表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/163

第146話:文化祭デート 1

 さて、文化祭二日目。初日は一通り出し物を巡ったので二日目は本気で暇。かといって一人勉強なぞしようものなら周りからもっと楽しめと言われるとは思うので、タイミングを見計らって彩花を連れて改めて二人で回ることにしようと決めた。


 どうやら彩花は明日もシフトが入っているらしく、午前中は自分の模擬店に集中することになるが、午後は暇らしい。じゃあ午後からデートしようぜということになり、午前中から既に楽しみだ。


 そもそも、彩花とデートというのは経験として非常に少ない。ほとんどがダンジョンで小遣い稼ぎのため、外で真っ当なデートという行為に及んでいた記憶がない。おかしいな、彩花と付き合い始めて結構時間が経つはずだが、デートらしいデートをした覚えがないぞ。もしかしたら、ダンジョン関係を抜いたらこれが初デートなんじゃないか?


 そう思うと緊張してきたが、同時に安心しているところでもある。なんせ、デートの割に服装を気にする必要がない。お互い制服だし、もしかしたら彩花はメイド服のまま出てくるかもしれない。そうなったら目立つことこの上ないが、今でも充分このちょいイケメンへの変化で目立っているし、彩花もレベルアップによる魅力の向上で目立っているのだ。目立つ二人がバラバラであちこちで話題を振りまくよりはまとめて一緒にいたほうがましだろう。


 午前中は新聞部や読書部、書道部の展示や体育館での吹奏楽部の演奏などを楽しみ、良い感じに時間を潰すことが出来た。うちの学校の吹奏楽部はたまに地方大会に参加するほどには洗練されているので、これが最後の見せ場として三年生の退場の場でもあるらしい。最後に二年生の新部長に三年生の部長から、部長の証である爪楊枝ぐらいの大きさに見えるタクトを手渡されて、一泣きして引退おめでとうございます、とやるのが毎年恒例らしい。


 今年も二年生三年生共にもらい泣きをしてしっかり壇上で抱きしめ合っていた。女の子同士なので非常に捗る。男同士だとそれはそれで熱い別れになるが、これが男女だった場合はどういう形になるんだろうな。傍目も振らずに抱きしめ合って交代式を行うことになったんだろうか。


 まあ、そんなことより、最後の良い演奏を聞かせてもらったお礼に強めの拍手を送っておく。感動的な場面であることに間違いはないので、お礼としてしっかりとしたものを送っておかないとな。


 と、スマホにメール。彩花からだった。


「仕事終わったわ。どこにいる? 」


 早速返事。もたもたして合流が遅くなるのは時間の無駄だ。その間にモンスターの一匹でも狩れるのなら無駄にする時間ではない。


「今体育館。教室まで迎えに行くよ」


 ササッとメールを打ち終わって移動を始めると、すぐに返事が来た。


「わかった、待ってる」


 待たせてるのは悪いな、出来るだけ早く向かおう。他のクラスの着ぐるみから子供向けに配っている風船を一つ貰うと、その風船を持ったままメイド執事喫茶へと急ぐ。


 隣の教室に到着して、風船を持ったまま彩花を迎えに行くと、彩花はメイド服のまま俺を待っていた。


「着替えなかったのか。てっきり制服で回るのかと思ってた」


「せっかくの文化祭だもの。そのままコスプレを味わってもいいじゃない。不満? 」


「いや、むしろご褒美かな。昨日一日客の視線を総なめにした看板娘と一緒に文化祭を巡れる幸運と自分の実力に感謝だな」


 彩花のクラスの生徒からは「本条君と結城さんがって噂は本当だったのね」という声が聞こえてきたが、一々反応しないことにしよう。説明や言い訳が必要な関係でもなければ内緒でもない。ただ語る必要がなかっただけであって、聞かれればそうだと答えればそれでいいんだ。


 さっきもらった風船を彩花に渡す。彩花は風船を受け取り、もう片方の手を俺に回してきたので、そのまま手を繋いでまずは一階の出店が並んでいる方向へ行く。


「まずは腹ごしらえだな。お腹が空いてはどうしようもない」


「食べ物系は回ったの? なんかワクワクしてそうだからてっきり回ってないものだと思ってたけど」


「旬のたい焼きを食べには行ったかな。でもそれぐらいだ。体育館の出し物や文化部の展示は軽く見てきたけど、本当にそのぐらい。午後から演劇部がやるらしい演劇や有志のバンドなんかはこれからだからな。せっかくだしのんびり楽しんでいこう」


 一階の廊下を回り、色んな出し物や食べ物が集中しているエリアへ来る。タコ焼き、焼きそば、唐揚げ、フランクフルトと飲み物のタピオカジュースを買って二人でいつもの所へ移動すると、まずは腹ごしらえだ。いつも通りの場所でいつもと違う食事を、いつもとは違う人と。これも中々悪くない。


「とりあえず、お仕事お疲れ様でした」


「そっちも暇つぶしお疲れ様。半日一人でグルグル回るのは苦痛だったでしょうに」


 乾杯してそれぞれご飯代わりの色々を食べ始める。もしかしたら下手な出店の屋台よりも気合が入っているかもしれない。やはり、人件費がかかってないのが一番大きいのだろう。安くてうまくて腹に溜まるならこの際なんでもいい。大事なのは雰囲気までちゃんと味わえることだ。


「ふぅ、普段なら買わないものをつい買ってしまった。これがお祭りの空気という奴なんだろう」


「たしかに、幹也がこんなジャンクなもの食べてるのは想像つかないわね……特にパスタなしなんてありえないわ」


「全くだな。このいろいろ買い揃えた値段だけで何日食費が持つか考えるととてもじゃないが無理だな。もうすぐこの生活ともおさらばだと思うとちょっと物悲しいものはあるけどな」


