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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第138話:ご報告

 始業式と模試の答案の返却が終わり、足早に帰っていく担任。今日はそれ以外の予定は何もないので帰りたい奴は帰り、部活の引継ぎや新部長挨拶なんかに付き合う、部活に情熱を注いでいた学生以外にとっては家にとっとと帰って勉強するか、静かで涼しい図書室で勉強するか、初日ぐらい遊ぼうと全力で遊びに走るかの大体どれかに分類される。


 初日ぐらい遊ぼう、という奴は明日も大体遊んでいるが、夏休みの夏期講習で溜まった鬱憤を今日久しぶりに会う友達との再会を喜んで羽目を外しそうになる、というあたりなので、別に責められる謂れもないだろう。確かに、夏休み中の三年生はとにかく予定が立てにくい。


 それぞれが違う塾で、違うスケジュールの中で生活していただろうから、学校行事が始まるということはそのタイミングが合う久々の出来事、ということにもなる。


 まあ、遊びたければ遊ぶのも大事だからな。今日の俺はそれどころではないので、職員室に向かい担任の所へ行く。


「どうしたんだ、本条。お前が職員室に来るなんて珍しい」


 担任の野村が意外そうな顔をしながらこっちを見ている。今日の試験結果が良かったから調子乗りに来たのか? というような表情が少し浮いているようにも見えるが、大体当たりだ。


「実は、学校宛てにどこかの予備校や塾から模試のパンフレットが来てないか、と思いまして」


「ふむ、ということは学校で受ける模試以外で何処かで受けられるものがないか探しに来た、ということでいいのか? 」


「ええと……はい、そういうことになります」


 野村先生はなるほどな……といい、少し席を外すというと、俺を置いてパンフレットをいくつか探しに行った。職員室の一角に積み上げられた山のようなパンフレットの中から、個人向けの模試の物をいくつか見せてくれた。


「これは学校で受けるものじゃない模試だ。他の高校ではどうかは解らんが、少なくともうちの学校では予備校を通して受ける模試は……これとこれ。だからこの二つに関しては何もしなくても拒否しない限り全員が受けるということになっている。それ以外はいわば自由参加だ。こっちのほうだろう? 本条が探しているのは」


 野村先生がピンポイントで俺の探している模試を選び出してくれている。さすが、生徒対応と授業ストレスと生徒の進路相談で日々髪の毛を痛めてるだけの性能は持ち合わせている。


「こういうのが欲しかったんですよ。ありがとうございます」


「学校用にまとめて何部か配られているものだから、それは持ち帰ってもいいぞ。後、模試を受けるならやはり授業のない日に受ける模試にしておいてくれよ。変な所で欠席を作りたくないだろうしな」


「解りました……じゃ、失礼します」


「おう、また明日な」


 職員室を出ると、パンフレットを図書室で開封し、それぞれの見比べをする。そして手帳に書かれたスケジュールや学校行事、学校の休日とも示し合わせ、受験できそうな日取りの模試を選ぶと、それの受講方法について確認する。最近はスマホで読み込み一発で出来るから非常に楽だな。


 振り込みは帰りにでも済ませておこう。こういうのは早いうちにやってしまって、後戻りできなくなってしまうようにする方がかえってやる気が出るものだ。


 スマホでさっさかさっと必要事項を入力して申し込み完了。後は費用を払えば終わり。


 費用の支払いもコンビニで済ませ、今日やることはほとんど終わらせてしまったのでまっすぐ家に帰り、今日も勉強をするか。


「お帰り。模試の結果はどうだったの」


「母親みたいなこと言うなよ。学校から帰ってきたらテストテストってさあ」


 アカネのいつもの調子にこちらも合わせるように適当に中身がないことを返しておく。


「その様子だと調子よかったみたいね。昨日悶々としてたのが嘘みたいよ」


「まあな。人と競う機会はこれからもあるだろうけど、模試ほど大きなイベントで人と比べてどうなるか、ということを確認し合うことはないだろうからな」


「どれどれ……うん、あなたの行きたい先には今のところ問題ないようね」


 アカネに帰ってきた模試の結果を見せて判定がAになっていることを伝える。判定の仕方と他の学部学科との区分け、他の学科を受けてみた理由なども伝え、納得をしてもらうことになった。


「じゃあ幹也としては、この学科に落ちたら探索者一本で進んでいく感じなのね」


「そうなる……と思う。他のはブラフというか、教師陣に本受験がだめでも他を受けてるから大丈夫、と落ち着いてもらうための受験みたいなところはある」


 正直一本縛りで行きたいのが確かなのだが、学校側としてはそれを許さない、という姿勢があるので滑り止めとして何ヶ所か受けさせられるうちのいくつかだ。


「じゃあ、実際には受けないでおくの? 」


「それはそれで問題なのでちゃんと受ける。受験料が勿体ないけど」


「まあ、一日二日ダンジョンで稼いで何とかなる範囲ではあるでしょうけど、行く気がない大学の受験料は無駄遣いだと考えているわけね……学力がない側からすれば贅沢な話だとは思うんだけど。でも、行く先が一つしかないならそこに向かって努力するしかないわね。お金がないのが全ての問題点ってことかしらね」


