表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/56

第19話:実地試験、見えるのかどうか

 さて、探索者として真面目な一歩を踏み出せたのは確かだし、人のつながりも得られた。後は日常の中にいかにうまくして収入を得つつ探索者としての実力をつけていくかだな。その為にはしばらく金稼ぎのための武器を買い求める所から始めないといけない。そして、武器に金を使う前に隆介には借金を返しておこう。


 自室にある金銭関連の管理用引き出しの鍵を開けて、今日までに溜めてきたへそくりと今日の稼ぎ、そして隆介への借金を棒引きして明日返すことにして、その残りで生活費と剣の代金を賄わなくちゃいけない。割と近いうちに何とかなりそうだな。そして学校が終わってチョイと暇な時間が出来た時に駅前ダンジョンに潜って、ダンジョン内で手に入れてきましたという形で換金して少しずつ金を稼いで行こう。


 今日の探索は……どうするかな。コンスタントに稼いでおきたいのは事実だけれど、明日の授業のこともあるし、ちょっとだけ潜って終わりにして、明日の予習でもしておくか。


「あら、潜るのね? 」

「浅いところだけね。行ってもゴブリンまでかな。換金が自前で簡単に出来ない以上、根を詰めてダンジョンに潜る必要性はないし、そこまで多くの魔石を一気に換金したとなれば入場時間と退場時間を監視カメラで確認されて明らかに多すぎる……なんてところからダンジョンの存在がばれてしまっても困る……バレると言えば、このダンジョン、俺以外には見えてるのかな」


 ダンジョンから手を入れたり出したりしながら聞いておく。誰かを、というか隆介を部屋に招き入れた時にダンジョンをうっかりみられでもしたらそこから大惨事の幕開けだ。隆介からはそんな稼ぎ方があるんなら俺にも一枚噛ませろよと言い出すのは確かだろうし、言いふらさないにせよ何かしらのずるいやそういった方向性の話題になるのは目に見えている。


「一応見えなくはなってるとは思うけど……確かに他人の目からどう映っているのかは気になるところよね。かといってその為だけに友人呼びに行ったりするのも変な話だし。何か呼びつける理由が必要かしらね」

「その心当たりがあるといえばあるんだが、その際にクローゼットを開けっぱなしにしておいてなんでこんな所にダンジョンがあるんだ! ってなった場合にまた問題が発生するんだよな。俺しか入れないとはいえインスタンスダンジョンを隠しているのは探索者の違反行為に当たるし」


 二人して腕を組んで頭を悩ませる。


「まあ、ばらす理由はないにしろ、せめて私が見えるかどうかぐらいは判断材料にしてもいいんじゃない? 友達呼ぶなら……隆介だっけ? お金返すついでに家まで取りに来てもらうとかそういうはなしにすればいいんじゃないかしら。その時に私が周りに浮いてても見えてないならダンジョンに関しても教える必要性は薄いと判断できると思うわ」

「なるほど、段階を刻んでいくわけか。もしアカネが見えるならこれは一体どういうことだ、ということになって、そこで初めてダンジョンを見せて俺だけ入れるダンジョンが出来てるんだよ、という説明にもなると」


 なるほどな、そこまで段階を踏んで徐々に説明していって、もし見えるならそこは隆介の判断に任せることになる。もし今試しに潜ってみたい、といわれても、俺専用ダンジョンが本当に俺専用ならば入ることか見ることが出来ない場所、として確かめさせることもできる。


「よし、そういう方向性でいこう。隆介には明日金を返したいという理由をつけて……そうだな、結構な金額になるし、わざわざ学校にそんな大金持ってきてるのが教師にばれたら一悶着になるだろう。ただでさえ今日の話で俺が探索者やってることで学校に目はつけられてるだろうから、それに加えて借金や共同購入のやり取りまでしていた、なんて話をするのはマズイとあいつでも気づくだろうしな」

「それは中々いい言い訳ね。じゃあ、明日早速呼んで帰りに連れてくるということで良いのね? 」

「ああ、その予定で頼む。それでアカネが見えたらそこから静かに大騒ぎってことになるな」

「その隆介って、家が神社だったり寺だったり、宗教家だったりはしないのよね? 」


 アカネが物理的に見る条件にはそういうのもあるらしい。自分からそう打ち明けるということは、そういう家の生まれの者には見えやすい条件みたいなものが付加されているんだろう。


「一般も一般の家庭だったはずだ。家族も元気だし弟がいたはずだ。弟の出来のほうまでは知らないが、隆介本人は勘が良いし成績もいいし顔も良い。尻も軽いとかなりお値打ちな物件になってるはずだぞ」

「友人なんでしょ。そうそう売るような流れにしないの。でも一安心だわ。これで一つ私が見えにくい理由がわかったところで明日の本番に向けてしっかりしなきゃいけないのは解ってるわね? 」

