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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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133.奪われた神力


監禁した張本人なのに、バイリン国王ではない? どういう事だろうか?


青い顔で震えるイケメンは、あまりの恐怖に声が出てこないのか、口をパクパクさせている。まるで餌を待つ鯉のようだ。


『ならば貴様は何者だ』


ヴェリウスは脅すように牙を剥き出しにして唸る。

それに余計萎縮したのか、イケメンは今にも意識を失いそうだ。


「わ、私は…、この国の、王太子……ヒッ」


上擦った声でやっと答えたのだが、ヴェリウスのあまりの迫力に白目を剥いてしまった。


イケメンでも白目を剥くと、無様だなぁ。

いや、イケメンだからこそより無様さがアップするのだろうか。


「王太子かぁ……て事は、エルフを拐ったのはその父親って事?」

「その通りでございます。私はこの男の父親であり、バイリン国の現国王“フェン”に狩られ、ここへ閉じ込められました。さらに私の僅な魔力を利用する為に呪いのかかった足枷をはめ、この部屋の内側から結界を張らせたのです。ここにある“秘宝”を守る為に」


トモコがヴェリウスに確認していると、エルフが堰をきったように話し始めた。その内容が何やら“秘宝”だなんだとおかしくなってきている。


ロードを見上げれば、無表情で話を聞いており、トモコは秘宝と聞いて目を輝かせていた。


『呪いの魔道具はたしかに付けられた者の魔力により発動するとは聞いたが、成る程……ここにある“秘宝”とやらを守る為に魔力のあるエルフを拐ったか』

「ヴェリウス、それだとおかしい。魔素の枯渇で魔力がある者は生きていけないのでしょう? 生き残ったとしても魔法は使えない。それなのに、呪いの魔道具に魔力を吸われたらその時点で死んでしまうんじゃ………しかも100年でしょう」

『単純に、この者はそれだけの魔力があったのでしょう。呪いの魔道具は発動時だけスイッチがわりに魔力を必要とするだけで、後は必要とはしませんから。魔素が無い状態で魔法を使用出来たという話からも、通常のエルフより多い事が分かります』


じゃあ、そこにいるエルフは魔力量が多いという事? でもさっきは多くはないって言ってたよね??


『魔素が満ちていた時代からすればそれほど多くはありません』


100年生き残れる位には魔力量があったって事だね。


「はいはーい。しつもーん」

「何だね、トモコ君」


挙手してアピールしてくるトモコに視線を移せば、


「どうして魔力が少しでもある人は魔素の枯渇で死んじゃって、魔力の無い人は生き残れるの? 私のイメージでは、魔素がないから、人の魔力が世界に吸いとられて無くなって死んでしまうイメージなんだけど」


わりとまともな質問をしてきた。

ヴェリウスを見れば、ゆっくりと頷き口を開く。


『トモコのイメージはあながち間違ってはおらぬ。

魔素が枯渇した世界では、人の魔力は世界を維持する力としてまさに吸いとられていたのだろう。少しずつな。

しかし魔力がある者が魔力を無くしてもすぐに死に至るわけではない。

前にお主が話してくれたであろう、病気は“抵抗力”とやらが低下するとかかりやすくなると。

魔力がある者はその抵抗力とやらを魔力で補っていたふしがある。無くす事で抵抗力が弱まり病気にかかりやすくなったのだろう。

反対に元々無い者…微量な者は、抵抗力自体を魔力に頼ってはおらぬので病気にもかかりにくかったという事だ』


ヴェリウス……抵抗力まで知識として取り入れているとは。

トモコは普段ヴェリウスに何を話しているんだか。


「成る程~。納得しました!」


というトモコのそばで、エルフは何が何やらと首を傾げている。それはそうだ。さっきまで緊迫していた空気だったのに、突然何もない所に向かって話している犬と、質問をする神。どうなっているんだと思わないはずはない。

