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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第46話:部屋に戻って

 隆介を見送り、家に帰ると高いアイスをしばらく冷凍させ、夕食にでも食べようかな、と考えているところでアカネからお知らせが入る。


「昨日の勉強を基に更に奥を作ってみたわ。おそらくソロでしか潜らないだろうから、駅前ダンジョン? と違ってコボルドやケイブストーカーは出さずに、直接リザードマンの居る所まですっ飛ばすことができるようになったわよ」


 駅前ダンジョンのコピーみたいなものがどんどん作られていくのは嬉しいな。予習が自宅でできる。これに勝るものはそうそうない。ドアツードアで二秒の職場と考えるとなおさらだ。


「一応そこが四層部分ってことになるのかな? リザードマンは槍を落とすそうだし、三本ぐらいまでなら欲しいかも。一本は売って相場を確認して、一本は自分でも使えるように保管、もう一本は……誰かに貸し出すってところまで計算に入れておこうかな」

「使用用、保管用、観賞用じゃないのね」

「そこまで部屋が広くないんでな。鑑賞するぐらいなら使ってやった方が喜ぶだろう」

「それもそうね。それに、そんなにドロップするまで戦う気なの? 」


 ふむ、リザードマン相手にそんなに長時間戦うつもりか? ということか。確かにそれは言えてるな。まあ、槍は一本出たら儲けぐらいに考えておくか。いくら俺専用ダンジョンのドロップ率がおかしいとしても、そう何本も出るような設計ではない、つまりドロップ率は低いとアカネは暗に教えてくれているんだろう。


「さて、その先は……まあまた今度考えておくか。ダンジョン全貌を作ってもらったところで一人で潜っていける可能性は低いわけだし、一人用ダンジョンとして運用させてもらう前提で考えるとあんまり深くまで潜るのは難しいだろうしな」

「そのうち一人ではどうしようもない場所まで行くことにはなるでしょうし、たしかにそうね。予習復習のために潜るのはあるとしても、モンスターが複数出て来るような場所を作るような流れになってきたら、その時は相談してどうするか決める、という方向でどうかしら」

「それの方がありがたいかな。せっかく作ってもらっても先へ進めないんじゃ意味がないからな。とりあえず現状わかってるところまで作ってもらう、みたいな感じで頼もう」


 駅前ダンジョンもなんだかんだでまだ三層までしか進めてない。もっとテンポよく、四層五層と行きたいところだが、そうそううまくはいかないってことか。


「さて、調べものは一段落したってことで夕食の準備でもするかな。今日はオーク肉をベーコン代わりに炒めてスクランブルエッグと合わせてちょっぴり洋風に行こう。今日は食後のデザートもあるしな。受講料を取った分だけ美味しいアイスが食べられるのでそれまで待とうか」

「美味しいアイス……楽しみね! 」


 アカネも俺が普段買わないようなお高いアイスは楽しみのようで、グルグルと俺の周りをまわっている。料理する間は危ないということはないが、邪魔になるのでじっとしていてほしい。やがてパスタを茹でてしっかり焼い炒めて水分を飛ばした後、オーク肉とスクランブルエッグの焼き物を作ってで軽くケチャップで味を調えて、夕食の準備はできた。


「さて、飯は出来たがまだちょっと早いな。少しの時間でできる予習でもしておくか」

「えー、アイスまだなの? 私はもう口の中が美味しさで我慢しきれないんだけど」

「そもそも食べられないだろうに。それに、今食べると絶対夜中に腹が減るからな。もう少し待て。その間に学校の予習をしておく」


 机に教科書とノートを出すと、静かに予習を始めた。アカネは「アイス……アイス……」と俺に念を送ってきているが、無視だ、無視。しばらく集中してやっていると、あっという間に時間は過ぎ、腹が鳴り始めるころになってようやく時間の経過を知ることになった。俺にしてはかなり集中していたな。


 ふとアカネは……とみると、リビングテーブルに突っ伏して寝ている様子だ。どうやら道祖神様も騒ぎ疲れて寝ることがあるらしい。そっとアカネを起こす。


「お待ちかねのお高いアイスの時間だぞ」

「アイス! 待ちかねたわ! 」


 がばっと起き上がると、早く早くと言わんばかりに冷蔵庫の前でうろうろしている。仕方ない奴だなあ……と思いつつも、俺も我慢していたお高いアイスだ。しっかり味わって食べないとな。


 レンチンして程よく温まったパスタと共にお高いアイスを食卓に並べて、いただきますのポーズ。青白い光がいつもより輝き、アカネに吸い込まれている。これ、光で吸われていった分美味しさが落ちるなんてことはあるまいな。


「ないから安心して食べていいわよ。そして流石に高いアイスなだけあるわね。神力も中々のものだわ。多分あなたの食べたさが影響しているのでしょうね」


 そういうものでもないらしい。とりあえずパスタから……うむ、今日も悪くない出来だ。トマトケチャップと卵とオーク肉で栄養も取れているし、いつものパスタで腹も膨れる。悪いことは何もない。しいて言うなら卵の食費ウェイトが若干高いぐらいか。


