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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第145話:文化祭はゆっくりと

 文化祭が始まった。と言っても特にやることもないのでプラプラ学内をふらつくだけ。彩花も隆介も自分のクラスの展示物や出店やなんやかんやで俺の相手をしている暇はないらしい。寂しい。


 やっぱり手を上げて俺も店長補助に立候補するべきだったか。それとも売り子だけでも手伝うべきだったか。みんなが真面目に接客、応対してる中でぶらぶらしてるのは非常に申し訳が立たない所なんだが、でもそれでいいとは言ってくれてるからなあ。


 文化祭の屋台食べつくしや全模擬店を回るとか色々やることはあるといえばあるが、そこまで興味を引かれてやるような物じゃない。


 結局自分のクラスの出店に回って旬で活きのいいたい焼きを二つ買っていくと、いつもの中庭でのんびりと過ごす。一つ食べながら外の喧騒に耳を静かに傾ける。やはり、他の学校や親御さんなんかも参加しているのが聞こえてくる。


 しばらく寝転がり、天を仰いでのんびりしていると、耳に聞き慣れない女子の話し声が聞こえてきた。ふと起き上がってそっちを見ると、騒ぎが大きくなった。どうやら俺に対して反応していたらしい。


 そりゃ、進学校に顔のいい奴……自分で言うのもふざけた話だが、レベルアップのおかげでかなり顔のいい奴になってる俺に対して反応しておいて、せっかくならお近づきになれたら、と考えるのも悪くはないんだろうな。


 しばらくキャピキャピ言っていたが、勇気を出したのかこちらに向かってズンズンと進んでくると、俺のすぐ近くまで来る。


「あの、ちょっといいですか? 」


 俺に声がかけられる。まったく気づかなかったふりをして反応をする。さっきから五分ぐらい悩んでいたことを指摘するのはマナー違反だと思うからな。


「はい、なんですか? 迷子……ではなさそうだけど」


「あの、今から一緒に回ってもらっても……いいですか? 」


 勇気を振り絞って誘った一言だろう。俺も逆ナンされるような御身分になってしまったということか。嬉しさを感じるが、同時に断らなければいけないという罪悪感に何だか申し訳なさまで入り混じる。浮気性な男ってのはここに罪悪感を感じてつい付き合ってしまうかどうかあたりにかかってくるんだろうな。


「こっちも彼女待ちなんだ。せっかく学園祭に来てもらったのに申し訳ないんだけどね」


「そ、そうですか……そうですよね、こんなかっこいい人ほっとくような人いませんよね」


 なんか一人で納得して大人しく細々と去っていった。本当はただ時間潰ししてただけだったんだが……でも、これで彼女来なかったらそれはそれで嘘をついたことになるので罪悪感が強めになる。


 いっそのこと、こっちから迎えに行くか。たい焼きを食べ終えると、のんびりとなりのクラスまで足を伸ばす。


 隣のクラスでは、執事喫茶とメイド喫茶の混合みたいなことをやっていた。それぞれ着たい服装に着替えた生徒が接客を受け持っている。彩花は……いた。きっちりメイド服を着こなし、その容姿の良さとスタイルを存分に活かした見た目の物理的暴力によっていろんな人たちの視線を釘づけにしている。


 これが俺の彼女か……なんか誇らしいな。そう考えていると、彩花が俺の姿を見つけて、顔が一気に赤くなる。ズサササササ……と高速で詰め寄ってくると、小声で一言文句を言われる。


「なんで来たのよ、来ないと思ってのんびり接客してたのに」


「あまりに暇だったからな。せっかくだから雄姿を目に焼き付けておこうかと。様になっていていいな。俺も一つ接客してもらおうかという気になってきたが……よく考えたら家でもっと専門的な接客をしてくれるんだから来る必要なかったか? 」


 更に赤くなる彩花。周りはその彩花の反応を見てそれぞれの感想を抱いている様子だ


「お、どうした? 」

「結城さんと……本条君よねあれ」

「付き合ってたの? 」

「お似合いね。どっちも最近綺麗になったしかっこよくなったし、その影響かしら」

「そういえば夏休みに二人で何かしてたの見た気がするわ」


 やはり、それなりに二人で行動してる様を見られていた様子だ。あえて言うこともなく、ひやかしもせず、なるようになるものだと見守ってくれていたのだと思うとなんと嬉しいことだろう。


「とりあえず、アイスティーを一杯貰えるかな、お嬢さん」


「畏まりました、旦那様」


 それほど短くない、ちゃんと生徒の格好に配慮したロングスカートの端を持ち上げてカーテシーを綺麗に済ませると、席に案内してくれた。


 窓際の、少し日の当たりすぎるぐらいの席で、飲み物が出来上がるまでしばし待つ。やはりまだ九月では暑いな。中庭のほうが適度に遮蔽物がある分涼しく感じたのかもしれない。


 三分ほどしてアイスティーが運ばれてきた。おそらく業務用のパックの紅茶を氷で冷やしてかき混ぜるだけの安心安全の定番メニューなんだろう。


 価格も安く、原価も人件費もかかってないようなものなので、かなりの低予算でも始められ、高い値段をつけなければ回転も早い。しかし、彩花がみれてこの価格なら安すぎる気がしないでもない。それだけ美しく着こなしている、といっても過言ではないかもしれない。


