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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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163.ぶらり、からの…


「おい、ヴェアは何処だ」


おじいちゃんはキョロキョロと何かを探している。

リンは変な汗をかいておじいちゃんから目をそらし、コリーちゃんは私を見ていた。


「おじいちゃん、裏に行くんじゃないんですか?」

「ん? 何だ。もう裏に置いてんのか」


早く言えと言いながら裏へ回るので後をついていく。

途中リンに「マズイだろ」とこそこそ言われるが、何がマズイのか分からず首を傾げた。するとリンの顔色がますます悪くなっていく。


「本人が良いなら良いのか……?」


困ったような顔をして呟いたリンの声は、私には届かなかった。




「あ? ヴェアなんて何処にもいねぇじゃねぇか。どういうこった」


ギルドの裏へ回るとグランドが広がっており、成る程そこにいくつか動物の毛皮が干してあった。近くには倉庫のようなものが建ち、解体する道具やらを入れているのではないかと思われる。


「おじいちゃん、くま…ヴェアならここにあるからそこに出して良いですか?」

「あ? だから何処にあるって、ん…だ!?」


ヴェアをおじいちゃんの足元に出せば、おじいちゃんは驚愕してヴェアと私を見比べた。


「オメェ、今何をした!?」


ヴェアと見比べられても……。


「ヴェア、買い取りしてくれるんですよね??」


いくらになるのだろうか。

リンが倒したが、ここまでの運び賃位はもらってもいいはずだ。


「っ…分かった。秘密は守ろう…俺は何も見ちゃいねぇ」


え? 買い取ってくれないの!?

リンとコリーちゃんを見れば、じっとおじいちゃんを見ている。

どういう事だろうか?


おじいちゃんはヴェアを触って傷を確かめ出したので、買い取ってはくれるのかな? とドキドキしながらそれを見ていると、


「こりゃすげぇ。心臓ひと突きじゃねぇか…あんた相当腕がたつねぇ」


リンが倒した事を見破ったおじいちゃんは、そう言ってリンを見ながらニヤリと笑った。リンは恥ずかしそうに俯くが、胸を張っていいと思う。


「しっかし、解体して持ってこない事にはなぁ。解体料もらわねぇとならねぇから、ちょいと渡す金額が少なくなるぜぇ」

「あ、じゃあ今解体するので待ってて下さい!!」


解体料取られたらおこづかいが少なくなるもんね。それは困ると急いでヴェアの解体を心の中で願う。

すると、ヴェアが光って一瞬で解体されたのだ。


「バカッ 何やってんだ…っ」


真っ青なリンが止めに入ったが、もう解体された後である。


「え? 私何かまずい事した? もしかして、この解体だと値段下がるとか!?」

「っ違う!! そうじゃなくて…っ」


リンは必死に首を横に振っているが、私はおこづかいが減るんじゃないかと戦々恐々だ。


「……騎士の坊主、大丈夫だ。あんたの主の秘密は俺の胸の中に仕舞っとくさ。俺は何も見ちゃいねぇ」

「じぃさん…ッ」


おじいちゃんとリンが見つめ合っている。

おじいちゃんはちょっと年が行き過ぎなので萌えないな……もうちょっと若ければなぁ。


「嬢ちゃん、今の力は人前で使っちゃなんねぇぞ。悪い奴に狙われちまうからな」


あれ? 最近は人族も魔法使えるようになってきたって聞いてたんだけどなぁ? おかしいな。


おじいちゃんに言われたので、とりあえず頷いた。


「勘弁してくれよ……」


リンが泣きそうになっていたなんて、この時の私は全く気付かなかったのだ。



◇◇◇



「1000ジット(円)が35万ジット(円)とか、冒険者は止められませんな~」


買取価格はなんと、ヴェアが34万2000ジット(円)で薬草が8000ジット(円)だった。

コリーちゃんの薬草はお父さんが使用する分は売らなかったので5000ジット(円)だったが、なかなかの値段で買い取ってもらえた。


「さて、ここからリンの取り分を20万ジット、コリーちゃんにはお手伝い料1万ジット引いて、私の取り分が14万ジットかぁ。フフフ。大儲けだな~」


潤った懐にニヤついていると、リンとコリーちゃんに「えぇ!?」と叫ばれた。


「え? 少なかった?」

「違うよお姉ちゃん!! アタシ薬草探すお手伝いしただけだよ!? しかもお姉ちゃん達が一緒に採取してくれて、売ってくれたお影でアタシにもお金が入ったのに、そんなにもらえないよ!! お礼しなきゃいけないのはアタシだもん!!」

「オレはあんたの護衛だ。ヴェアを倒したのは確かにオレだけど、持って帰って来たのも解体したのもミヤビだろ!?」


遠慮とは、何て良い子達なんでしょう!!

自分が心の汚い金の亡者に思えてきた。ごめんよ。がめつい女で。

このままヴェアを狩りまくってやろうと思ってごめんよ。


「あのね二人とも、遠慮しなくていいんだよ。これは二人の正当な分け前なんだから。コリーちゃんはお父さんが今働けないんだからお金が必要でしょ。リンもこれを飲み会の足しにしなさい。騎士は色々お付き合いもあるでしょう」


それぞれに分けたお金を二人に無理矢理押し付ける。

どう考えても私が一番取り分を多くいただいているが、そこには触れないでおく。


「お前は母親か!!」

「っありがとう、お姉ちゃんっ」


リンにはツッコまれ、コリーちゃんには抱きつかれた。

がめつさを出して後ろめたい私は、自分の取り分をポケットに仕舞うとコリーちゃんと手を繋ぐ。


「さ、コリーちゃんを家まで送って行こう」

「ミヤビ、あんたその金何に使う気だよ」


お金を仕舞ったポケットをジト目で見ながら聞いてくるリンから顔をそらし、「リン、行きますよ~」と歩き出す。


「絶対師団長に怒られる!! 殺されるかもしれない…っ」


顔色の優れないリンには申し訳なく思うが、お金はあって困るものじゃないからね。

それに、もうちょっとだけ付き合ってね。

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