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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第48話:リザードマン

 家に帰ると、先にアカネが帰っていた。


「いやー大活躍だったわね。綱の後ろに魔王がいるですって。魔王幹也、中々いい二つ名じゃないの」

「それはよーございましたね」

「あら、元気がないわね。もしかして、手抜くの忘れててあの調子だったってことなのかしら」

「まあ、そんなとこだ」

「大丈夫? お姉さんが話聞こうか? 」


 俺より小さいアカネがこういう時だけお姉さんぶって俺を慰めようとする。


「実はな……」


 アカネに、結城さんと一緒にダンジョンに潜っているのを他の生徒に聞かれて、結城さんもその話で周りに色々質問されていたこと。それから、それ以来目も合わせてないこと。そのことで、もしかしたら結城さんも今後活動しづらくなったんじゃないかということ。思いつくだけのことをアカネに話してみた。


「……ふぅ。やっぱり人に話せるのって大事だな。ちょっとだけ気分が楽になった気がするよ」

「なるほどね。でも、心配する必要はないとは思うわよ。別に結城さんとダンジョンで一緒に探索するのが目的で駅前ダンジョンに行くわけじゃないんでしょ? それが目的になってるなら確かに気がかりにはなるでしょうけど、幹也の場合は専用ダンジョンの換金のごまかしがメインなんだから、その点でいえば結城さんが居ても居なくても同じなんじゃなくて? 」


 アカネの言う通り……だな。そもそも駅前ダンジョンは目隠しで潜ってるだけで、本来の目的は俺専用ダンジョンからの魔石の持ち出しのごまかしがメインだったはず。それを考えれば結城さんがいるかどうかは本来問題ではないし、いつでも通っていつでも帰れる分だけ身軽になったというものではある。


「アカネの言う通りだな。だけど……気になるのは気になるんだ。俺の一言が原因で来づらくなるんじゃないかと思って」

「また青春レベルが一つ上がったわね。人の目を気にしてダンジョン探索してるなんて秘密のデートみたいなもんじゃない。それがバレて周りから冷やかされるのも通過儀礼みたいなものよ」


 通過儀礼か。確かにそうかもしれないな。俺と結城さんがこっそりデートしてて、それを冷やかされてどう対応するかでお互いがどう思ってるのがわかる……という奴か。


「ということは……この次は俺の灰色の脳みそでもわかるぞ。いつも通りの時間にダンジョンに来てたらいつも通り探索をする。来てなかったらこれは脈がなかったか、相手が意識しすぎて探索が難しくなったと考える。そういうことだな? 」

「冴えてるじゃない。適度な運動はやっぱりオツムを正しく回すのに役立つのね。今日一日体を動かしていい感じよ」


 若干の皮肉を弾き飛ばしつつ、次の一手を考える。もし結城さんが来なかったら、俺は一人でリザードマンのところまで行って戦って実績を作って帰ってくる。一人でリザードマンが倒せるのならこの成果も納得ですね、と換金カウンターでも考えられるところだろう。


 そのためには、俺専用ダンジョンでリザードマンといっちょ勝負して、一つでも多く魔石を持ち帰ってくる必要がある。リザードマンの魔石がいくらになるかは解らないが、オークより安いということはないだろうし、それなりに大きさもあるはずだ。一人で潜って帰ってきては結構時間がかかることになるので、途中のオークでお茶を濁して帰ってくる、ということは出来ないだろう。


「よし、今日は早速リザードマンのところまで行ってみよう。どんなモンスターか興味が湧いてきた」

「悩むのは止めたの? 」

「止めた。俺が悩んで結果が変わるわけじゃないからな。土曜日までどうなるかわからないんだし、その時にならなきゃわからないことをくよくよ悩んでいる間に体を動かして明日に向けてしっかり足場を固める時だと判断する」


 さて、夕食のツナマヨパスタを食べて、腹を膨らませると早速出陣だ。出陣するなら湯漬けのほうがよかったかな? まあ細かいことはいいや。


 いつもの装備に着替えると剣の調子を見て、折れ曲がりや欠け、芯折れがないことを確認する。今日もこの武器で戦えそうだ。リザードマンがどのぐらいの攻撃をしてくるかは解らないが、レベルアップしてる俺なら問題なく行けるはず。


「アカネはどうするの、ついてくるの? 」

「あら、お姉ちゃんについてきて欲しいの? 困った弟だこと」

「まだそれ続けてたのか。単純に索敵目的だけど、一人で行って来いというなら普通に一人で行ってくるが」

「そうねえ……リザードマン初陣ってことでしょうし、道中レッドキャップ地帯を抜けるには私が一緒のほうが手早く抜けられそうなのは間違いなさそうだからついていこうかしらね」


 アカネという索敵オプションを得られたなら後は怖くない。正直、二層の奥でレッドキャップに毎回遭遇してスニーキング勝負をするのは面倒くさいんだ。それをやるぐらいなら毎回アカネについてきてもらうほうがこの俺専用ダンジョンでは便利だ。


 早速ダンジョンに潜り、一直線にレッドキャップゾーンまで行く。道中のモンスターは反応すれば倒すことにしているが、何事もなければ放置だ。今日は金稼ぎが目的ではないので、他のモンスターの相手をする時間もちょっと惜しい。出来るだけリザードマン地帯に長くいて、リザードマンと戦った経験そのものを会得するのが目的だ。


