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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第27話:手数料には注意しましょう

 学校が終わり、家にいったん戻ってアカネにただいまを言った後、倉庫にしているベッドの下のダンボールからスキルスクロールを取り出して、もう一度出かける。


「あら、出かけるのね。でも装備をもっていかないってことは買い物かしら? 」

「んや、ダンジョンへは行く。この間のゴブリンからでた【シールドバッシュ】のスキルスクロールをギルドに売ってこようと思って」

「なるほどね。まあ、幹也が使いそうにないスキルだし、ゴブリンはこの先もちょくちょく相手にするだろうし、また落とすことを考えたらお金に換えておくのは悪い話じゃないわね」

「その辺も考えて、一度ギルドに売却すると相場のいくらぐらいを手数料で取られるのか、というのも確認しておきたいしな。まさか相場通りの金額で買い取りしてくれるとは限らないし、スキルスクロールだけを持っていくなら、自分で覚えようか悩んだんですが調べたら必要そうじゃないスキルなので売却することにしました、と言い訳もできる」


 言い訳は大事。よくできた言い訳は時に真実より雄弁に語る。実際に覚えるつもりのないスキルだし、盾を持ってダンジョンに挑む頃にはもう一枚ぐらいスキルスクロールが出ていても不思議はないので、今回は生活費を求めるために販売してしまってもいいことになる。


「じゃあ、ちょっと夕飯を豪華にするためにいってくるよ。帰りは早いと思うから」

「いってらっしゃい。夕食の豪華さも大事だけど、無駄遣いはほどほどにね」


 自転車をこぎ十数分。駅前ダンジョンに自転車を停めて直接換金カウンターへ出向く。換金スクロールはいつもの放課後のお姉さんだった。


「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用ですか? 」

「スキルスクロールを換金したいのですが」


 探索者証を見せて探索者であることを確認してもらう。その辺で盗んだり拾ったりしたものではない、という証明にもなるのでこういう時にも探索者証は必要らしい。探索者証、ちゃんと探索者である証明書以外にも身分証としても使えるらしいから、マイナカードを持ち歩かなくても探索者証を持ち歩く、という人もいるらしい。


「現物を出していただいてもよろしいですか? 確認次第値段をお知らせいたします」

「はい……これをお願いします」

「本日はスクロールだけですか? 魔石も一緒にお持ちだと思ったのですが」


 やはり、魔石とセットでスクロールを売りに出す方が多いらしい。潜って今帰ってきてスキルスクロールを出す、という場合もあるんだと思うが、ネットの簡易鑑定である程度調べてから持ってくる、というのがあるのかもしれないな。


「内容について調べて必要そうなら覚えようと思ったんですが、調べたところ使い所のなさそうなスキルだったんでやっぱり換金してもらおうと思って持って来たんです」

「なるほど、そういう理由でしたか。少々お待ちくださいね」


 素直に納得してくれた。やはりスキルスクロールだけの取引というのも珍しいケースではないらしい。数分した後、調べに行っていた職員が戻ってきたので窓口に確認しに行く。


「お待たせしました本条様。こちら【シールドバッシュ】のスキルスクロールになりますので、買い取り価格は40000円となりますがよろしいですか? 」

「来る前に相場を調べた時に50000円になっていたと思うのですが、10000円少なくなる理由があれば教えていただけますか。後学のために知っておきたいのですが」


 ギルドを経由するだけで二割も持っていかれるのは不思議な話なので念のため質問しておく。一割ならわかるが、残りの一割は何なんだろう。


「まず、スキルスクロールの相場が50000円というのは間違いございません。そこからギルドの換金手数料である所の10%が引かれます。更に、ギルドが一時的に引き取って必要な探索者に渡すための取引仲介料として10%を頂きます。これで合計20%の引き取りに関する手数料の割合となります。ギルドではあらかじめこういった仕組みになっているのですが、ご理解いただけましたでしょうか? 」


 なるほど、売る側が手数料をあらかじめ支払っておくことで相場の上下やなんかの状況変化があった場合にも後で文句を言われないようにするのと、販売時点で手数料を取っておくことでスムーズに取引ができるようにしているわけか。


「納得しました。では、買い取りをお願いできますか」

「承知いたしました。では、こちらは買い取りということで、こちらが買い取り費用の40000円になります。お納めください」


 40000円、気軽にゲットしてしまった。もしかしたら、スキルスクロールの取引のほうが時間がかからない分魔石を集めてわざと長い時間潜り込んで誤魔化すよりも楽なのかもしれないな。しかし、スキルスクロールはそれほど多く出るものではないので同じ時間にまた行くとこいつは何処でスキルスクロールを仕入れているんだ? と怪しまれる可能性が高くなる。


 登校時間と下校時間、それから夜間と三回に分けてそれぞれで良い感じに分けていく方がいいかもしれないな。それならバレる可能性も三分の一になるし、疑問に思って探索者証から紐づけされているかどうかわからないが、わざわざ調べてスキルスクロール出過ぎ問題に首を突っ込んでくる職員も少なくて済むだろうな。