しかし、空気を読んでか、それとも神に声を掛けづらいのか、様子を見ているだけである。


「そういえば、あのイケメンは随分タイミング良くこの部屋に駆けつけたね。まるで呪いが解けたって分かったから駆けつけた、みたいな勢いだったけど」

『ミヤビ様、奴のしている指輪は魔道具です。恐らく先程の呪いの魔道具と対になっている物。あれで解呪されたと知ったのでしょう』


ヴェリウス先生流石です。何て博識。

確かに対になるものが無ければ結界内にも入れないもんね。


「ねぇねぇ、対って事は解呪された事を知る道具はあれ一つだけなのかなぁ?」


トモコの言葉にヴェリウスが答える。


『そうとも限らぬ。力を失うと同時に結界を張るとなると、幾つかの“鍵”があってもおかしくは……っ トモコ、避けろ!!!!』

「え?」


ヴェリウスの悲鳴にも似た叫び声が部屋に響いた刹那、トモコは叫んだヴェリウスにタックルされ、弾き飛ばされ壁へ激突したのだ。


「トモコ!?」


大丈夫かと駆け寄ると、「びっくりした~」とケロッとしており、怪我一つしていない様子に胸を撫で下ろす。




「ヴェリウス!!!!」


しかしロードの声でヴェリウスに何かあったのだと気付き振り返ると……


中型犬程に縮んだヴェリウスが、力無く転がっていたのだ。



「そう、対となる指輪はもう一つある。そして、ここにある“秘宝”とは呪いの魔道具の事だ」


私達が入ってきた扉とは反対側の壁が開いており、そこから現れたであろう何者かが、倒れているヴェリウスのそばへほの暗い影を落とす。


「ククク…ッ しかしまさか神の力を手に入れる事ができるとは、私にも運が向いてきたものだ」


そう呟いたのは、バイリン国の王太子がそっくりそのまま年を取ったような男であった。


男の足元はその言葉と共にパキリパキリと凍っていく。床に倒れているヴェリウスを巻き込んで。


「っ…ヴェリウス!!!!」


駆け寄ろうとしてロードに止められる。

何で!? とロードを見上げれば、眉間にシワを寄せて唇を噛みしめ、ヴェリウスを見ていた。


「ヴェリウスの胴に巻き付けられた黒い鎖を見ろっ 呪いの魔道具だ」


ロードの言葉に、ヴェリウスの話が甦る。

“神の力を奪い只人にする呪いの魔道具”


「最悪な事に、呪った相手の力を自身の力とする呪いまでかけていやがる」


鋭い眼光で男を睨んでいるロード。

男はニヤリと笑ってこちらを見る(・・・・・・)とその口を開いた。


見えているぞ(・・・・・・)


ヴェリウスの力を奪った男は、まだ結界を張っている私達の姿を視認出来ていたのだ。


ロードは私を背に隠し、雷を纏う。

警戒するようにバチッバチッと音を立て、髪の毛まで静電気で逆立ってきている。


「神が残り2人(・・)か……こちらの分が悪いが、」

「キャア!!」


トモコの悲鳴にハッとして振り向けば、いつの間にか自由になっていた王太子の足元に倒れ伏し、トモコの首にはヴェリウスと同じような黒い鎖が巻き付いていた。


「っトモコォォ!!!!」


ヴェリウスに続きトモコまで力を奪われたのだと理解する。


王太子はヴェリウスの力を奪った男に同じような不気味な笑みを浮かべると、


「父上、助かりました」


と言ったのだ。

やはり目の前にいる男が、バイリン国の国王、“フェン”だった。


「これで2対1。分が悪いのはそちらだな」


ニタリと笑い、ロードを見据えるその瞳はほの暗さを湛えている。


「2対1だと……?」


眉を潜めるロードは、私の事を数に入れていない事に疑問を感じているようだ。

そういえば、力を無意識に駄々もれさせていると言われてから、もれないように気を付けているのだが、それで力を感じ取れないとか? もしくは見た目で判断されたか?


ヴェリウスとトモコの身体をそばに転移させながら様子を伺っていると、今度は王太子が喋りだした。


「もしかしてそこのエルフを頭数に入れているのか? ククッ神の力を手に入れた私達と、ただのエルフでは力の差は歴然だろう。頭数にも入らんだろうが」


トモコの力を手に入れて調子に乗っているのか、さっきまで怯えていたのが嘘のように、尊大な態度で見下してきている。


「……テメェら、神の力を手に入れたからってすぐに扱えると思ったら大間違いだぜぇ。それは人間にゃ過ぎたる力だ。身を滅ぼすのがオチだろうよ」


スーパーサ○ヤ人ロードがバチバチ音をたてながら威嚇する。時折雷が床や壁をえぐり、焦がしている様子を見て、今ロードに近付いた人間は感電死間違いないだろうと思う。


私はといえば、そばに転移させたヴェリウスとトモコに巻き付いている黒い鎖を見ている。

やはりこれも黒いラップが巻き付いているようだ。


勿論ペリペリと剥がしていくと、鎖は黒色から銀色へと変化し、剥がしたラップはフワリと消えていった。



「ぅう…」


しばらくして意識を取り戻したのか、トモコもヴェリウスもうっすらと目を開けた。

が、奪われた力は元には戻らないのか、ヴェリウスの大きさは未だに中型犬程で、あれほど艷めいていた毛並みは萎れてしまっているし、オーラにも輝きがない。

トモコも、キラキラしていたオーラがなくなっている。


起き上がった1人と1匹からは、ジャラリと鎖が滑り落ちたが、力を奪った者達は、それにも気付かず薄ら笑いを浮かべてロードに注目していた。

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