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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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51/303

50.いざ、浮島へ!!


“天空神殿”。

積乱雲に覆われたそこは神王の加護無しでは入れない楽園である。


加護の無い者が侵入しようとすれば、暴風と雷、そして氷の槍に襲われ一生を終える事となるだろう。

反対に加護を持つ者が天空神殿(ここ)を訪れれば、自ずと道は開かれ、この世の楽園と変わるのだ。




さて、諸君らは見事その加護を手に入れたわけだが、準備は良いだろうか。


「はい!! お弁当もおやつも主様の下さったマジックバッグに沢山入れました!!」

「よろしい。他の者も準備は良いかね」


元気の良いショコラの声にその場が和む。

そう、私達はこれから天空神殿へと出掛けるのだ。


「この“マジックバッグ”っつーのは便利だなぁ。いくら入れても嵩張らねぇし、重くもねぇ」


ロードは私が渡した無限収納の機能のついたバッグを繁々と眺めている。

そう。異世界あるあるの一つ、この“マジックバッグ”は、私が趣味で創ったものだ。



「ロード君、そんな事で驚いていてはこの先身が持たんぞ!」

「あ゛ぁ゛?」


つがいだと言うならそのヤンキーみたいな態度を改めるべきだと私は思う。

そしてまた神輿スタイルで抱えられているので自分で歩けない事に虚しさが…。


『ミヤビ様、いつでも行けますが』


マジックバッグのリュックを背負って尻尾をブンブン振りながら、ちょっと落ち着いた声を出すヴェリウスの可愛らしさに癒されつつ、バカロンでも潜れる大きな扉を出す。


「ではこれから天空神殿のある浮島へと一歩を踏み出す。皆存分に楽しんでくれ!!」


フハハハハと笑いながら扉を開けた。ロードがな。




イギリスのテムズ川からビッグ・ベンとウェストミンスター宮殿を臨む景色を切り取ったような、そんな風景が目の前に広がり、私とヴェリウスを除く2人と1匹が息を飲んだ。

私達は大きな川にかかる橋の上に立ち、ただただゴシック様式の巨大な建物と街の景色を眺めていた。


ベージュがかった石造りの建物達は、夜になると灯りがともされ、電球色のオレンジがかった光でまるで黄金のように輝き、美しさを増す。

今は青空の下、繊細で美しい装飾がこれでもかと主張されている。


ビッグ・ベンやウェストミンスター宮殿を模した建物は実際住むことが出来るが、今は置いておこう。


5分程で橋を渡りきった私達は、ビッグ・ベンとウェストミンスター宮殿を模した建物…ながいのでベンミンスターとでも名付けよう。よし、今日からこの建物は“ベンミンスター”だ。に興味を示す2人と1匹をうんうんと頷きながら見つつニヤニヤしていた。

何故なら、このベンミンスターと他の建物が門のように行く手を阻んでいたからだ。そう、これ以上進む事は出来ないと。


「おい、ミヤビ。道がねぇぞ」

「建物の中に入るのでしょうか?」

《飛んで行けって事じゃないかなぁ》


それぞれが好きな事をいう中、私とヴェリウスのニヤニヤは止まらない。


「まずはベンミンスターの中に入ってからだよ」


ニッコリ笑って言えば、ヴェリウスが先頭きって自慢気に入って行く。

ロード達も戸惑いながらその後を着いて行くと、一際大きな柱の前で止まる事となる。


「ヴェリウス、お手本を見せてあげてよ」

『喜んで』


ヴェリウスは自信満々に胸を張ると、そのまま巨大な柱へ突進した。

皆がぎょっとしたように目を見開き、ショコラは「ヴェリウス様ぶつかっちゃう!!」と叫んだ。その瞬間、彼女の姿が掻き消えたのだ。


「あ゛…? 結界か」

「わぁ~!! ぶつかるように見せかけたものだったんですね!!」


面白そうだとショコラはすぐにヴェリウスの後を追いかけ、バカロンはショコラの後を追って柱に消えていった。


「ロードも行こうよ」

「ああ。しっかしすげぇ所だなぁここは…」


フフフ。こんな事で驚いちゃいかんよ。この後だよ更なる驚きが待ち構えているのはな!!


