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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第32話:ボス討伐

 さて、日曜日だが昨日のパーティー戦の余熱がまだ残っている。結城さんとのパーティープレイはなかなか楽しかった。まだ二人で戦っているような感触が気持ちにそう感じさせてくれている。


 その光景を思い出してまたやってもいいな……なんてことを考えていると、頭の中身を読めるアカネから茶々が入る。


「なに、私抜きで女の子とイチャイチャしてたのがそんなに楽しかったわけ? 」

「そういうわけではないが……でも専用ダンジョンでは味わえない楽しみではあったのは確かだな」

「私もその子に負けてられないわね……というわけで私のダンジョンのほうにも目玉商品を用意したわ」


 別に勝負をしている訳ではないとは思うんだが、目玉を用意したらしい。


「アカネさんや、その目玉商品とは? 」

「ふふん、ボス部屋を作ってみたわ! この間の行き止まりの奥にボス広場を作ってボスを配置したのよ。多分今の幹也なら勝てると思うから、ぜひともチャレンジしてみてほしいところね」

「ほほう……中間テストの前に一山持ってきたわけだな。これが俺のダンジョン攻略の中間テストだと思えばやってやれないことはなさそうだ。ちなみにどんなモンスターなんだ? 」

「それは行ってのお楽しみかしらね。言っておくけど、手を抜いたり舐めたりすると多分死ぬから気を付けてね」


 最悪死ぬのか……流石にボス戦ともなるとその覚悟が必要らしい。


「ダンジョン内で死んだら俺はアカネの一部になるんだったな。そしてある日突然、俺が行方不明になってそのまま何処かへ行ったような感じになり……いや、探索者であることは調べられるから、ダンジョン内の事故で死んだ可能性がある、という風にもできるか」

「なんで死ぬ前提の話をしてるのよ。ちゃんと戦えば大丈夫だからそこは自信を持っていいわ」


 つまり、絶望的に戦力差があるわけではない、ということもでもあるらしいな。今の俺で倒せる相手……というお墨付きをもらっているということは、気軽に複数回チャレンジしても問題ないような相手でもあるということ。やるだけやってみるか


「まあ、試しに行ってみて、ダメなら途中で逃げ出すという案もある。精々気張って出かけるとするか」

「そうすると良いわ。ただ、時間をかけてボスを倒すって方法はお勧めしないわ。両手足をもぎ取るぐらいのダメージならまだしも、軽いダメージぐらいなら多分自己回復するから複数日に渡って倒すというのはあまり現実的じゃないわよ」

「じゃあ今日中か。よし、今日は気合を入れてカツ丼を作っていくか。オーク肉がまだ残ってるし、そいつを解凍して食べて、それから行こう」


 一枚四千円のオーク肉を贅沢に使って油で揚げていく。ただし肉屋やスーパーのように贅沢に油を使って揚げるということは出来ないので、ひたひたぐらいにして半分ずつひっくり返して揚げることにする。


 中まで熱が通っていることを確認して、オークカツの出来上がりだ。ご飯を炊いておいたので、炊ける時間に合わせて料理完了。三葉がないので代わりに何か乗せるもの……キャベツでいっか。これではカツ丼ではなくて、洗い物が面倒くさいからキャベツとポークカツを一緒に乗せただけの代物になってしまったな。どうせならソースをかけてソースカツ丼にしてしまおう。カツとじにするには流石に今からでは調理時間的に難しい。


 ソースをかけていただきます。アカネに吸収されていく成分もなんかいつもよりちょっと多めな気がする。自分でカツを揚げた分が手間として採用されたのだろうか。


「うん、中々の神力の美味しさだわ。これは普通に食べてもきっとおいしいわよ」

「そうなのか。早速食べてみよう。こういうのは時間を置くと美味しくないからな」


 昼のさなかからソースカツ丼とは贅沢な。しかも原価が結構高いと来ている。そして、しっかり揚げることに成功したオークカツは抜群の美味さ。カツとじにしても美味しいだけのポテンシャルがある。むしろ卵と三つ葉が負けてしまうのではないか、と心配するぐらいの肉汁があふれ出てきてたまらない。


 ご飯二杯は余裕で行けるな。お代わりをして夕飯のことを考えずに食べた結果、ちょっと食べ過ぎたかな? ぐらいの満足感を得られることになった。夕飯は……ボスを倒せてから考えるか。ボスを倒せなければそもそも夕飯の心配をする必要もないからな。背水の陣の気分でダンジョンに出かけよう。


 さて、胃袋が落ち着いたところでダンジョンへ入る準備だ。水分と……水分だけで良いな。ボス前に喉が乾いたら飲むことにしよう。緊張すると催すのも、催さなくなるからな。今のうちに出すものは出して……よし、準備できた。


 防具を装備して武器の剣もしっかり持つ。クローゼットを神妙に開けて、ダンジョンの入り口を見やる。最悪これが最後のダンジョンアタックになる、という可能性だって捨てきれない。なんか緊張してきたな。俺にしては珍しい。


 ゆっくりと、しかし確実に歩みを進め、ダンジョンに入る。ダンジョンの中はいつも通り、少ないモンスターとわかりやすい道で作られた狭いダンジョンだ。昨日の駅前ダンジョンと比べてはいけないんだろうが、やはり物寂しく感じる。