 客の目線は彩花にかなり集中している。むしろ、彩花を見に何度も並んでいる客すらいるほどだ。外野である俺が注意できる立場ではないが、ほどほどにしてほしいとは思っている。その子は今は俺のだぞ。


 あちこちうろうろしながら注文と客捌きを同時にやりつつ、各テーブルの注文の状況を把握しているようで、彩花が中心になって全体の統率が取れている。なんだかんだ色んなスペックが上がってる以上仕方ないのかもしれないが、彩花抜きにすると混乱するぐらいの混雑具合になりはじめた。


 生徒の父兄も居れば、他の学校からこっちに遊びに来ている学生もいる。その学生の中では話題になるだろうな。桑員高校にはすげえ美少女が居る、と。


 もしかしたら周り回ってどこかの雑誌のモデルなんかにもスカウトが来るかもしれないな。それだけのポテンシャルを持っている、という自画自賛ではないが、それによく似た何かの輝きを放っているように見えた。


 実際、こんな子が彼女で良いのか、という自責の念ではないが、そういう問いかけにはできるだけ自分を卑下しないようにしている。それはそれで、俺を好きでいてくれる彩花に失礼であるからだ。だからそこそこに自信をもってちょいイケメンぐらいの気持ちで持って対応していくことにしている。


 その方が自分を過剰に持ち上げずにいられるし、それほど鼻にかけず、いつも通り過ごしているので最近変わったよなあいつ、ぐらいのちょっとずつの変化で居られているので安心だ。


 アイスティーを飲み終えたが、もう少し彩花の働く姿を見つめていたいので、追加でケーキを頼むことになった。朝からたい焼き一匹をお腹に入れてその続きでアイスティーとケーキを詰め込んでいるので、結構なカロリーオーバーにはなっている気がするが、高校生男子はとにかく腹が減る。金があるうちに色々と食べたり飲んだりしたほうがいいだろうし、学生の出し物はそこまでコスパが悪くない。


 それにぼったくりのメイドカフェへ行くよりはよほど良心的な値段設定がされている。おそらく、売り切ったら打ち上げで何か食べに行こう、程度の利益幅で計算しているはずなので人件費をほぼ0にできる分だけ安めの値段設定にできているのだろう。


 その分回転率を早めてしっかりと売りに出さなきゃいけないが、彩花がくるくると踊るように一生懸命働いている姿を目にするためにひたすら通い続けている奴もいる様子なので、少しばかり悪いな、それ俺の彼女なんだ……と言いたくもなる。


 ケーキが届いてケーキの大きさから値段を勘案して、まあこんなもんかと大筋に予測をつける。本当に薄利多売でやっているのは間違いないらしいが、これだけ繁盛していればじきに売り切れるんじゃないだろうか。まだ初日だが、明日の分も考えて仕入れてはいるだろうし、今日の売り上げを考えて明日の売り上げ予測を立てて、急いで補充する必要もあるかもしれないからな。


 今日は彩花のおかげで売り上げを達成したようなものかもしれないし、もしそうなら二日間連続で仕事に出続ける彩花への負担はかなりのものだろう。無理しない程度に頑張ってほしいもんだ。


 ケーキを食べ終えたので、席の回転をよくするためにクラスを出る。出るときに小声で「じゃあまた後で」と伝え、彩花がコクンと頷くのを見た後、さて今から何をしようかな、と本格的に暇つぶしを探すことになった。


 隆介のほうは何をやっているのだろう? と隆介のクラスを見に行くと、どうやら定番のお化け屋敷らしい。隆介の出番がどのへんにやってくるかは見物だが、もしかすると貴重な脅かしタイミングや全体指揮のほうに回ってるかもしれないな。


 効果的に脅かすにはどこでどういうタイミングで現れるのが最も効率的で、カップルならここで脅かすべし、等といった計画的に相手を脅かす術をみんなに伝授して回って、その通りに実行させてみて、脅かしを全力でサポートする。そういうほうがあいつには向いている。


 さてそんなわけで前を通りかかってみると、隆介は入口で客寄せをしていた。


「おっす隆介。どうだ客入りは」


「おう幹也。客入りのほうはともかく評判は上々だぞ。俺のお手製脅かしマニュアルを配ってしっかりとタイミングとポイントを絞って脅かしてるからな」


 予想通り、隆介の肝入りの脅かし方でうまくやっているらしい。脅かすほうも、存分に脅かして驚いてくれるならさぞやる気が出ることだろう。これはメイド執事喫茶と二強になるかもしれないな。後で投票される出し物の評判ランキングにもかかわってくることだし、最後の文化祭の思い出作りにはちょうどいい機会かもな。


「入っていくか? 男一人でも脅かせるようプランは織り込み済みだぞ」


「うーん、今はやめとくかな。明日もしかしたら二人で来ることになるかもしれないし」


「なるほど、ならその時の御来訪を楽しみにしてるからな。また明日来るがよい」


 隆介の誘いを断って、またうろうろとしてる間に一日目は終了した。俺の中では彩花のメイド姿が一番様になっていたが、体育館でやっていたコピーバンドも中々の練習量を感じさせる姿があった。明日はどこまで巡ろうか。彩花とゆっくり巡れる時間は取れるのかどうかも含めて、また考えておくか。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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