第四二話「大和という言葉の意味」
今回は大和型戦艦や雲龍型航空母艦に気づいた米軍の対応が中心です。
-日本は戦艦を打撃力による水上打撃艦の露払い役とし、その為に新型へ更新を始めていた。その象徴が大和型戦艦であった。諸元は旧史のそれより高性能を誇り、速度はドイツなどの技術提供による新型ボイラーを逐次換装、装備した結果、29ノットへ向上。ダメージコントロール力も今は亡き陸奥が最初で最後の仕事として残したデータにより上昇。
`相対的不沈艦`としての能力は高まった。難点は艦によって耐久性にバラつきがある所であった。(これは耐水隔壁などの数が初期建造の一番艦「大和」と最新理論で再設計された上で完成した三番艦「甲斐」とでは違うため)その為防御力が`同型艦`の中では低い部位の大和は先導役として位置づけられていた。
-1944年 初頭 日本
「フム。大和型戦艦は「越後」で打ち切るか」
「以後は超大和型戦艦へ切り替えだそうだ」
「新造艦はいいが、財政はどうなんだ。戦艦や空母は一個師団以上の経費がかかるんだぞ」
「陸式の無駄な師団の削減と旧型艦の退役で釣り合いとらせるそうだ。我が国は裕福とは言えないからな」
艦政本部は今後の整備計画を三度、再検討。次期艦砲たる、「56cm砲」の開発に一定の目処がつき始めたため、大和型戦艦は1941年当時の建造数5隻から4隻へ削減(ナンバリングがややこしくなり、大和型戦艦3番艦となるはずの信濃が空母と変更された影響で、予算上の4番艦の甲斐へ繰り上げられたため、5番艦は実質上は4番艦である)以後はより性能が強化された超大和型戦艦へ切り替える方針を定めた。維持・保守関連の財政的問題もあるので、不要な一定範囲の旧型艦は退役する事が政府により決定され、小型で改修困難な空母「風翔」と新型機運用の難しい「龍驤」が戦時量産型の「雲龍型航空母艦」の5番艦以降の竣工と引換に退役。警備艦へ格下げされていた戦艦「金剛」、「比叡」も財政的問題で完全退役。代換艦には、戦艦より安価な超甲巡が当てられた。駆逐艦も旧式化した「峯風型駆逐艦」、「神風型駆逐艦」を最新鋭の「改夕雲型駆逐艦」(夕雲型の再設計タイプ。機銃装備や高角砲の増強などの総合的戦闘能力の強化が図られている)に置き換える形で落ち着いた。
米国はこの日本の兆候を優れた諜報力で察知した。本国へ日本は大正年間に作られた老朽艦を新型へ置き換えていく模様と報告され、それは太平洋艦隊司令長官「チェスター・ニミッツ」大将の耳にも届いた。
-米国 ハワイ
「やはり日本は財政的に新型を整備する代わりに旧型艦を退役させていくようだな」
「司令長官、気になりませんか。この日本の整備している新型戦艦を」
参謀はニミッツに軍内で話題となっている`幅の広い日本の新型戦艦の写真(スパイが決死の行動で何とか撮影した一枚)を見せる。ニミッツはすぐに唸った。
「大正期建造の旧型艦、コンゴウタイプやフソウタイプなどの代艦だろうな。30年前の船を大事に持っていたところで現在戦には役に立たん。我が国も旧型艦の代換で、アイオワやモンタナを整備したように」
「太平洋艦隊旗艦はモンタナ級3番艦の`メイン`になりました。いくらジャップの新型が作られようとも、最新鋭の16インチ砲を12門装備するモンタナ級の敵では無いですよ」
「馬鹿者!!日本を侮るな!!彼らはトーゴー提督の正統後継者なのだぞ。その彼らが乾坤一擲をかけて作る新型なのだ。モンタナといえどただではすまないだろう」
ニミッツは少尉候補生時代に日本で日露戦争の英雄「東郷平八郎」元帥に会い、感動。それ以来、東郷平八郎元帥を崇拝している。そのため日露戦争を勝ち抜いた日本には特別な思いを持っていた。だから楽天的に考える部下を叱責したのだろう。
「この異様に幅が広い新型戦艦の名は?」
「ハッ。噂によれば`ヤマト`タイプだそうです」
「……ヤマトか……国の象徴として作ったかも知れぬな」
「なぜです?」
「彼の国に`倭は 国のまほろば たたなづく 青垣 山隠れる 倭しうるはし`という歌がある。ヤマトは日本を意味する言葉なのだ……我々にとっての`ユナイテッド・ステーツ`のようにな」
「それでは……!!」
「ああ。この新型は名前から考えて、天皇や国民を守る、文字通りの日本のシンボルとして作られたはず。そうなると18インチ砲を搭載している可能性もある……」
「馬鹿な、奴らが18インチ砲を……」
ニミッツは親日家であったが故に大和という言葉の意味を感づいていた。文字通りの日本の象徴として作られたと思える新型戦艦へ異様な警戒を示す。そして同国の誇る空母機動部隊へ対抗する切り札の「エセックス級航空母艦」の竣工状況を問う。
「エセックス級はどうか」
「はっ、既に四番艦「ホーネット」までが竣工、近々配備の予定です」
「問題は航空隊の練度だけか……日本にはオザワ提督の鍛えた戦技無双の航空隊がある。果たしてどう対抗すべきか。ハルゼーやスプルーアンスはどうしている?」
「スプルーアンス閣下は最新鋭のヘルキャットを装備する航空隊を鍛えておられます。日本にも対抗できましょう」
「コルセアはどうした?後継として作られたのはそっちだと聞いているが」
「コルセアはハルゼー閣下のエンタープライズが試験運用中ですが、着艦が難しいと兵たちから意見が出てまして」
「それが幸と出るか、不幸となるか…」
ニミッツはF4Uではなく代打のF6F「ヘルキャット」が空母艦載機として本格配備されている事に不安を覚える。旧史ではヘルキャットは米軍に勝利をもたらした`天使`であるが、それ以上の高性能機を日本が装備しはじめた新史ではどうなるか?運命はまだ光をどちらにも示していなかった。




