表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/56

第25話:再戦レッドキャップ

 色んなゴブリンとの戦いを得て、更に二層の奥から三層目あたりへやってきたようだ。それが感じられるのは、ゴブリンの気配がなくなったことと、何かに見つめられているような気がしている、という勘からだ。


「この辺からはレッドキャップって呼ばれてたかしら。ちょっと強いゴブリンが奇襲してくると思うから充分注意してね」

「アカネっていう優秀な索敵センサーがいるから今日のところは安心して進めそうだな」

「いないときのことも考えて行動するのが探索者ってもんじゃないかしら? 」

「少なくともこのダンジョンでは俺しか入れないからな。アカネもまあ例外としては入れてるが、使えるものはできるだけ使いたいとこ……くるか」


 一瞬殺気みたいなものを感じて振り向くと、斜め後ろからジャンプして襲ってくるレッドキャップの姿を確認する。


 その手に持ったナイフに自身の全体重を込めてこちらへ突き刺そうとしてくるが、そもそもゴブリン自体があまり重たい体をしていないからか、ナイフに沿わせる形できっちり刃にまとわせるように剣で受け止め、レッドキャップの全体重を支える。これもレベルアップの効果なのか、それほど重いとも感じずにレッドキャップを受け止めた俺はそのまま押し返してレッドキャップを壁に向かって放り投げる。


 壁に激突させられたレッドキャップはその衝撃でナイフを落とし、どこへ行った……という風にフラフラと探し出す。その間にレッドキャップに近寄ると袈裟懸けに切り目を入れ、確実にダメージを負わせた。レッドキャップはそのまま黒い霧になって散っていく。後には魔石が残った。


「戦った経験があるみたいね。割と手慣れていたわ」

「普通のダンジョンで二回ぐらいかな。こうなると、忍び足で寄ってきて斬りつけてくるパターンも同じかな? 気を付けてさえいれば大丈夫な相手だとは思う。今みたいな戦い方は包丁槍ではできなかった戦い方だし、武器が手に入ってよかったってところかな」

「そう、じゃあ次も気を付けて戦ってみてね」


 軽くアカネとやり取りした後、また奥へ進むと、今度はレッドキャップの背後を取ることが出来た。静かに忍び寄り、レッドキャップの背中を射程に収めたところで一気に斬りかかる。レッドキャップも斬られるまで気づいてなかったようで、そのまま黒い霧になり散る。魔石が残った。


 レッドキャップの魔石は一個いくらなんだろうか? 500円より安いことはないとは思うが、普通のゴブリンを狙うのとレッドキャップを狙うの、どっちのほうが効率が良いんだろう。


 レッドキャップがどのぐらい湧いて出るかは解らないが、少なくとも単騎で出てきて、お供のゴブリンなんかを連れてない辺り、生息数は少ないと考えられる。もう数回戦ってみて、レッドキャップとの戦い方を確実なものにしたいところではある。もう少しこの辺りで踏ん張ってみるか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 しばらくこの辺りをうろうろしながら簡素な地図を描いて、入り口からここまでの地図っぽいものは出来上がった。アカネが索敵をしてくれるおかげで地図を描いてる最中に襲われることがないのが強み。アカネ自身も、そうやって俺が怪我をすることを良しとしないのか、わりと先のほうにいるにもかかわらず早めに教えてくれるので助かっている。


 レッドキャップとは様々なシチュエーションで二十回ほど戦い、それぞれで別の戦闘体験を得ることが出来た。基本的にレッドキャップはこちらを見定めた時点で身を隠す習性があるらしい。そして、自分が一番攻撃しやすいと思ったタイミングで攻撃をしてくる中々の知能犯だ。


 こちらはアカネに事前に教えてもらっているのでそちらに気を取られつつ、地図を仕舞って気づいていないふりをしながらその地点を過ぎ、レッドキャップがこっちに牙をむいた時点で逆に襲い掛かることで戦いを無事に終えられている。


 また、レッドキャップもどうやらスキルスクロールをくれたみたいだが、相変わらずスキルスクロールの中身は何が書いてあるかわからない。今度駅前ダンジョンに行った時に説明が聞けると嬉しいが……誰かスキルスクロールの中身を翻訳している人とか居ないのかな。ネットで探してみよう。


 とりあえず今日はレッドキャップとの戦いでしっかり戦闘経験というものを積ませてもらったので、レベルが上がらなくても気にせず帰ることにした。帰り道のゴブリンとスライムでしっかり魔石は溜めることが出来たので、また今度駅前ダンジョンに通った時にまとめて換金してもらおう。


 自分の部屋の中に戻ってさっき調べたかったスキルスクロールの解読を行っている探索者がいるかどうかを探してみる。日本語で解説しているサイトは少ないが、スキルスクロールの画像をアップロードすると自動でどんなスキルのスクロールかを判別してくれる便利サイトが海外にあるらしいという情報を掴んだので、早速そこにアクセス。


 シールドゴブリンとレッドキャップがくれたスキルスクロールの画像を取り、ネットにアップして解析を行ってもらう。自動でやってくれるとか、やはり人類の進歩は凄いな。実際は何種類もある画像の内容からほぼ一致する内容の画像を検索して表示しているだけなのだろうが、わざわざ対面ではなく自動でやってくれる辺り、デジタル文化の風を感じる。


