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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第131話:自己紹介

「さて、話が大分逸れたな。そろそろうちの研究室の話題に戻ろうか。魔石の廃棄物からのエネルギーの再吸収、再燃焼状態に持ち込むことが当面の目標だ。その為にはどんな環境でどんな設備が必要になって……といういくつかの手順をクリアしていかないといけないわけだが、まず、魔石をどういう手順で操作することによりエネルギーとして取り出すことができるのか? という基本的な部分に立ち戻って考えてみよう。というわけで……名前そういえば聞いてなかったな。ここで自己紹介しよう。私は大泉曜子、准教授だ」


「本条幹也、桑員高校普通科の三年生です」


「結城彩花、同じく桑員高校普通科の三年生です」


「桑員高校か……なら学力的には問題なさそうだねえ。ちなみに期末の結果は何人中何位ぐらいだったんだい? 成績のほうもできれば聞かせてほしいな。どのぐらい優秀な学生が私の元へはせ参じてくれたのかを考えるにはちょうどいいバロメーターになるねえ」


「私は……200人中18位でした」


「俺は2位でした」


「おおっと、こいつは優秀だ。これは逃してはならない魚と見たね。ちなみに私は高校生時代は1位以外取ったことはなかったよ」


 おおっと、三十代の合法ロリがいきなりマウントを取りはじめたぞ。これは刺し返してもいい奴だな?


「一番前ですか」


「そうだとも」


「身長順でも? 」


「君、時々鋭く刺してくるなあ。まあ、私の成績はべつにいいんだ。これから魔石のエネルギー燃焼実験をするから、部屋を暗くしてみようか」


 言うが早いか、部屋をすこし暗くしてブラインドをかけ、照明も落とす。


「ここに、魔石発電所から届いた魔石くず……便宜上魔石からエネルギーを吸い取り終わったものを魔石くずと全て呼んでいるが、そのサンプルがある。こいつは普通に発電に使うためには両極に当たる場所に電気を流して、それの間に挟みこむだけで自己発電を促す代物なのだが……この実験装置の通り、小型化したサンプル発電機に通しても、電気が流れないのは目で見えてわかると思う」


 両端に単純に電気を流すような形の機械に対して、間に魔石を置いて発電をする予定だったらしいが、魔石は反応しない動画を見せてもらう。


「このように、使い終わった魔石を産業廃棄物として処理するか、処理する前の段階で溜めこんで、一定量溜まったらまとめて投棄、という形で処理しているのが現状だ。この時点で魔石に残留しているエネルギーはゼロである、と判断されている」


 魔石に直接電極を刺してみたり、色々な手段で魔石からエネルギーを取り出そうとしているが、反応がないというムービーが次々と表示されていく。


「ところが、これを科学的アプローチではなくダンジョン学的アプローチ……いうなれば、ダンジョンのルールの上で魔石を扱うと、エネルギーが採取できることが確認できた。例えばこの動画になるが……使い終わった魔石を手に持って【エネルギーボルト】のスキルを使うことにより、【エネルギーボルト】の出力の上昇が発見されている。これがいわゆる魔石の残りかすの中のエネルギーであると私が考えるものだ」


 魔石を手に持った状態と手から離した状態でそれぞれエネルギーボルトを撃ち放ち、その威力に差があることを目で見て確認している。確かに、魔石くずから光が放たれ、その分だけエネルギーボルトの出力が強化されているようにも見える。


「これをダンジョン学的アプローチと科学的アプローチを繋ぐ接点として何らかの機構やシステムを噛ませることができれば、今存在する魔石くずは完全に形が無くなるまで燃焼を続けることができて、その際のコストは魔石そのものが本来持ち合わせている分を合わせると、現在使っている分量の三倍のエネルギーゲインを得ることができると考えている」


 なるほど、ダンジョンの理屈では使えるエネルギーボルトの威力を上げることができるなら、それと同じような機構を作り上げて自動でエネルギーボルトに変わる何らかの発電システムに組み込むことができれば、それだけでも無駄が少なくできるどころか、さらに高効率で運転が可能になる、ということか。


「ちなみに魔石くずって今手元にありますか? 」


「あるとも。サンプルは要求すればいくらでもくれるように手配できるからね。大きさで言えば手頃なサイズが……このぐらいかな」


「それと、通常の魔石があるとよりわかりやすいのですが。もしかしたら通常の魔石からもエネルギーを抜き出すことができるんじゃないかと思いまして」


「ああ、あらかじめ言っておくが、通常エネルギーが満たされている魔石からはエネルギーボルトやその他のスキルの行使でエネルギーを使うことはできないらしい。あくまで、エネルギーとして使い終わった魔石に対してだけ有効のようだよ。念のため両方渡してはみるけどさ。もしかして、君も何らかのスキルが使えるのかい? 」


 魔石の真ん中だけがスコッとくりぬかれたようなきれいな石を渡された。石の角がほんのりと黒光りしているのが、昔は魔石でした、と言いたそうにしている。魔石からエネルギーとして力を搾り取るとこんな感じになるらしい。


