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斜陽世界《アフターグロー》に終止符を  作者: 抹茶
聖都セントメリア編
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二十九話 地中からの咆哮

 シャルルとリーリヤの結婚。

 舞台上で元帥ヴィクトルにより大々的に発表されたそれは、兵馬たち3人にとってまさに寝耳に水。

 アルベール家で食卓を共にした数日の間、シャルルも祖父ゲオルグも、幼いカミロまでも、家族の一員が結婚を間近だという素振りは見せなかった。それも宮廷歌手、歌姫リーリヤと!

 

 彼女は広大なユーライヤの国土の中にあって、大半の人々に認知されている国民的な大スターであり、芸術を好むエフライン14世の治世の象徴とも呼べる存在。

 そして知り合いの詩乃たちには実感がないが、シャルルもまた国を代表するスター。

 そんな二人の結婚を、集った観衆は大拍手と喝采で歓迎する。

 長い戦が前王の病没と共に終わり、若王の誕生に伴う芸術の隆盛。その象徴たちの婚約、これ以上の平和の象徴があるだろうか!


 驚くべき事態を面前に、詩乃は硬直、プリムラは唖然、兵馬は身を乗り出して驚きを露わにしている。


「どうだ。ビビったろ」


 隣席のリオが兵馬へと語りかける。先ほどからの口ぶりを見るに彼はこれを把握していたようで、兵馬は顔を向けて問う。


「これは、一体どういう……」

「聞いての通りだ、それ以上でも以下でもねえ。ただまあ、裏はある」

「裏?」


 怪訝な表情を浮かべる兵馬。 そこで、一つの怒号が彼の耳を捉えた。


「ヴィクトル!! 話が違うぞ!!」


 祝賀の渦を切り裂いたのは聞き覚えのある声。

 矍鑠(かくしゃく)とした老声の主はシャルルの祖父、元は国を代表する魔術師として宮仕えの身にあったゲオルグ・アルベールだ。


 老人の顔からはいつもの理知的な様相が失われていて、壇上のヴィクトル元帥へと向けて血気に満ちた眼差しを向けている。

 孫の婚約の場で声を荒げる理由とは……ふと見れば、カミロは隣で帽子を深く被ったままに戸惑った様子。


「まさか、ゲオルグさんも知らなかったのか?」


 意外な状況だ。

 いや、知らなかったというのは憶測に過ぎないが、しかし少なくとも老人がシャルルの結婚を歓迎しているようには見えない。

 そんなゲオルグへと元帥ヴィクトルは片頬を吊り上げ、老獪(ろうかい)に錆び付いた笑みを浮かべてみせる。

 ゲオルグも元は軍属の身、二人は既知の間柄らしい。単に顔見知りというだけではなく、睨み合う二つの目には因縁の色が感じられる。


 国軍のトップである元帥の目が、数えるのも億劫(おっくう)なほどの群衆、客席の中にゲオルグを“個人”として視認している。そしてゆっくり、嫌味なほど(おごそ)かに口を開いた。


「黙っていろ、アルベール。既に教皇猊下がお決めになられたことだ」

「エフライン様が……!?」


 遥か高所、スタジアムのどこからでもその尊顔を拝める少年教皇は、ヴィクトル元帥の発表に満足げな笑みを浮かべている。

 現人神である彼が白と言えば白、黒と言えば黒。この国における最高決定権は彼の掌中にある。となれば、これ以上は文句を言いようがない。


 沸騰したような歓声の中、ゲオルグは拳を握り締める。歯噛みをして唸る。

 彼は何故こんなにも怒っているのか?

