT26E3を即刻制式採用すべきである!!これは日本との戦争に必要なものである」


…と口から唾を飛ばす勢いで陸軍高官らに力説するはジェイコブ・デヴァーズ中将。彼は史実では装甲軍司令官として活躍した将官で、M26の制式化を唱えた男。彼はソ連に潜り込んでいたCIAが入手した五式砲戦車「ホリ」の写真を手に力説する。米国では戦争に登場したばかりのホリは日本の新鋭重戦車(実際は自走砲に近い砲戦車なのだが)として誤認されており、その対策の一環で強力無比な重戦車の試作が認められたが、M3を経て生み出された本命のM4に絶大な信頼を寄せる上層部の無理解で制式採用には至っていなかった。だが、ソ連軍重戦車を撃破できると伝え聞く火力に脅威を抱く彼はM4を遙かに凌ぐ重戦車の採用を叫んだ。だが、対日戦の開戦が現実では無いと侮る上層部はM4の量産で事足りるとし、彼の提案を聞き入れなかった。


「SHIT!!あんたらは馬鹿だ!!JAPがあのような重戦車を手に入れているというのに、なんら対策を……!!」

「彼の提案は最もだ」

「アイク」

「アイゼンハワー閣下」


憤る彼だが、彼の前に強力な援軍が現れる。アメリカきっての名将「ドワイト・アイゼンハワー」である。アイゼンハワーは独自に日本の装甲戦闘車両の戦闘力を調査させ、入手した三式中戦車の性能資料を目にするなり、同車を装甲厚を除く性能はM4に十分抗し得ると判断。重戦車の導入を痛感、彼の後援を買って出た。アイゼンハワーの理解もあって、この会議はT25E1、あるいはT26E3の制式採用を本格的に検討するという結果で終わった。


だが、彼等に思わぬ敵が立ち塞がる。それは同じ陸軍内の将官の横槍であった。彼らは米軍古来の戦車教義を盲信するあまり、程よい性能を持つM4に絶大なる信頼を寄せ、「M4こそが最高であり、重戦車の導入は時期早々である」とまで吹聴する。それに憤慨するデヴァーズ中将は兵器局長を抱え込もうと裏工作を始め、このままではいざ日本と戦争になれば一方的に蹂躙されるのがオチだとばかりにアイゼンハワー将軍の後援のもとに上層部へ懸命に働きかけ始める。それほどまでに五式砲戦車「ホリ」はその脅威を米軍に与えていたのだ。




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