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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第156話:中間テストは過ぎ去りて

 中間テストが終わった。俺も彩花も時々一緒に勉強しながらお互いを高め合ったのでテスト範囲も傾向もバッチリ対策し終わり、あとは万全の態勢でテストを迎え撃つのみとなった。今回こそは1位を取れるのかどうか。不動の絶対防壁石畑さんを打ち破れるかどうかが俺の目標だった。


 薬師寺君としのぎを削りつつ、2位の取り合いをするか、1位に食い込めるのか、それとも今回は3位に甘んじて転落するのか、それはわからない。だが、出来るだけのことはやったしテスト範囲もきっちり網羅していたおかげで数学の最後の難問もきっちり解いて終わらせることが出来たので、手ごたえはあった。


 彩花も最近は授業中にも集中力が遺憾なく発揮されていて、授業が楽しいのは久しぶりかもしれないと言っているので何事も楽しめることが一番だ、と彩花を褒めていたらてれてれとしながらも嬉しそうにしていたのでそれでいいだろう。


 なお、中間テスト中に開いたとされるダンジョンだが、あのまま結局ノーマライズ化してしまった後、苦労しながら突破して踏破したということらしい。結果的に周辺を二、三日封鎖しての大規模遠征のような形になり、かなりの戦力が投入されたとのこと。俺も見に行けばよかったかなあ。


 一日で突破できないレベルのダンジョンというものは中々インスタンスダンジョンでも見られないそうで、それを目視できずにちょっと残念な気もする。ただそれだけのダンジョンなのだから自分の実力では奥へ入れる可能性は低いため、結局入口あたりのモンスターをプチプチと潰して回る仕事に回されたかもしれないのでちょうどよかったか。


 さて、中間テストという大きな一山を乗り越えたが、期末ともう一回の学校で受ける模試、そして冬休みを挟んで本番である共通テストが控えている。受験生に遊んでいる暇はそんなにない。クローゼットの中のダンジョンで息抜きが出来る俺とは違い、普通の受験生は息抜きにダンジョンなんて言ってる暇があったら勉強しろと言われるところだろう。


 今日も中間テストが終わってようやく一息ついたところで、アカネから十二層が出来た話は聞いてはいるものの、まだ十二層には潜れずにいる。彩花が遊びに来た時に十一層を再度潜るついでに十二層にも手を出してみようという話にはなっているが、彩花も塾の日が増えたらしく、中々デートと行くことが出来ずにいる。


 さて、そんな中間テストの結果発表日、いつも通り三人で順番を見に行く。今回はお互いに結果が分かっているからか、最下位から順に上がってランクの上昇っぷりを感じ取る、ということすらせず、ダイレクトに最上位の紙っぺら一枚を見に行くことにした。


「どぅるるるるるる」


「小林、そのドラムロール要らない」


「まあ、実際落ちてる可能性があるのは俺か結城なんだろうけどな」


「私は今回結構な手ごたえを感じてるから、多分一枚目からは落ちてないと思うわよ」


 彩花がからかうように隆介を煽ると、早速目にした順位でガッツポーズをしている。俺も隆介も一枚目の順位結果を見る。


 彩花が10位。かなりまくったな。そして隆介が7位。俺は……2位。やはり石畑さんの鉄壁のディフェンスを貫くことは難しいらしい。そして俺が万年2位……というほど2位を続けても居ないわけだが、この3点差で2位というところに悔しさを感じる。


「うむ、まあ順位は維持できたしよしとするか。自分で納得するだけの結果は出せたしな」


「ほう、ご謙遜だな。てっきり今回こそは1位を取ってどや顔で威張り散らすものだと思っていたぞ」


「そこまでのものを求めてるわけじゃないからなあ。俺としては自分が出来る範囲のことをしてその結果が今こうして出てるわけだから、この3点差という壁にどう立ち向かえばよかったのかを自己反省するだけだ」


「中々謙虚だな。だが、その姿勢が次へつながる大事な所でもあるしな。あとは学内模試と期末テストか。その二つで受験までのテストは終わるはずだ。みっちりやって悔いの残らないようにしないとな」


 彩花はトップ10入りしたことがよほどうれしいのか、スマホで撮影して早速親か誰かに報告をしているらしい。まあ、これが頑張った証拠として見せられれば十分だろうからな。しばらく彩花がスマホのやり取りをしてる間に、俺もスマホで撮影、近況と称して爺ちゃんにメールを送る。隆介は……さすがにやってないらしい。


