表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/163

第134話:家に帰って

 中谷准教授の座学が終わった。実際に講義をやるとこんな感じの内容になるよ、という話が終わり、それなりに満足して講義室を出る。こういう内容をやっていくのか、というざっくりとした方向性と、中谷准教授の講義のベクトルなんかは少しだけわかるようになった。


 さて、帰るか。彩花の方も終わったかな? 彩花に連絡を入れつつ、総合案内のほうへ足を向ける。と……


「もう帰るのかい本条君。寂しいねえ。結局午後は誰の所にいたんだい? 私の方は四名ほど来てくれていたよ。こっちが話すことを何を言ってるかわからない、というような感じではなく、きちんとダンジョンについて学んできた学生がだよ。これほどうれしいことはないねえ」


 ダンジョン学部の学部棟の出入り口で学生の見送りをしていたのか、大泉准教授と鉢合わせ。話が長くなりそうなので出来れば会いたくなかったな。


「こっちは中谷准教授の所にいました。ダンジョンロジスティクスでしたか、ダンジョンの入手関連物品を一様に管理して必要な所に必要なだけ届けるシステムでしたか、実現すれば効率のいいギルド運用が出来そうな気はしますが……インスタンスダンジョンというイレギュラーにどう対応していくかが課題なんじゃないですかねえ」


「ほう、中谷先生の話をちゃんと理解できているとはね。さすがに学年二位の成績だけのことはある。しかし、優秀な学生はできるだけ自分のゼミに取り込みたいと思うのも当たり前の流れ。どうだい、ぜひとも入試が終わって無事にダンジョン学部に入学した際はうちのゼミに来ないかね。君にならストロングなコーヒー飲み放題の特典も付けようじゃないか」


 コーヒー飲み放題はさておき、この問題児の世話係を押し付けられるのか……それはちょっと問題があるな。講義どころではなく違う手間や才能が必要になりそうだ。


「今、この人の世話しなきゃいけないのかとか思っただろう。顔に書いてあるぞ」


「表情には出さないようにしてたんですがね。よくわかりましたね」


「当たり前じゃないか。みんながみんな同じ反応をするから受け取るほうも覚悟はしているというものだ。私はそこまで問題児でもないし、そもそも児童でもないぞ」


 問題な所は認めているらしいが、三十代で准教授ということはそっちの成績は優秀だが性格に難あり、という感じなのだろう。この人どうしようかな。総合受付まで引き連れて行って回収を頼もうかな。それともまた渡辺学部長のところに行って引っぺがしをお願いすることにしようかな。


「まあ、ここからは真面目な話なのだけれどね。君はダンジョン学部に入って何をしたいんだい? 」


 急に声のトーンを普通に戻すと、真面目な話題をし始めた。


「何をしたい……ですか」


「そうだよ。本来なら高校からだが、大学も高校も高等教育、いわば専門性の高い教育の場になる。何となく大学に所属して何となく卒業してその辺のよくある職場に就職して……というのでは本来困る。ただでさえ少子化で大学の在籍生徒数も定員割れしそうなこのご時世にわざわざ他の学部の枠を潰してまで新しく申請したダンジョン学部なんだ、在籍するならそれなりの覚悟を持って所属してくれるものだと信じている。君もそのクチなのかい? それとも、何となくダンジョンに関わる仕事がしたいからダンジョン学部へ進学を希望するという流れなのかな? 」


 真剣な大泉先生のまなざしに、一瞬言葉が詰まる。俺は本当に自分から望んでダンジョン学部へ入部する、という覚悟を持ってきているのかどうか。


「改めて問われると言葉に詰まりますね。ですが、ダンジョン関連の仕事をしたいな、という気持ちはありますが……そうですねえ、さっきの先生の言い方を借りるなら、何となくダンジョンに関わる仕事がしたいから、というところから、ダンジョンに関わらなければいけない、という使命感のようなものまでの間に存在するところですね。なんだかんだ、そこそこのところまで潜ってきてはいますし」


「そこは全体説明でもしたと思うが、ダンジョンの奥深くまで入り込むのにダンジョン学部に通う必要はないし、探索者専門で行くならば高卒で探索者やればいいんだよ。そうじゃなくて、わざわざダンジョン探索者ではなくダンジョン学部へ通ってダンジョン専門家として学んでいく道を選ぶ理由は今の所あるのかい? というわけだ」


 大泉先生にかなり厳しい現実の突き付けをされている。うーん……これは俺のほうに納得させられるだけの言葉が用意できてないな。


「……その点に関しては今大泉先生を納得させられるだけの回答が出せません。面接なら落ちていてもおかしくないところでしょうね」


「なるほど。それならそれでいい。ただ、君が三回生になった時に改めて同じ質問をぶつけることにしよう。その時にはちゃんとした受け答えが出来るようになっているように期待しているよ」


 そういうと、さっきまでウザ絡みしていた合法ロリはまともな大人のような視線と声色をして、いたって真面目に俺の話を聞き、答えがないのもまた答え、ということで今は許してもらえるらしい。二年半後はそういうわけにはいかないが、来るなら相応の覚悟はしておいてもらうからね? というはっきりとした答えを受け取った気がする。