 オーク肉の脂の味わいがしっかりと全体に回っているおかげで、味に飽きることもない。トマトケチャップの酸味と合わさってより美味しい感じに仕上がっている。


 パスタを食べ終えて、肝心のアイスに取り掛かる。ふたを開けて、中ブタを開けて、丁度スプーンがするりと入るような感じで溶けかかっているのもグッドだ。そのままスプーン一さじ分を口に入れる。


 ふぅ。うまい。なめらかで口の中で本当に溶けていく。氷のような食感はなく、本当にアイスクリームとはこういうものだというのを教えてくれるかのようだ。


「たまには高いアイスもいいもんだな」

「これは中々の一品ね。奢ってもらったのもあるでしょうけど、美味しいには違いはないわね」

「神仏は基本奢られものみたいなもんじゃないのか? 要求してお供えをもらうわけではないんだから」

「それもあるわね。でも、やはり品質のいいもののほうが嬉しいのは確かよ。できるなら直接味わいたいところだわ」


 そういうものなのか。でも確かに、野外に置いておくお供え物に高級アイスを供える、ということはないだろうし、日持ちする物がお供えのメインだろうからこういうのは珍しいのかもしれないな。


 食事を終えて風呂を沸かし、風呂に入る。さあ明日からまた学校だ。それに体育祭が近づいている。自分の実力をどれだけ隠しながら体育祭に紛れ込むか、というのも考えながらやらなきゃいけないな。


 どこまでの力なら一般人としてみてもらえるのか。どこまでなら他の部活のスカウトに変な目で見られずに済むのか。そのあたりによく注意しながら無難に終えられる競技……玉入れとかそっちのほうで活躍しておいて、他の参加競技はほどほどのところで実力を絞っていかないと高三の春になっていきなり目立つ、というのも避けたい。


 現時点ですでにある程度目立ってしまっているのだから仕方ないとはいえ、今からルール覚えてやったこともないような部活に数合わせで入れられて……というのもゴメン被るからな。


 さて、風呂も上がって明日の準備して寝るか。明日は……世界史の小テストか。ちょっとだけ勉強しておこうかな。


「あら、せっかくの風呂上がりなのに勉強しちゃうのね。気持ちがいいうちに寝てしまえばいいのに」

「小テストがあることを思い出したからな。ちょっとだけ予習しておいて残りはまあ、何とかなるだろ」

「じゃあせめて布団を温めておいてあげるわ」


 そう言って俺の布団に沈み込んでいくアカネ。実際に布団を温めることは不可能なんだが、その努力認めることにしておこう。


 さて……軽く十五分ほど予習した後、布団に潜り込んで今度こそ眠る準備をする。布団を温めておくと言いながら布団は程よい冷たさを維持してくれていた。


「アカネ、温まってないぞ」

「そりゃそうでしょ。私ものに触れないんだから」

「まあ、予想はしてたけどな。ちょっとした冗談だ」

「通じてるわ、私はあなたの頭の中を覗けるんだから」


 にこりと笑うおかっぱ少女が布団から出て、正座で俺の枕元に座る。


「足辛くないのか? 」

「重さがないからね。何十時間でもこのまま座っていられるわよ。貴方が起きるまで暇だし、このまま寝顔と寝言を見守っておいてあげるわ」

「それは有り難い……のかな。おやすみからおはようまで見守ってくれるのはどこぞの会社の逆だな」

「そんな会社があるのね。さあ、おやすみなさい坊や。見守っててあげるわ」

「逆に寝づらいんだが……そこまでするなら横になっててくれ。添い寝のほうがまだ効果ありそうだ」


 すると、正座の姿勢から横寝スタイルになり、布団から半分だけ顔を出しているアカネが見えるようになった。これはこれでホラーだが、正座のおかっぱに枕元に座られるよりはマシになった。


「うーん……まあどっちにしろホラーじみたことになってしまったが、まあいいや、おやすみ」

「おやすみ坊や。いい夢見るのよ」

「誰が坊やだ。まあ、アカネからすれば坊やかもしれないけど」

「私から見ればみんな生きてる人は坊やみたいなものよ。それだけ長くお仕事してるんだから」

「その割には大分放置されてたようだけどな」

「そこはいいのよ。今大事にされてるなら過去のことは水に流すわ」


 やがてアカネがこっちに手を伸ばしてすかっすかっとおでこを撫でようとして失敗していた。


「私の神力もまだまだね。もうちょっと頑張ってくれれば色々出来るようになっていいんだけど」

「俺としては今のまま大人しくしてくれてるほうが何かと助かるんだけどな。人に見られる心配もないし食費も生活費もかからないし」


 食い扶持が増えたり風呂とトイレが必要になったり……なんてなった場合は小さな子と同居しているのと変わらなくなるからな。それにアカネの姿が俺以外にも見えるようになったとして、あんな小さな子と同居している、なんてご近所の噂になるのも避けたい。アカネは今のままで……いや、もうちょっと成長してほしいかな。


 俺はロリコンではないのでどうせ生活するならお姉さんか同級生ぐらいの見た目のほうが目の保養にもなるし有り難い。その為には俺がダンジョンを攻略したり日々神力を分け与えたりして成長しなければいけないってことか。明日からもそれなりに頑張っていくとするか。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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