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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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123.鬼神誕生


「あぅ…あ、今日は収穫祭かも!! 村の畑の作物がそろそろ収穫出来るし!! だから今夜はダメかも」


顔や首筋、鎖骨等にキスをされ、服を乱され、執務室だというのにいやらしい空気か漂い始めた頃、ハッと思い出した村の事を告げると、片眉を器用にピクリとはねあげて、「あ゛?」とドスの利いた声で返事をされた。


「ウチの裏手に珍獣達が村を作りたいって言うから許可を出したら、農場も家もあっという間に建てちゃって、ロードが居ない間に村が7割は出来上がったから」

「あ゛ぁ゛?」


さらにドスを利かせてすごんでくるので腰を引くと、力強く引き寄せられた。


「今、村つったか?」


ロードの分厚い胸板と、ぶっとい腕に挟まれて身動き出来なくなったが、離してくれそうもないので話を続ける。

せめて乱れた服は整えたかった。


「ヴェリウスから、珍獣達が村を作りたがってるって聞いたんだけど……」


暗にヴェリウスのせいにすれば、ロードの顔が強張り、次いで諦めたように遠い目をしたのだ。


「オメェは…どうして俺が居ねぇうちにこうも色々行動(モンダイ)を起こしてんだ」


頭が痛いと言いながら呆れられるが、やはり腕の力はゆるまない。


「村は私が行動したわけじゃないんだけど」

「似たようなもんだろうが」


頬をつねられ伸ばされるので、止めろと叫ぶがどこ吹く風だ。

「りょーどしゃん、やめへくらはい」と丁寧にお願いすれば、そのうちニヤニヤしだしたので、何かがツボに入ったらしい。


「もーッ いはい(痛い)!!」


ニヤニヤした顔に腹が立ち文句を言えば、突然口を塞がれた。ロードの唇で。


「ん…、」


つねられていたほっぺたはいつの間にかその太い指で撫でられ、首をつたい、服にかかった。

ゆっくりとボタンを外されて……



「っ…ふ、はぁっ まだ、夜っ じゃない!」


どう考えても致そうとしたロードを力の限り押し返すと、夜ではないのだからと必死でいさめる。

さっきからロードの手が不埒な動きをしすぎだ。


「くくっ 悪ぃ。ミヤビの反応がつい可愛くてなぁ」


愛しそうに目を細めるので、恥ずかしくなってくる。


「からかわないで下サイ。こっちは慣れてないモンデ」


ギギ…ッとロボットのように顔をそらせば、開いたブラウスの胸元に顔を寄せられて頬擦りされた。


髪の毛が肌にあたってくすぐったい。

硬めの毛質でも、やはり髪の毛だけあってふわふわしている。

お疲れのようなので、よしよしと頭を撫でてあげると、ますます胸に顔を埋めてきた。

息が出来ているのだろうか?


「ロード、眠いの?」

「……」


胸に顔を埋めたまま動かなくなったので、眠いのかと聞いて見れば返事がない。まさか寝てしまったのかと顔を見ようとするが見えるわけもなく、おーいと声をかけてもやはり返事は返ってこないので、寝てしまったのだと判断した。


「どうすればいいのだろうか」


胸に凭れかかって眠るとは聞くが、胸に顔を埋めて眠るなど聞いた事がない。端から見れば立派な変態だろう。

こんな所を誰かに見られでもしたら、ロードが変態扱いされるか、悪ければ仕事中につがいを誘ったバカ女扱いである。

例え引きこもりでこれから誰にも会わないという事であっても、そんな事は思われたくないのが人というものだ。

例に漏れず私も仕事中に誘うバカ女に見られるのは勘弁していただきたい。


したがって、誰に見られるともしれない執務室は勿論、自分のウチに帰るのすら躊躇われるのが現状だ。


ならば残る選択は隊舎のロードの部屋か、天空神殿の日本建築ゾーン(自分の部屋)なのだが……隊舎の寝室は埃をかぶっていたはず。という事は、天空神殿しか選択肢はない。


そう思い、ロードを胸に埋めたまま天空神殿に移動した……のが間違いだった。




まだ日の出ているうちから、鼻血を垂らしたロードに押し倒されているのだ。しかも畳の上に。



無表情で鼻血を垂らすロードに、畳の上に押し倒されたワタクシですが、胸の谷間には血が付着しており、現在進行形でぽたりぽたりと滴っているのがなんともホラーであります。


「ろ、ロードさん……? 鼻から血が出てますヨ」

「オメェが誘うからだろうが」


さ、誘ってねぇよぉぉぉ!?


両手は畳に押さえつけられ、私の力ではびくともしない。足? 足は今動かしたら大変な事になりそうなので隙間をつくらずぴったりくっつけている。蹴っても効かないのは前回で分かっているのだ。


「ロードが変な所を枕にして眠ったから移動せざるを得なかったんでしょうが!」

「眠ってねぇよ。オメェの胸に挟まれて癒されてただけだ」


おい亀○人のじっちゃん(ロード)。今すぐかめは○波で消してやろうか。


「つまりその血は興奮して出た血だと?」

「つがいが魅力的だとそういう事もあんだろ」


コイツ開き直ったぞ。いや、初めからエロい事に関しては堂々としていたが。ここまで堂々と言われれば怒る気も起きないものだ。しかし世の男性諸君よ、真似してはいけない。開き直った瞬間にお縄である。


「取り敢えず離してもらえるかなぁ。血で汚れた所を綺麗にしたいし、服も整えたいし」

「汚しちまった所は俺が責任持って綺麗にしてやるから安心しろ。服は整えなくてもいいだろが。どうせ脱がすしよぉ」

「今はまだ夜じゃないからぁ!!」

「天空神殿で昼も夜もねぇだろ。俺ぁいつでもイケるぜ」


お巡りさぁぁぁん!! コイツでーーす!!