 とっととレッドキャップゾーンも突っ切ってオーク、それからさらにその奥のリザードマンゾーンに初入場してしまおう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 レッドキャップゾーンをあっさり抜け、必要数だけオークを狩りオーク肉を一つ手に入れたので、慎重にビニールで包んで食べるときに変な気分を催さないようにした。これも冷凍庫で眠ってもらって食べるときに解凍すればいい。やはり気分的に、生の肉がそのまま落ちる、というのはあまり好きではない。


「まあ、たしかに地面に落ちた肉をそのまま拾って食べるというのは抵抗あるわよね」


 オークゾーンを抜けて階層の空気が変わる。ここからが四層、ということなんだろう。ほのかに湿り気を感じる。ダンジョンの階層がどういう仕組みで変化していっているのかは解らないが、相変わらず光る洞窟内の苔。これ、持ち帰って部屋に飾ったら電気代の節約になるのだろうか。そういう話を聞かない以上、もしかしたらダンジョンの中でしか生息できない苔なのかもしれない。


「そろそろリザードマン地帯だから気を付けてね。水場には基本一体居るはずだからちゃんと目視でも索敵してね」


 しばらく歩くと水場が現れ、そこで遊んでいる……のか? とにかくリザードマンを発見した。リザードマンは俺に気づくと手持ちの槍を振りかぶってこちらに向かってくる。


 リザードマンは俺に向けて真っ直ぐ槍を突きこんできた。身を右に躱し、剣先で槍をはじく。正面に剣を構えるスタイルでは槍の餌食になりそうだな。立ち位置や足運びを考えていく必要があるな。


 リザードマンの正面に立たないように……体の右側部分だけをリザードマンに晒すようなスタイルになった。これでリザードマンが狙える場所はかなり限られてきたはずだ。身構える俺と少し考えるそぶりをするリザードマン。


 すると向こうもこっちに対応して、突きから薙ぎ払いの姿勢に入る。全身を使って後ろに飛びのくと、さっきまで居た場所を槍が通り過ぎる。あえて近づいて喰らってその分で攻撃する、という手段も取れたのかな。次でやってみよう。


 再び距離が開いて、立ち位置を前の状態に近づけていくが、リザードマンの槍のほうが射程が長い分こちらは攻撃をしづらい。リザードマンもそれをわかっているのか、徐々に距離を見てはまた薙ぎ払いの姿勢に入る。今度は、薙ぎ払いの手元に近寄ってぶん殴られない距離まで一気に距離を詰めた。


 こっちの瞬発的な移動に驚いたリザードマンが槍を薙ぎ払いから突きに変えようとするが、その前に俺が足で槍を抑え込む。ギリギリの勝負だったが、かろうじて俺の足が槍を踏みつけるほうがリザードマンが槍を引き戻すより早かったらしい。槍を踏んづけてそのままリザードマンの手から奪うと、リザードマンにありったけの力を込めて斬り込む。


 身に着けている装備もなく、いわば全裸のリザードマンは唯一の武器であり防具である槍を俺に踏みつけられていてどうしようもない状態から斬撃を喰らい、その一撃で黒い霧に霧散した。防御力がある、とかではないらしい。


 足の下の槍もそのまま霧散して消えたので、奪ってから倒した槍は必ずドロップするとかそういう特殊効果はないらしい。装備も含めてモンスター、ということなのだろう。そういえばシールドゴブリンもゴブリンアーチャーもそれらしい装備を落としたことはなかった。


 最後に魔石を拾って最初のリザードマン退治はうまくいった。これが二匹出てくるとなると、流石に一人では対応が難しいだろうから逃げるしかないわけだが、次はうまくいくのかな。


「次、来るわよ。正面から道沿いに歩いてくるみたい」


 アカネの言う通り耳を澄ますと、ペタンペタンと足音をさせながら次のリザードマンが歩いてくる。まだこっちには気づいてないらしく、槍の穂先を持ち上げたままただダンジョン内を散歩しているだけのように見える。迂闊だな。


 【スニーキング】の力で近づくと、ちょっとした壁越しに隠れ、俺の前をリザードマンが歩き抜けようとする。


「今よ」


 そのまま真横から一気に剣を突き刺す。奇襲を受けたリザードマンは混乱し、槍を振り回して逃げようとするが、そのまま突き刺した剣を切り裂いて傷口を大きく広げる形で振り抜いた。


 次いで、二撃目を頭に叩きこんで完全に沈黙させる。リザードマン二匹目も無事に倒せた。魔石しか残ってないが、ちゃんと収入になったことは確か。


「順調じゃない。この調子でもう少し行ってみましょうか」

「今の所は、だけどな。二匹来たら多分手詰まりだ。できるだけ一匹ずつ出てきて欲しいところだが? 」

「うーん……次も一匹かしらね。しばらくは大丈夫だと思うし、もし二匹連れが近づいてきたら知らせるわ」


 もう五、六匹ぐらいは倒したいな。ここまでは順調そのものだが、もう少し危険な目にも合ってみたい。アカネが索敵をしてくれてる都合上難しいかもしれないが、戦闘を、もうちょっと白熱したバトルを展開してみたいものだ。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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