第三九話「日本初 対潜空母の誕生」
軽空母の運命と対潜戦闘です。
-日本空母は史実では米国の同規模空母より戦力的に劣る有様(カタパルト装備の有無など)だったが、新史ではエセックス級などに搭載されるものを模倣・独自に発展させる形で英国との共同でカタパルトの実用化に成功。直ちに改装が行われ、43年末では新造・既存問わず全空母に搭載されていた。そんな中、対潜空母に分類変更がなされた軽空母があった。これは新型・大型の艦載機の運用が困難と見なされたのと、米国軽空母の多くが戦後のジェット化に適応できないで消えたのが考慮に入れられた結果であった。
-空母「大鷹」
「対潜用に用途変更か……」
「こいつは今の一線機を多数運用できないからな。その代わりに対潜装備機を少数でも運用するようにした方が船団の護衛に使える。艦載機の航空護衛は「海鷹」や「神鷹」に任す方針になった」
「ああ~こんな艦じゃなくって隼鷹とかに乗りたかった」
兵士たちは大鷹型航空母艦が対潜空母へ変更された理由について談義していた。これは一線機運用に耐えうる軽空母の保有数は「海鷹」などを入れて6隻あまりで十分と判断されたためである。最強の特設空母とも言うべき「隼鷹型航空母艦」(飛鷹型とも)は機関の強化がなされた上で完成し、第一線航空戦隊として華々しい活躍をしているとはエライ違いであった。それ故乗員の中には`日陰者`扱いされたとボヤく者が多かった。これは日露戦争当時の「滑稽艦隊」と嘲笑された第3艦隊同様の状況であった。しかし第一線での活躍だけでは到底大東亜戦争は戦えない。この事を認識した上層部は連合艦隊参謀長である山口多聞を大鷹らに派遣させ、三隻の乗員に訓示を行って任務の重要性を説いた。搭載機も複葉機から天山の登場で一線を退いた九七式艦攻に対潜装備を施した物に改変された。今日も彼らは商船護衛部隊と共にシーレーン防衛を行っていた。駆逐艦「白露型」のソナーに反応があり、大鷹らが遠地の潜水艦刈りに艦載機を派遣した。
-九七式艦攻隊
「駆逐艦の通報だとこのあたりか……爆雷をばらまけ。どれかひとつは当たる」
大鷹所属の九七式艦攻隊は爆雷を投下する。ここの所ソ連の潜水艦の活動が活発になっており、商船にも被害が出始めた。事態を重くみた海軍は警備艦隊を出動させ、シーレーンの防衛に臨んだ。
「今頃フィンランド部隊は活躍してるってのに俺達は本土近海で露助の潜水艦狩りかよ……つまんねえな」
「しかし物資が届かんと帝国は干上がる。奴らはよくわかってるよ。資源のない島国の弱さを」
「へいへい……」
若い兵士の愚痴をよそにベテランは淡々と任務をこなす。油が浮き、千切れたソ連の軍旗が現れる。とりあえず撃沈に成功したようだ。
「司令部に打電。敵潜一隻撃沈だ」
「了解」
しかしこうした兵士達の頑張りにも関わらずも、潜水艦狩りは必ずしも順調とは限らず、ソ連潜の攻撃は艦隊に及んでしまう。
- 同海域 空母「冲鷹」(ちゅうよう)艦橋
「魚雷接近!!」
「何っ!?ええい、対潜監視は何をしていた!?回避は間に合わん!機銃を使ってでもいい。破壊しろ!!」
冲鷹はちょうど左舷から魚雷攻撃を受けた。ソ連側にとっては当てずっぽうな攻撃ではあったが、不運な事に日本側は発見が遅れ、危機に陥る形になってしまった。冲鷹は旧式の九六式二十五粍高角機銃がまだ装備されたままであり、無理やりな方法での迎撃、用途外とも言える魚雷迎撃は精度に劣るとしかいいようがない。彼らは必死に迎撃戦を展開するも……。
「駄目です!!命中します!!」
「総員、衝撃に備えろ!!」
一発が左舷へ命中。冲鷹は激震に見舞われる。
「機関、出力低下!!」
「ダメージコントロールだ!!被害を食い止めろ!!現在の速度は!!」
「14ノットへ低下!!」
「くそ、これではいい的だ!!露助の分際で生意気な!!」
「艦長、落ち着いて!!艦攻を呼び戻せ!!本艦の護衛につかせるんだ!!」
艦長は憤慨した。貴重な空母をまさかソ連の攻撃によって失いかねない状況になるとは考えもしなかったからだ。急いで駆逐艦隊が護衛に駆けつける。その駆逐艦隊の先鋒の「涼風」の乗員は空母を攻撃した潜水艦を血眼になって捜索する。彼らは眼下の敵へ神経を尖らせる。ここから長時間に渡る対潜戦闘が始まる。新生日本海軍の真価が問われる一日が幕を開ける……新史初の眼下の敵との戦いはソ連が先手を取った。果たして日本のハンターキラーは海の狼を狩れるのか?




