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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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266/303

264.ラブストーリーは突然に?


ロードの執務室でゴロゴロ転がって居れば、部屋の外が騒がしいことに気付いた。

窓の外を見ると、数台の豪奢な馬車が王宮から出て行き、空には伝書鳥が飛び交っている。


何かあったのだろうか?


首を傾げていれば、キラキラと氷の結晶が舞い、執務室にヴェリウスが現れたのだ。

相変わらず美しい登場である。


『ミヤビ様、世界中の王と代表者に教会の取り潰しと背信者捕縛の件を一斉に(・・・)周知致しました』

「あ、うん。ありがと……ん? 一斉って言った?」

『はい。世界会議とはいえ、ルマンド王国に集まったのは一部の国の代表者のみ。他の国にもランタンやジュリアスが赴き私と同じ内容を伝えております故』


当然ですと胸を張るヴェリウスに、さすがだねぇと褒めれば尻尾をブンブン振って喜んでいた。


「まぁこれで教会を消したら一件落着だね」

『それですが、国民への周知にひと月の時間を与えましたのでお取り潰しはひと月後でお願いします』

「そっか。いきなり教会が無くなったら皆びっくりするしね。分かった」


ヴェリウスの話に頷いてはみたものの、私はひと月後に教会を消す事を覚えているだろうか。


『ミヤビ様、ひと月後に教会が消滅するよう今願っておけばお忘れになる事もないかと』

「そうしておきマス…」


顔に出ていたのだろうか。そんなアドバイスをいただいてしまった。


ヴェリウスの言うように願ってから、そういえば…と彼女を見る。


「お嬢様…聖女のベルーナちゃんはどうしてる? イアンさんも」


王都の教会はロードが破壊してしまったので、お嬢様は居場所が無くなってしまう。家に帰ったのだろうかと思うがどうなのだろう。そしてイアンさん…彼は今回の主犯の息子という事で肩身の狭い思いをしているかもしれない。


『聖女と呼ばれているあの少女は、大司教の捕縛に協力したとして国王より感謝状が贈られました。現在は親元に戻っているようです。

人間にとって聖魔法の使い手は貴重。少女の親もぞんざいには扱わないでしょう』

「そっか…元々家に帰りたいようだったし、大事にしてもらえるなら良かったよ」

『はい。イアンはやはり首謀者の家族です。捕縛に協力したといっても処罰対象になるでしょう。減刑されたとしても国外追放、さらに世界中の教会が取り潰しになる事の責任を考えれば、聖人の称号は剥奪され受け入れる国もないかと』

「…成る程、ならイアンさんは浮島の街の住人としてもらっちゃおうか」

『…そう仰られると思い、すでにエルフ達には準備を進めさせております』


ウチの子なんて優秀なの!!


