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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第36話:周辺状況の変化と中古品事情

 中間テストが終わってから各答案が返ってきた。ほぼ満点の科目が多かったので、どこを間違えたのか冷静に判断しつつ、同じところは間違えないでおこうと復習をしておいた。同じ問題が出ても多分次は大丈夫だろうとは思う。


 テストの貼り出しから周りの見る目も変わりはじめ、勉強も運動もそこそこやる奴、から一気に勉強もスポーツもできる探索者、になりつつある。男子からだけでなく女子からも、更に隆介とセットでいるからかやたら熱っぽい視線が降り注ぐようになった。アカネにも「元々そんなに悪い顔はしてないけど、かっこよさも磨かれているから女子に囲まれたら素直に逃げるかだれか見繕ってとっとと彼女作ったら? 」と言われてしまっている。


 隆介ならそこで喜んで彼女をとっかえひっかえしつつ自分の好みに合った女の子を最終的に見つけることができるんだろうが、そっちのほうの経験値はダンジョンでは手に入れることが出来ない。そんな俺にはいきなり彼女ができる、というのはハードルが高い。


 もっとこう、細かく段階を刻んでいきたい。ふとしたことから友人関係になって、そこから徐々に恋愛関係へもつれていくような、そういう出会いがしたい。


 昼休み、隆介に真面目な相談としてそういう話をしたら、真面目な解答として返ってきた言葉はこうだ。


「お前がそれを望んでいるなら否定はしないが、そのまず友達関係を築くところで躓いてる段階なのだから、ちやほやされている間に色んな女の子とお知り合いになって、そこから友達関係、という風にしていくのがベストなんじゃないか? 今挙動不審がちになっているお前には難しいかもしれないが、そこから大恋愛に発展することもあるんだし、あえて言うなら今がチャンスだぞ。この後進路の選択や、ここでは珍しいだろうが就職して上京して離れ離れ……なんてことになるかもしれないんだし、今彼女が欲しいなら今動け。まずはお友達からでお願いしますと素直に伝えることこそが必要なんじゃないのか? 」


 さすが恋愛巧者の言う言葉には重みがあった。その最初の一言が良い出せたらこの話は解決に向かうのだからおっしゃる通りではあるだろう。しかし現状として、どうしても気後れしてしまう自分がいる。これは……俺のメンタルというかヘタレ具合はレベルアップではなかなか成長してくれないらしい。


 いつものパスタ……今日はシンプルに塩胡椒だけでなくちょっと鷹の爪も効かせた貧乏人のパスタ風の弁当を平らげると、隆介に「ちょっと頑張ってみるよ」とだけ短く答えた。


「俺としては、彼女が出来てうつつを抜かしてる間に俺もダンジョンに入れるようになって、期末テストでも順位を大きく落としていつも通りに戻ってくれるのがうれしいんだけどな」

「それは大きなお世話だ……というか、多分次回も同じぐらいいけそうだぞ。3位を確定させることはできないだろうけどTOP10には入れるような気がするんだ」

「それはまた大きく出たな。俺と同程度のおつむを手に入れたということになるぞ」

「女の子のほうは遠く及ばないけどな。中間テストも終わったし、体育祭も終わればお前も探索者としてようやく活動できるわけだ」

「そうだ。まだダンジョンに潜ったこともないからな。どんな装備が似合うのかもわからん。その辺お前には先人の知恵というか、通りすがったりする探索者の装備を見る機会もあるだろうから、その辺のアドバイスをもらおうと思ってる」


 他の探索者か……今度潜る時はそれも意識してみておくのも悪くないだろうな。前に潜った時は他の探索者と顔を合わさないように行動してたが、凝視して注意されてもちゃんと理由を言えば納得してくれるだろうし、他の探索者の装備……特に防具か。その辺はどのぐらいのモンスターと戦うことを意識されているのか、教えてくれるはずだ。


 武器に関しては……これは中古屋でどういういきさつで流れてきたものなのか、というのを推察するほうが良さそうだろう。単純により高性能な武器が手に入ったから替えたのか、それとも使い所がなかったから売ったのか……在庫本数やその種類の武器が多くあるかどうか、という点でも見どころはあるだろう。


「その辺はまた駅前ダンジョンに潜った時や中古屋へ向かった時に色々調べておくよ。もしかしたら盾にしろ武器にしろ、いずれ買い替えることになるかもしれないからな。その時にでも調べておこう。でも、自分でも予習はしておくんだぞ? 」

「ほう、お前にしては気の利いた言い方だな。わかった、俺なりに予習しておくことにしよう」


 昼休みが終わり、今日はまっすぐ家に帰らずに制服のまま中古屋へ早速向かう。予習が大事と人に言っておきながら俺が物の覚えが悪いでは隆介に言っただけの立場がなくなってしまう。


 防具はさておき、武器のコーナーだ。値下げ! の札がかかってる物はおそらく人気がないか使い所を選ぶか、人を選ぶかのどれかだろうから、それらの武器はあまりお勧めされてないのだろうな、という予測がつく。ある程度以上に大きいハンマーや弓矢なんかはそれに該当する。


