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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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171.ルーベンスさんの誘惑


ロード視点



朝の訓練後、執務室でうんざりする程の書類と格闘していると、部屋に大きくノック音が響いた。「入れ」と許可を出せば開く扉に顔を上げる。


「失礼致します」


そう言って入ってきたのは2人。

1人は防衛部隊の部隊長で、もう1人は確か王都の巡回班を指揮している者だ。


「どうした?」

「はっ! 実は……神域である“深淵の森”に侵入した者がおり、その者を捕縛致しました!!」

「ぁ゛あ゛?」

「どうやら森で狩りをしていたらしく、それをギルドに持ち込んだ事で発覚! ギルドからの通報により捕縛致した次第です!!」


巡回班を指揮している騎士が声を張り上げる。

しかし俺は困惑していた。

深淵の森はミヤビの家の周辺以外に結界はなく、自由に出入りは出来る。悪人でない限りは。ただし、森の魔獣達の警備のおかげで足を踏み入れた瞬間首と胴が離れているだろう。


その森で、狩りだと?


不審がっていたのが伝わったのだろう、そこへ部隊長がフォローに入った。


「その者が言うには、森へは踏み入っておらず、外から森の中に住まう動物を狩ったのだと」


それなら魔獣と遭遇する事もないが…それにしても有り得ないだろう。

神域への立ち入りを法律で禁止してから、深淵の森どころかその周辺にすら誰も近寄らなくなったというのに狩りだ? んな事しやがったのはどこの馬鹿だ。


「しかし! 森の外から狩りなど有り得ないのです!!」


部隊長のフォローに声を上げた巡回班の男に眉を寄せる。


「どういう事だ」

「はっ! そやつがギルドに持ち込んだのは、“ヤコウ鳥”です!!」


ヤコウ鳥だぁ!?


「ヤコウ鳥は、深淵の森奥でしか確認されていない個体。それを森の外から狩るなど不可能です!!」


ですからっ あの子供が森に侵入した事は間違いないのです!! と話す男の言葉に引っ掛かる。


「おい、子供たぁどういう…「大変です!! 捕縛した子供の保護者ですがっ名は“ルーベンス・タッカード・ルーテル”……っ 我が国の宰相閣下で間違いないと!!」……あ゛?」


転がるように駆け込んできた騎士の叫びに、場が騒然としたのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




雅視点



「━━…あの、それなんですけど、旦那サマの方に黙っていてもらうわけには…」


ロードにバレるわけにはいかない。その為にルーベンスさんを呼んだのだから。


取調室の机を挟んで顔を突き合わせている私とルーベンスさんは、頭の後退しているお兄さん(?)を部屋から追いやり真剣に話し合っていた。


「成る程。確かにこの珍事、奴に知られるわけにはいかんだろうな」

「でしょ!! こんな事があの人に知られたら……っ」


想像するだけで震えが走る。


「ふむ。しかし諦めた方が良いだろう。この件はとっくに報告されている」


何だって!?


「君を捕縛したのは第3師団だ。しかも神域に侵入した大罪。国を揺るがす事件だろう。報告がなされないはずもない」


淡々と状況を語るルーベンスさんにがっくりとうなだれる。


「それで、何故このような珍事を引き起こしたのだね?」

「う゛……それは…お、お金が欲しかったから、デス」


正直に答えれば、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をされた。


「……奴に言えばいくらでも貰えるだろう?」

「確かに欲しい物は買ってくれるかもしれませんが、それじゃあ意味がないというか……」

「意味がない、とは?」

「あの……」



◇◇◇



「━━…成る程、そんな理由か」


ルーベンスさんは私の話を聞いた後、呆れたように嘆息して少し考えるそぶりをし口を開いた。


「君が持ち込んだのは確か“ヤコウ鳥”だったかね」

「あ、はい…?」

「ふむ。ヤコウ鳥は深淵の森にのみ生息する貴重種。その味は絶品でさらに美しい羽を持つと、肉だけでなく装飾品としても人気が高い」


ヤコウ鳥の事について語りだしたルーベンスさんに小首を傾げながらも「へぇ」と相槌をうっていると、ルーベンスさんは私を正面から見やり言った。


「しかし神域である限りこの先ヤコウ鳥は世界に流通する事はない幻の鳥になってしまった」


そう言われて見れば、騎士団に回収されてしまったヤコウ鳥はどうなったのだろうか?


「ここまで言っても分からないかね?」

「はぁ…スイマセン」


何か理不尽に怒られた。

ルーベンスさんの目が冷たい。


「そんな貴重な鳥だからこそ高く売れるとは思わないのか」

「それはまぁ、そうでしょうけど…」


でも売ったら犯罪なんでしょとルーベンスさんを見ればまた深い溜め息を吐かれた。


「それは人間の法律だ。君は人間ではなく神ではないのかね? しかも“深淵の森の主”だ」

「あ……」


やっと理解したのかと呆れられたが、私は瞳を輝かせたのだ。


「私なら、ヤコウ鳥を売りさばける!! お金が手に入る!!」

「とはいえ、誰もかれもに売るわけにはいかないがな」


ヤコウ鳥が市民に流通してしまえば法律になんの意味もなくなるのだとルーベンスさんは言う。


「じゃあどうすれば……」

「問題が起きないようにヤコウ鳥を売る為には、ルマンド王国が買い取るというのが一番だと思うがね」

「でもそれだと国が法律を破る事になりますよ?」

「問題はない。深淵の森の主が許可を出せば(・・・・・・)、の話だが」

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