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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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178.ラッキースケベ


「んん? ルーベンスさんは信仰している神様は魔神ですか?」

「自身の種族を管理されている神を敬うのは当然だろう」


魔神の神域がバイリン国にあると聞いて大層な驚き方をしたので一応聞いてみれば、当たり前の事を聞くなと言わんばかりの表情で答えられた。


「じゃあなんで魔神の神域を知らなかったんですか?」

「どの神々の神域かなど、人間には分からないのだが」

「そうなんですか? まぁ知っても大したことじゃないか」


神々の居場所など知っても、来年はそこへ旅行に行こうかなぁ位の指標にしかならないだろうと思っていたら、ルーベンスさんの目がカッと見開いた。


「大したことではないだと? 君は自分が何を言っているのか理解しているのかね」

「え?」

「自身の種族神というのは我々人間にとって一番大切な神なのだぞ。神を蔑ろにした者がどのような末路を辿ったか…」


この世界の神様って人間への影響力がありすぎて怖い。


「でも、それと自分の種族神の神域を知ることって関係ない気がするんですけど??」


言えばルーベンスさんは大きな溜め息を吐いた。

やれやれという様子に小首を傾げる。


「ミヤビ殿も言っていただろう。神域の前で祈ればより強い祝福を貰えると」

「はぁ…まぁ言いましたけど、それは年末年始だけでは?」

「分からないかね? 神域前で祈れば、それだけ神に自身の願いを届けやすいという事だ。しかも自身の種族の神ならば尚更だな」

「他の神の神域前で祈っても変わらないのでは??」

「大違いだ。神は自分の管理する人間にしか興味がないからな」

「そう言われればそう、かなぁ?」


ルーベンスさんの言うとおりのような、違うような…?

私の周りには特殊な神しかいないからよくわからない。ヴェリウスに聞けば分かるかもしれないが。


「つまり自身の種族神の神域近くに国を建てれば繁栄を約束されたようなものだ」

「へぇ…あっ でもこの国は私の神域のそばにあるから、きっと繁栄するね!!」

「……君の神域のそばというのが一番不安だが」

「失礼なっ」


こう見えて神王なんだぞ!? と思いつつも自分が名ばかりの神王である事は分かっているので口には出さない。

しかし、人間が自分の神の神域を知らないのには驚いた。


「君は神としての仕事をしなくてもいいのかね」

「え? 私は大丈夫です」

「何が大丈夫なのか理解出来ないのだが?」

「私はほら、アレです。まだ新米なのでいいんです。だって生まれたの3年前ですよ。未成年は働いたらダメです」

「ふむ。神にもそのような決まりがあるのか」


納得してくれたようで何よりだ。


「さて、挨拶回りは今日中に終わらせないといけないのでそろそろ行きますね」

「そうかね。粗相の無いようにな」

「はい。あ、良かったら残りは奥様にどうぞ」

「ふむ。遠慮なく頂こう。君の持ってきてくれる物は絶品だからな。妻達も喜ぶだろう」


そんな会話をして私はルーベンスさんの部屋からリンの所へ転移したのだった。


「━━…バイリン国に……」


苦し気な表情でそう呟く姿に気付かずに…。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「「「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!?」」」」


リンの居る所に転移。と願ったのが悪かったのか、タイミングが悪かったのか、周りを見ればムキムキの筋肉祭り。


そう。ここは湯けむりたつ大浴場。


どうやら騎士団の詰所内にあるお風呂場のようで、もくもくとたつ湯けむりの中にマッチョの男達が胸と下半身を押さえてこちらを見ている様が何とも痛々しい。


「「「痴女オォォォォ!!!?」」」


誰かが、目を剥いて叫んでいる。

それもそのはず。私の目の前には裸に下半身をタオル一枚で覆った、まだ成長過程の痩身がエロいリン君が立っていたのだ。



「ごちそうさまです」


ペコリとお辞儀をして外へ転移した。

「ぎゃあぁぁぁ!!!!」という声と「もうお嫁に行けないぃっ」「み、見られた……」「きゃあぁぁぁ」等とわけのわからない声も聞こえてきたが、変なものを見せられたのはこっちだ。湯けむりがたっていて良かった。下半身は見えなかった…と思う。



