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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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159.スマートなプレゼント


浮島エルフ街にエルフ達が来てから数ヶ月。街は賑わいを見せ始めていた。

数人が、店舗として建てていた建物で自身の庭に作った畑で採れた野菜を売り始めたり、カフェを始めたり、アクセサリー等の小物を売るなどし始めたのだ。

とはいえ、まだまだおままごと程度ではあるのだが。


何しろここに“お金”という概念はなかった。

勿論地下ダンジョンに引きこもっていたエルフ族に貨幣を使って買い物をするという意識はなく、物々交換が主だったのだ。


そんなエルフ達に貨幣価値を教えたのはルーベンスさんである。

まずは一年程度様子を見る為に仮の貨幣という事でいくつかのメダルを作り、物の価値をそれぞれメダル何個分と決めて数人のエルフに店舗を構えてもらった。

エルフ達それぞれにメダルを同じ数渡し、現在はお金の使い方の練習を行っているわけだ。


浮島に住むのに何故そんな事が必要かというと、住人達を浮島からルマンド王国へ自由に往き来出来るようにしたからだ。

今のところ浮島から地上に行く者は一人もいないが、アルフォンス君のように旅に出たいと思っている者もいるだろうという事から、最も治安の良いルマンド王国へ行ける扉を創ったというわけだ。


勿論、その扉はここの住人にしか見えないし使えない。


扉の鍵はそれぞれに配った腕輪や指輪、ネックレスで、願えばいつでも扉が出現する仕組みである。

その為、地上で危険な事があっても浮島にすぐ帰ってくる事が可能なのだ。

勿論鍵となるアクセサリーは紛失防止と個人認証機能が備わっている。


そんなわけで、地上に降りてもお金で戸惑う事がないようにルーベンスさんが提案した事の一つがこの訓練である。



◇◇◇



エルフ族と神々の推薦人は問題もなさそうなので、今日は色々お世話になったルーベンスさんにお礼の品を持ってルマンド王国へやって来たのだが、執務室にルーベンスさんの気配がなかった為、暇潰しに騎士団の訓練場へと足を運んだのだ。

フォルプローム国から連れて来たリンの様子も気になるしね。


「声出せーーッ 声ーー!!」


訓練場のだだっ広いグランドを10人程の固まりが走らされ、上司っぽい人に叱咤されている。

他にも、素振りを行っているグループもあれば組手をしているグループもある。


とはいえ、街のパトロールに行ったり、王族や王宮の警護をしたりと仕事をしている者が多いのか、訓練している人もそんなに多くはない。

どうやらリンもこの時間の訓練には参加していないようだ。


「そういえば、ロード達師団長はいつ訓練したりしてるんだろ?」

「師団長クラスは早朝の訓練に出るとその後はデスクワークでね。各々で鍛えているんだよ」

「ひょっ!?」


疑問に思っている事が口に出てしまったが、それに返事があった事に驚いて肩が跳ねる。


「すまない。驚かせてしまったかな」


ハハッと爽やかに笑いながら答えたのは、ロードと同じ師団長のカルロさんだった。


「カルロさん」

「おや、覚えていてくれたんだね。嬉しいよ」


そう言って優しげに微笑む姿はまさにお貴族様だ。

ロードと違い気品漂う美形である。


「まぁ…」

「今日はロードに会いに来たのかな?」

「いえ、今日はルーベンスさんに用があって」

「ルーベンス… …ルーテル卿に?」


カルロさんは少し驚いた表情をしたが、すぐに優しげな顔に戻り微笑んだ。


「確か彼は今、陛下の執務室に居るはずだよ」


親切にもそう教えてくれたのでお礼を言ってその場を離れようとすれば、


「ホワイトローズ……トモコは元気にしているかい?」


と問われたので、その場を離れるタイミングを見失った。

そういえばこの人、トモコに気があったよなぁとカルロさんを見上げる。


「元気過ぎる程に元気です」

「フフッそうか。……君のように頻繁に王宮へ訪れてくれれば会えるんだが」


寂しそうに微笑むカルロさんに、この人女性には困らないんだろうなぁと他人事のように思う。いや、実際他人事なんだけどね。

アーディンというつがいのいるトモコが、どう転んでもこの人を選ぶ事はないが、この人は本気なのだろうか?


「そうですね」


適当に答えれば、苦笑いされる。

良い人だとは思うが、人当たりの良い男は大概ロクな奴が居ないからな。ほぼ女癖が悪い。


「そうだ。良かったらこれをもらってくれないかい」


カルロさんがポケットから取り出したのは、2つの小さな箱だった。


「これは……?」

「女性に人気のお菓子なんだが、入れ物も可愛くてね。君と、トモコに」

「もらう理由がありませんが……」

「この間街を案内出来なかったお詫びだよ。仕事でエスコート出来ないなど紳士にあるまじき事だったからね」


なんというスマートなプレゼントの渡し方だろうか!!

お詫びという、プレゼントを受け取る理由を明確にし、2つ用意する事で本命に渡りやすくする。さらにお菓子という軽いプレゼントで遠慮しにくくなる事を計算しているのか!!

しかもお菓子の入れ物が可愛いという女心を理解したこのやり口。手慣れているっ


しかし、だ。


「これを受け取るとロードが「カルロ……テメェ俺のつがいに何してやがる」」


はい。予想通りです。

タイミング良く(?)現れたのはロード。来ると思いました。


「ロード。今君の恋人とトモコに、この間街を案内出来なかったお詫びを渡していたんだ」


にっこりと笑うカルロさんから遠ざけるようにロードの腕の中に閉じ込められた。


「お詫びだぁ? んなもんいらねぇんだよ。俺のつがいに近寄るんじゃねぇ」

「全く。人族のつがいへの独占欲は相変わらずだな。なら、ロード。これをトモコに渡してくれるかな?」

「あ? まぁそれくらいなら……」


ロードを上手く使って本命にプレゼントを渡す事に成功しただと!?


この男、手練れだ。


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