141.魔石の有用性
「この施設は魔石を主な動力として稼動しているんだ! です!! あの照明も、この自動ドアも雷の魔石で動かしててっ
普通なら照明は火か光の魔石かなって思うだろうけど、雷の魔石なんだ!! です!! すごくないか、です!? オレこんなにも雷の魔石に有用性があるとは思わなかった!!」
嬉々として雷の魔石について語る魔神の少年は、その雷の魔法が得意な男が自分の神域の山を吹き飛ばしたと聞いたらどんな反応をするのだろうか。その輝く瞳が曇らなければいいのだが。
「雷の魔石でどうやって扉を開けんだよ。意味が分からねぇ」
私を魔神の少年から離すように抱き上げ、説明を求めるロードの疑問に答えたのはトモコだった。
「光の魔石を使用して作ったセンサーが、通行者をキャッチすると自動ドアの制御装置へ雷の魔石を使って信号を送って、その信号を受けてドアの開閉を行う動力装置と動力の回転速度を減じて出力する機械装置が、タイミングベルトや滑車を動かしてドアが開くって仕組みなんだよ~」
うん。全く分からない。
ていうか、トモコさんや……貴女なんでそんなに自動ドアの構造に詳しいの?
「センサー? タイミングベルト??」
頭にハテナが飛び交っているロードにホッとする。科学の知識が多少ある私が分からないのに、ロードが分かったら私の知識は一体何なのだという話になる。
しかし光魔法はセンサーとしても使えるのか。
確かに電波を飛ばせば可能だよね……。光魔法万能説が浮上したぞ。
『成る程、つまりこの自動ドアは滑車を使用して開閉している扉という事か。考えたな』
ええ!? ヴェリウス分かったの!? さっきの説明で納得したのォォ!?
「ああ、滑車を雷の魔石で自動的に回転させて開閉すんのか? そりゃすげぇなぁ」
ロードォォ!? お前もか!! 分かったのか!? 嘘でしょ? 分かったフリしてるんでしょ?
ちょっと、自動ドアを何回も潜らないでくれますか!?
『ふむ…ここについている物が“センサー”というやつだな。成る程、これに光の魔石を使用しているのか…』
「ほぉ、ドアの上の部分に滑車が入ってんのか? どういう構造になってんのか開けてみてもいいか?」
ちょっと!! ヴェリウスもロードも自動ドアを壊そうとしないで!? 長老と魔神の少年の顔が引きつってるでしょうが!!
「後で設計図見せてあげるから落ち着いてよ~」
トモコは笑いながらそんな事を言うが、その設計図、アーティファクトとかいう部類に入るものじゃないデスカ?
『絶対だぞ。忘れるでないぞ』
ヴェリウス……知識には貪欲だね。
やっと自動ドアから離れた1人と1匹は、照明に食いついたりしながらも先へと進む。
この分ではエスカレーターやエレベーターもあるんじゃないかとドキドキしたが、上の階に上がるのは階段だったので少しだけホッとした。
「エレベーターはスタッフしか入れない所に設置されてるよ~。荷物を上に運ぶの大変だし」
トモコの言葉は聞かなかった事にしようと無視した。
木で出来た大きな階段を(ロードが私を抱き上げたまま)上がりながら上を見上げる。
吹き抜けになっている天井は高く、富山ガラス美術館を彷彿とさせる造りだ。広島のゴミ処理施設中工場にも似ている所がある。あのフォトジェニックで話題の場所だ。
深淵の森は一体どこに向かっているのだ。
「ここは“浄水場”だよね?」
「そうだよ~。あのガラスの向こうにあるでっかいパイプの中を河川の水や生活用水が通っていて、あっちにある大きな貯水槽で洗浄されてるの」
階段を上がって少し奥に進むと、ガラス張りになった箇所があり、パイプや貯水タンクが一部だけ見えるようになっている場所があった。そこでトモコが指を差しながら説明してくれる。
その奥にはまた階段があって3階に続いており、立ち止まらずに先に進む。
「まぁ、パイプの中でも色々と工夫して洗浄しているけど、ここでも光の魔石が利用されてるよ。後は色々な魔石を組み合わせて洗浄してるんだ~」
光魔法は除菌もできる。やはり万能だ。
光魔法=(色んな意味で)癒し系って言い出したのは誰だ!! 光魔法が一番危険じゃないか!!
説明を聞きながら3階まで上がれば、広島中工場のような左右がガラス張りになっている場所があり、地中から伸びているパイプや貯水槽等を見学できるようになっていた。
「すげぇなぁ」
ロードがそう呟くのも分かる位立派な浄水場だ。
夜になればこのパイプと貯水タンクがライトアップされるそうだ。
「下水処理場も同じような感じで作られているよ~。あ、このまま真っ直ぐ進めばカフェがあるんだ~。ガラス張りのテラスになっていて森と河川が見渡せるから素敵だよ~!」
カフェテラスぅぅぅ!!!?