「まあ、それもあるが……あとは、面白そうな先生と出会えたからかな。あの先生の下で学んでいけるなら結果がどうなっても文句言わない感じになるかな。なんだかんだで面白い出会いではあったよ」


 大泉先生のことを思い出す。あのちっこい身体に溢れんばかりの情熱とダンジョンに対する見識、それから色々なことを学んでいければいいなと思っている。


「あら、かわいい。私と同じぐらいじゃない。成長の見込みがある分私のほうがよりセクシーだろうけど。幹也はこういうのでもいいんだ? 」


 アカネが俺の思い出の中の大泉先生の様子を読み取ったのか、チャチャ入れをしてくる。ロリは判定外だ。今のアカネもそうだが、大泉先生も性的な意味では見ることはできない。そういう点では安心できる人ではあるけどな。


「誤解を招く表現はやめて欲しいな。そういう意味ではない。ただ、そうだな……何となくだけど、俺がいなきゃしょうがないな、みたいな気分にさせてくれる人物っているだろ? 俺にとってはあの先生がそういう対象だった、というだけだ」


「庇護欲が涌き出てくる相手ってことね。結城さんが知ったらきっと嫉妬するわよ」


「さすがに直接何かする、というわけではないのでその点は大丈夫だとは思うけど。研究室のテーマも一貫性のある話であったし、この先を見据えるという意味でも未来性のある話だった。後は……そうだな。精神年齢的な近さを感じたかな」


「幼稚という意味ではなくて近さを感じるんだとしたら、多分ジャンルとしては研究バカね。研究以外あまり興味が無いような、そういう感じかしら」


 たしかに、そういう感じではあった。どこまでもとまではいわないが、研究一番自分は二番以降、というイメージだな。実際に研究以外にも何かすることがあったなら、家庭を持ちながら研究を進めることもできたはずだ。そうならなかった現実が今目の前にあったのは仕方ないことではあるが。


 きちんと勉強机に模試の結果を張り付けて、ここに飾っておくことで、これ以上下がらないように自分への戒めとして用意しておく。


 おそらくこの間のオープンキャンパスで、探索者しながら学校に通えるだろうと中途半端な考えで遊びにきたやつはふるい落とされたはずだ。それ以外の、真面目にダンジョン研究をしていこうと考えているやつが残った可能性が高い。


 次回の全国模試で、その辺りにどのくらい閉め出しが行われたのか、というのは興味がある。おそらくは難易度が上がったとは思うが、今の俺のペースでそのまま勉強していけるかどうかだな。


 もしかしたら下手な学部や学科よりも倍率や難易度が上がる可能性もある。下がる可能性は……ないだろうな。倍率は下がるかも知れないが、学部の難しさとしては上がったような気がする。


「ま、とりあえずは引き続き勉学の徒として真面目に勉強していくかな。もしかしたら、ってのもあるかも知れないし、それを回避するためにダンジョンについてもある程度勉強しておくべきなのかどうかは、他の大学のダンジョン関連学科の過去問を参考にさせてもらうとしよう」


 地方も学科名も多少違うとはいえ、同じダンジョン関連だ。参考にして試験問題を作る可能性はあるだろう。


 ヤマカン当てをする気はないが、傾向と対策はきちんとやっておかないといけない。俺がたてる勉強計画が今後の学部希望者のサンプル勉強法となる可能性もあると思うとなおさら気が抜けないな。


 さて、勉強始めるか。共通テスト向けの問題をしばらくは解き続けよう。過去問はもう少し学力を煮詰めさせてからでも遅くはないはずだし、学科試験の前に共通テストがあるのだから、こっちの成績が悪くては足切りされる可能性が浮上してくる。それはまずい。


 共通テスト対策はまだとりやすいからいいとして、リスニングがちょっと怪しいかな。そこを重点的にやりたいな。静かな環境でできればいちばんいいんだが、試しに部屋でやってみるか。


 ……外の音結構拾うな。やはりいいイヤホンが必要か。中古でいいヘッドホンが出回ってたらそれを買うことにしよう。少なくとも百円ショップのヘッドホンやイヤホンよりはちょっとマシな環境でリスニングの練習ができるはずだ。


 しばらくはこの百円イヤホンにお世話になる。どこかのタイミングでまともなものを仕入れることにしよう。何事も、金がかかっているほうが便利ではあるかもな。いやでもここはあえて悪いイヤホンで聞き取り慣れをしておくことで、本番の環境が悪くてもいいように、体を慣らしておくことも必要かもしれないな。


 さて、リスニングの勉強を始めるか。しばらく無言の勉強が続くが、目の前のアカネはなんだか嬉しそうにこちらを覗き込んでいるので、何を言っているかわからないが、きっとろくでもないことを言っているのだろう。気にせず勉強に集中することにしよう。









「頑張りなさいよね、作られた優等生」


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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