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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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185.冒険には野営がつきもの


「お弁当美味かったー!!」


二つ目のお弁当箱も空にしたベンジャミンが幸せそうに目を細める。


「もっと食いたい位だ」


オーズさんも二つ目を食べ終わっていて、寂しそうに空のお弁当箱を見ていた。アフィラートさんは二つ目を噛み締めながら食べている。それを涙ながらに見ているヒューズさんは一つしか食べていない。いや、じゃんけんに負けて食べれなかったのだ。

コピーしたお弁当は全部で10個。一人1個食べたので残り3個は誰が食べるかで牽制しあっていたのがついさっき。

私は1個食べればお腹一杯だし、珍獣達は魔素の溢れるこの森の中ではそれを取り込むので大丈夫だと遠慮した。なのでおっさん達4人の争いになったのだが誰も退かないのだ。そこで私が提案したのが“じゃんけん”だった。

それに乗ったおっさん達がじゃんけんをした結果がコレだ。


「でも弁当を持って来てたって事は、嬢ちゃ…ミヤビ…さん、日帰り予定なのか?」


ベンジャミンがそんな事を聞いてきたので、何でお弁当=日帰りなんだと聞けば、冒険者は基本日帰りはお弁当で、数日かかる場合は荷物を減らす為に昼は干し肉、夜は狩った物を調理して食べるんだとか。勿論他にも少量食料を持ってくるが現地調達が主だという。


「へぇ。ん? という事はおっさん達は日帰りではない、と?」


案内人の契約は1日5時間労働、休憩は60分である。当然日帰りなのだが、冒険者達が泊まり掛けとなると話が変わってくる。

なにしろ案内人なのだ。冒険者とは共に行動しなければ意味がない。


「そりゃあこんだけデカい森で日帰りってわけにゃいかねぇだろ?」

「森の奥まで行く頃にゃ日も暮れてらぁ」


ヒューズさんとベンジャミンが苦笑しながら答えるので呆然とした。

ちょっと、ルーベンスさん話が違いますよ!? 泊まりがけって、ロードにバレたらとんでもない事になるんですけどぉ!?


「……主様が泊まりがけというのはあの方々(ヴェリウス&ロード)もお許しにはならないかと」


ティラー姉さんの言葉に分かってるよと頷くが、そうなるとおっさん達を森に放置したままになってしまう。


「嬢ちゃん、俺達ぁ夜は野営するからその場からは動くつもりもねぇし案内人は必要ねぇから帰っても大丈夫だぜ」


オーズさんのその言葉にホッとした。しかし冒険者の野営というのにも興味がある。


「主、野営ならロード様が居る時にお願いしますよ?」


私の考えを読んだのか、サンショー兄さんが小声で釘を刺してきた。

しかし、ロードがいる時の野営って何だ。ロードと冒険者ごっこをしろという事だろうか? そりゃあの男は騎士というより冒険者みたいな外見ではあるが。

首を捻っていれば、珍獣二人は苦笑していた。


「まぁ取り敢えず行ける所まで行ってからの話だが、日が暮れる前にはヤコウ鳥の生息地周辺まで進めるのが理想だな」


オーズさんの呟きにおっさん達がそれぞれ頷いている。


「狩りや採取をしながらのペースだとそれは難しいと思う」

「そうね。この森はかなり広いからヤコウ鳥の生息する場所まで行くのはこのペースだと一日はかかるわ」


しかしサンショー兄さんとティラー姉さんの話に腰を折られたおっさん達は、「そうか…」と残念そうにお弁当箱を片付け始めた。

まだ30分も経っていないのにどうやら出発するようだ。


「取り敢えず距離は稼いでおきたい」らしい。


あっという間に片付けられたそこにはチリ一つ落ちていなかった。

そしてまた移動を開始したのだ。


「薬草の採取はもういい。晩飯の確保はすでに出来たし後はとにかく距離を稼ぐぞ」


オーズさんの指示に皆が返事をして、それぞれが警戒しながら進む。

サンショー兄さんの背中はぷにぷにと柔らかいので乗り心地が良く、段々と眠くなってきた。

案内人のバイトとはいえ、ぶっちゃけ私は何もしていないわけだが誰からも文句を言われない。ここに居るのは皆出来た人間だ。それにも関わらず寝てしまっては、私の信用は地に落ちてしまう。寝るな、寝るなよ雅!!


「前方に何かいる!! 気を付けろっ」


ベンジャミンの声にうつらうつらしていた頭が覚醒する。


弓を構えたヒューズさんが「“ヴェア”だ!」と口にした瞬間、皆の目が煌めいた。

そう、ヴェアは高額買い取りの獲物なのだ!


「ヒューズ、急所を狙え。他は傷つけるなよ」

「分かってる」


キリキリと弓を限界まで引き狙いを定めるヒューズさんに、周りは静寂を保っている。


ビュッ

風を切る音がして、矢がヴェアに向かって飛んで行く。


一度弓道を間近で見たことがあるが、矢を放つ時、ヒューズさんの方がより重くて大きな音がしていた事に驚いた。多分弓の大きさと頑丈さが違うのと、引く力が尋常じゃないのだろう。

弓道は力だけで弓を引くわけではないらしいが。


そんな事を考えていると、おっさん達がヴェアに向かって走り出したのでハッとしてその様子を眺める。

どうやらヒューズさんの弓が200メートル程先のヴェアの喉元を貫通したらしい。


オーズさんが警戒しながらヴェアに近づき息絶えているのを確認してからアフィラートさんを呼び、ヒューズさんはヴェアの後ろに貫通して突き刺さった矢を回収しながら匂い消しの粉を撒いている。

ベンジャミンは周りを警戒していて、そこへオーズさんも加わり、アフィラートさんが解体し始めたようだ。


昨日と同じような構図だった。

しかし、冒険者(というかもう狩人)って凄いなぁと感心していると、おっさん達の顔が曇ったのだ。


「ヴェアは売るにしても、ヤコウ鳥の事を考えるとこれ以上は狩れねぇなぁ」

「ああ。俺の状態保存の魔法も後の事を考えりゃもういっぱいいっぱいだ」

「何よりこれ以上荷を増やすわけにゃいかねぇからな」


ヒューズさんとアフィラートさんの会話に、空間魔法を使えないのかぁと納得する。でもアフィラートさんは状態保存の魔法は使えるらしい。となると魔力は魔族だけあってそれなりに多いのだろう。


う~ん。昔はわりと魔法を使っていたんだよね……魔法、教えてあげたら使えるようになるかも?

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