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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第23話:モテ期か?

 忙しい土日を終えて平日になり、いつもの授業、いつもの屋上の風景、そしていつものパスタ。でも今日は塩パスタではなくトマトソースのパスタだ。弁当一面に敷き詰められたパスタの底に、トマトソースが押し込められている。


 隆介は最初「なんだ、新しい武器を買ったからまた塩パスタか? よくそれで舌が納得するな」と茶々を入れていたが、弁当箱の底に沈んだトマトソースに気が付き、「塩じゃない……剣のあまり金で買ったのか? 」と少し驚いていた。


「なんだかんだで稼いで帰ってきてるのは確かみたいだな。スタートダッシュに成功してさぞ心地よかろう」

「そういうわけではないが、今の所トントン拍子に進んでくれているのは確かだな。隆介のおかげでもある」


 素直に礼は言っておく。実際、あの時に折半で防具買い合おうぜと言われなかったら自宅ダンジョンでひたすらスライムだけ潰していた可能性もあるからな。


 スライムと言えば、結城さんはどうしてるのかな……と、屋上の隣の校舎の位置になる隣のクラスのほうの窓を見ると、こっちをこっそりと見つめる結城さんの姿があり、目が合った。


 すると、結城さんがこっちへ送っていた視線を外し、何処かへ移動したようだった。やはり、教室からはここは目立つのか。だとすると、今相当見られてる可能性があるということにもなるが、かといってこのベストプレイスでの食事は俺には欠かせない学生生活の一幕。譲れと言われてもそうそう譲るつもりはない。


「幹也、言わずにいたがお前相当目立ってるぞ。あちこちから視線がビシビシ飛んできてる気がするぞ」

「かもな。隆介も俺とセットということで顔を売ってて、俺と仲がいいから顔つなぎを頼まれたりしてるのか? 」

「実は何回か既に頼まれたりはしているが、今の所俺のところでシャットアウトしている。本来なら友人には良い彼女がいてほしいもんだが、今のお前に声をかけようとしているのは探索者として活躍している姿のお前だろうからな。お前がもし誰でも良いから彼女が欲しいってなら止めないけど、探索者として金稼いで儲けてるお前が目的で寄り付いてくる女の子は多分お前の望むような形の女の子じゃないだろう? 」


 そんなに話題になってたのか。授業中も授業に集中しているから気づかなかったし……言われてみればこの屋上にはいくつか視線が通っている。あちこちを見回して教室の中を見ようとすると、皆揃ったように視線を外そうとしてくる。


 どうやら気にはなるが見られるのは嫌らしい。一方的に俺はこんなに視線を浴びていたのか。隆介に言われるまで気にすることはなかったな。


「あの」


 ふと気が付くと、さっき教室の窓際にいた結城さんが屋上まで上がってきていた。そのままこっちへ歩みを進めると、野菜ジュースを手にこっちへ渡してきた。


 彼女、ダンジョンでは髪をまとめていたが本来はビッグテールにしているのか。茶髪がブレザーの濃い紺色との対比になってて、かなりダンジョン内よりかわいく見えるな。


「これは? 」

「昨日のお礼よ。借りっぱなしもあれだし、あんまり派手にお礼するのは趣味じゃないし。それぐらいでちょうどいいでしょ? 」

「お、幹也もモテ期か? 結城も、こういうのが好みなのか」

「小林、冷やかさないで。これはちゃんと理由あって、ダンジョンで助けられたお礼としてちゃんとこれで貸し借りなしってする場なんだから」


 ダンジョンでの心細さが素だったのか、それともこっちが素なのかは解らないが、若干頭の上のほうから押さえつけるような言い方に少し奇妙な感覚を覚えたが、彼女には彼女なりの自分というものの扱い方を心得ている、というところなのだろう。


「わかった、有り難く頂いておくよ」

「それで本当に貸し借りなしなんだからね! 」


 そういうと、そのまま校舎に戻っていった。後ろ姿を追いかけたりもせず、早速野菜ジュースを頂くことにした。今日は一日分以上に野菜を摂取することになったな。儲け儲け。


「幹也は……ああいう子、好みか? 」

「どうかな。内面を知ってからでも遅くはないと思うけど。少なくとも外見で判断するようなことではないとは思う」

「なるほどな。結城は男子からの人気もそこそこあるから今頃歯ぎしりしてこっちを睨みつけてる奴は数人いるかもしれないぞ」


 改めて校舎のほうをみると、さっきより視線が多い気がする。告白でもするのか? しないのか? どっちだったんだ? みたいな空気が漏れ出ているようにも感じる。


「まあ、急ぎで彼女を募集している訳でもないんだし、結城さんとはダンジョンでまた出会うこともあるかもしれないしな。その時にまた会ったらなにかあるかもしれないが……まあ、駅前ダンジョンもそんなに狭くはないし、そう出会ううこともないだろ」

「実際の所どうなんだよ。女の子としてみるだけならお前の好みか? どうなんだ? 教えて見ろよ、俺にだけこっそり」

「うーん……そうだな」


 実際にかわいいかどうかで言えばかわいいほうなのは間違いない。女子からも人気だし、男子からもそこそこ人気なのは今の隆介の会話でわかった。後は性格だが、少なくとも素直さは少し欠けている気はする。もうちょっと馴染んだらそうでもなくなるかもしれないし、今日ちょっとツンツンしてたのは人前だから、という部分もあるかもしれないしな。


