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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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153.エルフなめんな!


「まさか!! 王は100年前我らを逃す為、奴らに捕らわれたはずだ……っ」

「生きているわけがないっ」

「テメェら!! エルフ族なめてんじゃねぇぞ!!」


やはり一人ヤンキーが居る。

そのヤンキーの頭をデリキャットさんがパシンッとはたく。


「先程から神々に対し無礼な振舞い、見過ごせませんよ」


おおっデリキャットさんがチワワエルフからキングエルフへ進化を遂げた!!


「神々!!?」

「本当に、王様……?」

「いってぇぇぇぇ!!」


この3人、反応がバラバラで面白いな。

しかし私はこの3人より先にデリキャットさんに聞かなければならない事がある。


「デリキャットさん、王様だったんですか?」

「みーちゃん今さら!?」


トモコはすでに鑑定済みだったらしく知っていたようだ。


「トモコ、勝手に鑑定したら失礼だって言ったでしょ」

「みーちゃんに近付く人は鑑定するに決まってるよ~。危険人物だったらどうするの」


そう答えられてしまえばなにも言えなくなるが…。


「決して隠していたわけではありません。もう100年も前の事ですし、王は他の者に変わっているでしょうから」


デリキャットさんは困ったように眉を下げた。


「我等の王は唯お一人だけだ!!」

「“デイリー・ル・キャレット”様が我等の王!!」

「エルフなめんな!!」


最後、エルフなめんな好きだな。

誰もなめてないから。大丈夫だから。


「デイリー・ル・キャレット? デリキャットさんとは名前が違いますね~。という事は違う人ですね~」


ショコラが私にそう教えてくれるので頭を撫でておいた。

ショコたん、“デリキャット”というのは多分偽名、もしくは愛称なんだと思うよ。とも教えてあげる。


「いえ、私はもう“デイリー・ル・キャレット”ではありません。100年前にその名は捨てました。今はただのデリキャットです」


成る程、王様に戻るつもりはないと。


「本当に、貴方様は我等の王なのですね!!」


3…2人の表情が明るくなる。ヤンキー君は不貞腐れた表情で此方を見ているが。


「さて、君達。こちらに攻撃しないという事であれば硬化を解くけ「デイリー様!! お帰りなさいませ!!」「我等の王が帰ってきたぞー!!」……」


無視された。固まったままテンション上がってるエルフに無視された。


「おいお前らっ このネエチャンの話聞いてやれよ!」


ヤンキーエルフ君が不貞腐れ顔のまま2人を注意した。もしかして良い奴なんじゃ……


「エルフなめられっだろうが!!」


結局エルフをなめられるのが嫌だったらしい。

そして2人もヤンキーエルフ君の一言で静かになった。エルフをなめられたくないのはこの2人も同じなのだろうか。


「えーと、攻撃する意思がないなら硬化を解くけど」

「「攻撃などとんでもありません!!」」



◇◇◇



硬化を解いた後、2人に土下座され、その間ヤンキーエルフ君はヤンキー座りをして此方を睨んでいた。

何故睨む先が私なのかは分からないが、絡みやすい顔でもしているのだろうか?


「何で地下1階には誰もいなかったの?」


土下座をするのも飽きただろう頃、トモコが疑問を口にした。


「はぁ? んなの魔物が出るからに決まってんだろうが」


ヤンキーエルフ君が答えてくれたのは意外だが、バカにしたような物言いでまたデリキャットさんにはたかれていた。「いっってぇなぁ!! さっきからバシバシ叩くんじゃねぇよオッサン!!」等と言って先輩方2人にシバかれていたが。いや、2人が先輩かは知らないが、多分この中で一番若いのはヤンキーエルフ君だと思う。だから先輩だと勝手に思ってる。


「魔物? そんなの一匹も居なかったけどなぁ?」


ねぇ、と皆を見るトモコに頷く。

確かに魔物…魔獣には一度も遭遇しなかった。


「そんなはずは……魔素が満ちてからここはダンジョン化し始め、我等が結界を張った時にはもう地下1階は魔物で溢れておりました。何とか居住地だった地下2~3階だけは結界で守られていますが、他はもう魔物の棲み家。皆外に出る事も出来ず閉じ込められている状態で……」


何と、ここはダンジョンだったようだ。



詳しく話を聞けば、南極のような寒さでウィルスがいないらしいこの土地では、魔素が枯渇しても感染症でエルフが死ぬ事はなかったらしい。

しかも好都合な事に魔獣のいないダンジョン跡地があった為寒さをしのぐ事も出来、一時数を減らしていたエルフはここ100年で1000人を超えるまでになったそうだ。


しかし、最近魔素が満ちた事でダンジョンに魔物が溢れ出し、主な居住区だった地下2~3階に結界を張り生活をしているとかで、閉じ込められた状態なのだそう。

そしてデリキャットさんはエルフ族の王様だというではないか!!