 しばらくして結果が返ってきた。シールドゴブリンがくれたスキルスクロールは、想像通り【シールドバッシュ】の効果があるらしい。続けて、レッドキャップのくれたスキルスクロールを鑑定してもらう。出てきた結果は【スニーキング】と英語で表示されていた。日本語訳にかけ直すと、いわゆる忍び足に該当するらしい。


 効果はそれぞれ、【シールドバッシュ】は盾で殴って相手をひるませる効果をある程度体になじませる形で繰り出してくれるらしい。どうやら頭で念じるだけでスキルを発動してくれる、という形のようだ。面白いとは思うが、盾を持たない俺がどういうシチュエーションでシールドバッシュを行うのかが想像がつかないので、こっちのスキルはとりあえず保留ということにした。


 もう一つの【スニーキング】だがこちらはいわゆるパッシブスキルと呼ばれるもので、覚えるだけで身体に自然に染みつき自動的に発動してくれるスキルとなっている。効果は、足音を小さくして存在感を薄くする効果があるらしい。


 どちらも予想金額が付いており、【シールドバッシュ】は比較的で安いスキルなのか、それでも50000円の金額が、【スニーキング】のほうは気を付けて移動すれば似たような効果は発動できるとして200000円の価格が付いていた。どっちもちゃんと金になるという点では有用なスキルではあるが、今回はスニーキングのほうを覚えてみようと思う。


 これがあれば隆介の背後を取って「背中がお留守だぜ」ごっこができるようになるし、普段の足音が消せるということは足音や物音に敏感なレッドキャップを相手にする時もかなり楽に戦えるようになる、ということになる。そもそも一人行動なのだから、この手のスキルはマストである可能性が高い。本当なら索敵とかモンスター捜索とかそういうスキルがあったらいいなあとは思っているが、こんな浅い層で出てくるには便利過ぎる。


 そういうのはもっと深くに潜ってから改めて手に入れるようにしていこう。さて、スキルスクロールはどうやって使うんだ? 使い方のサイトを探しにまたネットの海に潜る。


 スマホを充電しながらネット検索しているのでスマホが爆発しないか心配だが、スマホの買い替えぐらいなら最悪この【スニーキング】を販売に出せばいい。それに俺のスマホもバッテリーも、充電ケーブルも日本製品だから信頼性はバッチリだ。


 スキルスクロールの使い方は、スキルスクロールを開いて使用する、と深く念じることで使用が可能になるらしい。特別なコマンドや、特定の言語、特定のセリフなんかが必要というわけではないらしい。この辺は万国共通で、英語サイトを開いて同じような説明をしているサイトでも同じことが書かれていたので間違いないだろう。


「早速使ってみるの? 」

「どうせ覚えるんだから早いほうがいいしな。それにもう一枚出たら今度こそ売りに出せばいい。このスキルスクロールが本来どのぐらいの頻度で落ちるものかは解らないけど、少なくとも一人で探索をする以上、この手の自分の身を守ったり先手を取ったりするスキルに外れはないはずだ。デメリットの陰が薄くなるのは……まあ、そう気にするものでもないと思うしな」

「まあ、何でもいいとは思うわ。好きにしたらいい。私の陰まで薄くなるんじゃちょっと困るけどね」


 スキルスクロール確認サイトでもう一回確認して、たしかに【スニーキング】のほうのスキルスクロールを開くと、頭の中で「覚えたいです、覚えます」と念じる。


 すると、スキルスクロールの文字が光り、俺の中へ吸い込まれていくように文字がなだれ込んでくる。これがスキルスクロールを覚えるという儀式なんだな。全ての文字が俺の中に入っていった後、スキルスクロールは塵となって消え、後には何も残らなかった。これで、スキルを覚えるという儀式は終了らしい。


 試しに部屋の中を歩いてみるが、自分では感覚がわからない。足音がそれほど鳴るような床もなければ、聞いているのが自分自身なので反応の使用がない。


「なるほど、たしかに足音が小さくなっている気がするわ。体重がかかってないというか、猫の足音が聞こえにくいのと同じような感じなのかもしれないわね」


 アカネからは認識できるらしい。ということは、他の人から見てもそう感じるのだろう。サンダルを履いてぺったんぺったん歩いている時でも同じく【スニーキング】の技能は働いている可能性は高いな。サンダルで忍び足……なんだか想像しにくいが、とりあえず俺もスキル持ちの探索者になれたということだ。


 今日はレベルが上がらなかったがそれ以上に見合う成果が出たし、レッドキャップと戦うときの心構えも出来た。良い日であったとは言えるだろうな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どうしても情報抜かれてるイメージが。 アドレスからどの辺りでどんなスキルスクロールがでたくらいは収集されてそう。
海外だけどサイトでスキルスクロールの中身が分かるのは便利ですね。現代ならではだな〜。 でも自分で魔導具?とかアイテムなりスキルなりで鑑定出来たら、ダンジョンの中でも直ぐに有用なのを使えて緊急時にも役に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