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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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111.浄水場と下水処理場1


「どうぞっ お乗り下さい!!」


ジャンケンに勝利したらしいガチムチ大工のお兄さんに、嬉々として背中を差し出されたのだが、何だろう……今ふと、マッチョな奴隷を買って、筋肉人間神輿に乗りながら高笑いしているお姉さんを思い浮かべてしまった。

とても悪い事をしている気分だ。


大体このお兄さんの背中に乗った事がロードにバレたら、殺されそうな気がする。

このお兄さんが。

バレなきゃいいって? こういう事には勘が働くのがロードなのだ。


「ちょっと! これだから男ってデリカシーが無いのよっ神王様が困ってらっしゃるじゃない!! 魔獣化した後に乗っていただかないと乗り心地も悪いでしょう!!」

「そうよそうよ!」


ロードの悪鬼顔を思い浮かべていれば、女性陣から救いの声がかかったので助かった。

私に背を向けていたお兄さんは、女性陣の非難の声に慌てて魔獣化したのだ。


巨大なサンショウウオのようになったお兄さんは、魔獣化すると喋る事が出来ないようで、ペコペコと頭を下げてからまた背を向けた。乗れと言うことらしい。

魔獣化しても言葉がわかるようにしているのだが、お兄さんはそれを知らないからか、気をつかってくれているのかもしれない。


これならロードにも怒られないし、乗ってもいい気がしてきた。瞳もつぶらで可愛いし。


しかし、巨大な事もあり、梯子がないと登れそうもなかったのだ。そこで浮き上がろうとしたのだが……。


「男共!! さっさと階段を作りなさい!!」


先程救いの声を上げてくれた女性陣が、余計な事を言いやがった。


マッチョ集団はその声に反応して、即座にバレー部のレシーブの構えをとる者と四つん這いになる者とで、高さを変えながら順番に並んでいく。そして出来上がったのが……“マッチョ階段”である。


「「「「どうぞ!!」」」」


ものすごく良い笑顔ですすめられたそれに、変な汗がふき出す。


サンショウウオのお兄さんは嬉しそうに尻尾をふり、マッチョ階段のお兄さん達もほんのりと頬を染めて嬉しそうにしているのが余計引く。

女性陣はそれに満足気に頷き、「さぁ!!」とマッチョ階段へと促した。


よし。ってバカァァァ!!!! こんな階段使うわけないでしょうが!! どこのSM女王様ですかァァァ!!!?

これは新手のイジメですか!?


これはどう乗り切るべきですか? 誰か教えてください。



『貴様ら、ミヤビ様に何をしておるのだ』


混乱の最中、聞こえてきたのは凛とした声……それは、


ヴェ、ヴェリウスぅぅぅ~~!!!!


「これはこれはヴェリウス様。我らはこれから浄水場予定地へ神王様をお連れする予定でございます」


おじいちゃんがマッチョ階段のそばで、朗らかに予定を告げる。


『ミヤビ様ならば、転移での移動も可能だが?』

「ホホッ 下水、水道管の溝の進捗具合も見て頂こうと思いまして。ゆるりとお話ししつつ移動させて頂こうと」

『ふむ……ならば私も共に参ろう』


タンッと後ろ足で地面を蹴ると、サンショウウオのお兄さんの背に乗り、キリリとした顔でお座りしたヴェリウス。


格好良いぞヴェリウス。


『ミヤビ様、悪くない乗り心地ですよ』


こちらへどうぞと誘ってくれるので、浮き上がりサンショウウオのお兄さんの背中へと移動した。

マッチョ階段はどさくさに紛れて使わずに済んだ。


哀愁漂うマッチョ集団を見て見ぬふりをして、おじいちゃんに視線を向ければ、「それではゆっくり参りましょうか」と言われたので頷いた。


のっしのっしと歩き出したサンショウウオのお兄さんを先導するおじいちゃんは、ゆったり歩いているようなのに私が普通に走るよりも早い。むしろ車並のスピードで歩いている。


「神王様、こちらの溝は下水や飲み水を流す為の管を設置する為に掘っております。穴堀が得意な魔獣がおりまして、1日でかなりの距離を掘る事が出来ました。今日中に浄水場予定地まで掘り進める事ができるかと思われます」


おじいちゃんはニコニコと進捗具合を説明してくれる。

管を通す予定の溝は1メートル程度でそこまでの深さがないものと、もう少し深い溝の2本があり、かなりの距離を掘り進めているようだ。

穴堀が得意な魔獣とはモグラのような魔獣なのだろうか?


「木々が傷つかぬよう注意を払い作業しておりますので時がかかってしまいますが、我々はこの美しい森を愛しておりますので━━…」


と森への愛を語るおじいちゃんに言いたい。

急ピッチどころの早さじゃありませんから!!


やはり元々魔獣ということもあってか、珍獣達の物の捉え方は独特のようだ。


2本の溝と鬱蒼とした木々という同じような風景が続く中、おじいちゃんは楽しそうに村作りの話や、天空神殿での話、さらには珍獣達の間で今流行っている遊び等を面白おかしく語ってくれた。

お喋り上手な珍獣のおじいちゃんである。

乗り物になってくれているサンショウウオのお兄さんも嬉しそうにしてくれているので楽しい散歩となった。



20分程で海のように大きな河川が見えてきたのだが、そのそばには建物が建設中で、足場が組まれていた。


「あの建物がもしかして……」

「はい。浄水場と、少し離れた所に下水処理場を建設しております」


思ったよりもこじんまりしている建物に意外だと思いつつも、おじいちゃんにどうやって水を綺麗にするのか、気になっていた構造を聞いてみた。


「それは…「それは私から説明しましょう!!」」



おじいちゃんの話を遮って現れたのは……トモコだった。


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