「では、私は片付けと自分の研究の続きをすることとしよう。君は私の言ったことをよく考えて、それから進路を変えるなら変える、そのまま進むなら進むで頑張りたまえ。私としてはゼミの扉はいつでも開けてあるつもりだからね。気が向いたらまた来年の春にでも来たまえ。それでは期待しているよ、本条幹也君」


 大泉先生は自分の研究室に戻っていった。どうやら本当に雑談に来ただけらしいが、その雑談の中にも学ぶべき部分はあったことがあの人もちゃんと大人してるんだな、ということを感じた。


 総合受付で彩花と待ち合わせし、お互いの予定が終わったところで合流してそのまま家に帰る。とりあえず俺の家に来て、お互いの学んできたことの復習というか、せっかくバラバラの学部に行ったのでそれぞれ情報のすり合わせをしておこうという話になった。


 自宅に戻ってコーラを開けて飲み、お互いもらってきた資料やペーパー、そしてノートに書いた走り書きをみせあって共有しつつ、お互いの戦果報告をする。


「で、どうだったのよそっちは」


「こっちは社会システム・ダンジョン経済学科の話を聞いてきた。一応録音もあるので渡そうと思えば渡せるから、必要なら持っていくといいよ」


 模擬講義の内容はスマホで録音していたため、聞こうと思えばすぐにでも聞ける。せっかくのチャンスなのだからと録音しておいて正解だったな。


「こっちは学部全体の話を聞いた後、生命化学コースの模擬授業を聞いてきたわ。せめて生きている間だけでもウナギを食べ続けていきたいのよね。そのために頑張れることがあるなら頑張らなきゃ」


 ふむ、彩花はそういう方向性から学部を決めるのか。まあ、進路の好みは人それぞれだし、どれがどうと文句をつける類のものではない。お互いそこは……そうだ、その件で大泉先生に詰められたばかりだったな。


「……こっちはかなり厳しいことを言われてきた感じかな。探索者じゃなく学生として学ぶからにはどこまで潜れるかではなく、どこまでダンジョンについて知識を身に付けられるかどうかのほうが比重が高いから、今自分がやりたいことは本当にダンジョン学部に入ってまでやらなければいけないことなのか、というのを再確認されたよ」


「それって、それなりに期待されてるからこそそこまできつい言い方をされたってことなのかもしれないわよ? あえて厳しく言っておいてそれでも来るなら全力で応対するって話かもしれないじゃない」


 そういうことなんだろうか……もしかしたら発破をかけてもダンジョン学部に入学する、という前提で話をされた可能性もあるし、もしかしたらそこまで何も考えずにただ真っ当に学者としての意見をぶつけられたのかもしれない。後者の場合は……まああの大泉先生の性格からしてあり得る。あくまでオープンキャンパスであって、入試に来たわけではない、ということを忘れてる可能性はあるな。


「まあ、とりあえず入試までにちゃんとしたダンジョン関係で行いたい勉強や行動についてしっかり学んでおくか。あの先生のゼミに入ることが確定してるわけじゃないが、一番身近なテーマでもあるしな。だから改めて考える所でもあるけど、俺は本当にダンジョン学部に入学していいのだろうか」


「ダンジョンの謎を解き明かす、でもいいし、せっかくダンジョン学部という新しい学部が出来るんだから、それを機にダンジョンで活躍するのを一旦止めてでも、ダンジョンについての知識や見識を広げる意味での学力を身に付けるほうに舵を切るでも私は良いとは思うんだけど」


 確かに、ダンジョン活動を自宅ダンジョンだけにして、それ以外のダンジョン活動を止めてまではっきりとダンジョンと決別してダンジョンのことを学び直す余裕があると言えばそういうことになる。


「まあ、入学してからハッキリ方向性を見極めて自分の勉強分野を決めるでも問題ない、とは言われたかな。でも、三回生時までには答えが出来ているように、とまで言われた」


「じゃあ、入学しても二年間も余裕を持たせてくれてるってことじゃない。ますます有望株ってことじゃないの。普通は入学希望者を増やすためにどんどん学部やゼミの宣伝をして新しい生徒にならないかってお薦めするところなのに、そんな突き放した言い方することはあんまりないんじゃないかしら。だからそういう意味では期待されてるんじゃないかとも思うんだけど」


 期待……か。本当にそうなんだろうか。いや、どっちにしろ学力でごり押ししてダンジョン学部に入ろうと思えばできる。でも、その後どうするかについてはプランがない。


 彩花を正面にして抱きしめて、少しずつ彩花分を補給しながら、ちょっと落ち込んでいる自分を自覚しながらも、彩花の温かさに逃げることにする。


「うーん、癒される。なんだかんだ今日は勉強になったな。今後はダンジョンに関するレポートとか論文なんかも探して読み込んで、自分が本当にやりたいことを見つけに行くことにするか」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