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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第38話:約束のパーティーダンジョン

 土曜日になり、今日は相当朝早く起きた。まだ日が昇る前に起き、いつものパスタを二人前作るとミートソースで味付け、半分を朝食として食べ、半分は弁当。ペットボトルに塩砂糖水を作ってアカネにお供え。


「こんな朝早くから行くのね。いつもの時間で良いんじゃないの? 」

「途中から結城さんとパーティー組むことになったとして、それまでに稼いだ分として隠し財産のベッドの下の魔石を換金できるようにしたいからね。朝早くから潜ってたならこのぐらい稼いでても不思議はないだろう、と疑問を抱かせずに済むし、そこから結城さんと稼いだ分は等分すればいいし」


 いただきますをしてアカネにも栄養補給。食事はいつも通り貧乏飯だが、パスタソースをほぼ毎日使えるようになった分、食事事情は少しずつ豪華になりつつある。


「勤勉ねえ。そのぐらいの気持ちで女の子にも向かえば満足する生活が待ってるでしょうに」

「そっちのほうはもうちょっと経験値を積んでからかな。とりあえず食事はともかくとして、資金はいくらあっても困らない。隆介の装備が揃え切れなかったときに今度はこっちが貸す側に回れるかもしれないしな」

「まあ、ばれないように頑張ってね。私はしばらくはちょっと休憩。本業に精を出すことにするわ」


 しばらくダンジョン拡張はナシか。まあ、俺も今は深く潜るよりも確実に往復してダンジョンを把握することに努めるのが先か。まあ、俺専用ダンジョンの進捗は緩やかでも良いんだ。今の所一般ダンジョンではオークが出る所までしか潜り込むこともできてないからな。


 この先を作るなら予習範囲という意味では価値があるが、復習であるところの一般ダンジョンの進捗が進んでからのほうがいい。俺だけ早く進んだとしても、まわりが付いてこれないようでは意味がない。そういう点では今の所はダンジョンの拡張は必要ない、と考えていいだろう。


 急ぎで駆け抜けなければいけないダンジョンではないんだ。人生の暇つぶし……レベルアップのおかげで人生の暇つぶしどころかメインクエストになりつつあるダンジョン攻略だが、このまま大学に行かずにダンジョン攻略に進んでいく……というのも有りかもしれないな。でも勉強は続けているしその進捗はかなり良いし、まだ自分のやりたいことを選ぶだけの余裕はある。


 さて、出かけるか。まだ日が昇り始めたぐらいのうすぼんやりとだけ明るい中を自転車で駅前ダンジョンへ向かう。やはりこの時間は人の出入りは少なく、駅前ダンジョンに着いても人の気配はほとんどない。入り口は二十四時間開いてるので入場手続きをして中に入る。中ではかなりのモンスターが湧いており、人に見られるのを気にすることなく狩り放題だ。


 奥のほうへ行けば人はいるかもしれないが、入り口のスライムぐらいは好き放題に湧いていて、ほっといたら出てくるんじゃないか? というほどではないにしろ収入のあてにできる程度には倒していけている。


 そのままスライムを掃除し、入り口周辺を綺麗にした後奥のゴブリンゾーンへ。ゴブリンゾーンでは三匹ぐらいのグループが一番多かった。どうやらゴブリンは増えすぎるとあっちもパーティーを組みだすらしい。かといって三匹に今更てこずることはなく、順番に倒していってまるで毎回魔石が落ちてるかのように数をこなしていく。


 シールドゴブリンとゴブリンアーチャーもペアで行動することが多くなっている。早朝の駅前ダンジョンは中々に難易度が高いらしいな。しかし、ソロでの動きで一対二でも問題なく戦えるようになっている今では問題ない。シールドゴブリンを蹴り飛ばすなり先に倒すなりして、その間にゴブリンアーチャーが放つ矢を避けるか防ぐか捕まえるかして、矢の効力がそれほどないことを確認することになった。うむ、俺はこっちでもきっちり動けているぞ。


 そのまま奥に行き、レッドキャップゾーンだ。ここからは少し人もいるらしく、戦っている音が聞こえてくる。俺のほうに近づくレッドキャップの気配を探りながら、【スニーキング】の技能を活かして進み、後ろを取れるなら後ろからバッサリ、向こうから見つけてくれるならその反応を早く察知できるように努める。


 やっぱりほしいな、索敵みたいな技能。かくれんぼする時に効果を存分に発揮してくれるに違いない。いい歳してかくれんぼも何もないとは思うが、そういうちょっとした人生のアクセントに花を添えてくれるようなスキルがあればより確実にダンジョンの探索の安全率に上乗せすることはできる。明日は一日調べものの日にして、スキルにどんなものがあるのかや、それをくれるモンスターの情報などを整理していこう。


 オークゾーンまで来たところで、一端地図を見返す。結構奥まで来たような気がするが、その間モンスターはある程度うろついてはいるものの、入り口に向かっていく様子はなかった。クイックインスタンスダンジョンみたいにモンスターがあふれ出てこないなら大丈夫、というところなんだろうか。まだまだ知らないことが多いな。


 講習でもいくつか条件が当てはまるとノーマライズダンジョンでもモンスターがあふれ出てくる現象……スタンピードというらしいが、それが発生する可能性が高まるらしい。なので定期的な駆除をしていればとりあえず大丈夫だという話にはなっている。


