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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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99.遭遇


ロード視点



「フォルプロームに諜報部隊を送り込む事を提案する」


俺の一言にざわつく室内。


「ロード、貴方の言いたい事は分かりますが、現在のルマンド王国に諜報部隊へ人手を割く余裕はありません」


レンメイの言葉に宰相が重々しく頷き、カルロは仕方ない事だという表情で動かない。


「諜報部隊は少数で編成する。フォルプロームは幸い獣人の国だ。ルマンドの騎士団には獣人が多いからな。しかも獣人の機敏さと体力は諜報に向いている」

「だから諜報部隊に割く人手はないと……復興の最中なのですよ」

「だからこそ諜報部隊は必要だ。生活に余裕が出りゃおかしな事を考える奴も出てくる。今回のバイリン国とフォルプローム国がいい例だろう」

「まだ確定はしていないでしょう」

「その為の諜報部隊だろうが」


レンメイは王都の守りが手薄になる事を懸念しているのか、なかなか頷かない。宰相は難しい顔で俺達の話を聞いているだけだ。カルロはやはり動く様子はねぇ。


チラリと陛下を見れば、困った顔をして少し考えるフリをした後、


「諜報部隊を編成する」


と言い放った。


「陛下!?」


反対するレンメイに、宰相が渋々「陛下の決定は絶対です」と一蹴して俺を見た。


「しかし、我が国の騎士団に諜報部隊に人員を割く余裕がないのも事実。人数は少人数とし、第3部隊からのみ人手を出す事とする。宜しいですか? 陛下」


宰相の言葉に、妥協案とばかりに頷く陛下(アホ)に苛立ちを感じながらも、まぁ提案を受け入れてくれただけでも良しとするかと納得した。


話も終わり会議室を出ると、後ろから声をかけられ振り向く。


「カルロ」

「よくやるねぇ。諜報部隊なんて」


他人事みてぇに言ってくるカルロにイラッとする。


「はっ 会議中ずっと黙っていた野郎に、んな事言われたくねぇんだよ」

「心外だな。俺はずっと何か良い解決策がないか考えていただけだ。結局見つからなかったけどな」

「ぶっ飛ばすぞテメェ」

「ハハッ」


爽やかに笑うこいつの顔を殴りたくてたまらねぇ。


「トモコはテメェみてぇな野郎が苦手だろうなぁ」

「意地の悪い事を言わないでくれ」


困ったように笑っているが、どっちの意地が悪ぃんだか。


「あー…クソッ 竜人も諜報部隊にゃ必要だってのに、レンメイの様子じゃ協力はしてくれそうにねぇなぁ」

「竜人は彼の部隊にしか居ないからねぇ」


会議が終わった後、不機嫌な様子で足早に部屋を出て行ったレンメイを思い出す。


「……魔族は魔法が得意だったよな」

「ムリムリ。魔族が魔法を使えるなんて大昔の話だ。今の魔族じゃ、生活魔法を使うにも苦労するさ。ロードの考えているように“幻覚魔法”なんて使えない」


俺の考えを先読みしたらしいカルロはそう言って困ったように笑うが、目の奥は笑っていなかった。


「……まぁいい。バイリン国がフォルプローム国と結託しているなら、多少の獣人も居るだろうしな」

「そっちに人員を割く事は難しいが、出来るだけ協力はする。何でも言ってくれ」

「そうしてもらわにゃ困る。早速だが、オメェバイリン国かフォルプローム国にツテはあるか?」


そんな話をしながら王宮の長い廊下を歩いていると、子供の楽しげな声がしてきて2人で足を止めた。


「今日は貴族の令息や令嬢を集めて、王妃様が茶会を開いているらしい」

「ああ、王妃様はまだガキだったな」

「陛下には早くお世継ぎを作っていただきたいが、相手が子供ではね……なかなか」

「ままならねぇもんだよな」


陛下のお世継ぎは当分先になりそうだなと笑っていると……


「あっ精霊様だ!!」

「本当だわっ 精霊様ー!!」

「お空飛びたい!!」


等と騒がしい声が聞こえてきた。


精霊だぁ? この王宮でガキ共が精霊なんて騒ぐ奴は1人しかいねぇ!!