「ああ、俺としては見えないほうに賭けたいところだな。そのほうが面倒がなくていい」

「でも、強くなった、賢くなった原因としてそれが見えるようになるのは便利じゃないの? 説明が一気に進むわよ」


 アカネの言いたいこともわからないではない。しかし、今の俺としてはこの俺専用ダンジョンと俺専用アカネが他人にも見えるのかどうか、そしてもし使えるのなら俺専用ダンジョンは俺専用ではなくなる、ということにもなる。その辺アカネがどう設計したのかはわからないが、本当には入れて見れて中で美味しい思いが出来るのが俺だけなのか、という点については考慮するべき部分があるだろう。


「よし、明日の方針も決まったところで、今日も潜るか。ただ、普通ゴブリンが湧くところから先へはまだ行かない。収入として怪しまれるところもあるし、レベルがこれ以上上がって更に自分の身体がわけわかんないことになるのを防ぐためでもある。決まった金額分魔石が溜まったら帰ってくる感じでしばらくは運用かな」

「そうね。それに、いい加減その包丁にパイプくっつけただけの武器じゃ心許ないんじゃない? 」

「それについては中古品を取り扱ってる店で良い物を目にしてきた。それを手に入れるまでは少しずつ換金してお金をためていこうかな、とおもっている」

「いいんじゃない? ちょっとずつ混ぜ込む形ならきっとバレないわよ。一日十個ずつでもいいから適当に探索しにダンジョンへ潜って、そのたびに少しずつ現金に変換していけばいいわ。私のダンジョンのほうも急いで潜る必要があるわけじゃないんだし、あなたのペースでやっていけばいいと思うわ。長い付き合いになるのかどうかは解らないけどね」


 よし、いつもの装備に着替えて早速ダンジョンだ。今日の目標は一時間。一時間でどれだけモンスターを倒して回ることができるか、ダッシュ大会とは言わないが、自分の今の体の状態を意識に馴染ませることでうまいこと動かして行けるようになるのが最優先だ。レベルが上がったらまたやり直しになるが、それまではまだ大丈夫だろう。今日も張り切って探索しよう。


 探索した後は飯と風呂と、それから明日の予習。勉強に使う時間も随分短く出来ていることだし、ダンジョンに長く潜ったほうが勉強効率が良くなるという意味わからない状態になっているが、その内レベルだって上がりにくくなってくるはずだ。そこが一時休みのタイミングだな。


 鬼沼先生にはかばってもらった恩義がある以上、探索者やってるから成績が落ちるんだ、なんてことを言わせたくないしな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 翌日、いつも通り塩パスタをあえて作って昼食にし、いつもの場所で食べていると隆介がパン片手にやってきた。


「よう、有名人。昨日の稼ぎで豪勢な昼食を……楽しんでないな、いつも通り塩パスタか」

「よう、今日は彼女弁当じゃないのか? 」


 気軽に彼女弁当じゃないことをつつくと、予想外の返事が返ってきた。


「それがな、お前のファンになってしまったらしくてむしろお前に弁当を作りたがってたぞ。人の彼女を取るんじゃないこの野郎」


 肘でつつきながら言い訳を述べてくるので俺のパスタが揺れる。地面に落ちたらそれこそ喧嘩だが、そこまで強くない所を見ると、まだ挽回の余地があると考えているんだろう。


「昨日は応援に来てくれた探索者が優秀だったからだよ。俺は本当に浅い階層のモンスターしか倒してないからな。メインで出張ってきてくれてた一緒に出てきた探索者さん、大谷さんって言うんだけどその人のおかげだな」

「そうか、お前は雑魚掃除メインだったのか。だったらまだまだ俺にも追いつく余地はあるな」


 隆介は安心すると、いつもあいつが大好きな焼きそばパン揚げ玉のせを食べ始める。あっちの方が値段が高いのは普段の小遣いの多さからくるものなのだろう。もしかすると、隆介自身も自分で金を稼いで家の家計をちょっとでも楽にしよう、なんてことを企んでるのかもしれないな。


「そうだ、今日塩パスタなのは理由がある。お前に借りてた分の金、返すだけの金額が溜まったんで今日のうちに返してしまいたいんだが、帰りに家まで来れるか? 」

「お、中々早かったな。俺の誕生日まで待って俺に古くなった防具を渡して、その間に稼いだ金で新しい防具を買う、という選択肢もあったんじゃないか? 」

「それでもいいんだが、金の貸し借りは出来るだけ短い間にしておきたいからな。それに学校に大金持ってくるのもなんかいやだし、昨日の一件で俺はきっといろんな人に目を付けられている。そんな中でお前とここで金のやり取りなんかしてたら教師に通報されて生徒指導室に二日連続で呼ばれるようなことにはなりたくないからな」

「なるほど、たしかにそうだな。俺まで目を付けられて探索者になって……となると確かに都合が悪いな。わかった、授業が終わったらお前の家に行くことにする」

「おう、頼むわ。借りた側なのに悪いな、わざわざ来てもらうようなことになって」

「構わんさ、俺が元々話題を振りまいた側だ。俺の狙い通りお前が借りてるうちに稼いでその後防具を……というのが予想だったんだが、見事に予想を外してくれて嬉しいよ」


 隆介はうまくいかないことを望んでいたらしい、なんて奴だ。付き合いが短い奴なら殴っていた所だ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