 弓矢は矢という消耗品が無くなってしまえば使えない武器ではあるのだろう。ただ、同じ在庫の物が一定量流れてきているのを見ると、何処かのメーカー品なのかそれともダンジョンドロップ品なのかはわからない。試しに手に取り観察をしてみると、企業のマークが彫られていた。おそらく、何処かのメーカーが一般アーチェリー用具に混じって探索用も売り出してみた、という品なのだろう。


 弓矢は何かかっこいいから使おう、という流れから、矢がないと使えない武器として認定され、そして中古屋へ流れ着いてそこで死蔵されている、という運命が紐づけられているように感じる。


 次に大きいハンマー。振り回さないでください、とは書かれているものの、刀剣類ではないのでショウケースには入っていない。試しに持ち上げてみるが、俺の力なら何とか持ち上げられるぐらいの重さではある。しかし、これを振り回して戦闘……となるとよほど腕力に自信がある人じゃないと扱えないんだろう。


 それに移動中に重さがあるものを持ち歩くのはそれだけで移動コストがかかる。重すぎるハンマーを選んだおかげで相当苦労したのだろう。20%引きのシールがその扱いの悪さを物語っている気がする。


 槍や剣、小剣、短剣の類は結構入れ替わっているようで、前回俺が武器を探しに来た時とはラインナップが変わっている。もしかしたら俺があのタイミングで購入しなかったら、あの剣も俺の手元に来なかった可能性があるな。やはり槍と剣、この二つは人気があるらしい。


 剣も、俺の買った中古品よりさらに品質が良いらしく、硬度も粘り強さもかなりのものであるらしい一品物が中古で流れてきているが、流石に七桁円するものは購入できない。見た目は直刀風でかっこいいんだけどな。後、剣に関しては持ち手の部分も大事だ、ということで持ち手だけが売られていて、刃先とは別で選んで購入できるようにもなっているらしい。


 日本刀みたいなものや西洋剣でも同じらしく、やはりグリップが効くかどうかと握りの幅や握った感覚、握りの太さなども考えて販売しているらしく、「この中どれでも一万円! 」と言った感じでコロコロと箱の中に転がされている。


 試しに俺も二、三個選んで握ってみたが、たしかにグリップは重要だな。今の剣とは握りが違うぶんだけ違和感が発生する。握りも大事……よし、俺も一つ学んだな。


 後は盾だが、いわゆる大盾とバイキングシールドみたいな丸盾、それから指先にちょっとつけて攻撃や矢を逸らせたりするタイプのラウンドシールドと呼ばれる小盾まで色々と並んでいた。ゴブリンアーチャーぐらいならこの盾でも防げるのかな。


 解説が載っていたので見ると、自分の視線と相手の矢の中間に手を持っていくことで耐久力を貫通しない攻撃である以上は防げるらしい。また、素材や分厚さ、大きさによってはそのまま殴りつけても効果があるし、腕をふさがないので寂しい片手のお供に持っておくのも有りだとか。


 指を曲げるのにそれほど邪魔にならないので、大きさによっては両手持ちの剣と一緒に運用することも可能らしい。


 なるほど……頭の中で自分の手のサイズに合ったラウンドシールドをつけたまま剣を運用するのを想像してみる。矢が飛んで来たら盾で防ぎ、そのまま切りかかるような自分の妄想ベースが出来上がった。だが、今の所活動できそうな範囲でいうとゴブリンアーチャーぐらいのもので、他のモンスターで遠距離攻撃をしてくる者には今の所心当たりはない。今は要らないかな。


 オークより先のモンスターにも興味はある。オークぐらいなら撲殺しても大丈夫だが、その先になるとどう変わるのか。この辺りの情報は全然仕入れてないからな。そっちの予習も必要だろう。


 今日のところはいろんな装備品に目をやった、ということで知識としても仕入れられた。後は帰ってネットで調べて、どんなモンスターが出てくるのかってあたりを調べていくことにしよう。


 帰り道に駅前ダンジョンの前を通り過ぎるが、ヘルメットを脱いだ女の子と目が合った。結城さんだった。毎日とまではいかないらしいが、日々鍛錬を積んでいることに間違いはないんだろう。一人で大丈夫なのかな。またパーティー組むことがあったらよろしくと言って連絡先は交換したものの、あれから一通もやり取りをしていない。


 家に帰ったら連絡だけでも入れてみるかな。「駅前ダンジョンにいた? 」とでも、そう、たまたま目が合ったから確認の連絡でいいんだ。隆介も最初の一歩を踏み出すのが大事だと言っていたし、これも最初の一歩だと思って俺の練習台になってもらおう。彼女はいわば俺にとってのスライムだ。


 そう言い放ったらものすごく怒られるではあろうが、そのぐらいの連絡を取るには問題ないだろうし、彼女も気軽に答えてくれるような気がしている。こうやって少しずつ経験値を溜めて、いつかまたパーティーを組むことになった時にお世話になろう。それまではちまちまとやり取りを続けていくのが大事なんだと思うことにした。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
スライム扱いは良いね。 そのうちドラコンクラスの彼女が見つかると良いね。 もし後日付き合う事になったらスライム扱いしてた事をばらされそうな未来(IF)が見える。
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