 舞台上、シャルルへと注視したプリムラが困惑の声を発する。


「ねえねえ、シャルルと、それに歌手の女の子。二人ともなんだか変な顔してるよ」

「変な顔って……ホントだ」


 漠然とした表現だが、同じ方向へと視線を向けた詩乃は思わず同意する。

 シャルルは鳩が豆鉄砲を食った表情、ゼンマイ仕掛けの人形のようにぎこちなく歌姫を凝視。対するリーリヤはとびきりに眉根を歪め、神秘性はどこかへと霧消。不快感たっぷりにシャルルを睨めつけている。


 二人のことを何も知らない大衆はその表情を、“照れ隠しをしながら互いを見つめ合っている”などという微笑ましい情景と捉える。

 が、シャルルをそれなりに知っている詩乃たちにはわかる。あれは驚きに理解が追いつかなくなっている顔だ。そして結婚などとんでもない。あの二人は険悪極まりない間柄だ!


 そして会場警備の一角、それなり以上にシャルルを知るリュイスとカタリナは愕然と成り行きを見つめている。

 当事者のシャルルが当惑しているのは二人の目にも明白。ただ、この状況。シャルル本人よりも心配なのが一人いる。


「ノーラ!」

「や、ヤバいぞ! やらかす前に落ち着かせねえと!」


 舞台裏手、少し離れた位置にある関係者通用口からはフラフラとノーラが歩みだしていて、顔面は蒼白、手には何か尖った物を握りしめている。

 幼馴染であるシャルルを深く愛していて、それでいて精神に不安定な面のあるノーラ。そこに突然の婚約となれば、放っておくわけにはいかない!


 リュイスとカタリナが慌てて駆け出し、厳重な警備にわずかな綻びが生まれる。それをリオは見逃さない。


「さあ、見世物はまだまだ続くぜ」

「まだ続くって、何が……」


 兵馬が問うよりも早く、リオはジャケットの懐で何かを操作した。それと同時、スタジアム全域が激しい振動を始める。

 途端に騒然。人々の歓喜が悲鳴へと塗り変わり、そして地面へと亀裂が走る!


「お姉ちゃん放して! 放してよ!」

「ノーラ、駄目。落ち着いて……!」

「あの女! あの女がシャルルを! 私のシャルルを!!」


 グラウンドの中央に設営された舞台の裏手、叩き割って凶器へ変えたガラス瓶を片手に暴れるノーラをカタリナが羽交い締めにして引き止めている。

 

 カタリナはそれほど屈強な容姿ではないのだが、それでも騎士。いかに嫉妬にパニックを起こしていても、ごく一般人の女性に過ぎないノーラを制するのは容易かった。

 その隣にはリュイスもいて、万が一取り逃がしてしまった場合のバックアップにと気を張っている。


「落ち着け、落ち着けってノーラ! 何かの間違いかもしれないだろ!」

「あの偉い人が! みんなの前で言ったのよ!? 間違いなはずがないってリュイスだってわかってるでしょ!!」

「そ、それは…」


 至極真っ当な正論。リュイスは思わず口籠ってしまう。

 そう、間違いであるはずがない。元帥ヴィクトルがエフラインの名の下に宣言したとなれば、それは当人の意志すら介さず既に決定事項。

 決して覆ることのない状況。つまり、ノーラが昔から想いを寄せているシャルルと結ばれることは決してないのだ。永劫に。


 ノーラはそれを理解、確信した上で狂乱している。となれば、力で止められたところでその狂乱はすぐには収まらない。怒りだけではない、悲しみ、絶望がノーラの心を染め上げている!


「とにかく、一度落ち着こう。ね?」

「うるさい! お願いだから、放して!!」

「暴れたって何も始まらねえ、っ、と?!」


 地表に巨大なヒビが走り、その亀裂はリュイスたち二人の持ち場から放射状に拡散していく。まともに立っていられないほどの揺れだ。

 出演者や司会者、観客たちが一様に悲鳴を上げる中、騎士である二人は辛うじて姿勢を保ち、振動の元を見極めるべく視線を尖らせる。


「リュイス、地下から何かが来る」


 カタリナが短く警句を発する。

 瞬間、亀裂の中心から地面を食い破って巨大な屹立!!