ぎゅうっと抱きつくと尻尾の動きが激しくなり、ブンブンと音が聞こえる程になった。

どさくさに紛れてふわっふわの毛に顔を埋め、その感触を堪能していると突然身体が浮き、もふもふから引き剥がされたのだ。


「なぁに俺以外にくっついてんだ」


耳に響く低い声にぞくりとする。


「っロード!」


手足をばたつかせるが、抱き上げられた身体が地に下ろされる事はなかった。


『仕事はどうした』


ムッとした声でヴェリウスがロードに話しかければ、誰かさんのお陰で予定が変更になったので呼び戻されたとぶつぶつ言っている。

王宮の外に出ていたらしいのだが帰ってきてまたすぐ出るらしい。


『さっさと行くが良い。私とミヤビ様の戯れの邪魔をするな』

「ふざけんなよ。そんな羨ましい事許せるわけねぇだろ。俺がミヤビと戯れてぇわ」


ヴェリウスはバカにしたように鼻を鳴らし、ツンとすましている。


「ねぇ、ロード。ヴェリウスと一緒にお嬢様とイアンさんの様子を見に行きたいんだけど良い?」

「あ゛?」


険しい顔で見られるが、私とヴェリウスを見て少し考え、ヴェリウスと一緒ならと許してくれた。


「その代わり夜にはここに戻って来んだぞ。いいな」


そんな事を言いながら渋々仕事に戻ったロードに、私はほくそ笑んだのである。







「ベルーナ。教会が無くなってしまうのは残念だけれど、稀代の犯罪者を捕まえるとは、お前は我が家の誇りだよ!」

「ええ、ええ。淑女としては多少はしたない行為ではありますが、国王様からの感謝状と、なにより神王様から直接御言葉を賜ったのは素晴らしい事ですわ!!」

「…御言葉を賜ったなど、そんな畏れ多い…わたくしは無力でした」


父母の言葉に唇を噛みしめ俯くお嬢様は、すっかり痩せてしまいあのころころとした面影はない。

フランス人形のような美少女に大変身していたのだ。


「いや誰?」

『ミヤビ様が仰っていた、聖女と言われている少女です』


隠匿魔法を使い侵入した子爵邸の、家族用リビングで繰り広げられるドラマのような一幕を見守っていた私は、足元のヴェリウスの言葉に驚愕した。


「違うよっ お嬢様はもっとまん丸くてコロコロ転がっていきそうな可愛い子だよ!? 教会に行って少し痩せちゃったけどスレンダーとは言い難い、けど可愛い子だったよ!? それがアレ!?」


目の前にはブロンドの髪に青い瞳と白い肌の(ここまではコロコロお嬢様と同じ)、普通体型の15、6に見える(※12才です)美少女がまさに聖女然としていらっしゃるではないか!


『家族からは教会に捨てられるように預けられ、唯一優しくしてくれた大司教には裏切られ、聖女として祭り上げられたのですから、あのようになるのも無理はないかと』

「実は教会がライザッ○だったかのような劇的ビフォー、アフター…」


呆然と見る事しか出来ない。


『しかしあの親は人族でありながら、自分の子を物として見ている節がありますね』

「一応大切にしているようだけど、一度教会に預けられたお嬢様にはキツイかもね…」


彼女のつがいが早く現れる事を祈っておこう。

しかし|教会(ライ○ップ)とんでもなく結果にコミットしたな。



その翌日、世界会議でやって来ていた王様の護衛騎士の一人がお嬢様のつがいである事が発覚し、お嬢様は連れ去られるように他国へ行ってしまったのだ。


人族、怖い。



◇◇◇



イアンさんは、王宮の離れの一角に監禁されていた。

監禁といっても、不自由ない部屋を用意されている。が、扉の前には騎士が一人立っており監禁には違いなかった。


「イアンさん」


外に声が漏れないよう結界を張り、祈りを捧げていたイアンさんの前に現れる。


「!? 神王様…っ」


驚愕の表情を浮かべるが、やはりブレない土下座で出迎えてくれるイアンさん。それに頷くヴェリウスは割と彼を気にいっているのかもしれない。



「酷い扱いは受けてないようで安心したよ」

「本来なら牢に入れられても文句の言えぬ立場にもかかわらず、ルマンド国王は罪人である私を丁寧に扱って下さいます」


土下座を止めさせ、室内にあったテーブルにティーセットを用意し向かいの席に掛けさせると、彼は近況を聞かせてくれた。


罪人って、首謀者はお父さんでしょとは思うが、大きな犯罪は昔の日本も親族もろとも罰を受けていた事を思い出し口には出来なかった。


『お前は父親を止めようとしていた。ルマンド国王もそれを分かっているから酷い扱いはしないのだろう』


珍しくヴェリウスが人間をフォローした事に驚く。

彼女はツンデレでフォロー自体は珍しくないが、その方法は分かりにくいのだ。それがこんなにも分かりやすくフォローした事を意外に思う。


「神獣様…ありがとうございます」

『ふ、ふんっ 私は真実を口にしただけだ。そのようにお礼を言われるような事はしておらぬっ』


何か私お邪魔ですかね。


一人空気になっていると、ヴェリウスがミヤビ様よりお話があるそうだ! 心して聞けよと急に話をふってきた。


「お話、ですか?」


姿勢を正し(といっても元々姿勢は正されていたが)、困惑しているような表情でこちらを見るイアンさんに浮島の話を切り出したのだ。


「イアンさんには浮島で暮らしてもらおうと思っています」

「は……え?」


瞳をぱちぱちと瞬き、何を言われたのか分からないという顔をするイアンさんにもう一度言う。


「浮島のエルフ街ですでにイアンさんを迎える準備をしています。ヴェリウスがエルフの代表にも話をしているので、すでに皆に伝わっているでしょう。したがってイアンさんに拒否権はありませんので悪しからず」

「え…えェェェ!!!?」

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