俺はカルロを置き去りにして、足早にガキ共の所へ向かったのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミヤビ視点



「あっ精霊様だ!!」

「本当だわっ 精霊様ー!!」

「お空飛びたい!!」


そう言って集まってきた子供達から逃げようとしたが遅かった。


「お待ちになって下さいませ。精霊様」


ひと際目をひくキラキラと着飾ったドレスの裾と、銀色のふわふわな髪の毛をなびかせて優雅に歩いてきた美幼女は、私の前で見事なカーテシーを披露した。

他の子供達よりも大人っぽい動作にこっちが動揺してしまう。

明らかにこの子が、この中で一番身分が高いだろう事は一目瞭然だ。


子供相手に変な汗をかき、ジリジリと後退りする自分が何とも情けないが、生まれてこの方一般人である私には荷が重いのだ。こんなロイヤルファミリーな雰囲気を醸し出す子供の相手など。





さて、何故私がこんな所で、こんな目にあっているのか……その原因とも言える出来事は、10分程前に遡る。


ステータスのetc.の話の後、さっさと深淵の森(ウチ)に帰ろうと思っていた所、ヴェリウスがトモコの訓練に付き合って欲しいと可愛い仕草でお願いしてきた事から始まった。


訓練内容は、トモコの神力コントロールの中でも苦手とする“気配察知能力”を向上させる為に、“かくれんぼ”をするという。


確かに隠れた人を探す時に、僅かな神力の気配を辿る事は訓練になるだろうが、私達は38歳。立派な大人だ。

ちょっと恥ずかしいんですけど、と抗議した所「ミヤビ様もトモコも2歳です。立派な子供ですよ」とキッパリ断言されたのだ。


確かに転生したわけだから2歳だが、精神も外見も大人のはずだ。


「2歳も38歳も私達にとっては子供です。違いはありません」


そういえばヴェリーちゃん、創世期から生きてたんでしたネ。


結局断れずにルールの説明を聞くこととなった。


ルール1. 隠れる場所は王宮内に限る

ルール2. 転移、気配遮断はしてはならない

ルール3. 見つかってもタッチされるまで終わらない

ルール4. 制限時間は2時間


以上を守って隠れましょう。


というわけで、大人げないが本気の“かくれんぼ”が始まったのだ。


そして今。

甘い匂いに誘われてやってきた庭園で、子供に囲まれ、ロイヤルファミリー的美幼女に声をかけられたというわけである。



「精霊様のおうわさはかねがね聞きおよんでおりますわ」


にっこり微笑む美幼女の瞳はキラキラと輝き、ドレスと相まって眩しい。

それにしてもものすごい美幼女だな。将来はさぞかし美人に育つ事だろう。


銀髪にアパタイトのような鮮やかなブルーの瞳はアニメやマンガに出てくるヒロイン、もしくはヒロインのライバルキャラのようだと思いつつ、その子を前に、足は勝手に後退りしている。


「わたくし、ずっと精霊様にお会いしたかったのです! 陛下におねがいしても聞いてくれず、もうお会いできないのかとざんねんに思っておりましたの」

「そ、そうデスカ」

「ですが、やっとお会いできましたわ!」

「そうデスネ」

「ずっとお礼を言いたかったのです」


お礼?


真剣な眼差しを向けられて戸惑う。


「精霊様、そのせつはわたくしの命をたすけていただき、ありがとうございました。わたくしの名はアリーナ・レクサ・バーナード…いえ、今はアリーナ・レクサ・ルマンド、でしょうか」


ルマンド? どこかで聞いたような……


「ルマンド王国の王妃でございます」


お、王妃かよぉぉぉ!?


「精霊様のお薬でわたくしの命はたすかったのだと、陛下からうかがいました。陛下のお子をうんでさしあげられないのだとあきらめておりましたが、精霊様のおかげでその夢もかないそうですわ」

「お子……」


10歳にも満たない子が、産む? お子を?


「精霊様はロヴィンゴッドウェル第3しだんちょう様のつがいだとうかがっておりますわ。精霊様のお子様もおうまれになりましたら、ぜひお顔をはいけんしたいですわぁ」

「私のお子!?」


そ、え? 子!? 私の!? えぇ!?


王妃様の話に動揺して、顔が引きつり変な汗が出てくる。


「精霊様赤ちゃんうまれるの~?」

「精霊様の赤ちゃん!? 見せて~」


いつの間にか周りに集まってきていた子供達にぎょっとし、話し掛けてくる内容に逃げ出したくなった。

というか逃げた。転移で。


その際、お茶会が終わったら消えて無くなるように制限をかけて、チョコレートフォンデュを机の上に出しておいたから問題はないだろう。子供達の意識は今頃チョコフォンデュに向かっているはず!!


王宮内の適当な場所に転移したので迷子になっているが、さっきの庭園よりはマシだ。

お子様達に囲まれて、子供を産むだの何だのと言われてもね…。


ふぅっと深い溜め息を吐いていると、


「貴殿は何者だ!? 一体どこから現れた!?」


突如、美声が後ろから聞こえてきたので驚いて振り返る。



「「…………」」



ミスターダンディーーーー!!!!

激渋のおじ様がいらっしゃるんですけどーーー!!!!!?


周りを見渡せば、そこは執務室のようなお部屋の中でした。

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