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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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198.チラシの効果


トリミーさんの他に初めて来店してくれたお客様、あの3人組の女の子達は1人がワンピースを1枚買ってくれて帰って行った。しかし他の2人も、


「お金貯めて絶対買いに来ます」


と嬉しそうに帰って行ったのでまた来てくれるかもしれない。


それから2時間後に1人年配の女性が来てくれたのだが、その人は何も買わずに帰って行った。


この日はこの2組のみの来店だったが、初日の0人から2組とまずまずの出だしではないだろうか。



大体、この世界の古着屋は服一着が大体300~1000ジット。コピーでほぼ元手がかかってないウチもその位で売る事はできるが、そうすると古着屋に人が行かなくなってしまう。

という事で、ウチは最低が1500ジット~と決めている。

ただあまりにも高くては庶民をターゲットにしているこちらとしても売れないので、1万ジットまでのちょっと頑張れば手が届くラインで揃えているのだ。

きっと需要はあるはずなのだ。


このまま徐々にこの店が周知されていけば、きっとお客様がきてくれるようになる。と私はふんでいる。




しかしこの2日後、予想もしていなかった大問題が起きたのだ。




「━━…これは一体何だね」

「? ただのチラシ(・・・)ですが」


ルーベンスさんにロードと共に呼び出され、やって来た執務室で机の上に置かれたチラシに目を向ける。


「“チラシ”…?」


眉間にシワを寄せた難しい顔でそう呟いたルーベンスさんにコトリと首を傾げる。

後ろに居るロードが「あ~~」と唸り声をあげていて振り返った。


「何? 変な声出して…」


片手で顔を覆いがっくり項垂れたロードに益々分からなくなる。


「ロード?」

「っオメェは…ッ またやらかしたのか!」


はい~??


「……この紙の製造方法について商業ギルドから問い合わせがきているのだがね」


眉間にシワを寄せて一見怒っているように見えるルーベンスさんだが、この顔は困惑している時に見せる表情なのだと最近分かってきた。


「商業ギルドから、ですか?」


ルーベンスさんとロードを交互に見遣り、それこそこちらが戸惑ってしまう。


「何で和紙の作り方を知りたいんですか??」


この世界、貴族は羊皮紙を使用しているが、羊皮紙の普及している時代地球では植物で作る紙が存在していた。和紙はその中の一つなのだ。

という事は、作り方など紙専門の業者の方が詳しいだろう。商業ギルドは一体何を思って王宮に問い合わせたのか。


「あ゛ーーっ オメェがズレてんのは分かってた! だから俺に相談しろってあれ程言ってたんだよ!! なのに何でやらかすんだテメェはっ」

「騒ぐな。ロヴィンゴッドウェル第3師団長。今私はミヤビ殿に話を聞いているのだ」

「ミヤビのつがいは俺だ。コイツのやらかした後始末は俺が処理する」

「ほぅ。ならばこの“チラシ”とやらの、庶民への周知の責任を取ってもらおうか」


私を挟んで火花を散らすロードとルーベンスさんの仲は相変わらず悪い。


「あの~…もしかしてチラシを配ってお店の宣伝をしたらダメだったんですか?」


恐る恐るルーベンスさんに聞けば、「宣伝…?」と顔を僅かにしかめた。


「…確かに内容(・・)は服屋の商品と値段、場所が描かれているようだ……。成る程、良くできている」


ほ、褒められた!! ルーベンスさんに褒められたよトモコっ

心の中で感動していると、ルーベンスさんは「しかし、今は君の服屋に関して問うているわけではないのだ」と目付きを鋭くさせる。


「率直に言えば、この紙の製造方法…権利を国に売って欲しいのだよ」


ん?


ルーベンスさんを見て、ロードを見る。

ロードは顔をしかめて私を後ろに下がらせ言った。


「何故ミヤビがこの国にそこまでする必要がある。神が一つの国を特別扱いすればどうなるか、アンタが一番わかってんだろうが」


ロードの声は怒っているのとは違う落ち着いた口調で、何というか、どこか試しているような、そんな印象を受ける。


「勿論メリットもリスクも理解している。だからこそ、“ミヤビ殿は精霊(・・)である”という噂を広めさせてもらったのだ。神だと知られるわけにはいかないからな」


え、そうなの? ていうか精霊って噂広めたのルーベンスさんなの?


「しかし今回の事は…この“チラシ”という種類の()は既に市井へと広まってしまった。

幸いにも神が関わっているとは知られていないのでな。国の事業にしてしまった方がそちらにとっても都合が良いのではないかね」


ロードは微かに舌打ちして私を見た。


「確かに……しかしすでに広めちまったミヤビ達の店はどうすんだ。商人達はこの紙の製造にミヤビ達が関わっていると既に嗅ぎつけてんじゃねぇのか」

「それに関してはテストケースとして国から要請したとすれば問題はない。勿論他の店舗にも要請する必要性は出てくるが」


何だか二人だけでどんどん進んでいっている話についていけないのだが、つまり和紙がやらかした原因だったようだ。

という事は、この世界では植物を使用した紙はまだ存在していないという事だろうか?


「あの~…」


そーっと手を挙げ恐る恐る二人に話し掛けてみる。


「この紙って、もしかして珍しいものだったりなんかして?」


へへっと笑いかければ、二人は目を見開き言ったのだ。


「今更何言ってやがる…!?」

「紙とは羊皮紙の事を指す。他にも布や木の板などもあるが、このように軽く薄い…しかも水にも強い紙など聞いた事がない。そしてどうやら量産も出来るらしい。これは紙の革命だ」


革命ですってーーー!!!?


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