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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第129話:全体質問

 大泉准教授から渡辺学部長にバトンタッチし、マイクを持つ人が変わる。


「どうも、先ほど総合挨拶で学部の挨拶をさせていただいた学部長の渡辺です。さっきぶり、という皆さんのほうが多そうですね。我々ダンジョン学部としては、学部紹介の挨拶をさせてもらっていたように、フィールドワークにはあまり重点を置かずに、学術研究や物質解析、数学的見地なんかのどちらかと言えば座学の講義がメインになります。予算がないので代わりに自腹でダンジョン素材を取りに行くような可能性はあるかもしれませんが……まあ、出来るだけ努力していくところではあります」


 少し笑いが起きる。予算の都合で学習ができないでは話にならないからな。入学初年度から予算がなくて講義が受けられなかったり、勉強が出来なかったり……なんて話にならないようにはしておいてほしい。


「さて、先ほどの総合挨拶では一方的に話すだけでこの学部の実際のところを語ることは出来ませんでした。ここで実際に大泉准教授の説明を聞いて、違和感やすれ違いがあったらそのすり合わせをしていきたいと考えています。何か簡単な質疑応答や、ダンジョンに関する話でも結構です。ありましたら気軽に質問をしておいてくれると助かるかな」


 質問か……何がいいかな。ダンジョンに潜ることについてはあまりいい印象を与える可能性は低そうだな。それ以外の方法で何かしらの情報を得るような形にしたいな。何がいいかな……


「ダンジョン学部という名前のわりにダンジョンに潜ることについてはあまり重視していないような感じを受けるのですが、そこに理由はあるのでしょうか? 」


 俺の代わりに質問をする生徒が出てきた。うまく言葉がまとまらなくて質問をしづらかったのでちょうどいいタイミングだ。ナイスだぞ、誰か。


「そうですね、大まかに言えば予算的に厳しくて素材が手に入らないとか、わざわざ自分たちで潜らないと人気がない場所で手に入る素材、なんかがあれば別ですが、基本的には金銭を通してダンジョン素材を集めることは可能です。それをわざわざ自分の手でやるのも悪いとは言いませんが、時間的効率から言えば非効率であると言えます。四年間という限られた時間をそこに使い続けるのはどうかと考える次第です。我々は学術機関であって、職業訓練校でもハローワークでもありませんから、ほぼ誰でもなれる探索者という職業の達成度に関して、大学側から指図することはないと考えてください。同時に、どれだけ深く潜りより高品質な素材やアイテムなどを入手できるようになったとしても、それを評価基準にすることはないと考えてくださって結構です」


 つまり、探索者として名を上げることは大学にとっては必ずしもプラスにはならない、ということか。これならわざわざ彩花と二人、いや隆介を加えた三人でダンジョンに潜って訓練をするという形で、探索をする必要はなかったんだな。


 どうやら、思っていた以上に学術的な観点からダンジョンを見定める、という方向性で学部としては運営をしていくらしい。


 確かにこの方が早生まれやダンジョンデビューの早い、遅いの観点から見ると、はるかに平等であることは間違いないだろう。


「探索者を育成するわけではないという点についてお尋ねします。なぜそういう方針になったかというのを説明していただけると助かるのですが、なぜ大学として探索者を育成するという方向には向かわないのでしょうか」


 良い質問だけど、大体答えはさっきまでの質問で出てしまっている気がする。大学はサラリーマンや社会人の養成所ではない、というところかな。


「ではお答えします。探索者として名を上げるのは就職してからでも十分にできることだからです。もしも探索者として名を売りたいのであれば、しかるべき企業に入社しその企業のバックアップのもとで探索者として活躍していくべきでしょう。しかし我々がやりたいことは探索者を育ててあげることではなく、ダンジョンの中に存在する素材の研究やダンジョンの発生傾向の分析や、それらを調べることによるインスタンスダンジョンの発生の抑制、または予測など、ダンジョン外における知識や技術の獲得です。まずそこの情報のすり合わせをすることも本オープンキャンパスで行うべき点であることだと考えております。ですので、しっかり話し合いましょう。お互いに入学、学部に入ってから不幸な考え方の違いによって一年間を無駄にする、と言ったことのないようにして行きましょう」


 ふむ。あくまで欲しいのは研究者であって探索者ではない。もちろんフィールドワークとして探索を行う機会はあるにせよ、その際も自力だけで行う必要があるわけではなく、場合によっては別途探索者を雇ってでもフィールドワークを行う形にするということなのだろう。


 俺達はどうしたもんかな……ダンジョン学部に入るとは宣言したものの、この調子では座学が中心でダンジョン攻略に割く時間は減りそうだ。そう考えると、せっかくアカネに育ててもらったこのレベルも無駄になりそうな雰囲気がプンプンしている。