 さて、40000円手に入ったことだし、帰り道にスーパーで食材を買って帰ろう。今日ぐらいは割引じゃない豚肉を買って帰っても問題はない。この40000円は生活費に純粋に割り当てていく費用だ。余った分は預金して口座に入れておくことにしよう。


 買い物に6000円ほど使って豪勢な食卓を興じられるようになったので、残りのうち30000円ほどを預金。しばらくは昼も塩パスタではなくまともな食事が食える。隆介を驚かせることができるはずだ。明日の弁当には何を作ろうかな。


 と、帰り道に探索者フル装備といった感じで自転車に乗って駅前ダンジョン方面に行く女の子を見かける。さっきのは結城さんだったような? 学校がある日にまで活動するなんて勤勉なことだな。そのやる気には見習うべきものがある。ただ、成績に響かなければいいんだが。


 俺も魔石が溜まったらまた土日にダンジョンに潜って換金しに行くことにしよう。結城さんがどのぐらいの頻度で通ってるかは知らないが、学校の成績に影響がなければいいんだけどな。これで結城さんの成績が落ちていたら俺の評判まで落ちてしまいそうだ。


 家に帰って、アカネに「ただいま」と告げる。アカネはどうやらダンジョン作業をしていたらしく、ふよふよとリビングのほうにやってきた。


「おかえり。一杯買ってきたのね。そこそこのお金にはなったってことかしら? 」

「土日に一回分誤魔化して換金してくるぐらいの金額にはなったよ。言い訳も素直に聞いてくれたみたいだし、後二、三回は使える言い訳として通用するかな」

「今晩のお供え物には期待して良いのかしら? 」

「今日は肉とじゃがを買ってきたから肉じゃがにする。人参とタマネギもいれてオーソドックスな奴だが、味付けに自信はある」

「楽しみねえ。味までは解らないけど、料理にかける情熱そのものは神力として吸い上げることはできるから、手抜きをしたらバレるわよ? 」

「まあ、手を抜くところは手を抜く。流石に一からかつおだしをとって……なんて手間は出来ないからな。麺つゆとみりんと砂糖で味付けってところかな。


 アカネに説明しながら頭の中で調味料の割合と具材の量を計り、このぐらいで良いだろうというラインで早速作り始める。


 出来上がった肉じゃがは良い感じにみりんと麺つゆが絡み合って甘く美味しく、そして新鮮な豚肉を冷凍しないまま使ったので豚肉本来の味を失わないうちに食べることが出来た。


「そういえばこの間ダンジョンで助けた女の子が居たんだけど、今日もダンジョン通いを続けてるらしい。俺みたいにレベルが上がって急に賢くなったりはしないと思うんだけど、大丈夫なのかな? 」

「なに、幹也に気になる子がいるって話? そういう話は結構大好きなんだけれど続けて、どうぞ」


 アカネの食いつきが激しい。恋愛話も神力に関する何かを発生させたりするんだろうか。


「気になるかどうかと言えば気になるな。俺みたいに専用ダンジョンがあるわけじゃなく、普通に一般人がダンジョンに潜りはじめたらどうなっていたのか、というテストケースとして一つ見るべきところがある。実際にはどのぐらいで結果が追いついてくることになるかっていうのを計算できるなら計算したいところだな」

「なるほど、そっちの興味なのね。てっきり女の子として意識してるのかとおもって前のめりになりすぎてたわ。さすが彼女いない歴と年齢が一致しているだけはあるわね」

「うるせえやい。大学デビューって言葉もあるし、まだまだチャンスはあるはずだ」

「まあ、それまでは私がいてあげるからそれで満足しておきなさい」


 にっこりと笑うアカネ。触れられてもうちょい育ってたらそれでもいいと言ってしまいそうな自分がうらめしい。


「思考に出てるわよ。でも、悪くないと思ってもらえたのは良いことね。その調子で頑張って」


 チアの衣装があったらボンボンを振って応援しそうなアカネが幻視できた。ちくしょう、俺をダシにして楽しんでやがるな。


 肉じゃがを美味しく食べながら悔し涙が出そうだ。だが今日も美味しいな俺の料理は。もう主夫として生活できるんじゃないかと思うぐらいに美味しい。今度隆介に食べさせて味の出来のほうを比べてみてほしくあるぐらいだ。ちくしょう、美味しいなこの野郎。やはり素材が新鮮なのもあるか。冷凍してない豚肉のこの美味さが何とも言えねえ……


 一食分にしては作りすぎたので、残りは冷蔵して明日の弁当に入れよう。早速隆介に味見をさせて俺の男子力を見せつけようではないか。


 明日の弁当の具材は早々と決まったことで時間的な余裕が出来た。勉強でもしておくか。テキストをパラパラッとめくって、次の授業で使いそうな話題に赤線を引くとそのまま閉じ、開かないままに暗唱。開いて確認。合ってた。この調子で勉強しておけば明日は問題ないかな。


 今日はダンジョンは休みだ。ちゃんと学生であることを忘れない程度に頑張ると、電気を消して寝る。その間ひたすら俺の勉強する様子を見ていたアカネは、黙って俺の勉強を見ていた。道祖神も学習するのかな。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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