 

 現れたのは塔の如く(そび)える巨身、その体長はパッと見で十階建てのビルにも及ぶほど。

 不気味にうねり、黒光る体躯。怪物はぬらりとした眼球で、一帯を舐めるように見て回す。


「ハイドラだと!? なんでこんな場所に!」


 リュイスが驚愕に叫ぶ!


 ハイドラ。またはヒュドラ。爬虫類がマナ溜まりで濃縮されたマナを吸い、突然変異した存在として知られている。リュイスたちが以前に討伐した巨狼のような、要はモンスターの類。

 これまでに数体の個体が確認されていて、軍にも討伐の記録が残されている。だが生息地は北部の森林地帯に集中していて、聖都近辺に棲んでいるはずはない。それが何故ここに現れる!


 ギァアアアアアア!!!!!!


 耳を劈く大怪声。鼓膜が破れそうなほどの大音量。

 ハイドラは竜にも似た外見の巨大生物だ。ただし竜に似ているのはその体躯だけで、決定的に違うのはその頭部。例えるならヤツメウナギ、丸い口の内側にはびっしりと恐るべき牙が群生するグロテスク。


 空気が震え、応じて各所に控えた兵士たちが自己判断で発砲を開始する。

 発砲、砲火。四方から浴びせられる弾丸の雨がハイドラの巨身を叩く。と、それを目にしたカタリナとリュイスが揃って眉を潜める。


「あっ、それは駄目…!」

「無駄に攻撃すると…ああクソ、面倒臭え!」


 長く長く、再度ハイドラの咆哮が上がる。弾幕の煙が晴れると、そこには幾重にも枝分かれした多頭の怪物と化したハイドラの姿が。

 眼前の怪物は与えられた衝撃により、頭部を分裂、増殖させる性質を有しているのだ。

 その姿はさながら八岐大蛇……いや、それよりも既に多い!


「なんでよりによって俺たちの持ち場から出てくるんだよ! カタリナ、ノーラを頼んだ。俺はあれを叩く!」

「うん、わかった!」


 とんでもない怪物が現れたものだが、幸いにして会場には将軍たちがいる。元帥もいる。


 無限増殖する怪物を根絶やしにするためには半端な攻撃ではなく、手数を抑えて高火力を浴びせる事が必要となる。現状、そのための火力は十二分。

 先陣を切るべく、リュイスはサーベルを抜剣! 右手に構えて突貫を!


「ぶった斬ってやる!!」




----------




 気炎万丈、リュイスは敢然果敢と巨敵へ挑みかかる。

 その一方で客席は恐怖のるつぼと化していた。

 

 突然の怪物の出現に、恐慌に飲まれた客席の人々は当てどなく、我先にと逃げ惑う。

 大の大人が女子供に老人を押しのけてまで逃げようとする光景があらゆる位置で散見され、弔い、そして芸術鑑賞と祝賀の場であったのが転じて醜い生存競争の様相へと変化してしまっている。

 しかし無理もない。聖都の防衛は完全であり、長らくの間、外敵の侵入を許したことはなかった。

 行商人や旅人はともかく、都から出ずに過ごしている一般の人々からすればこれが生涯初めての会敵。それがよりによって身の毛もよだつハイドラだ! 怯えてしまうのも当然と言えるだろう。

 

 ともあれ、このままでは将棋倒しの二次災害が引き起こされるのが目に見えている。

 膨大な人数が集まったこの会場、そんなことになれば犠牲者は数え切れず……!

