表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/37

2.理由

 バケモノの木はダンジョンのラスボスである。

 要はダンジョンマスター

 名は無い。

 バケモノの木がここに生まれてしてどのくらい経ったのか覚えていないそうだ。

 何千、何万らしい。

 経過時間など考えるだけ無駄だと思い、考えなくなったそうだ。

 ただ、ずっと俺はここに居た。

 バケモノの木は動くことのできない木の魔物。

 ここを訪れる挑戦者を待つためだけに存在していた。

 ダンジョンの最後の部屋に到達する冒険者をただ待っていた。


「よくここまで来たな、誉めてやろう。しかし、私を倒すことができるかな?」

 なんてセリフを考えた事もあったが、使ったことは無いらしい。

 このダンジョン難易度が高すぎて、ここまで冒険者がやってこなかったとのこと。

 ちなみに原因はバケモノの木本人。

 正直言って暇過ぎで、やる事なくて、自傷行為で自分をギリギリまで痛めつけて、死にそうになる直前に回復なんてしていたら、なんだか強くなりすぎたということ。

 結果ダンジョンマスターが強くなるとダンジョンの魔物も強くなる。

 更に難易度が上がり、冒険者たちもダンジョンの上層で力尽きる。

 そして、冒険者は来なくなった。

 悪循環だと気づくのに何百年という時間がかかってしまった。

 バケモノの木は、ものすごく反省しているらしい。


 何もする気もなく、何もせずに無為な時間だけが過ぎていた。

 そんな時、なぜか俺が降ってきたらしい。

 そして思い立ったのが、「俺に殺させる」ということ。

 自分を倒せるほどの強者に育て、わが身を倒させる。

 そうすれば、死ぬことができると思った。


 とのこと。

 そういう理由で赤子のころから育てられたそうな。


「俺は今、あなたを倒せる?」

 すると首を振るバケモノの木。

「まだまだだろうな。

 儂の樹液を吸い、その枷をつけて体を鍛えたとしても、お前は今まだ魔物の魔素を取り込んでいない。この世界は魔素を多く取り込んだものが強い。

 今そこの扉を開け、そこに居る魔物と戦っても、勝てまいて。

 もう少し儂と鍛えるのだ。

 そして、その木剣や魔法で一瞬の後に外に居る魔物を倒せるようになった時、儂を倒せばいい。

 もし儂を倒してくれるのならば、できることをしよう」

 バケモノの木が言う。

「この世界にある言葉を全て教えて欲しい。

 魔法の体系も、あとこの世界の常識も」

 俺が言うと、

「この世界……。やはり、迷い人であったか」

 とバケモノの木が納得したようにうなずいた。


 迷い人というのは、別世界からきたものの総称らしい。


「儂は呪文というものを使わないからな。

 お前が最初に使った魔法のように、想像し形作った魔法を使う。

 儂の場合、水の魔法が体内の水を吹き出すだけ。お前は何も無い所から水を出していたようだが……。であるから、魔法の体系などは知らない。

 次に世界の常識は、儂を倒してから覚えればよい。

 儂は意識を持ってからずっとこの場で佇んでいた。

 だから、そのような知識は無い。タダ目の前に来たものを叩き潰す事しか知らない」

 ちょっとした師匠のように話をするバケモノの木。


 何だ、使えない……。


 そんな事を考える俺の顔を見たバケモノの木は、

「ただ、言葉を教えることはできる。

 理由はわからないが、儂はこの世にある言葉を全て話すことができるからな」

 誇らしげに俺に言った。


 ダンジョンに誰が来るのかはわからない。

 だから、ダンジョンの仕様としてどんな言語でも対応できるように言葉が話せるようになっているのかもしれない。


「それならば言葉だけでも」

 こうして言葉を学ぶようになる。


 目を覚ませばバケモノの木と剣の稽古や魔法の練習。


 そして言葉を学ぶ。

 会話はまず俺が話している公用語。

 向こうの世界の言葉はこちらで使えるらしい……。

 なぜかと言われるとわからない。

 ただ、書きは違うのでバケモノの木に教わった。

 その後は、精霊語、神聖語、巨人語に獣人語、魔人語の順番に言葉を学ぶ。


 バケモノの木は言葉を教える時、全ての言葉をその言語に合わせる。

 最初は何を言っているのかわからないが、そういう時はバケモノの木に質問をして、公用語で教えてもらう。

 言語によって発音が違ったり、文字が表意文字だったり表音文字だったりと面倒なこともあったが、それなりに学んでいけたのではないだろうか。

 全ての言葉を覚えると、バケモノの木は定期的に言葉を変える。その言葉に当たり前のように対応できるようになると、バケモノの木は頷いていた。


 丁度すべての言葉を覚えきった時、バケモノの木が俺に部屋の外へ出る許可を出すのだった。



読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら、ご指摘いただけると幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >バケモノの木はダンジョンのラスボスである。 2話で木自身が語る木の正体に繋げるなら、1話ラストをそれっぽくした方がよさげ。現状1話ラストだと会話が成り立たない親子の図で終了になって…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