「ミィィヤァァビィィィ!!!!」


暫くして服を着たリンが出てきたので、「明けましておめでとうございまーす」と挨拶したら、


「ばッ なっ 何が明けて、何がおめでたいんだ!! 下ネタ言ってんじゃねぇよ!!」


と怒鳴られた。

下ネタなど言ってないが、成る程。お風呂場でのラッキースケベからの「明けまして」だと、若いリンの頭の中では“御開帳おめでとうございます”に変換されたんだな。

リンの下半身はタオルで見えなかったけどね。


「ッ信じられねぇ!! お前風呂場に現れるとかどういう神経してんだッ」

「いやぁ獣人って尻尾の付け根があんな風になってんだね~」

「ぎゃあぁぁぁっ」


乙女みたいな反応で真っ赤になっているリンに風呂敷で包まれたお重を出す。


「これ、ロードが作ってくれたおやつだよ。腹持ちもいいし、騎士の皆で食べてよ。さっきはごめんねって」

「ごめんねじゃねぇよ!! って、え? 師団長が作った……?」


さっきまでの怒りが嘘のようにきょとんとしてこちらを見るリンに風呂敷ごと六段のお重を渡す。

結構重いんだよ。六段って。


「いや、これ、え? 師団長の手作り??」


戸惑っているリンに声を掛けようとしたら、ガヤガヤと脱衣所から声がしだしたのでお風呂に入っていた騎士達が出てきたらしい事を知る。

さすがに痴女と呼ばれた私は顔を合わせ辛いので家に帰る事にした。


「じゃあ帰るね。あ、お重と風呂敷は要るなら使って。要らないならまた会った時にでも返してくれるか、ルーベンスさんにあげていいからね~」


ルーベンスさんこういう漆器好きそうだったし。

と言って深淵の森(ウチ)に転移したのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




リン視点



「ルーベンス…って、宰相閣下? オジュウ? フロシキ…??」


言いたい事を言って消えてしまった痴女…ミヤビに茫然としていれば、ガヤガヤと脱衣所から出てきた先輩や同僚達に声を掛けられる。


「お、リン。さっきは災難だったな」


肩に手を置かれて慰められる。本当にな、と心の中で溜め息を吐いていると、オレの手の中の物に先輩達も気付いたようで「それ何だ?」と覗き込んできた。


「何か高級そうな布だな」


確かに染めも生地も見たことがない程上等なものだ。

この布だけでも絶対俺達庶民には手が出ないだろう高級品を、アイツはオレにくれるって……これはダメだ。貰ったらダメなやつだ。


「あ、これ…精霊様が師団長からの差し入れだってくれました…」


言った瞬間、場がざわついた。


「師団長から!?」

「マジかよ!! さすが師団長っ カッケー!!」

「何!? 中身何!?」


と目が輝いたのだ。


「あ…じゃあ食堂で開けますか?」


先輩や同僚に周りを囲まれ食堂へと移動する。

今は第3師団の一部の奴しかいないが、他が集まると食いっぱぐれるだろう事は容易に想像できる。だから他の奴にバレないようにオレの周りを囲んでいるのだろうが、逆に怪しい。


集団で食堂にやって来たが、今の時間帯食堂には勿論誰もいない。

そこに第3師団の男共が集まってわいわいしている所は端から見たら気持ち悪いだろうと思いながら、早く開けろと目で訴えてくる先輩達に圧され布の結び目をほどいたのだ。


ハラリとほどけた布から出てきたのは、艶やかに光る真っ黒な箱。そこへゴールドと朱で描かれた美しい柄に、顔が引きつる。


「おい、この箱…王族が使うようなレベルのヤツじゃね…?」


オレと同じような顔をした先輩がボソリと呟いた。

確かこの人は男爵家の三男だったはずだ。貴族なのだから目利きは間違いないだろう。


「さ、さすが師団長っ やっぱり雲の上の人は違うよな~!!」


無理矢理笑顔を作って師団長を称える同僚に尊敬の念を送る。

しかし誰も箱に触ろうとしない。

オレだって触りたくない。多分国宝級の箱だ。まかり間違って傷でも付けたら弁償なんぞ一生かかっても出来ないだろう代物である。


「隊長、どうぞ」


らちが明かずに、遠巻きに見ている奴らの中で一番偉い男を指名すれば、「バカヤロウ!! お前が受け取ったんだからお前が開けろ!!」と逆ギレされる始末。

ふざけんな。バカヤロウはお前だ! と言いたい気持ちをぐっとこらえてこんな物を押し付けていきやがった本物のバカヤロウを思う。

アイツ、次会ったらぜってぇ殴る。精霊とか知った事か。


そんな事を考えながら震える手で箱の蓋をそっと開けたのだ。

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