 メモ代わりのノートにトン、トン、とペンを叩いて考えを巡らせていると、彩花がスッと手を握ってきた。


「どうした? 」


「このまま流れに乗ってダンジョン学部に入るのが正解なのかどうかはちょっと悩ましいわね。ダンジョンに潜って活躍したいなら他の学部でも良いような気がしてきたわ」


「そう思わなくもないが、もうちょっと眺めてみてもいいような気もしてきた。さっきも言ってたように、ゼミの内容によっては他のゼミで使う材料を自分で集めていくような人材を求める局面が出てくるかもしれないし、その為には俺達の力も役に立つ可能性があるとは言えるだろう」


「うーん、でも」


 彩花はまだこのオープンキャンパスらしくない学生獲得の姿勢に、逆に納得がいってない様子だ。


「それにブラフの可能性だってある。今ここで受験勉強をおろそかにしてダンジョンに潜るような愚行を犯さないためにわざとこういう対応をしている可能性もあるんだ。まだ見定めるのは早い」


「……というわけで、即戦力の探索者を集めているわけではないということは、留意しておいていただきたいところです。まずはまだ皆さんは学生の身分ですので、探索者としてどれだけの力を得るかよりもまずは学生の本分としての学習能力や知識、それらの方を優先して学んでいただきたいと思っております。それ以外の実際に探索に必要な能力や知識、それに伴ういろいろな情報などに関しては、入学してからでも充分仕入れることができると考えております」


 彩花と話してる間に少し重要な話を拾い逃したかもしれない。後で聞いても大丈夫かな。


「私が軽く話している間に他の教授陣もどうやら到着したようです。学部の全体の話はこのぐらいにして学部としてどのような学科が存在するのか、またはどのような講義内容や知識の方向性、ダンジョンについてどのぐらい詳しくなければいけないのか等の質疑や大学全体への質問なども含めて答えていけると思います。それでは各学科の教授陣について説明をしていきたいと思います」


 そう言うと渡辺学部長は順番に教授陣を並べ、一人ずつ説明を始めた。どうやら既にある一定の数の研究室は決まっているらしく、それぞれの研究室に応じた説明、その研究室の研究室長、責任者である教授の名前と、専門について説明を始めた。


 先ほどプロジェクターの準備をしていた大泉准教授は専門はエネルギー資源であり、ダンジョン内のドロップ品の中でも魔石や鉱物、またはそれに準ずるアイテムに関しての研究室を持っているらしい。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 それぞれの教授の周りへ向かい、それぞれの研究室で行っていく予定の内容を聞きにいく。


「あ、さっきはありがとね。おかげでつつがなく講演ができたよ」


 そう言われて頭を下げられ、逆に頭を下げ返している子の相手は先ほどの大泉准教授。若さは俺達とそう変わらないように見えるが、小柄なので更に若く見えるのかもしれない。


「いえ、使えるものは学生でも何でも使え、という方針は嫌いではありませんので」


「それはよかったねえ。で、君達は何処の学科……いわばどこの研究室に所属するかまではもう決めた感じなのかな? それともこれから探すのかな? もしかしたらウチくるとか? 」


「そこはまだ悩んでいるところですね。なにより、高レベル探索者は要らないという一言に若干驚いているクチなので」


 自分自身そう低いとは言えないだけの自信はあるし、まだ潜ってないだけでそこそこの深さまではたどり着けるような気がしないでもない自分の実力を考えるに、そこまで行きつくことができるならば、実力があるに越したことはないのだ。


 大泉准教授の周りに集まるのは俺たちだけ。他の教授の周りにはパラパラと人が集まり出してはいるものの、こっちは閑古鳥だ。どうやらエネルギー系統の話はあまり人気ではないらしい。


「やっぱりエネルギー資源効率の話って人気がないのかなあ。今一番大事な話だと思うんだけれど。まだ人類は魔石からのエネルギー供給効率を十分に発揮できているとは思えないんだよね。まだまだ伸びしろがあるという意味では息の長い学科だとは思うのだけれど」


「そうですね……教授からみて、今現在の魔石のエネルギー変換効率は何%ぐらいだと考えておられるんですか? 」


 せっかくなのでこのままおしゃべりしていこう。彩花も他の研究室にこれといって興味があるわけでもなさそうだったので、そのまま俺についてきている。


「そうだね……だいたい30%ぐらいかな。まだまだ効率よくエネルギーを取り出す手段があると考えているよ」


「30%ですか、また大きく出ましたね。根拠は何かあるんですか?」


「例えば、モンスターを倒した時にモンスターが黒い霧になる現象。あれもエネルギー拡散の一種だと考えれば、魔石も同様に黒い霧になって拡散するようになるかもしれない。その時のエネルギーゲインを考えるとどう考えても30%ほどのエネルギーしか今は使えていないと考える方が自然なんだよ。魔石は現状エネルギーを使い切ると透明に近い結晶になってボロボロになっていくけど、その残りかすにもわずかながらまだエネルギーが残っていることが確認できているんだ。残りかすもエネルギーとして使えるようになれば、エネルギー転換時の出力から考えると、まだまだ莫大なエネルギーを秘めていると考えているのが私の研究なのだよ」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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