「幹也にとっては高校生活最後の贅沢みたいなものかしらね。値段からしてもそうだとは思うのだけれど」


「そうだな。よし、せめて一杯食べて供養していくとするか」


 最後の贅沢な食事。金額的に言えば確実にそう。この後は受験が終わって合格祝いに遊びにでも行かない限りはしばらく節制と倹約、そしてストイックな生活をしていくことになるだろうから、今日が最後の慰めと思って大事に食べていこう。


「そういえば、この間持ち帰ったたい焼きは全部食べたの? 」


「夕食に一匹ずつ食べてる。明後日でようやくなくなってくれるところだ」


 アカネもなんだかんだで俺の努力は買ってくれた様子で、また一センチぐらい身長が伸びていた。どうやら俺の真面目に作ろうとした心遣いというのは伝わったのだろう。


 フランクフルトに齧りつく彩花の姿に少しドキッとしたり、かみちぎられてヒヤッとしたり、色々とイベントはあったが食事のほうは無事に済み、しばらく食休み。彩花がもたれかかってきたのでそのまま膝枕に誘導する。


「そういえば膝枕されるのは初めてかしら」


「俺がされたこともなかったような気がする。初膝枕だな。感触のほうはどうだ? 」


「少し硬いかな。もっと柔らかくしてくれるとありがたいかも」


「ちょっと緊張しているおかげもあるかも……これでいいかな?」


 足に力が入っていたのを少し緩めて、骨を直接味わってもらうような感じで誘い、うまく誘導してみる。


「あー……人に膝枕される感覚ってこういうもんなのね。割と気持ちいいかも」


「それは何より。さて、午後はどうするかな」


「んー、このまま二人でのんびりするのも悪くはないと思ってるけど、せっかく時間をもらったんだし最後の学園祭を楽しむつもりで行きましょ」


「なら、隆介プロデュースのお化け屋敷は味わっていかないとダメだな。どうやら結構人気があるらしいし」


「あらそうなの? じゃあ後で行きましょ」


 二人、食後の休みを満喫する。日差しを隠してくれる草木のおかげで暑い屋上でもそれなりに風通しがよく、すっと通り抜ける風によって涼しさを味わうことができる。ここは俺のベストポジションなんだ。


 冬になると風が強すぎて厳しいことにはなるけど、それでも日光の気持ちよさはあるので、風が強くない日はここで昼休みを過ごすことが多い。今年の冬は多分飯は教室で食べて、食べたらすぐに勉強、という風に流れていく可能性は高そうだ。


 しばらく休んでお腹が膨れた後、隆介の所へ来た。隆介は相変わらず呼び込みをやっているし、スピーカーから中の様子を聞こえるようにしているのだが、時々叫び声が聞こえてくることを考えると中々に評判通り、驚かされることはあるようだ。


「お、来たな美形カップル。一つ参加していかないか? 」


「そのつもりで来たぞ。どのぐらい怖いかをダンジョン判定で感想を申し付けてやる」


「その恐怖心はまた別のジャンルだとは思うが……まあ、一つ驚いていってくれ」


 二人で並んで入っていくと、入り口の禍々しい段ボールの装飾をくぐる。早速視界を真っ暗闇に覆われてしまい、完全な闇にほぼ近い状態に包まれる。黒いビニール袋がひらひらとめくりあがり、それらが光の反射を抑えてくれているらしい。そして、入ってすぐに曲がり角に差し掛かりいきなり真っ暗な段ボール迷路になる。先見えないし足元はふわふわで、手探りで進むしかない。壁を触ったら冷たくて一瞬ゾワッとする。


 間接照明として非常にほのかな、LED一粒程度の明かりだけが提供されており、それを足元が照らしてくれているのでそれを頼りに歩き進むことになる。


 しばらく進むと、後ろから肩を叩かれる。振り向くと、誰も居ない。彩花は手を握っているので、俺の反対側に居るはず。ということは、今肩を叩いたのは隆介のクラスのだれかだな。見えないおかげで一瞬ドキッとしたが、これが隆介の策略だと考えるとなかなかやってくれる。


 遠くから誰かが走ってくるような音が聞こえるが、この狭い教室の中ではそんなに大量に人間が歩き続けることもないはず。だったら、スピーカーか何かが設置されていて、おそらくサラウンドシステムを駆使して臨場感のある音を出すように工夫されているんだろう。


 極めつけは人形コーナーだった。人形が並んでいる間に人が混じっている、とみせかけて、実は全部が人で、通り過ぎてから後ろから襲い掛かってくるという二段構えの戦法に思わず「うおっ! 」と声を張り上げてしまった。これには隆介も笑顔の対応をしてくることだろう。


 彩花もさすがにこれには驚かされたようで、「キャッ」と可愛い叫び声をもらった。飛びついてくるほどではなかったし腰を抜かすほどではないにしろ、しっかり驚かされたのは間違いないようだ。


 最後のロッカーゾーンには棺桶とか置いてあって、いつ開くか分からない緊張感がハンパなかった。ここまで散々驚かせてくれた分だけ警戒しているが、案の定棺桶の一つが開き、手を伸ばしてくる。さすがにこっちも全部の棺桶が開いて手を伸ばしてくる……ということはなかったが、最後まで気の抜けないお化け屋敷だったことは確かだ。


 最後に明るさが現れ、これで終わりか……と扉を出る瞬間に「また来てね」と壁の中から透き通った声がして、最後にまた一驚きさせられる、というオチもちゃんと待っていた。これは中々やられたな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