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35.従魔

 次の日の朝、黒龍の肉を串焼きにした。

 それにパンとスープ。夕食とあまり変わらないメニューだが、

「これは美味い。さすがドラゴンの肉」

「わ、体内に魔力が溜まる。これを魔物が食べたら、確かに進化するわね」

 と言いながらガツガツと食べていた。

 母狼にも黒龍の肉の塊を投げると、器用に口で咥えて食べ始めた。

「あっまた大きくなった。

 黒いままだが、毛並みが良くなってるな」

「母狼の魔力がいっぱいになれば、また別の魔物に進化するかもしれないな」

「ほう、最高位は?」

「フェンリルとかケルベロスだな」

「ほう……。

 ちなみに獣人は進化しないのか?」

「獣人は魔力が溜まれば全ての能力が上がる。

 なぜかマルスと子作りして以来、体の切れが良くなっている」

 それは俺も気付いていた。

「多分……されたから」

 聞こえなかったが、何となくわかった。


 避妊具なんて無いからねぇ……。


「こんな所で、そんな話をするな!」

 赤い顔をしたゴーグーに叱られてしまう。

「すまないな。

 巨人族は魔力を得ると縮小化する以外に何かあるのか?」

 俺は話しを変える。

「身体能力が上がると聞く。

 その辺は人間も同じだと聞いているが?」

 そういや、バケモノの木がそんな事を言っていたな。

 でも「殺した魔物の魔力を取り込む」って言ってたような。

 ってことは、俺にもまだ伸びしろがあるのかね?

 ダンジョンがあったら、行ってみるのも面白そうだ。

 しかし、狼たちを見ていたら、魔物を倒す以外にも血肉を得ても能力が上がるのかもしれない。

 そう考える俺の傍で、

「魔力が多い肉は美味いのだ!」

 ガツガツとアセナが肉をほおばっていた。



 俺たちは帰り支度を終えると、ゴーグーを馬に乗せた。

 すると、母狼が立ち上がり、子狼に声をかける。

 その声で子狼が立ち上がった。

 俺たちについてくるようだ。

 俺たちは走り始めると、母狼が追ってくる。しかし、成長していない短い手足で、可愛くトコトコ走るのはいいが、小さな子狼はついてこられない。

 俺たちは一度止まり、俺は黒狼たちに近寄るとアセナに一頭、ゴーグーに一頭を預けた。抱き上げた。

 ガジガジと俺の腕を噛む子狼たち。

「ワオン」

 母狼が一声鳴くと、子狼たちが静かになる。

「ワン」

 これで大丈夫です……とでもいうように俺に向かって鳴いた

 そして、いつもより少し時間がかかったが、コブドーの街に戻るのだった。



 コブドーの街に入ろうとすると、門番に止められる。

「どうかした?」

 俺が聞くと、

「黒狼など、街の中に入れては……」

 話を聞けば災害指定。

「どちらにしろ、冒険者ギルドで、従魔登録が必要であろう?」

 アセナが言うが、

「それでは、マルス氏がこの黒狼を従えている証明を」

 と門番が言う。


 んー、いうことを聞くのかね……。


 手を差し出し、

「お手」

 と言うと、手を差し出す母狼。

「伏せろ」

 と手を振れば、伏せの態勢に。

 手をぐるりと回すと、伏せたまま一回転半。

 腹を出したままになる。

 ワシワシと腹を撫でると、母狼は目を細め「ホウッ」と声を出した。


 何とかなったかな?


「これでどう?」

「ああ、狼の腹を触れるのなら問題ないだろう。

 ただし、すぐに冒険者ギルドで従魔登録をすること」

「わかりました」

 俺たちは門を抜けた。


「マルスゥ。羨ましいぞ」

 アセナの尻尾がパシパシと当たる。

「何が?」

「母狼……気持よさそうだった……。

 狼があんな声は出さない」

 母狼が誇らしげにフフンと鼻を鳴らした。

「なんだか悔しいのだ」

「明るいうちからは、何もできないだろう?」

「それはそうだが……」

 モジモジとするアセナに、

「お二人さん、夜の予定はどうでもいいから、とりあえず、冒険者ギルドでしょ?」

 ゴーグーが冒険者ギルドを指差して言った。


 アセナとゴーグー黒狼たちは入り口で待機してもらい、俺は、中に入りルナさんの前へ。

「黒狼の冒険者ギルド登録をお願いします」

「黒狼ですって?

 門番は?」

「通してくれました」

「ならいいわね。

 表でしょ?」

「はい」

 ルナさんは緊張した顔で水晶を持って外に出た。

 そこにはちゃんと並んで待っている黒狼たち。

「狼系の魔物は言うことを聞かなくて有名なんだけど……」

 ルナさんがちょっと苦笑い。

「それじゃ、マルス君のギルドカードを出してもらえる?」

 ルナさんはギルドカードを受け取ると、ルナさんの身長ほどの体高がある母狼の前に立ち、水晶越しに黒狼たちを映していった。

「名前は?」

「親がフェン、子が右からハティ、スコル、マルコシアス」

 俺が言うと、嬉しそうにフェンたちはパタパタと尻尾を振った。


 北欧神話系で統一したかったが、思い浮かばなかった。

 すまん、マルコシアス。悪魔になってしまった。


「はい、登録完了。

 従魔が起こした被害は、全てマルス君が被ることになります。冒険者としての信用も落ちてしまいますので、しつけをしっかりするようにお願いします。いくら商会潰しと言っても、注意してくださいね」

「了解。

 これで終わり?」

「ええ、これで終わり」

 俺たちは暁のドラゴン亭に戻った。

 カミラとリサが出迎えてくれた。

 フェンには

「この二人は味方」

 と説明をしておく。

 フェンは理解したのか頷いた。

「えっ、えっ……かわいい」

「可愛すぎるぅ」

 子狼たちに抱き付くカミラとリサ。

 ゴーグーもそれに加わる。

「アセナは?」

(われ)は、マルスに可愛がってもらうからいいのだ」

 そう言いながら、緩いテンポで尻尾を震わせ、俺の体に当てるのだった。



 ラルフさんに依頼して、宿の裏にフェンたちの小屋を早急に建設。

 こうして、宿にフェンたち四頭が増えるのである。


読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら、指摘していただけると助かります。

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