「なぁミヤビ、俺達はもう夫婦だろ…指輪も交換したしよぉ」


私の左手に指を絡め、自身の胸元にもう片方の手をやると、幸せそうに微笑むロード。

その様子に心臓がドキリと鳴る。


「本当は、この仕事が一段落したら“蜜月休暇”を取るつもりだったけど、もう無理だ。ミヤビに3日も会えねぇなんてありえねぇ」

「ロード?」


仕事三昧だった数日を思い出したのか、辛そうな表情を浮かべたので、自由になった右手でロードの頬を撫でた。


「ミヤビ、オメェが俺の伴侶になったんだって事を、今すぐ実感させて欲しい」


頬を撫でた右手を握られ、真っ直ぐ見つめられて顔が熱くなる。


「なぁ、俺がお前に触れる事……許可してくれ」


真摯に訴えてくるので、拒めなかったのだ。

ゴリラのようなオッサンでも、ヤクザのような強面でも、私にとっては初めて心から好きになった人だから。


そして、最初で最後の……愛しい“つがい”だから。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




外では雷が鳴り続け、夜だというのに稲妻の光が眩しい程に降り注ぎ、昼間のように明るい。

しかし地上に落ちても不思議と被害はなく、花火のように美しく光を落とす。

それはまるで、何かの誕生を称え喜ぶように。



『━━…神王様のつがいが“鬼神”となったか』

「おお!! ロードさんもやっと神の仲間入りだね~。“眷族”はどんなのが生まれるのかなぁ~楽しみぃ!!」


騒々しい雷の音と光を見上げながら、神獣ヴェリウスと、人族の神トモコは“鬼神”の誕生を心から喜んでいた。



そして同じ頃、雷が落ちた場所では……“鬼の子”が産声をあげていた。


それは後に“鬼人族”と呼ばれ、頭の上に角、そして人族と同じ“つがい”のみを愛する本能と、魔族並の魔力を持ち合わせた人類最強の種族となるのだが、それはまた別のお話。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ロードの頭上に角が生えました。

それはそれは立派で禍々しい黒い角でした。


「……それ、マズくないデスカ?」

「何がだ?」


強面のゴリ…オッサンが、朝から満面の笑みで、自身の作った朝食を運んできた。勿論エプロンを装備している。(※フリルのエプロンではない)


昨日からの無体のせいで、布団から立ち上がれない私の為に持ってきてくれたそうだが、お一人様用の土鍋に入ったお粥に、きんぴらごぼう等の小鉢が三種と浅漬け、梅干し(ロードの手作り)等の薬味が三種に温泉玉子と盛り沢山で食べきれそうもない。むしろお腹は空いていない。


「角……生えてマスヨ」


禍々しい魔王のような角に顔が引きつる。これは、子供どころか大人も近寄って来ないだろう。


「あ~、隠匿する事も出来るから大丈夫だろ。それより、ミヤビは起き上がれそうか?」


鼻の下を伸ばしながら、布団に横になっている私に手を伸ばしてくるので、起き上がるのを手伝ってもらった。


「イタタ…っ」

「無理すんなよ」


いや、全身筋肉痛(・・・・・)っておかしくないか?

私は昨日から今まで一体何をされた??


「粥なら食えそうだろ?」

「……食欲ない」


もうバナナを一口食べれば十分事足りそうなのだ。


「阿保。きちんと食わねぇと腹の子(・・・)に栄養がいかねぇだろ」

「ええェェェ!? 私妊娠したの!? ええェェェ!?」


ロードの爆弾発言に瞠目する。


「あれだけ注ぎゃあ出来てんだろ。オメェ腹膨れてたしよぉ」

「R18なワード使用するんじゃねぇよォォォ!? せめて伏せ字使えぇ!!」

「あ゛? わけわかんねぇ事言ってねぇでとっとと食え」


それが初夜を過ごした相手にかける言葉!?

というか、言葉とそのデレデレした顔が一致しないから。




「みーちゃーん!! 起きてるぅ~??」


締まりのないロードの顔と朝食を交互に見ていれば、襖の外からトモコの声がした。


「あ、トモコ」


村作りで何か問題があったのだろうか??

すぐにロードが襖を開け、トモコを中に通したのだが……


「みーちゃんおめでとう!!!!」

「あ゛?」


ロード譲りの「あ゛?」が出てしまった。


「やっとロードさんと本当の夫婦になったんだね~。いやぁ良かった良かった。ヴェリーさんと今か今かと待ってたんだからね~!!」

「な、何故それを!?」


異様にテンションが高いトモコが、私達が初夜を迎えた事を何故か知っていて動揺する。


「やだなぁ~みーちゃん。昨日のあのお祭りみたいな雷の事知らないの? ロードさんが鬼神になった時、すっごい雷が花火みたいに空を彩って、ロードさんの眷族が生まれたでしょ~」


当たり前みたいに言うが、何だそれ。

つまり、私とロードが致した事は、神族皆に筒抜けって事?



「っ……ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!!」


こうしてあまりの恥ずかしさに白目をむき倒れた私は、暫く起き上がる事が出来なかったのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流れ的にロードと結ばれるオチだったでしょうが、私は威嚇脅迫じみた押しかけ鬼神には靡かないでないでほしかったと思いました。
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