6.定番の流れ
街道をしばらく行くと、高さ二十メートルは有ろうかという外壁が見えてきた。
結構大きな街のようで、入口の前にはずらりと旅人や商人、冒険者が並ぶ。
その手続きを俺は馬の上で待った。
「身分証を出せ!」
門番が俺たちに言う。
アセナは冒険者ギルドカードを差し出した。
「彼女は私の護衛。僕は身分証を持っていないのですが、どうすればいいですか?」
「お前、何歳だ?」
俺に門番は聞いた。
「十四歳です」
聞かれた事を答えると、
「十五歳になっていないのならば、問題ない」
そういうルールらしくすんなり街に入ることができた。
ここはコブドーの街と言うらしい。
十五歳が成人ということで、大体の街では十五歳以下は身分証明無しで入ることができるらしい。そのせいで、年齢詐称もあるらしいのだが……。
ちなみに十五歳以上で身分証が無いと、入街税というものを納めなければいけないそうな……
理由としては十五歳以上が成人とされるため。
十五で親離れするとは限らないが、たいへんだ。
街の中に入ると、
「アセナ、俺は冒険者ギルドに登録できるのか?」
と聞いてみた。
「確か、十歳を越えれば登録ができる。
ただし、十五歳以上の付き添いが必要となる」
との事。
「じゃあ、登録をしようか。
年齢の証明にもなるし、アセナと旅もしやすいだろう」
「うむ、わかった」
とは言ったが、アセナの足取りは少し重くなったような気がした。
冒険者ギルドへの道を俺が尋ねながら向かうと、大通りに冒険者ギルドの看板が立っていた。
「ここからは、我では難しい。
マルスが話をして何とかしてもらえないか?」
「そうだったな」
アセナは公用語が苦手だったな。
俺は馬を降り、手綱を繋いだ。
スイングドアを開けるとアセナとに冒険者ギルドの中に入る。
「ここは坊主が来るところじゃないぞ」
と冒険者らしきオッサンがニヤニヤしながら言うと、アセナが一瞬で距離を詰め、そのオッサンの頬を殴った。
くるくると回転しながらオッサンが転がる。
どこまで攻撃的なんだ!
「アセナ!」
俺が叫ぶと、
「そいつがマルスの悪口を言った。
いくら公用語が苦手でも少々はわかる。
夫がバカにされて、黙ってはいられない!」
怒り心頭で獣人語を叫ぶアセナ。
まあ、こう言うことをしてるから、恨まれて騙されたりもするわけか……。
「それでもだ! 白狼族は夫のいう事を聞けないのか!」
俺が獣人語言うと、
「夫のいう事を聞く」
と言ってアセナがシュンとした。
尻尾が垂れ下がる。
俺は、
「僕の連れがご迷惑をおかけしたようです。
しかし、僕をからかうようなことを言わなければ、こういうことは無かったかと。
とりあえず、これでこの話は無かったことでよろしいでしょうか?」
と殴られたオッサンに公用語で言った。
「このギルド最強と言われたノルドを殴ったんだぞ?」
睨み付けるようにオッサンは言う。
「殴られる程度で済んでよかったかと……」
「それはどういう事だ?」
「さあ?」
あー、なんか俺煽ってしまってる。
「僕もあなたにバカにされたのはわかったので……。
それに、このギルドの最強があなた程度なのかと正直興覚めです」
「このガキ、バカにしやがって!」
突っ込んでくるオッサンの脇をすり抜けながら木剣で斬る。
再びお互いに振り向くと、オッサンのズボンがずり落ちた。
「下着なんて見たいと思わないんですけどねぇ」
俺は呟く。
「いつ斬った」
「見えませんでしたか? 残念です」
アセナは見えていたのか唖然としていた。
「さて、僕としてはこれ以上のことはしたくありません。
冒険者ギルドに登録できなくなるのも嫌なので。
いい加減下着を見たくないのでどこかに行ってください!」
そう言うと、ノルドは、
「覚えていやがれ!」
とズボンを上げながら去っていった。
気が晴れたのかアセナの尻尾がファサファサと触れる。
俺が受付に座ると、アセナは俺の背後に着く。
「すみません、冒険者ギルドに登録したいのですが」
さっきまでの状況を目の当たりにした、受付嬢の手が震えていた。
「登録はできないのですか?」
俺が聞くと、
「あっ、すみません」
とアセナと同じカードが現れた。
「それでは、こちらにお名前を」
俺はマルスと書く。
カードを水晶の下に置くと、
「この水晶に手を添えてください」
受付嬢が言う通り、俺は水晶に手を添えた。
何も起こらずピシリとひびが入る水晶。
「えっ? どうしたのかしらこんな時に。
能力計測ができるはずなのに……」
「能力計測?」
「ああ、マルス君の能力を冒険者ギルドに登録するの」
受付嬢的に俺は「君」付けらしい。
「このカードは登録された情報を反映するわ。
でも使い過ぎたせいか水晶が壊れちゃったみたい。
まあ、それでも年齢は転写しているから大丈夫。
えーっと十四歳ね。この冒険者ギルド証は街に入る身分証明書としては使えるわ。
保護者は……、後ろの方?」
「ああ、そう、アセナと言います」
「カードを出してもらえますか?」
このくらいはわかるらしく、アセナはギルドカードを差し出した。
二つのカードを重ねて、何かの上に置く。
「アセナさんの能力ならば、マルス君の保護者としては問題ありませんね。
それでは、マルス君の保護者はアセナさんということで登録しておきます。
依頼を受ける時はアセナさんが居ないと受けることはできませんのでご注意を」
受付嬢が差し出すカードを受け取り、アセナに渡しながら、
「畏まりました」
と俺は頷いた。
「依頼はそこの掲示板にあります。
どの依頼でも受けられますが、この水晶にかざして水晶が赤く反応すると、依頼は受けられませんのでご注意を」
「登録された能力値で水晶が判断する訳か……」
俺が聞くと、
「そういうことです。よくわかりますね」
と驚いていた。
「何となくわかりました、あとは実践だけですね」
「そうなります」
と頷く受付嬢だった。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字などありましたら、指摘していただけると助かります。