 

 否、心配はいらない。

 この場に集った軍人、そして術師たちは国内最高峰。状況を治めるため、各所に控えた魔術師たちが一斉に魔術を発動させる。するとスタンドへ、白濃とした皮膜が拡がった。

 

 この濃霧は精神の高揚を沈静させる術式、暴徒の制圧などに用いられるものだ。

 その指揮を執るのは六聖(ベネデッタ)ザシャ・エーヴェルト。

 詩乃らが宮殿で出会い、土産にとぜんざいを手渡してきた優男。そんな彼は万の術式を使いこなすとまで称される、紛れもなく最高峰の術者だ。

 ザシャ隊の魔術師たちが全体に張り巡らせた鎮静結界は、人々を落ち着かせて虚ろな瞳へ。そして見事、その場に座らせることに成功する。動かずにいてくれれば守る方策はある。

 

「ザシャ。鎮静の進捗は」


 無線を介して話しかけたのは同じく六聖、シャラフ。

 リュイスを模擬戦、徒手で叩きのめしてみせた実力者である彼は、黒髪を(なび)かせ全体に目を光らせている。


 この式典の警備で指揮系統のトップにいるのは彼だ。寡黙な雰囲気を保ちつつも、声色は明らかに不快を示している。自分の役目を邪魔されたのだ、ハイドラへと向ける怒りは深い。

 そんな問いかけを受けて、反してザシャはごく落ち着いた口調、冷静にその問いへと応答を。


「ああ、問題ないよ。それでシャラフ君、次の手は?」

「アルメルはそのまま、猊下の護衛を。ダヴィデ、ビルギットは客席の防衛。ザシャはハイドラの駆逐に当たれ」

「了解だ」


 無線の回線は六聖に共有されている。

 剣聖アルメル、不死のダヴィデ、雷神ビルギット、万理のザシャ、黒霧のシャラフ。

 

 長いユーライヤ国史に名を刻む英傑である五人。この場に不在の一人を除き、六聖たちがそれぞれに行動を定める。……と、そこへ声が挟まる。

 

「待てシャラフ。お前はどうするのだ?」


 エフラインの傍に控えるアルメルからの問いかけだ。

 自身の動きを問われ、シャラフは確信めいた口調で返事を。


「騒動の首謀者を特定する」


 そう告げつつ、彼の瞳は既にスタンドの一角を凝視している。 その先には高価なフライトジャケットを身に付けた屈強な青年、リオ・ブラックモアの姿があった。




----------




「ッッッぜあああ!!!!」


 喧しく咆哮! そして跳躍!

 リュイスが振り抜いた鋼刃は鋭く強く、多頭を(かざ)して牙を見せるハイドラの首元へ。グミとした触感、滑り気のある体表は衝撃を逸らし、体を保護している。


 だがリュイスが得手とするのはそれを無視する剛剣。一刀両断!!

 ブチンと小気味良い音を残し、軍刀の銀刃が力任せにハイドラの一首を刎ね斬った。

 すかさず首の断面を蹴り、宙で方向転換。轟然と襲い来る顎撃を回避する。


「あっ、ぶねえな!」


 避け際、上体の筋力だけを頼みに身を翻し、二斬!! 首尾よく二本目の首を斬切、姿勢を整えて着地。

 さて残る首の本数はと目を凝らす。


「9、10……13、14……あァ!? さっきより増えて!」


 言い終えずに飛び退く。そこへ二本、巨大な首が重々しく振り落とされる!

 ハイドラは竜に似た容姿だが竜ではない。あくまでトカゲの変異体であり、火の息などは吐かない 故に攻撃手段はシンプル。

 牙、爪、尾。そして巨体の重量を存分に活かした質量攻撃。常識外の外見であれ、あくまで野生生物。自らの強みを最も活かすための術を本能的に心得ているのだ。


 伐採された巨木が続々と倒れるように、そそり立つハイドラの首は地を駆けるリュイスを目掛けて続々と倒れ込む。

 五、六、七と怒涛の攻撃が続き、リュイス、そして同様に応戦している他の騎士たちを翻弄、圧倒している!


「くッ、そ!」


 リュイスは魔術を使わない。使えない。その戦闘力は剣術と身体能力に特化していて、銃撃の腕も上等だがハイドラほどの巨体には無力。

 つまりリュイスは今、愚直に斬ることしかできない。


「ド畜生が!!」


 振り向きざま、猛進してきた首を横薙ぎに鋭斬!