 この駅前ダンジョンはそれなりに深いので奥まで掃除……となるとなかなか大変だろうが、そこまできっちり手入れをされているということなんだろう。きっとこの辺りがこの時間空いてるのも、日常的に出入りする探索者がそれなりに多く、掃除されているからなんだろうな、という風に考えることもできる。


 考え事をしていると、オーク二匹とご対面してしまった。オーク二匹は初めて戦う相手なのでちょっと緊張するが、片方ずつ相手にしていては時間がかかる。ここはこっちから出向いて一匹を動けなくした後でもう一匹を倒すような動きで良いだろう。


 早速こっちに気づいたオークが順番に俺に襲い掛かってくる。先にこっちへ近づいたオークのこん棒を避け、片方のオークの足の腱を両足共に完全に切り、動けなくしたところでもう一匹のオークが襲い掛かってくる。ゴブリンよりも大きなこん棒を持つオークは、その腕力とこん棒そのものの重さを考えると受けて何事もなかったですよ? なんて言える雰囲気ではない。


 振り回されることで発生する風圧を感じるこん棒をちゃんと回避して、すれ違いざまにオークの足を切る。足を切って負傷して、オークがかがんで痛がっているスキにきっちり刃筋を立てて首を狙う。首が落ちて死なないモンスターはそういないだろう。首を飛ばして片方は退治されらたしく、黒い霧に変わった。


 先に足を切ったほうも、丁寧に心臓に剣を差し入れて一緒に黒い霧になってもらった。魔石は片方だけくれた。


 とりあえずここまで潜り込んだぞ、という証明と自己満足が得られたところで、時間を見ると午前八時。そろそろ一旦入り口のほうへ戻って換金手続きをしても良いぐらいかな。


 結城さんからのメールはまだないので、到着していないはずだ。今のうちに換金を済ませて普通に待っているのでもいいだろう。一時間ほどかけて入口まで一気に戻り、換金手続きをする。


「こんなに集めたんですね。よほどドロップ運がよかったか、それとも長く潜られてましたか? 」


 換金カウンターからの少しだけ疑惑の目線が集まる。だが、今日の言い訳は完璧だ。


「日が昇ったころから入ってましたからね。他にほぼ誰もいなくて狩り放題でした」

「なるほど、時間の使い方が上手いですね」


 逆に褒められる結果となったが、今日の換金金額45800円を財布に仕舞う。これも月曜日に一旦口座に入れたほうが良さそうだな。


 さて、結城さんは今日は来るのかな……一応連絡を入れておくか。休憩室でタダの水をもらいつつ、メールを送る。


『今丁度朝活が終わったところだけど、今日来る? 』


 うんうん、俺もナチュラルにやり取りができるようになってきてるな。これも進歩だ。


 水飲んで体のあちこちを動かしてると、ついでに腹も減ってきた。水でたぷんたぷんにすることはできるが、探索中にトイレに行きたくなっても困る。近くのコンビニで食糧調達して、ちょっとカロリーを補給しておこう。


 コンビニでおにぎりを一個買い、食べている間に結城さんから返信。


『あと五分ぐらいで到着するわ』


 どうやら向かってる最中だったようだ。都合がいいな。


『じゃあ入場手続きの前で待ってるね』


 さて、午後までのもう一ラウンド、午後もやるなら二ラウンド、しっかり戦って結城さんの補助をしながら彼女の助けになるよう頑張るか。


 彼女の助け……ん? そんな理由で潜るんだったか? 俺は別に新人育成とかを申し付かってるわけでもなければ彼女に固執する理由もないよな。でも、約束してダンジョンに潜るということは……彼女にそれなりの友情を感じていると考えていいはずだ。もしかしたら情けみたいなものなのかもしれない。


 でもまあ、一人で潜ってるよりは誰かと潜っている方が色んな意味で楽なのは確か。それがたまたま今は結城さんで、いずれは隆介やその隆介の彼女……と移り変わってパーティーメンバーが増えていくのかもしれない。それはそれで楽しみな話ではある。


 しばらく入り口で待っていると、スマホのメールがきた。


『お待たせ、入場列の所よね』


 急いで入場列の前に並び、居場所をアピールすると、向こうから見つけてきてくれた。


「なんか一作業終えてきたような感じだけど、いつから潜ってたのよ」

「えーと……五時ぐらい? 人が少なくて快適な探索だったよ」

「そこまで早く起きて戦わなきゃいけないほど収入かつかつなの? それとも穴場だったりするわけ? 」


 結城さんが心配してくれているのか、疑問形で質問を重ねてくる。こうやってダンジョンの前で対面で話をする間は大丈夫なんだよな。もしかしたら、俺は結城さんを女子としてみていない可能性もあるな。そうなら隆介と同じである程度やりやすい。よし、俺の心の中では結城さんは結城さんという特殊領域に置いて、異性であることを忘れよう。そうすれば探索中もナチュラルに話せるはずだ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
人によるけど異性であることをわすれるのは少し配慮が足りないかも? ちょっとそこら辺がガバな方が気楽で良いと評価してくれる女性もいるし。さてどう転がるか楽しみです〜
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