第三十話「五式砲戦車、完成」
-日本陸軍は対米軍も視野に入れた軍備ストレッチと近代化を行っていた。3式中戦車「チヌ」は改良されたもの、T-34-85には完全に対抗するのは難しく、前線ではさらなる新型戦車が望まれた。陸軍機甲本部もそのことは認識しており、対T-34-85・IS-2のカウンターパートとなりうる新戦車は「四式中戦車`チト`」として開発は急がれた。
ドイツ製の88 mm KwK 43 L/71をライセンス生産(国内インフラも1943年以降に血の滲むような努力の成果、ドイツ製兵器をコピー生産可能までに整備された)し、新型の高出力ディーゼルエンジンにより50㎞の当時としては高速を発揮し、装甲は砲塔120㎜、車体60mmのこの当時の中戦車としては重装甲を実現した。外観は旧史61式戦車に近くなり、開発関係者は非公式に`61式`と呼ぶ始末であった。
―陸軍機甲本部
「ほう。新型車は凄い性能だそうだな」
「ああ。旧史61式を今の技術でコピーしたからな。エンジンは無理して大出力のものを積んだし、装甲も傾斜させた」
「よく出来たな」
「試作だからまだペリスコープの信頼性やエンジンの信頼性がまだちょっと前線に出せないレベルだ。実用化にはまだちょっとかかる」
「大丈夫か?前線では3式ではさすがにきついって声が出始めてるぞ」
「上は五式砲戦車`ホリ`を駆逐戦車として贈る事を決定した。第一次生産分の50両すべてを実用試験名目に送る。これで楽になると思う」
試製五式砲戦車`ホリ`。それは史実で日本陸軍起死回生をかけて開発していた砲戦車。105mm砲を搭載し、パーシングをも撃破可能である大火力を発揮する。この時空では海軍やドイツ・イギリスの技術供与で早期開発に成功し、43年1月から量産に入っていた。形状はヤークトティーガーとエレファント重駆逐戦車に類似し、明らかな影響を受けていた。将来的に120㎜砲まで受け入れられる拡張性を持つ。この現時点日本最強砲戦車は直ちにフィンランドへ配備され、その威力を発揮した。
「さて俺達も`61式`を実用段階にするぞ!!」
「おう」
技術陣の奮闘は続いた。
―フィンランド。
基地に真新しい砲戦車が30両整然と並べられていた。T-34-85に苦戦する日本軍機甲師団には何よりの朗報だった大火力を持つホリがとうとう前線に到着したのだ。戦車兵達は歓喜の宴を行う始末であった。
「すげえよなこの砲。105㎜だってよ」
「スゲエ!これならT-34の最新型も楽に撃破できるぜ」
「喜ぶのはまだ早い。本国は既に三式砲戦車改`ホニⅣ`を配備する決定を下した。来るべき攻勢に備えてのものだそうだ。3式も7.5 cm KwK 42搭載へ改装され、装甲・エンジンなどの全てが強化される」
「なぜです」
戦車部隊長は部下の疑問に答える。なぜ3式が強化されるのか。その答えは完全な新型車の開発が難航しているゆえの苦肉の策であると。
「実は4式の開発に予想以上の時間がかかることが判明してな。年単位で遅い。上はこの遅れを憂慮していて、生産ライン構築も考えてドイツが持ちかけた既存戦車の改造計画に乗っかったっつうわけだ。3式後期型……チヌ改はパンサーやコメットとの部品互換性を持ち、性能も段違いに上がるというんだが」
この時期連合側の戦車は史実での大戦後期レベルに達していた。F情報のおかげであった。米軍がM3中戦車の配備でお茶を濁しているのとは大違いであった。一方のソ連もただでやられてはいない。IS-2を実戦投入し、ティーガーIや3式中戦車部隊に大損害を出させるなどの破壊力を発揮。連合側に`スターリンショック`を与えた。連合はこの難敵への対応に追われていた。
「ティーガーIでさえ破壊できる新型戦車とは……どうします」
「我が方の最新鋭、ホリを使います」
「例の105ミリ砲を?」
「ええ。改良で射程は伸ばしているのでギリギリ行けます。正面装甲も貫徹できます」
「良し……行きましょう」
こうしてホリの初陣は開始される。目標はスターリン重戦車。150ミリ厚装甲を貫徹可能との目標を掲げられて創りだされた105ミリ砲はフィンランドの地で咆哮の時を静かに待っていた。スターリンの名を持つ戦車を撃破するために。