なんというミラクル!!


デリキャットさんと目が合い頷けば、彼も同じタイミングで頷いてくれた。


「そんな貴方達に良い話を持ってきたので、代表者に会わせてくれませんかね~」


揉み手をしながら言えば、「みーちゃん悪徳訪問販売の人みたいだよ」とトモコにからかわれた。




ヤンキーエルフ君に睨まれながらエルフ族の村を案内される。

森の奥には木で出来たファンシーな家が多数あり、屋根は草で覆われていてまるでノルウェーの家のように可愛らしい。


「うわぁ可愛い!!」

「ノルウェーに来たみたいだね~」


トモコと2人テンションを上げていれば、今まで家の中に隠れていたエルフ達が恐る恐る出て来て私達の周りを取り囲む。


「ドリー! テリー! アルフォンス!! 彼等は!?」


ヤンキーエルフ君を含めた3人に声を掛けたのは年若い女性のエルフだった。きつめの顔をしたストロベリーブロンドの美人である。ヤンキーエルフ君の髪の色と同じだ。


「姉貴っ話し掛けてくんじゃねぇよ!」

「あ゛? 客人なんて今まで来た事ないんだから皆気になるでしょ!! で、ドリー、テリー、この人達は?」


どうやらヤンキーエルフ君のお姉さんだったようだ。美人姉弟だがどちらも口は悪そうである。


「彼等は敵でも害をもたらす存在でもないから安心してくれと皆に伝えて欲しい」


ドリー、テリーと呼ばれたのはどうやら先輩2人のようで、ヤンキーエルフ君はアルフォンスという名らしい。なかなか立派な名前だ。


「……分かったわ。そっちの銀髪の兄さんはエルフみたいだけど、何か事情があるみたいだし、後できちんと教えなさいよ」


お姉さんはそう言って離れて行った。

私達はというと、ファンシーな家々を抜け、さらに階段を下り地下3階までやって来た。

先程と同じような光景が広がるが、地下3階の家の方が大きいようだ。もしかしたら学校等の公共施設なのかもしれない。


「こちらです」


一際立派な建物に案内され、少々お待ち下さいとテリーさんかドリーさんかがその建物内に入っていく。

暫くしてバタバタと数人の足音がし、出てきたのは……


「デイリー様!? 本当にデイリー様なのですか!?」


プラチナブロンド(白に近いかもしれない)の儚げ美人なお兄さんであった。

その儚げ美人さんはデリキャットさんの姿を目に留めると、涙を溢れさせ抱きついたのだ。


「ギルフォード……?」

「デイリー様!! ずっとお探ししておりました…っ」


こ、これは……ッ 受け同士のアレコレに見えてきたぞ!!


「カメラ持ってくれば良かった……」


トモコの呟きに激しく頷いていれば、怪訝な顔でヤンキーエルフ…アルフォンス君に睨まれた。




◇◇◇




感動の再会が終わった所で気づいたんだが、ギルフォードと言われていたエルフの後ろで2人が膝をついてデリキャットさんを拝んでいるのだが、あれは何だろうか。


「皆、よく生きていてくれました。息災のようでなによりです」

「「はっ」」


おおっ何だかキングデリキャットさんに仕えていたエルフ達のようだ。


「デイリー様、彼等は……」


ギルフォードさんが私達にようやく気付き、訝しげにこちらをうかがっている。

デリキャットさんは私達を大切な方々だと紹介し、失礼のないようにと注意していた。


室内で話し合うこととなったが、先ずはデリキャットさんの事をゆっくりじっくり話してもらう為、私達は別室で待機となった。


その間エルフ族のご馳走とやらを頂く事となったのだが

…………。


これ、虫じゃないですか?



お皿に全長30センチ位ありそうな青緑の芋虫がドンッと乗せられ運ばれてきたのだ。


トモコはギャァァァ!! と叫び私はヒィィィ!! と叫んだ。

そして机から離れた所でソレを見る。


「おーっ何か不味そう!」


と言いながら手で掴んだジュリアス君にまた2人で叫び声を上げる。


「ショコラは虫は食べません~。グルメなドラゴンなのです~」


ショコラも芋虫は食べたくないようだ。

しかしジュリアス君は芋虫を頭からバクリと食べ始めたのだ。


プチッという音が耳に届き、全身に鳥肌がたって叫び声が上がる。


「「ギャァァァァ!!」」


誰かモザイクかけてェェェ!!


「あ、わりと美味い」


感想とかいらないから!!

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