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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第2章

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28.進化? 変異?


深淵の森へ戻ってきて数日。

シフトを組んでウチの周りをパトロールしてくれていた魔獣達に、変化があった事に気付く。


よく挨拶する魔獣の中でも、特に愛想良く挨拶してくれるトカゲのような魔獣が、驚くべき進化を遂げていたのだ。


それは、畑から薬の材料を収穫していた時の事。


いつものように木々が揺れ、のっしのっしと巨大な体躯のトカゲ型魔獣が顔を覗かせ、頭を下げるといういやに人間臭い挨拶をしてきたのだが、まぁそれもいつもの事だとこちらも挨拶を返した。


けれど、何処か違和感を感じてよく観察してみると……


何だか一回り大きくなっている上、凸凹も以前に比べて増えていた。

更に顔は迫力を増し、牙も鋭くなっている気がする。


決定的だったのは挨拶を終え、パトロールに戻るその後ろ姿を目に入れた時だ。


何と、コウモリのような羽が背中に生えていたのだ!!



「べ、ヴェリウスゥゥゥゥ!!!」





『ー…それは魔素が満ちたからでしょう』

「ん~?」


叫び声を上げた途端、慌てて家から出て来たヴェリウスは、トカゲに羽が生えたという私の話を聞き即答した。


『ドラゴンは魔力の塊と言っても過言ではない生物なのです。空を飛ぶにしても魔力がないと飛べませんし、皮膚の表面等も魔力で覆っています。つまり、魔素が枯渇寸前だったこの世界ではすでに絶滅した生物でした』


何ですって!? すでに絶滅!?


『とはいえ、実は竜神が一部のドラゴンを保存しておりますが……それはいいとして、魔素が世界に満ちた今、神王様のおそばに在る魔獣(類似種限定)でしたら、ドラゴンに変異する事象が起きてもおかしくはないかと』

「何で神王のそばに居ると変異が起きるかもなの?」

『前にもお伝え致しましたが、神王様であるミヤビ様のお力は神族の我らと比べても桁違いの大きさ……強さと申しましょうか。そのお力が僅とはいえ漏れ出ておりまして…。

ですので、そのお力に影響されて予測出来ない事が起こる場合もあります。今回の魔獣のドラゴン化もその一つでしょう』


力が漏れてる!? しかもそれが周りに影響してんの!?


「それはマズくない? 力が漏れないように自分の周りに結界張っとくべき?」

『影響といっても些細な事ですし、悪影響ではありませんのでそこまではよろしいのでは?』

「ドラゴン化って些細な事かなぁ!? しかも予測出来ない事が起きるんでしょう!?」

『私としましては、魔素が満ちたといってもまだ安定はしておりませんし、世界に馴染むまではそのままでいて下さった方が良いのですが』


安定してないって何が? 誰が世界に馴染むまでの話をしているの?

聞いていいのかな? 聞かない方がいいのかな?


『魔素は全ての生物の源ですから、定着して安定するまでに時間を要するのです』


難しい顔で唸っていると説明を新たに加えられた。

成る程。生物に馴染まないといけないって話か。


「でも、それと私の力の漏れとどういう関係があるの?」

『魔素はミヤビ様のお力を元に出来ておりますので、おそばでそのお力に触れると魔素の馴染みが早まるのです。特に人族は早く馴染んだ方が、本能が多少でも抑えられて良いかと…』


それってロードの事ですかー!?


ちょっと誤解されるような言い方しないでヴェリーちゃん!!

私達まだ一線越えてないから!! 清い関係だからねっ

一緒に暮らし始めたけど、部屋は別々です!!


『このままでは主様が壊されてしまうのではないかと不安で…ですからご自身に結界ははらず、力をわざと漏らす位が身を守れるのでは…』

「そうだねー!! 駄々漏れが良いと思う!!」

『駄々漏れは悪影響になりますので止めて下さい』

「ハイ…」


注意されてしまった。


最近この子、母親みたいになってきてるんだけど。

もしかしてヴェリウスは私の事を子供だと思っているんじゃあ…。


確かにヴェリウスは長く生きているけど、まさかね。


あれ、よく考えたらこの子に元の世界での事を何も教えてないような…。

初めて会った時に誕生して2年とか言われたから、2才って事になっているんじゃないか?



子供っていうか幼児だと思われてる!?



