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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第161話:換金と威圧と問題と

 スケルトンメイジエリアからホブゴブリンエリアに戻り、再び二体連れのホブゴブリンと出会う機会もあったが難なく通り抜け、そのまま十層のワープポータルまで戻ってきた。


「ふー……今日は色々あったな」


「レベルアップもできたし、良かったことだらけなんじゃないのか? 隆介としては」


「そうだな、早速家に帰って勉強の復習をして、レベルアップの成果とやらを確認させてもらおう」


「あと、あまりレベルが上がったと言いふらさないほうがいい、という点だけは注意しておいたほうがいいな。レベルアップで賢くなれるなら、と半分受験を捨てた連中がダンジョンに向かい出す可能性もある」


 別にそれで探索者が増えること自体には問題がないが、レベルが上がらないと文句を言われたり、金がないから装備をそろえられないとか後から言われても困る、というのがあるし、その対応は俺たち三人でしなくてはならないことになる。それは面倒なので御免被りたい。


「そうだな、ここは一つ三人だけの秘密ってことにしといてくれ」


「いいわよ、その方が面倒ごとがなくてよさそうだし。あ、それと彼女さんにも黙っておいたほうがいいかも。今からになって必死にダンジョン通い始めて……なんてことになったら困るのは小林でしょう? 」


「うーん……わかった、できるだけ隠すように努力はしてみる」


 自信なさげに返事をする隆介。こいつにしては珍しく言葉を濁すな。もしかしたら自慢したくて仕方がないのかもしれないが、そこはちょっと落ち着いて考えてほしいところだ。


「とりあえず、退場処理して換金に行きましょ。後、スキルスクロールの鑑定もしないと」


 そのまま一層にワープし、退場処理を行ってから換金所に向かって、テーブルを確保したところで彩花にスクロールを持ってもらい、スクロールの鑑定サイトにアクセス、写真を撮り、鑑定サイトに鑑定を依頼する。


「さて、青のスケルトンメイジからは本当に水魔法が出るのかなっと……」


 しばらく鑑定に時間がかかった後、結果が返ってきた。結果を翻訳すると、どうやら本当に【水魔法】のスキルスクロールらしい。


「うん、【水魔法】だな。覚えるか、それとも売るか。覚えたい人いるか? 」


「はーい、僕ちゃん覚えたいでーす、ハハハ」


 俺が二人に声をかけたつもりだったが、隣にいたガラの悪い探索者パーティーが彩花の手の中にあったスキルスクロールをサッと無理やり取り上げる。


「おいおい、覚えるより売るほうが金になるだろ。お前【水魔法】まだ一つも覚えてないんだから」


「それもそーだな。よし売るか、ご・ち・そ・う・さ・ま」


 そのまま換金カウンターへ持っていこうとする手を彩花が無理矢理抑える。


「なんだ? 何か文句あ、あ、あれ? 」


 彩花が全力で引っ掴んでいるせいであろうが、手を振りほどけずに不思議そうに彩花の握る手を見つめている。


「返してくれる? それは私たちのよ」


 彩花が握る力を段々加えていき、手形が確実につきそうなぐらいまで握りしめる。ギリギリ……という効果音すら聞こえてきそうなぐらいの力強い握りしめ。レベル十代後半ともなると、単純な握力だけでも相当なものになっているんだろう。


「いててて、いてえ、折れる、おれるうっ! 」


 探索者がスキルスクロールを手放したところで、彩花が手元に取り戻してガラの悪い探索者からそっと手を離す。


「いってぇ……折れたかも……いや、折れた! 折れたぞ! 」


 急に元気になり、折れたコールを始める探索者。それを見てにやつく探索者パーティーと、また問題起こしてる奴がいるよ……とバックヤードに声をかけて、警備員代わりの探索者を呼びに行った受付員と、またこいつらかよ、とボソッとつぶやいた別の探索者。どうやらこいつら、常習犯らしいな。


「折・れ・た! 折・れ・た! 嬢ちゃんどうしてくれるんだこの腕。これは探索者に復帰するまでに時間かかるぞ、そのあいだの収入、補填してもらわねえといけねえし、折れてる間、腕の代わりしてもらわないとな。風呂で身体洗ってもらったり、背中の痒いところ書いてもらったり色々としてもらわねえとなあ? 」


「……」


 彩花はあきれてものが言えない、といった様子だ。こいつらどうするかな……いや、まあどうするかはどうでもいいか。ほっといてスキルスクロールをどうするかを考えよう。


「さて、で、誰が覚える? 」


「おい、無視してんじゃねーよ! 」


 腕が痛いと言っていた探索者が俺の肩を掴むので、そのまま指を一本だけ逆方向に曲げてやることにする。


「ぎゃあああああああ! 指が! 指が! 」


 情けない悲鳴が換金所を埋め尽くす。周りの探索者の反応は様々。やってくれたと笑いだす人もいれば、さすがにやり過ぎだろうと思う人、そして指が逆に曲がった探索者のパーティーメンバーは若干顔が青ざめていた。


「幹也、お前なあ……」


 隆介もあきれる側の人間だった。


「まあ、彩花の手から勝手に奪って彩花に余計な手間を取らせた分の料金は体で払ってもらわないとな」


「それはそうだが、もうちょっとこう、手心をだな」


「てめえら……表出ろやあ! 」


「その必要もないだろ」


 黙って向こうの探索者パーティーに【威圧】を仕掛ける。これで落ち着いてくれたら便利なんだが……と思ったら、指が曲がった探索者はそのまま腰を抜かし、小便まで垂らし始めた。ほかのメンバーもそのまま力なくその場にへたり込み、しっかり威圧が効いているらしい。もしかして、本当にこいつらはしょーもないだけのあまり強くない探索者だったらしい。