薄ら笑いを浮かべながら神輿スタイルで柱をくぐればそこに拡がるのは勿論、駅だ。

魔法学校行きの列車…違う!! 天空神殿行きの列車に乗って向かうという寸法である。

あ~ロマンが詰まってる!!


「っんだこのデケェ鉄の塊は!?」

「天空神殿まで行く為の乗り物だよ!! 凄いでしょっ」


年甲斐もなくはしゃいでしまうが許してほしい。ここは私の夢と希望という名のロマンを詰め込んだ浮島なのだから。


「っ可愛いなぁ、おい」


何故か愛しそうに見つめられた。


「ほら、早く乗ろう!!」


前方ではショコラがきゃーきゃーとはしゃぎながらヴェリウスと乗車している所が見える。

え? バカロンは列車の上に乗ってるよ。入れないもの。


《何で僕だけ外なのぉ!?》



列車に乗り込み、4人席へと座る。

広々な座席に足を子供みたいに伸ばして、車内を眺めた。


私の元居た世界の物と比べてかなり広くとってあるのは、この世界の人が大きいからだ。


「皆、窓の外の景色を見ていて。凄いから」

『ミヤビ様、先々言っては楽しみがありませんよ』


苦笑いのヴェリウスに「だって見逃したらさぁ」と答えながら、列車が走り出すのを待つ。

ちなみにこの列車は無人で走っているのだ。


ギッと音がして、ガタンー…ゴトンー…とゆっくり走り出した事で、私の心臓は高鳴り、ワクワクが抑えきれなくなる。

これから私のおすすめの景色が見えてくるからだ。


駅を出発すると、建物内という事もあり暗いトンネルが続く。しかし前方に光が差し込んできて、列車が外へ飛び出した次の瞬間!!


右手の窓の外に、まさに青い天空が広がった。


地面はピカピカに磨かれた真っ白な大理石のような石畳。しかも継ぎ目もなにもないものが果てしなく続いている。

そして空から落ちる美しくも不思議な滝。

透明度の高い水は石畳の上を覆い、天空を映す水鏡となっている。

そこはまるで空の上を列車が走っているかのように、鮮やかな青と流れる雲の白があるだけの、そんな景色だった。


飛沫がたたないよう線路は少し高い場所に作ってある為、風から出来る波紋以外はたたず、幻想的な光景を作り出している。


ドローンをとばして撮影したいと思ってしまうような景色だ。


滝の飛沫はその周辺で掻き消えるように調整してあるのでご安心を。


左手の窓の外は浮島の外周を走っているので、地上の景色が雲の間から微かに見え隠れしている。

結構なスリルが味わえるので、お好きな方は左手の席にお座りいただきたい。




列車に揺られて15分で天空神殿前駅に到着する。

その間は、景色に見惚れたのか誰一人喋る事はなかった。


駅に降り立つと、最初に目につくのは天空に向かって伸びる階段だ。

階段の先に在るのは、更に上空に浮かぶもうひとつの浮島だった。


どんだけあるんだという段数に普通の人なら帰りたくなるが、実はこれ、50段程登ったらショートカット(転移)する仕掛けになっている。何故50段は登るのかって? 上から見る景色も絶景だからだよ!!


でもね、宙に浮く階段って意外と怖いの。私は下が見られない。見たら気を失いそうだから。

なのに皆平気そうに階段を上がってるんだよね。そりゃあここから落ちたとしても駅に転移されるようになってるから大丈夫なんだけど、怖いものは怖いんだ!!


なら何で創ったかって思うだろう。

実はここのデザイン案はランタンさんなのだ。あの人竜神だから高い所も平気なの。なのでこういうデザインを平気で考える。


ヴェリウスが天空神殿の外観のデザインを考えたから、駅のデザインは譲って欲しいと言われ仕方なくこんな事になりました。




そして遂にやって来ました天空神殿!!


果たしてその全貌はいかに!?

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