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蒼空の連合艦隊  作者: 909
第二次世界大戦~第一幕 対ソ戦~
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第五一話「航空屋達の正と過ち」

戦闘機無用論の消滅に触れます。

-日本海軍戦闘機搭乗員は大養成が行われていた。これはF情報により源田実らの提唱していた「戦闘機無用論」が机上の空論であった事が史実のあ号作戦と台湾沖航空戦などの航空決戦による大敗北の事実の記録で、源田らの一派の言うことを鵜呑みにし、戦闘機搭乗員育成を軽視するとどうなるか。その全てが判明すると、源田実大佐とその一派は軍内での求心力を急激に失い、代わりに対立していた柴田武雄大佐らがその実権を握ったためである。矢次に新型機が開発されていった背景にはF情報で彼が源田が史実で握るはずの立場になったからでなった。


「いい気味だな源田。報いだよこれはな。343空や第一航空艦隊の死んだ将兵達の怨念がそうさせたのだ」

「柴田……貴様が……!!あの小娘如きに誑かせられおって!」

「フン。山本閣下の前でその言葉が言えるのか」


2人は源田実宅で殴り合いをしていた。源田は着々と`海軍で一番航空機を理解した男`としての地位を築きあげ、F情報がなければ今頃は第一航空艦隊の参謀にでも推挙されていたであろう立場からF情報によって一気に日陰者に追いやられた事への恨みで柴田を殴った。彼にとって柴田は政敵であり、「機体の性能差など精神論でどうにもなる」と日頃から吹聴していた。それが旧史大東亜戦争後期の連続する大敗北と新型機開発の混乱という事実により覆され、更に`F情報を活用して戦争を勝ち抜く`と決めた中央の政治的思惑で一時は予備役に追いやられようとしたが、F情報に懐疑的な擁護者らの後援で政治的発言権を持たぬ閉職へ追いやられるに留まった。しかし彼は我慢出来なかった。エリートコースを歩んでいた自分が左遷させられた事を受け入れられなかった。それが源田実の人間としての限界であった。


対照的に柴田武雄はF情報で一気に少数派から海軍航空の大家的立場へ躍進し、九試単座戦闘機開発時以来、持ちあわせてきた持論の通りに次世代新型機開発を矢次に促進させた。そのため日本軍の機体性能は英国・ドイツなどの先進国からの技術導入なども相まって開戦時より飛躍的に進歩し、1944年には史実での大戦末期レベルの高性能機が第一線機として配備され始めるに至った。彼はこの功績もあって第一航空艦隊参謀に推挙され、1944年時には着任していた。この立場の違いは2人の対立を更に促進させると同時に、政治的に力を持つ遥の行なった事の代償もまた存在する事の現れでもあった。


「餞別だ。精々旧史の自分自身を悔いるがいい」


源田のキン◯マに思い切り蹴りを加え、悶絶させると柴田は餞別代わりに旧史の書物を与える。それは自らの部下であった男であり、旧史では源田の部下にもなった坂井三郎中尉の戦後の書と、「曽根嘉年」三菱重工業設計副主任のメモをまとめた本であったという。

実際に柴田の主張は正しく、新型機開発が促進されたおかげで日本軍は高性能化が進むソ連機に対抗することができた。その成果で生み出された陣風や疾風の比較的早期の量産実現はその象徴であった。










-フィンランド


「凄いですねこの陣風は」

「ああ。川西の自信作だからな、こいつは」


陣風は川西航空機初の制空戦闘機であり、実戦での兵士たちの要求に沿った性能を備えていた。卓越した速度性能、`ホ5`6門の大火力、零戦二二型より遥かに頑丈な機体構造と防弾装備、整備がより簡単になったエンジン。無線機も零戦各型よりも改善された。それは編隊空戦が主流となった今時大戦の時流に適合していた。陣風は熟練搭乗員へ優先的に引き渡され、猛威を振るい、今ではソ連に「ゼロと`ニシキ`に代わる新型機現る」の恐怖を抱かせ始めている。川西航空機の努力は確かに実ったのだ。最高の形で。兵たちの期待は必然的に川西航空機の次なる作である、甲戦と乙戦、両方の任務に適応可能な紫電改へ集まる。陣風の予想を遥かに超える高性能は兵たちの川西航空機への懐疑心と、流布されていた「川西航空機は飛行艇しか能のないメーカー」の風評を吹き飛ばしたのである。


「航空機は問題ないし、安泰なんだが……戦車がなぁ」

「戦車は三式中戦車が旧型になったからなぁ……今はパンターで場をつないでるが、早く四式中戦車が欲しいとか言ってるぜ」


航空兵達は戦車兵達の悲鳴に同情していた。三式は装甲がT-34の新型の砲撃には耐えられず、マイナーチェンジを重ねたり、徹底した偽装・隠蔽などを施してようやく戦える程度な事実に戦車兵達は心労を強いられている。一刻も早い新式中戦車の登場を切望している戦車兵達の願いに答えるべく、三菱重工業は四式中戦車の開発を急ぎ、なんとか実用化の目処はたったもの、量産態勢の確立と運ぶのに必要なインフラの整備や新型輸送船の完成などの輸送体制の成立を考えると、どう早く見積もっても今年の厳冬以降になる見込みである。フィンランド派遣軍は日々、戦車の数がすり減らされていく事に危機感を抱き、遂に同地に展開する同盟軍のドイツ軍からパンター戦車(この時期の最新型のF型)を30両ほど借用して損耗激しい三式の初期型の代わりとして運用し始めた事は航空兵の間では有名だった。


「奴さんに四式中戦車の配備は後半年以上はかかる見込みだといっておこうか?」

「参謀、それはやめといたほうが……それいったら戦車兵の奴らが`ムンクの叫び`になっちまいますぜ」


遥を制止する太田敏夫。戦車兵たちにとっての心の支えを折ってしまえば戦車兵達の戦意はたちまち喪失してしまう。ムンクの叫びが再現されかねないとの大田の言葉に遥は行動を押し留めた。遥は口より体が動く性分なので、部下になった者たちは制止に心を砕く日々を送っていた。その事例であった。






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