 合計で五本目の首を落とし、それでもハイドラの勢いはまるで落ちる様子がない。

 回避の合間に観察をすれば、どうやらこの怪物はスタジアムの壁面や地面、設備の諸々に体当たりを繰り返して自分へと衝撃を与え、自発的に首を増殖させている。


(思ったより賢いぜ、コイツ)と舌打ちを一つ。


 幸い、スタンドは控えていた魔術師たちの保護障壁によって保護されている。が、その耐久力も有限だ。あまり長引かせれば大惨事へと発展しかねない!


 現状の問題は有効な攻撃手段が少ないことだ。

 例えば大砲があればともかく、競技場にはその手の設備が備えられていない。


 生半可な銃弾や矢は増殖のトリガーを与えてしまうだけ。弓を得手とする同僚のニコラが遠方で手出しできずに困っているのが視界に映る。

 ユーライヤの軍事ドクトリンは簡単に言えば質よりも量。物量での圧殺。突如懐へと現れたハイドラは、その弱点をピンポイントに突く存在と言えるだろう。


「っ、るァッ!!!」


 さらにもう一本を斬首!

 駆けつつ、膂力(りょりょく)に加えて脚力、さらには全体重を乗せた斬撃がリュイスの十八番。

 野性味溢れる攻撃は彼独自の技で、威力は折り紙付き。それを可能としているのは高い動体視力と反射神経だ。数に頼れないなら優れた個で攻めるまで。


 どうやら今グラウンド上にいる騎士、兵士たちの中で最も有効な攻撃手段を持っているのはリュイスらしい。その剣才とフィジカルを活かしたゴリ押しの斬撃!

 だが、それにも限界はある。リュイスが斬るペースは増殖に追いつかず、既に多頭竜の首は両手足の指で数え切れない量へ。


 この手の怪物は増えれば増えるほどネズミ算式に増えていく。

 一刻も早く止めなければ! 焦るリュイス。


 そこへ、足元からハイドラが突き上げた!

 唯一鬱陶しい敵であるリュイスを排除するべく、地下へと首を潜行させていたのだ!


「やっ、べえ……!!」

「あっ! リュイス!?」


 遠く、カタリナの悲鳴が上がる。割れた岩盤に跳ね上げられ、宙で身動きは取れず。そこへ巨竜の牙が迫る!

 逃げられない状態に追い込み、そのままリュイスの体を恐ろしげな大口へと取り込んでしまおうとしている。

 

 両親、兄、幼馴染たち、同僚たち、カタリナ。親しい人々の顔が矢継ぎ早に脳裏へ蘇り、これはおそらく走馬灯。


(おいおいおい、これ死ぬぞ!!?)

「いや、死なせん」


 危機へ割り込んだ理知の一声。

 瞬間、リュイスの全身を楕円球が。卵の殻を思わせる“漆黒の何か”が包み込んだ。

 

 それは守護の防壁。コンクリートさえ食い破るハイドラの顎を防ぎ、弾き、爆発反応装甲よろしく黒の爆発を生じさせる!


 絶叫、リュイスへと仕掛けた一首が絶命。

 そして危機を脱したリュイスは命の恩人、闇の防壁の術者へと視線を向けて嬉しげに叫ぶ。


「助かったぜ! ゲオルグ爺さん!」

「やれやれ、相変わらず大雑把な子だ」


 かつての宮廷魔術師、闇術の権威と称された老兵は穏やかな笑みを浮かべ、幼少から見知った青年に力を貸すべくその全身へと黒の魔力を漲らせている。


「いらん世話だったか? ザシャ君」

「いえ、まるで衰えていませんね。アルベールさん」


 いつの間にか、地上へと降り立ったリュイスの背後には大帽が特徴的な優男の姿が立っている。ハイドラの駆逐へと割り当てられた六聖、ザシャだ。

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