 お盆以来連絡をしてなかったが、爺ちゃんからは「お前そんなに賢かったっけ? 」という一言が返ってきただけだった。賢くなったんだよ、自力で……いや、他力本願で。


「ともかく、これで数日ぐらいは遊ぶ精神的余裕が出来たわね。久しぶりにデートもしたいし、見たい映画があるし、ダンジョン以外でもいいわよね? 」


 スマホをいじくり終わった彩花がくるりとこちらを向いて、デートのお誘いをかけてくる。男としては乗らない理由はない。


「むしろダンジョンだけがデートというほうが特殊だ。何処へでも連れていってくれ」


「じゃあ決まりね。次の日曜にでも行きましょ」


「ああ、映画か……いつ以来だ見に行くの。何見るかわからないけどでかい画面とでかい音量で楽しむのは嫌いじゃない」


「途中で寝ないでね? せっかくお金出して見に行くのにもったいないし、一人で見る私が寂しいから」


「鋭意努力する」


「まあ、これだけ結果出してりゃ誰も文句はつけられないだろうな。ゆっくり楽しんでくるといい」


 隆介もたまには息抜きも必要だろ、と言ってくれているのでどうやら俺は休みを楽しんでいいらしい。


「じゃあ、日曜日。山の上のイオンモールで、だな」


「あそこ、車じゃないと行きづらいのよね。道とか自転車専用道とかなんとかしてくれないかしらね」


「だとすると、山を登らずに電車で隣の市まで行くか、それとも名古屋まで出るかになるな」


「お小遣いに余裕はあるし、映画見た後楽しむのを考えるなら名古屋まで出るのもありね……考えついたら連絡するわ」


 そろそろ次の授業が始まるので教室へ戻る。すると、教室の机の上に一通の破いたノートの切れ端が置かれていた。


「放課後、お前がいつもいる所まで来い、話がある」


 どうやら誰かからの呼び出しを受けたらしい。何か呼び出されるような理由は……思い当たる節はいくつかあるが、タイミング的にはテストの点数ぐらいだろう。だとすると相手はランキングを争っている誰か、ということになるんだろうな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 放課後、呼び出し通り俺がいつも昼食を食べているところへ行くと、一人の生徒が俺を待っていた。


「呼び出しに応じてきたぞ。何の用だ、あと、ついでに誰だ」


「お前、何なんだよ」


「何だ、どうした」


「俺の順位返せよな。必死で勉強して努力して、遊びも楽しみも我慢して、彼女も作らず、必死に頑張ってそれでやっとこの順位をキープしていたのに、いきなり躍り出てきてサッと抜かして、今度はその上彼女とデートとか!! 本当……ふざけんなよ」


 もしかして、彼が万年2位の薬師寺君なのか? そういう意味では俺は彼の居場所を取ったことにはなる。申し訳ないとは思いつつも、努力の結果は公平に出るべきで、前からいるからそのまま引き続き……というわけにはいかない。


 ただ、努力の結果は公平だが努力の過程は公平ではない。そういう意味では俺はズルをしている。専用ダンジョンでレベルアップというズルだ。しっかりとそれを自分の頭に叩き込んだ上で、更に薬師寺君が俺に質問をする。


「どんな気持ちだよ、人が必死に維持してきた順位を奪い取って、そこに加えて彼女までいて……それならなんで最初から努力しなかったんだよ。お前がそこまで出来るって一年の時から知ってたら、俺だってあきらめがつくっていうのに、なんで今更になって真面目に勉強し始めるんだよ。これじゃ、不公平感が残っちまうだろ……ちくしょう」


「なんだなんだ、喧嘩か? 」


 通りがかった鬼沼先生が薬師寺君の声の大きさで気が付いたのか、こちらの方へ来ている。このままだと薬師寺君の内申点に響くな。


 そして屋上に姿を現す鬼沼先生。俺と薬師寺君の姿を見ると少し考えた後、納得してこちらの方へ向き直り、話を始めた。


「薬師寺、採点結果が間違ってない限りはテストの点数が全てだ。2回連続で2位を取れなかったのは残念だが、それを他人の努力をするなという方向で押し付けるのは良くないぞ。お前のためにもならん。その悔しさをばねにしてもうひと頑張りすれば、期末には挽回できるかもしれない。なんせ、そう点数差が大きくて2位3位が決まってるわけでもないんだ。次こそは……あまり良い言い方ではないが、本条が凡ミスしてひっくり返るのは十分あり得るんだ。そこまで念頭に入れて、次回頑張ってくれ。それ以上の便宜は図れん」


「っ! ……」


 薬師寺君は鬼沼先生の説得に呆れを感じたのかそれとも心にしみたのか、それ以上何も言わずに走って去っていった。


「本条は……気にするな。みんなナイーブな時期なんだ。特に上位の成績を残してる奴ほど1つ2つの順位で激しく争っているところでもある。本条は最近急に成績が良くなったからやっかみも受けるだろうが、どうかあいつのことも責めないでやってほしい」


「気持ちはわかるので、責めることはないと思います。ただ、次の期末で手を抜くこともしません。それをやったら今度こそあいつを馬鹿にしていることになると思いますので」


「……そうか、ありがとうな」


 鬼沼先生はそれだけ言うと、戻っていった。俺も帰るか。教室に戻ってカバンを引っ掴んでまっすぐ家に帰る。気にしないでやってくれ、とは言われたものの、たしかに万年2位として盤石の態勢を築いていたポジションを奪ってしまったのは間違いない。


 ただ、これも俺なりの努力の結果であることは確か。勉強をせずにのほほんと生きてきて突然やっちゃいましたってわけでもない。そこは誰に聞いても、たとえ彩花やアカネに聞いたとしても同じ答えが返ってきてくれると信じている。


 これにくじけず、薬師寺君も自分なりのポジションを新たに維持してくれると嬉しいんだけどな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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やっかみ、妬み……厄介やね〜
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