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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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179.きな粉は吸い込むと咳き込むぞ


リン視点



「何だこの白いの……」

「何か上に木屑みてぇのがかかってんぞ」


恐る恐る箱を開ければ、現れたのは“白い何か”で上には木屑が掛けられていた。

食いもんだよな…? と覗き込む。

他の奴らも皆「食い物じゃなかったのかよ」と肩を落としている。


「リン、下の段にも何か入っているんじゃね?」


同僚に言われてまたもやそーっと上の箱をずらせば、出てきたのはまた白い何か。今度はその上に黒っぽい豆のような物と同じ色のドロッとしたものがかかっている。

ざわつく男達に、


「精霊様は“おやつ”だって言ってましたから、食べ物だとは思うんですけど…」


と伝えれば余計騒がしくなる。

一応全ての箱を解体するみたいに一段一段ずらして机へ並べて行けば、三段目はやはり一段、二段と同じで白い何かの上に今度は緑色の何かが乗せてあった。それ以降の段は、一から三段目とおなじ木屑、黒い豆らしき何か、緑色の何かと中身は同じ物だった。


「精霊様って俺ら人間と同じ物食ってるとは限らねぇよな……」


誰が言ったのか、その言葉に場が静まる。


「いや、でもこれ師団長から俺らへの差し入れなんだから食えるもんだろ…?」


今度はオレの隣で覗き込んでいた先輩騎士が言った。

この人はオレと同じように師団長に憧れて騎士団に入ったくちの人間だ。

尊敬してやまない師団長が差し入れた物なら大丈夫だろうと思ったのだろう。


「だったらお前食ってみろよ」


ボソリと誰かが呟いた。

その言葉は思ったよりも大きく響き、発端の先輩騎士は顔を引きつらせる。

やはりいくら憧れの存在であっても得体の知れない物は食べられないらしい。


オレはミヤビから貰った物をじっと見つめた。

アイツがくれる菓子類はかなり美味い。

かなりというか、今まで食べた事がない程美味い。だからコレも美味いのだろうとは思う。

しかしオレは新米騎士で、率先して食べるわけにはいかないのだ。


「リン、お前食ってみたら?」


お前が食えと言われた先輩騎士がオレにそう言ってくれたのでしめた! と思い頷いた。その様子にまた男達がざわつく。「お前勇気あるなぁ」等と飲み会のようなノリになって来ている。


それを尻目にオレはまず豆っぽいソースがかかっている物を口に入れた。さすがに木屑や緑色の物は避けたい。


男達は皆、固唾をのんで見守っている。


「…あ、甘くて美味いっ」


何コレ。滅茶苦茶美味いんだけど!? 白いのはもちもちして食感が面白い。味は薄いがこの甘いソースと絡まって何とも言えない美味さが口の中に広がる。

甘味も上品で、貴族が食べてる歯が溶けそうなキツイ甘さとは全く違う。

オレ、これ大好きかも。


今度は緑色のソースがかかっている物を食べてみる。コレも美味い!! やっぱり上品な甘さの味付けだ。後味がつまみのエール豆の味がするから、多分このソースはエール豆なのだろう。


次は木屑…とどんどん食べていると、ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえて周りを見た。


厳つい男達がオレを凝視していた。中にはヨダレを垂らしている者までいる。


「……美味いですよ」


言った瞬間、コイツらは獣のように差し入れへと群がったのだ。さっきまで遠巻きに見ていたのに。


「うんめーーーー!!!!」

「何だよコレ!? 今まで食ったモンの中で一番美味ぇ!?」

「こんな美味い物食った事ねぇよ!!」

「ゴフッコフッグフ…ッ!!」


涙を流しながら食べている者もいる。木屑のような物を食べた者は咳き込んで粉を撒き散らしているが…落ち着けと言いたい。


あっという間に箱の中身が無くなり皆不満気だ。


「もっと食いてぇ」


そんな事を言われても無いものは無い。

中毒性のある食い物だったのかもしれないと頭を過り、今更ながらに何て物を寄越してくれたんだと思わないでもないが後の祭りだ。

とろりとした表情の男達は皆、また差し入れてくれないだろうかと件の精霊様を思っている事だろう。

まぁ、風呂場覗き事件は忘れてくれたようだしそれだけが救いかと思いながら黒い箱を片付けたのだ。


今度会ったらこの箱と文句を叩きつけてやろうと思いながら。



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※エール豆とは、地球でいう枝豆の事です。

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