 窓を開けて、外に向かってまずは通常のエネルギーボルトを100%の力で撃ってみる。いつものエネルギーボルトが何もない空に向かって発射されていく。


 つづいて、魔石を手にして、魔石の中のエネルギーを使うようなイメージをしながらエネルギーボルトを100%の力で撃ってみる。


 すると、威力こそ変わらないものの継続時間が大幅に伸びた。今までは十秒もすれば一発の長さは終わっていたものの、一分経ってもまだエネルギーボルトが使い続けられている。


「なるほど。威力が強化されるんじゃなくて使用持久力が伸びるのか。まさにエネルギータンクって感じだな」


「君は【エネルギーボルト】が使えたのか。ますます研究に向いている素材だな。どうだ、私のところで色々調べられていかないか? ねっとりたっぷりとご奉仕するぞ」


「すいません、ロリは間に合ってるので」


「ちくしょうめ! 人よりゆっくり成長しているだけだというのに! 」


 段々この大泉准教授の扱いに慣れてきた気がする。彩花は何故かほっとしているが、俺が浮気するとでも思っていたんだろうか。


「とりあえず大泉准教授の理論が大まかにはあっていることは解りました。ただ、エネルギーボルトがそのまま電力になるわけではないですし、人間というあやふやな回路を通しての実験になるので、まだまだ研究しなければいけない要素は多そうですね」


「そうなのだよ! 人間なんて信用できないものではなく、確実にゼロイチで結果を返してくれる機械君のほうがよっぽど信用もできるしピザだって頼めばちゃんと届くんだ。そこをどう乗り切るかがこのエネルギーの活用の課題なんだよね」


「まあ、ピザも運ぶのは人間なので機械君の頼んだ通りに行くかどうかは別ですが、スキルスクロールを直接回路につないでみてそこから電力が出るのか……みたいな実験はもうやったんですかね? 」


「流石に紙っぺら一枚で挟み込んで効果が出るかどうかは試したが、やはりだめだったよ。スキルの行使には人間の意思というか、スキルを使うための申請と承認が自己で完結しているとはいえ、そこを省略するとうまく働かないらしい。今は人間を介してもいいから、自動的にエネルギーを取り出せるようになるところまでを実験として使っているところなのさ」


 大泉准教授は口でブーイングの形を取りながらも、実験は順調ではないにしろ少しずつ前には進んでいるんだぞ、という形で実践経験を俺達に積ませてくれていた。そこを知れただけでも来た価値はあったな。


「それで、君らはどうやって知り合ったんだい? お姉さんとしてはそういうコイバナ聞きたいなー、お肌がよみがえるような麗しい話聞きたいなー」


 さっきまで放置しっぱなしにしていた彩花にウザがらみし始めた。


「私と幹也はダンジョンで助けてもらったのが縁で付き合い始めましたよ。吊り橋効果って奴は充分にあったとは思うけど、そんなに元々嫌いじゃなかったし、付き合い始めてからもかっこよくなってきたし……後はキスが凄く上手いんですよ、彼」


 彩花がウザがらみを回避するように、遠間から未経験女子に向かってグサグサと串刺しにし始めた。


「はっはっは、まるで私が完全にそういうのを未経験だと思って攻撃をしているんだろうが、それはその通りだ、聞いていて羨ましさしかないね! ちくしょう! 聞くんじゃなかった! 」


 彩花も大泉准教授の扱いに気づき始めたらしい。この人は適度にいじるぐらいのほうがちょうどいい塩梅でスペースを埋められる。


「瀕死の重傷を負わされたところで、君らはこの後どうするんだい? 他の学部や学科、ゼミなんかも回るつもりかい? 」


「そうですね、このまま大泉准教授をおもちゃにして一日を過ごすのも、おもちゃにされる方は楽しいでしょうがおもちゃにする方もさすがに時間が余り過ぎて飽きると思うのでこの辺で一回さようならしようと思います」


「なんか聞き捨てならないセリフを吐かれたようだが、十二月にまたオープンキャンパスがあるから、暇なら来たまえ。歓迎してベンタブラックコーヒーを用意しておこう」


 胃に穴が開きそうなくらい黒そうなコーヒーだが、それはもう焦げているのでは? と思わなくもない。とりあえずお腹空いたから学食を覗きに行こうかな。今日ぐらいパスタから一日離れて活動するのも悪くないだろう。


「なかなか個性的な准教授だったわね。ここの学生になったらあの人にも日々お世話になるってことよね」


「まあそうなるだろうな。毎回かなり疲れる講義になりそうだが、そもそもあの人ホワイトボードに手が届くのかどうかから心配しなきゃいけないな。何かの講義を受け持つなら、という条件付きではあるが」


 なんだかんだで楽しい午前中だった。午後は何処を巡ろうか。念のため、滑り止めの予定の同時受験の工学部でも覗きに行こうかな。とりあえず学食と言えばカレーライスだな。白い皿に茶色いルゥに白い飯に赤い福神漬け。オーソドックスなカレーを思い描きながら、学食へと向かった。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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