 しかし、それぞれのモンスターの持っている経験値やドロップの密度が違う。倒せば必ず魔石が出る、というこの環境はかなり特殊だ。道中のモンスターもできるだけ相手にしていって、レベルアップするならレベルアップをさせてから行きたいところだな。


 一匹ずつ確実に処理しながら進む。この辺りのモンスターならボス戦が近いからといって消耗するわけではないので、確実に倒して経験値と魔石になってもらう。ゴブリン地帯を抜け、シールドゴブリンとゴブリンアーチャーの地帯へやってきた。ここも落ち着いて出会うモンスターを可能ならステルスキルで、不可能でもダメージを負うことなく確実に倒していく。


「この辺りはもう相手にならないわね」

「慣れたからね。それに弓矢を放ってきても……こんな感じでやり過ごせるから」


 ゴブリンアーチャーから放たれた矢を当たる前にキャッチして、ゴブリンアーチャーへ投げ返す。ゴブリンアーチャーはそれで負傷し、弓を手から離した間に近寄って倒す。魔石をきっちり拾ったところで次へ進む。ここから先はレッドキャップが一匹ずつ出てくるエリアだ。相変わらず足音もせず、探知できるのはアカネのおかげとこの辺にいるだろう、という勘しかない。索敵みたいなスキルがあるならそのスキルスクロールは是非とも手に入れたいところだ。


「来るわよ、九時方向から飛びかかってくるみたい」


 アカネの声に反応してそっちをむくと、ルパンダイブよろしく全重量をかけてナイフで襲い掛かってくるレッドキャップを目視、そのまま剣で受けて、重量が剣に乗りかかったところでわざと後ろへバックステップしながらひねり回避をする。レッドキャップがそのまま地面へ滑り込み、ナイフが地面に刺さってレッドキャップがしまった! というような表情をしたところでこっちの攻撃のターン。そのままレッドキャップを切り、黒い霧に変わっていく。


「こいつもいざ戦ってみるとワンパターンな奴だよな」

「多分そんな余裕のある一言が出せる初心者探索者はいないと思うわ。普通は見つけて追い回してタコ殴りにするか、狙われた誰かが引きつけてる間にパーティーでボコるかしないと間に合わない相手だと思うわよ」

「まあ、そこはアカネのおかげ、ということで。いつも世話になってて悪いねえ」

「それは言わない約束よ……と、次来るわよ、四時方向」


 アカネに言われた通りそっちに気配を感じ取ると、レッドキャップをこっちから迎えに行く。気づかれてると思っていなかったレッドキャップは狼狽え、足が止まる。その間に距離を詰めて剣で一閃。レッドキャップは黒い霧に変わる。


「よし、レッドキャップにも慣れたな。一人でもそろそろ何とかなりそうだ」

「本当かしら。うっかり後ろからブスッとやられたりするものだけれど」


 レッドキャップ地帯を抜けてオーク地帯へ。三層に入って中々のオークの湧き具合が楽しめるホットスポットだ。オークの魔石はゴブリンの魔石よりも大きいので換金価格も高い。


「また肉が出ると嬉しいな。カツ丼はかなり美味しかったし、他にも角煮や切り落としにして甘辛く煮付けるのもいい。生姜焼きなんかもいいな。


 食欲に頭を割り振ってるおかげで、ボス部屋までに肉は一つも出なかった。これが物欲センサーという奴か。……おっと、今日の目的を忘れる所だった。今日はボス討伐に来たんだったな。これまで手に入れてきたレベルと戦闘経験を糧にして、ボスに挑むのだ。


 ダンジョンのオーク地帯を抜けたその先に、立派な門が据え付けられていた。どうやらここらしい。


「到着したわね。じゃあ、頑張ってね。私は門の外で待っていることにするわ」

「おう、いっちょ行ってくる。無事に出てくることを願っておいてくれてくれ」

「しばらくして出てこなかったらその体と心は私が吸収させてもらうから、死ぬなら出来るだけ五体満足で死んでね」

「無茶を言う……まあ、やるしかないだろうからやるんだけど、無事に戻ってくることを祈っておいてくれ」


 アカネを門前に置いたまま、門を開ける。門の中はそれなりに広い空間と、真ん中にこちらを睨みつけているボスの姿が。


 黙って門を閉める。もう一度開いて中を確認する。やはりボスっぽいモンスターはこちらを睨みつけている。


 もう一度門を閉める。ふぅ……と息をついて気持ちを落ち着かせる。結構でかかったな。オークの上位種であることはわかった。


「早く行きなさいよ」

「心の準備がだな」

「急ぎじゃないとはいえ門の開閉を繰り返してても何も変わらないわよ」

「……よし、いっちょ行くか」


 改めて扉の中へ入り、門を閉じる。さあ、ここからは他に邪魔の入らない、一対一のボス戦だ。勝った方が居残り、そして俺が勝てば生きて門から出る。ボスは通常の五割増しぐらい、二メートルほどもあるオーク。名前は……そういえばアカネに名前を確認するのを忘れていたな。生きて戻ったらあいつの名前を聞いておこう。


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
このボス部屋は入っても、出入りできるタイプなのか〜 ありがたいですね。 ダメだったら出て言って仕切り直しができる。さてボス戦はどうなるのか、気になります。
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