◇◇◇



結局ヴェリウスから子供扱いをされているのかどうか聞けなかった。

38才にもなって子供扱い、しかも幼児扱いされてるかもしれないなんてとても受け入れられない。



トカゲ型魔獣のドラゴン化の話を聞いた後は、ただ黙々と薬を作ったり薄い本を妄想(創)作して読んだり、マンガをベッドに転がりながら見たりといつものように過ごした。


日も落ち、家の外は真っ暗になっている。

この2年で慣れたとはいえ、やはり森だけあって薄気味悪く外に出たいとは思えない。


「帰ったぞ~」


ソファに寝転び窓の外をチラッと見て、テレビを見つつお茶に手を伸ばしていたら、玄関の方からロードの声がした。

王都のロードの部屋とウチの玄関を繋げたので、帰って来るのは当然玄関からだ。靴も脱いでもらえるしね。


「雅、寂しかっただろ」


リビングの扉を開けた途端そんな事をのたまうゴリラに胡乱な目を向け、テレビに戻す。

今一番いい所なのだ。暴れん坊な将軍様の悪者退治が山場を迎えているのだから。


「おい、テメェ俺というものがありながらまたそんなもん観てんのか。いい加減そのテレビとかいう奇っ怪なもん潰すぞ」


地を這うような声を出しながら抱き締めてくるのでテレビが見えない。せっかくの将軍様の勇姿が見えない!


「ご飯ーっ お腹空きましたー!! ロードの手料理が食べたいです!!」


テレビを壊されるのも困るので、出来るだけ穏便に離れるよう、甘えている風にご飯を要求する。

決して、お母さんご飯まだ~? という事ではない。


「仕方ねぇなぁ。俺の雅は」


ヤクザみたいな強面がデレると気持ち悪いデス。


「ならつがいの為に美味い飯作るかっ」


抱き込まれて散々匂いを嗅がれ、髪や額やらにキスをされてやっと解放される。

髪の毛がぐちゃぐちゃだ。


こんな事をされても何も言わないのには理由がある。


森に帰ってきて初日に同じような事をされ、人生初の額ちゅうに驚いて叫び声をあげ殴ったら、自殺でもするんじゃないかって位落ち込んだのだ。

その後慰めるのにどんだけ労力を使い、精神力を削ったか…。


そんなわけで後々面倒な事にならない為にも、嫌でなければ好きにさせている。

幸い嫌がる事はされないし、唇を食われたのはあの時の一回きりだ。


キッチンへ行ったロードを見送ると、DVDを早戻しして将軍様の勇姿を観賞する。

この殺陣とか本当に見惚れる。

そりゃロードの戦いは桁違いの大迫力だけど、将軍様の品のある刀さばきは特別なのだ。



『ミヤビ様、ただいま戻りました』


今度はヴェリウスの声が窓の外から聞こえ、ソファから腰をあげる。


「お帰りー」


ガラガラと窓を開ければ、ひょいっと中に入ってくるので尻尾を挟まないように閉める。


「お腹いっぱい食べた?」


晩御飯を狩りに行っていたヴェリウスに聞けば、フワフワの尻尾をブンブン振って『はい!』と答えるので、首の周りをわしゃわしゃと掴むように撫でる。

気持ち良さそうに喉をさらし、そのうちにドテンとお腹を見せるように倒れてブラッシングをねだり始める。


「ヴェリーちゃんは可愛いね~」


お腹を撫でて毛並みを整えながらしみじみつぶやく。

いつの間にかDVDは終わっていたのでプレイヤーとテレビ両方の電源を落とした。


ヴェリウスのお手入れ用BOXからブラシを取り出し、耳と耳の間からまずブラッシングしていく。


『人族の男は帰って来ているようですね』


伏せの体勢に変わり、ブラッシングにうっとりしながらキッチンの方を見てつぶやく。

背中にブラシをやると、前足をクロスさせその上に顎をのせてリラックスし始めた。


「ご飯作ってくれてるよ」


耳をピクピク動かして、細めていた目を開くので気持ち良くなかったかなと思いブラシを移動させた。


『ミヤビ様、お腹が空いているのでしたら私が狩ってきた獲物を差し上げます。すぐに召し上がれる新鮮なものですよ!』

「遠慮シマス…」


生肉だものね。


『固くて召し上がりにくいようでしたら、私が先に噛み砕いてからお渡ししますので大丈夫ですよ』


全く大丈夫じゃない。


「気持ちは嬉しいけど、まだそんなにお腹減ってないから」


丁重にお断りをしてロードのご飯を待つ。

半ばご飯から話をそらすようにブラッシングを丁寧にやっていた為、ご飯が出来る頃にはいつもよりふわサラ艶々になっていた。




「はぁ~美味しかった!」

「そりゃ良かった」


相変わらずの極上飯に舌鼓を打ちながら食し、デザートまで平らげたその時、


ドンッ


と大きな音がし、家が縦に揺れた。


地震か!? と思ったが揺れは一瞬で、何だったんだと向かいのロードを見れば、険しい顔で外を見ていた。


え? 外で何か起きてるの!?

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