 そうなると、後は俺がなってほしい彼女のタイプや性格の話になるのか。うーん、そうなると……


「おーい、おーい……」


 隆介が呼んでいる。


「なんだよ、人が真面目に考えごとしてるところに」

「彼女って、そんなに悩むことか? 」

「悩まないものなのか? 一時とはいえ人の人生を共にする相手だぞ」

「それはちょっと重たすぎる発言だな。お前に彼女が出来ない理由がまた一つ分かったよ」

「そんなに気楽なもんか? 彼女作って別れてって繰り返してるお前には元カノが学校にいるとかちょくちょく顔を合わせるとか、そういうことには負荷がかからないというのか」


 俺なら学校内に元カノが居るって考えるだけでも、今カノとの話し合いバランスなんかで割と板挟みになるような気がしないでもない。元カノは元カノでスッパリ切って、今カノを大事にしていくような感じなのだろうか。サッパリ人生経験がないからわからない。


「まあ、そのへんは隆介先生にありがたいお話を聞いてバランスを取っていくことにするよ」

「良い心がけだな。その辺のテクニックには俺に一日も二日も長がある。俺に任せておけば女の子対策もテスト対策もバッチリだぞ? 」

「そのまま別れる経験もセットじゃないだろうな? と言っても俺らも三年だ。進路によってはそのまま別れる可能性もあると考えると……そこまでセットにしてもらった方が割引も利きそうだが」

「お前に限ってはそこまでの受講料は無料でやってやろうとも。俺も親友についに彼女が出来てうれしいところではあるしな」


 調子のいい奴め。人の恋愛をダシにして少し面白がってやがる。痛い目見ればいいのに。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 side:結城彩花


 お礼は渡した。これで貸し借りはなしってことにしておいてほしい。次からまたダンジョンで出会ってもたまたま学校が同じでクラスが隣の女子が探索者やってるってだけで終わってくれるといいけど。


 クラスに戻ると、他の女子から冷やかされる。


「お、告白してきたお嬢様のお通りだ~」

「別に告白なんてしてきてないわよ。ただ、昨日の借りをちゃんとした形で返しただけなんだから。モンスターに囲まれてたところを通りがかって助けてもらったんだからお礼するのは当然でしょ? 」

「でも、わざわざお昼休みに行くことないんじゃないの? 差し入れは何入れてきたの? 」

「野菜ジュース。あんまり重たい物貰っても迷惑だろうし、勘違いされても困るからね。その辺の自販機で買った奴を渡しただけよ」

「で、どうなの? 脈あり? 」

「だからそんなんじゃないってば! 」


 周りがうるさい。こんなに冷やかされるならお礼なんてしなくてよかったかもしれない。でも、そのまま何もしないじゃ私が納得できないから、これはそう、儀式みたいなもんよ。


「にしても、本条最近かっこよくなったよね」

「ダンジョンから無事に出てきて探索者として仕事し始めてからみんなも見る目変わったみたいな感じ。前は小林目当てにちょこちょこ屋上に行く女子は居たけど、今は明らかに盗撮というか覗きというか、そういうミーハーな女子も増えたよね」


 クラスから見える隣の校舎の屋上の景色には、たしかに女子が多い。さっきまで自分もあそこにいたかと思うとちょっと恥ずかしい。私もあれの一員……という風に見られているんでしょうね。


「ともかく、ダンジョンについてはもうちょっと頑張ってみる感じにしてみるわ。本当にダンジョン効果で本条がかっこよくなったなら、私もダンジョンに通ってモンスター倒せばレベルアップ? みたいにより綺麗になれるかもしれないし」

「でも、そんな話聞いたことないよ? 本当にダンジョンに通ってイケメンになるみたいな効果あるのかな」

「少なくともダイエットにはいいわよ。全身運動だし」

「私も十八歳の誕生日来たら行ってみようかな……一月だけど」

「資格自体は半年前から取れるらしいわよ。この調子だと、気になる人は夏休みにあらかた取りに行きそうなものよね」

「小林君は誕生日まだなんだっけ。元カノとしてどうなのよ」

「あいつは六月だったかな。だから中間テストが明けてしばらくするまでダンジョンには潜れないはずだから、隆介を実験台……見本にしてどのくらい変わるかを見極めることはできるんじゃないかな」


 他の女子がにわかに沸き立っているのを横目に、お昼ご飯を食べながら考える。確かに助けられたときは少しドキッとしたかも。でも、あれはつり橋効果みたいなものだと自分に言い聞かせておきましょう。


 どっちかというと陰キャよりだった本条君が活躍をして、隣にいる小林のおかげで本条君のヒエラルキーが一気に上昇したのは間違いない。これもダンジョン通いの成果ってことになるのかしらね。だとしたらダンジョントレーニングというのもあながち悪いもんじゃないかも。私もダンジョンに潜って綺麗になったり賢くなれるならどんと来いって感じね。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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