「なんだ、騒ぎと聞いてきてみればまたお前か」


 駆けつけたのは何の因果か大谷さんだった。相変わらずの様子にほっとする。


「よく会いますね、お久しぶりです」


「来るまでに事情は大体聞いたが……お前、スキルを使ったな? 探索者同士のいざこざでスキルを使っての騒動は問題になるぞ」


「彼女に手を上げられたので仕方なく。受けるべき罰は受けます」


 俺が殊勝な心掛けを見せたことと、もともと問題を起こした側のパーティーが逆にやられている様を見て、これはどうしたものか、と悩んでいる大谷さん。


「とりあえず、換金済ませてしまえ。詳しい経緯を見ていた人から聞くことにする。誰か、最初から見てたやつはいないか」


「あ、それなら俺が終始見てました」


 大谷さんの声掛けで後ろの方から一人の探索者らしき人物が出てきて、大谷さんに話をし始める。【聞き耳】で話を聞くあたり、どっちの味方でもないらしく、ただここで起きた行動とそれぞれの言い分と、それから色々とを話しているだけのようだ。信用ができる探索者ではあるらしい。


「で、どうする。売ってしまうか? そのスキルスクロール」


「ケチが付いてしまったからな。ここは洗い流すつもりで売ってしまおう」


「それもそうね。次からはもうちょっと大人しくスキルスクロールについて調べるってことで、今回はお金に変えてしまいましょう」


 水魔法も便利そうではあるんだが、欲しければ最悪自分で取りに行けることもあり、必須というわけではない。せいぜい喉が渇いた時に便利かも、ぐらいの気持ちでしかない。なら、ここは験を担いで売っぱらってしまう方がこの後良い結果を出してくれそうな気がするし、二人もそれがいいと言っているのでスキルスクロールも換金に出してしまおう。


 全部まとめて会計に出して、スキルスクロールの引き取りもお願いした結果、一人あたり92800円の収入となった。内訳は、92800円のうち56000円がスキルスクロールの売り値、残りがホブゴブリンの銀貨や魔石などになった。時給換算すればかなりのものになるな。やはり探索者は美味しい。


「下手なバイトより稼げるとはよく言ったものの、毎週通ってりゃ今年の収入は年収の壁を越えてしまうかもしれんな。ほどほどにしておかないと」


「そうだな、俺も爺ちゃんの扶養に入ってる形になってるはずだからその辺よく調べておかないとな」


「私もそうね。幹也と結構通ってしまっているから、ほどほどにしておかないと」


「あー、三人ともいいか? こっちの調査が終わったので結論を出したいんだが」


 忘れそうになっていた。さっきの探索者パーティーのいきさつと俺への注意はどうなるのか。


「今回のことについては、明らかに悪いのはあっちのパーティーだが、探索者同士の諍いにスキルで対応するのは違反だ。本条だったか、お前さん、【威圧】を持ってるな? そして使ったな? 」


「……はい、使いました。彼女をかばうためとはいえ申し訳ありません」


「よし、反省の色が見えるので今回は口頭注意だけとする。その代わり、向こうにもスキルを使われたという言い分があるので、お前さんを口頭注意だけで済ませるにはあっちの処分も軽くしなきゃならん。これも公平な処分を決するためには必要だ。わかるな? 」


「今回のことはこれでなかったことに、ですか」


 正直、やり過ぎたとは思っているのでこれでおあいこ、となることについては異論はない。むしろもっと重い処分が下される可能性が……例えばしばらく駅前ダンジョンを使えないとか、そういう可能性も含んでいただけに、口頭注意で済まされるのは逆にありがたいとも言える。


「よし、ではこれで決定ということだ。もう問題は起こすなよ? これ以上引き続きお互いに言い合うことや話し合いたいことがあるなら、もう一つ上の段階で争ってもらうことになる。それはどっちも望まないことだろうからな」


「……いくぞ」


 向こうの探索者パーティーは何かまだ言いたげだったし、漏らした当の本人は情けなさのほうが上回ったらしいが、とにかくこれ以上話は大きくならないうちに終わってくれそうだ。


「じゃあ、最後に本条に一つ仕事をやるからそれをやってくれないか? 」


「内容によります」


「漏らしていった後の床、掃除してやってくれ。まだ匂うんだ」


 その後、三人でモップがけをして帰宅の途に着いた。隆介とは家の前で別れ、彩花を伴っての帰還だ。今日もしっかり稼いだぞ、と部屋に入ったところで後ろ手に鍵をかちりと閉められる音。


 着替えてそれから……またいつものイチャイチャが始まり、覗いている道祖神様のテンションをブチ上げながら彩花と本番無しの過激な行為が始まった。もうちょっと帰りは遅くなりそうです、彩花のご家族様。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
もやもやする〜 このチーマーとはもう一戦ありそうなので、そこでスッキリしそうだけど、この職員のなあなあにする対応はもやりますね〜 この職員があいまいなのでチーマーはのさばってるような感じもする。このへ…
流石にこれでは職員の無能さが際立つだけでは??
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